第7話いろいろと、世界観の一部が顔を出し始める感じの話になっています。
二つの閃光がぶつかることで、ぶつかった周辺のノイズは例外なく消し飛んだ。白い少女はぶつかった場所に近くにいたため、襲ってくる衝撃を無防備に受け、吹き飛ばされた。
ソウマ達は攻撃の衝撃から離れていたため、軽く仰け反る程度に済んでいた。
「ッ! 隙間が空いた!」
ソウマはその隙間を走る。風のように、疾く速く駆け、響の下に向かう。しかし、白い少女は、その行動に対し、さらにノイズを召喚し、彼女の下に向かうソウマを食い止めようとする。しかし、ソウマは、ノイズの行動を無意識に読み切ったように走り抜ける。
「行かせるかよ!」
「押し通る!!」
ノイズの妨害を躱し、手に持った剣を、白い少女に投げつけ、意識を一瞬逸らす。その瞬間に、ソウマは響の下に到着する。
ソウマは、響をかばうように、抱きかかえると、脚力を利用して、上空から、離脱する。そのまま、3人と合流を果たす。
「立花!」
ソウマが、響を地面に降ろすと、翼は響の下に駆け寄る。奏は、近づこうと、視線をそちらに向けるが、一瞬ためらったのち、視線を正面を向き、目の前を埋め尽くすような先ほどよりも大量のノイズに、歯ぎしりを打つ。
その隣で武器を構えるアスカ。その二人の後ろで、幽鬼のようにユラユラとソウマが立ち上がり、目の前の敵に殺気を向ける。白い少女は、ノイズたちを統率し、彼女の命令を今か今かと待つようにノイズたちが、少しずつこちらににじり寄る。
「ッ!」
白い少女は、自分に向けられた殺気に晒される。しかし、少女は怖気づくわけではなく、その男が融合症例の少女を助けるために行った一連の行動に対し、心のなかで黒い感情が噴き出す。噴き出した感情に戸惑いながらも、「フィーネのためと」言い聞かせ、その感情を抑え込む。
翼は、響の姿を見て、見たこともない景色が脳裏をよぎる。古い、見たことがあるような気さえする日本家屋の庭に男が一人、項垂れて佇んでいる姿が思い浮かぶ。その姿に胸が締め付けられる気持ちと黒い感情が滲み出る。
「いくら、アンタラでも、このノイズの数は捌きれねぇだろ」
少女が、一息を吸い込み、口角を吊り上げる
「自分の無力さに打ちひしがれて眠ってな」
白い少女が、ノイズを嗾けようとすると、翼が自分の中からあふれ出ようとする黒い感情に任せ、声を上げる。
「笑止‼この程度のノイズで私たちが……防人が怖気づくと思ったかッ」
「つ……翼?」
雰囲気がガラリと変わった翼に奏は恐れ戦く。いつもの、明るかった少女の瞳は、まるで戦場に立つ鬼のような鮮烈な意思を宿した瞳へと様変わりしていた。
鬼に憑りつかれたようなその姿から、全員が後ずさる。その目は、あの日、2年前のライブの時に現れた翼によく似た女性が浮かべていたもの。何かを守るために、優しさを怒りに変えた火を宿していた。
翼は、奏のほうを向き直り、いつもの優しい目で穏やかに告げる。
「私は大丈夫だから、彼女を守ってあげて」
奏は意味が分からないという顔を向ける
「さぁ、決着をつけましょうか」
「まさか……絶唱を……」
翼の剣呑ではない雰囲気に、彼女は知識を総動員にして、翼が行おうとしていることにあたりをつける。
敵に向かって歩を進めながら、翼は声を、歌を紡ぐ。すべてを傷つける破壊の歌を
「──────────―」
歌声が戦場に鳴り響く。その言葉の意味をソウマとアスカは理解できずにいたが、その膨れ上がっていくエネルギーから尋常ではないと考えていた。隣にいる奏が取り乱す。
「やめろ翼! 2年前のあの女みたいになるぞ!」
翼は、歌うことを辞めずに、奏に振り向き、笑顔を向ける。その後白い少女の方を向き、歌の力を、周囲のノイズにぶつけられるように、アームドギアを横一線に構える。
白い少女も同様に、信じられないものを見るように、首を横に振りながら後ずさろうとするが、翼の迫力から、文字通り、釘付けになりながら後ずさることしかできない。
「本当に歌いやがった……正気じゃねぇ血迷いやがったか!」
月光がスポットライトのように彼女を照らす。彼女の声が、歌が最後の言の葉を紡ぐ。それと同時に、彼女の口から血が流れる。彼女はそれを気にせず、自らの刃を振りぬく。
────一閃、白い少女とノイズに最強の、禁断の一撃が襲い掛かる。ノイズたちはその一撃で全て塵に帰り、白い少女は、吹き飛ばされる。
ソウマは、衝撃から響を庇う。白い光が各々の視界を奪う。光が薄れ、三人は、翼に対し、視線を向ける。翼の振りぬいた剣は、先程のエネルギーの奔流に耐えられずに、崩れ去る。翼は、三人の方にぎこちなく向き直る。
「────―ッ」
三人は翼の顔をみて息を呑む。その顔は目や口、耳から、血が流れ続け、一目で重体とわかるものであった。
「翼……」
奏は、呆然となりながら、翼に近づいていく。
「私は……これで……立……花も……みん……もまも……れた……か……な……かな……で……」
「あぁ……守れたよ」
「……よか……た……」
翼の姿を見て、ソウマは胸が引き裂かれるような気持ちにさせられる。どこかで、この光景を見たことがある感覚に襲われる。強烈な喪失感が彼を襲う。このまま、彼女が、先程の刀のように塵にかえってしまうのではないかという錯覚に襲われ、彼女の下に駆け出す。駆け出したと同時に翼は崩れ落ちるように倒れる。
ソウマは、翼が地面につく前に、抱き寄せる。その姿に、奏は2年前のあの瞬間が重なって見えた。魔王といえる黄金の鎧を纏った男がアメノハバキリを纏った翼によく似た女性を抱きかかえ、そのまま、一言二言を交わし、光の塵に帰っていった姿であった。
ソウマは、声を絞り出すように、声を出す。
「いるんだろ……イデア……」
風が吹き荒ぶ。風が収まると、七海とイデアが其処にいた。
「あらら、どこかで見たことのある景色ですね。これは」
「フッ因果は巡るというものだよ。まぁこれは今までなかった事態だね」
ソウマは、イデアを睨みつけるように告げる。
「おい……この事態を想定してなかっただと……神なんだろ……あんた……」
仮面の下で唇を噛みながら、虚ろな瞳で傷ついた翼に目線を向け、その後、離れた場所の響を見つめる。
「フッ……ごめん。少し気が立ってた……らしくないなぁ……俺……」
一瞬イデアは目線を傷ついて倒れている二人に目を向ける。その後、空に輝く月を睨む。
「確かに、今回は私の想定外の事態だ。この後の展開と帳尻を合わせる必要があるしね……では、君たちを病院に連れて行こうじゃないか」
イデアのストールがここにいる全員を包み込む
「なッここは、病院! どうして……」
周りを見渡してみると、奏とアスカは驚きを禁じ得なかったが、ソウマは翼を抱えて立ち上がる。
「イデア、響を頼めるか……」
「喜んで、我が魔王」
ふたりは、病院へ、響と翼を運んでいくのであった。