身長120と、バスト120 作:肉裂秘剣
「のうのう、石屋として稼いだ方が、金になるんではないか?」
「この森から持っていくだけならともかく、どうやってこれだけの石を、高く買ってくれそうな下の大地に居るやつらの国で売る気なんだい?」
「ぬぅ、良いアイディアだとおもんたんじゃがの」
「それとね、結構質が良いから、産地を調べて働きにでも来たり、直接取引をしようとするやつが出てきたら、テファとアンタが見つかっちまうよ」
「ぬぬぬ……良いものなのに売れぬというのは、もどかしいのう」
「そうさ。だからアンタに給料の品を分解するよう頼んだのさ。そっちも何かうまいことしておくれ」
ユーミルとマチルダの商売話はうまくいかなかった。
あれから数日経って、子供たちも干し熊肉を噛み始めた頃……ユーミルはアルビオンの地をたった数日ではあるものの、がっつり掘った。一先ず少し掘り下げたら、後はほぼ横に。
山ではなく、森。しかも魔法で浮いてしまうような大地の強度が今一つわからず、下手な掘り方をすると生き埋めになるからだ。力のあるドワーフでも、遥か地中で生き埋めになれば流石に死んでしまう。もっとも、その不安は杞憂に終わる。土地事態が風石の力のせいで軽いのか、普通の鉱山よりも事故を防ぐのが楽なほどだ。かっちりと大地として固まるのに、脆くはなく軽いのは、さすが魔法の大地といったところだろうか。
「まぁ、じゃからといって手を抜くのは、馬鹿のすることじゃな」
ユーミルは、それでも坑道を坑木でしっかりと固定した。理由は雨。アルビオンは雲の上にあるというのに、雨が普通に降る。マチルダが言うには、アルビオンは大抵の雲より高い位置にあるものの、ここで作られた雲は下へ沈むことなく、アルビオンに雨を降らすのだとか。
「下の岩壁にも雲を纏うくせに、冠にも雲を使うとは、贅沢なやつじゃのー」
土地自らが作り出した雲に対し、何をもって贅沢とするのかは良くわからないが、ユーミルはそんなことを言いながら坑道を整えていた。
そうして掘っていくと、ある程度進む旅に鉱脈の一部に当たったのか、大量の風石と、雲のもとになっているらしきすこしの水石に、更に少ない量だが土石が手に入った。反面、ユーミルの欲した鉄鉱石や銅鉱石はほぼ出てこなかった。アルビオンの下半球……岩壁地帯まで掘り下げれば、また話は違うかもしれないものの、表層近くに精錬方面でめぼしいものはなく、ユーミルは少しいじけた。
とはいえ、出てきた魔法石がいささか多すぎる。ユーミルはマチルダへこのまま売った方が金になるのではないか……そう尋ねたものの、ゴーレムで持ち出す労力や、輸送費や下の大地で誰が売るのかなどを考えれば面倒だと、きっぱりマチルダに却下されているのが現在の状況である。
「となると、もはや研究に使うしかないのじゃが……わしはあまりこういった錬金術や、宝石姫の得意としてそうなものは知らんのじゃ」
「ならこれを機会に、勉強してみたらどうだい」
「はあ……仕方がないのう」
しばらくはまだ肉に困らない。増やしすぎても痛むだけだし、干せるところも少ない為に、ユーミルは狩りを禁止されている。なるだけ禿げ山にならないようにしつつ、まばらに遠くから取った坑木の副産物で、二ヶ月分近く薪もある。マチルダに頼まれたものは、全部魔法石は外してインゴットにしてしまった。と、今のユーミルにはやることが無い。かといって、ティファニアが働いているのに自分だけ手持ち無沙汰でいるのも、気が引けるしつまらない。仕方なくユーミルはこの土地の魔法石を、何かに転用できないか研究することにした。
「それじゃマチルダ。鉄をくれ」
「……」
もちろん、まずは模倣や参考とする対象を考えれば、作るのは自身のバトルアックスやガントレットに近いものからになる。ユーミルはマチルダに鉄塊を要求した。それはこの前のワイバーンくらいの量であり、さらに数日マチルダが寝込んだのは言うまでもない。
