「見つけたぜぇ」
あの餓鬼の何かが私の左足を貫いたのだ。私自身の速度が速かった分深く貫いている。
バランスを崩し地に伏す私には、先ほどの小さい鬼が大きく見えた。よく見ると、鬼の右手中指が取れている。足に突き刺さったものも、よく見れば槍のように尖った指だ。
「もう媚び諂うのは止めだ。残念だったなぁ、鬼狩り。俺様を先に殺してりゃぁ勝てたのに」
なるほど。この餓鬼の方が強い鬼だったということか。流石に見抜けなかった。私もまだまだだ。
「なぁ、鬼狩り。どういう気分だ? 立てねぇだろ。お前はもう逃げも隠れもできねぇんだよ。さっきから隠れてばっかで・・・ビビってんのか?」
「お前はいいな。能天気で。人喰ってれば強くなる体に恵まれて。将来の不安なんかも吹っ飛んで。金に困ったこともなく、人の目線に怯えて暮らすこともなく・・・」
「はぁ? なんだぁ?泣き言か?」
「愚痴だよ愚痴。俺の師匠は弱音は聞いてくれるが愚痴は聞いてくれねぇんだよ。なぁ、お前も一回修行を受けてみないか?きついぞ。体重を減らすことに始まって、朝から晩までずぅっと森に入って獣狩り。少しでも腰が引けてたら師匠にぶん殴られる。鬼ごっこした時は凍えて死ぬかと思った・・・で、こういう時にも助けてはくれない。いいだろ?お前みたいな無尽蔵な体力あれば楽勝だろうよ」
「命乞いなら他にあたれ!」
鬼の指が一瞬にして長く伸び、先端が尖り始める。血鬼術の類だろう。大きく振りかぶった指は、五本の刀のようにも見えた。
しかし、時間稼ぎは充分できた。刺さったまんまだが、止血は出来た。感覚を鈍らせて痛みを薄くすることもできた。
沢山積もった雪を右手で鷲掴みし鬼の目へ投げる。
「無駄だぜ!」
サクッ。
「あぁ?」
「手ごたえがないだろ?そりゃそうだ。お前が今貫いたのは雪だからな」
一瞬でも視界が防げたら移動が出来る。喋ってる間に左手で刀も持てた。
「如何なる時でも冷静に、それが師匠からの教訓だ。焦ったら何も技が出ないからな。ホント、雪の呼吸は便利だよ」
「後ろかぁ!」
今だ!
雪の呼吸、三の型。俯仰之間。
鬼が振り返り際に長い指で切り裂かんとするその瞬間。攻撃のみに集中する、その十分の一秒にも満たない瞬間、その瞬間を私は待っていた。
雪の呼吸、一の型を原型に、雷の呼吸の霹靂一閃を取り入れた、いわば反撃。攻撃に集中した時に人間は必ず防御をおろそかにする。その瞬間に首を斬ったのだ。
「いって!」
鬼が消えると同時に、脚に刺さっていた指も消えた。刺さったままなら良かったのだが、流石に穴が開く程の傷は塞ぐことができない。
刀を杖にしてすぐ近くの木にもたれかかる。
鬼は二体。もう倒した。長期戦になればなるほどこっちは弱くなっていく。他の流派の練習方は知らないが、あまり動く方ではない。体力をつける修行もあまりしない。そもそも正面向かって戦闘することはあまり考慮してないそうだ。
「お疲れ様。少年」
菫が蝙蝠のように枝にぶら下がって現れた。
「すぐ近くにいたんだ・・・流石師匠。誰も気づかなかった」
「でないと師匠は名乗れないからね。でも、少年もよくやったよ。私は腕の一本や二本は取れるんじゃないかって思ってた」
「嫌ですよ。腕無くなるの。飯も上手く食えないじゃないっすか」
「でも柱に居るらしいよ?隻腕の・・・流派何だったかな・・・まぁいいか」
「隻腕の侍ってかっこいいっすね。ってか、もう帰りましょ。腹減った」
「はいはい」
やれやれと言った風に肩をすかしてそのままてくてくと歩いていった。
「俺を連れてけ・・・」
遅れてしまい申し訳ありません。
実は別の二次創作に取り掛かっておりまして、投稿を蔑ろにしておりました・・・
次回は来年になりそうです。別作品になるかもしれません。