戦列艦と竜母を基幹とするリーム王国の艦隊、総勢82隻は第44任務部隊と比べ若干北回りの航路で日本本土へと接近しつつあった。
本来なら日本を撹乱してグラ・バルカス軍の作戦行動を支援するだけの艦隊、もっとも艦隊の人員には作戦の目的は知らされてない。
そして肝心の、彼らが支援すべきグラ・バルカス軍も壊滅しており、リーム艦隊もまたすぐにその後を追おうとしていた。
日本の攻撃を受けたからである。
「日本だ! 日本軍の攻撃だ!」
「敵艦の砲撃、我が艦隊戦列艦の砲よりも10倍は射程があります!」
「ふざけるな! まだこっちはワイバーンすら出撃できてないのに!」
リーム王国艦隊は日本近海にて海上自衛隊の攻撃を受けていた。余市と大湊より急行した第1ミサイル艇隊と第15護衛隊の旧式護衛艦だ。
はやぶさ型ミサイル艇<わかたか>、<くまたか>、あさぎり型護衛艦<はまぎり>、あぶくま型護衛艦<おおよど>、<ちくま>からなる小艦隊である。
海自側はまず艦対艦ミサイルで遠距離から一方的に竜母を撃沈したあと、76mm単装速射砲による戦列艦への砲撃を実施した。
それはパーパルディア皇国戦の再現だ。
護衛艦は速力を活かして攻撃を避けつつ、76mm主砲によるアウトレンジからの砲撃で戦列艦や竜母を瞬く間に殲滅していく。
「お、おのれ! おのれっ! 10隻もいないような艦隊に82隻がかかってこのザマとは!」
リーム艦隊の中には、かつてリームがパーパルディア皇国との戦争で73ヶ国連合に荷担した際の使者兼連絡役、カルマの姿もあった。
彼はあの後に色々あってこの艦隊の参謀になったが、運悪くこの戦闘に巻き込まれた。
彼はかつて73ヶ国連合に参加した際、日本の技術を応用したリーム製の新兵器の実力を目の当たりにしたことがある。
もっとも、彼はその時の事などすっかり忘れてグラ・バルカスが日本を滅ぼすに決まってると信じて疑わなかったが、どうやら間違いのようだ。
「ここまで強いなんて聞いてな――うおッ!」
次の瞬間、カルマの乗る80門級戦列艦は第15護衛隊の護衛艦<おおよど>の放った76mm砲弾の直撃を受けた。
被弾の衝撃でカルマも転倒する。
彼の乗る戦列艦が被弾した箇所は、マストの基部に当たる部分だった。根本から粉砕されたマストが倒壊し始める。
「あ」
マストは転倒したカルマの方向へと倒れ、次の瞬間マストは彼を押し潰した。
リーム艦隊はその後、第1ミサイル艇隊と第15護衛隊の執拗な遠距離からの砲撃を受け、反撃することも叶わずに消滅した。
ー
数時間後、リーム王国王都ヒルキガ上空を自衛隊機が飛んでいた。
彼らの目的は、リーム王国内に建設されたグラ・バルカス軍基地に空爆を行い、これの基地機能を喪失させることだ。
敵爆撃機や敵艦隊はここからやって来たので、さっさと叩き潰しておかないとまた日本を攻める部隊がここで補給して現れるだろう。
そんなわけで日本は、国内に残された自衛隊の戦力をありったけ投入し、リーム国内のグラ・バルカス軍施設を叩こうとしていた。
「まさかイーグルで空爆をする事になる日が来るなんてな……」
とはF-15Jパイロットの呟き。
それというのも、今回のリーム空爆では制空専用機とまで言われるF-15Jにまで通常爆弾をフル爆装させて投入しているのだ。
BP-3C哨戒爆撃機がほとんど国内に残っていないのと、そこそこ爆撃能力の高いF-4がまた整備と点検でお休みとなったからだ。
一応、他国から無理やり引き戻してきたF-2と飛行開発実験団のF-2によるレーザー誘導爆弾の攻撃でSEADは完了済み。
なので後は、かつてのエストシラント空爆の要領で無誘導爆弾の絨毯爆撃を基地施設に行って無力化を図るだけだ。
もちろんF-15Jは爆撃に向いた機体ではないが。
一応、イーグルことF-15Jには一応の爆撃コンピュータはあるものの、パイロットの爆撃訓練はある程度しか行ってないのが実情だ。
爆弾も無誘導なので命中精度もそこそこといったところである。
だが下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるの要領で、自衛隊機は無誘導爆弾をあちらこちらに降らせることで命中精度の悪さを補ってる。
お陰でリームはあちこちに爆弾を投下されて酷い有り様だ、もっとも裏切り者である彼らの事だから自業自得ではあるが。
この日、リーム王国内のグラ・バルカス軍の海上および航空基地施設は、自衛隊機の猛烈な空爆を受けて完全に沈黙。
またリームも大きな痛手を負い、空爆後に国王が行方不明となったこと、パーパルディア皇国の侵攻も重なり、後日彼らの国は地図から消えた。
ー
防衛省では、グラ・バルカス軍の本土攻撃を狙う爆撃機、戦闘機、艦隊の撃滅に成功した事で拍手が沸き起こった。
敵軍本隊への総攻撃のため、国内戦力が完全に手薄となっていた状態ではあったが、見事に敵軍を撃退することに成功している。
充分な成果であると言えよう。
だがまだ事態が全て終わった訳ではない。グラ・バルカス軍艦隊の本隊は未だに日本目掛けて侵攻を続けているのだから。
少なくとも艦隊本隊はニューランド島と呼ばれる島で数日間の補給作業を行う予定とされるので、まだまだ時間はある筈だった。
防衛省に詰めかけた防衛関係者の面々は、その間に気持ちを切り替えてグラ・バルカス対日侵攻艦隊の対処へと戻ろうとしていた。
至急とされる報告が届いたのはその時だ。
「敵艦隊本隊、ニューランド島を迂回して全速力で東進、自衛隊前線基地のあるナハナート王国に急速接近中!」
敵は本土攻撃を諦め、自衛隊の展開するナハナートを攻撃して一矢報いんとしていた。
まだまだ彼らの戦いは終わらない。
ここからナハナート防衛戦が始まり、グティーマウン迎撃戦からなる第二次新日本海海戦はここまでとなりますので、本作はこれにて完結となります。
短い間でしたが、本作をご愛読下さりありがとうございました。気が向いたらちょっとした番外編を投稿するかもしれません。