「なんじゃこの鉄は、とてもこのままでは使えんのー」
おまけに、ユーミルからそんなダメ出しを更に食らって散々である。メイジの錬金によって産み出される物質は、純度が低いのだ。
それから、ユーミルの魔法石の研究が始まった。
始めに、ユーミルは失敗しても構わないよう、魔法石取りつけ型の武具を作ろうとしてみたが、うまく作ることはできなかった。早朝に起こしてマチルダからルーン聞き、それを自分で作り直した鉄に刻んでも、魔法石は何も反応しないのだ。
「まあ、ブリミルとやらが現れる前からあったものじゃしな」
この事から、魔法石は系統魔法とは違う原理の、エルフたちが使う魔法の仕組みに近いものだろうと当たりをつけた。しかし、そんな使い方を自分は出来ない。
「困ったのう……マチルダたちはこれを普段どう使っておるんじゃ?」
しかし、疑問を持ったその日の夜、ユーミルが寝ていたマチルダを起こして聞いてみれば、水のメイジはこういったものを秘薬に混ぜ、より強い薬を作ることができるらしい。マチルダのゴーレムにも、時に土石を使うことがあるとのことで、こうなると系統魔法にも作用することになり、訳がわからない。
「性質が似たものになら、接触しておればとにかく作用する……ということかの?」
彼女は職人ではあるが、研究者ではない。ユーミルは酷くふわふわな結論に達した。原理は知らないが、起きていることだけを考えればそうなのだ。
「しかし、指輪をつけて使うマジックアイテムもあったのう……」
ティファニアにも聞いたところ、彼女はエルフである母が作ったという、魔宝石のついた指輪を持っている。その使い方は、祈るように念じることで怪我を直す力を発動するという。子供たちが悪さをしないよう、形見でもあるその指輪は、滅多なことでは外さないとも言っていた。
石に念じれば良いだけならば、指輪を介して発動できる理由がわからない。小石程度のサイズの魔法石を持ち歩くには最適だが、間に土の属性であろう金属を介しても発動できていることが、人の言う系統魔法でも、エルフの言う精霊の力でも問題だ。癒しの力はどちらも水に当たるのだ。
「近すぎるから、精神力か何かで発動しておるのか?」
また別の日、食後に酒を飲んで寝たマチルダをベッドに運ぶ代わりにと起こして聞いてみれば、魔宝石に溜め込まれている力は、砕く方法以外にもマジックアイテであれば、念じることで平民すらその力を行使出来る物もあるという。確かにこれならティファニアの指輪は、むやみに子供たちには使わせられない。だが精神力は関係なかったという事が、今度はユーミルの頭から煙をふかせる。
「……分解したものには杖のような、かなり離れた位置に魔法石が付いておる物も、そういえばあったわ」
距離は問題ではなく、電気が流れるかのように、人の体から繋がり続けていることが大切だと考えたユーミルは、しかもその性能が決められているものだと気づいた。エンチャントだけなら自分の戦斧もそうだが、プロセスが違う。こちらはまず、やり方こそ教えてくれなかったが、従姉妹が性質を宝石に込め、それを斧へ嵌めこんだものだ。宝石だけ外して使っても、効果は変わらないし磨耗もない。そんな製法がドワーフのやり方であれば、先祖のガントレットはとっくに固いだけの、素敵な単なる鎧のはずである。そうならないのは、燃料となるエネルギー源がユーミルたち本体だからだ。ところが、魔法石を用いたハルケギニアのアイテムは、石自体があくまで燃料であり、使うと無くなっていく。ならば、性質を持たせてるのはその他の部位ということになる。そして人間の本体もまた、魔法を使えない平民が扱える事からスイッチにすぎない以上、装飾部位が性質や性能を与えていることになる。
「……分解して本当によかったんじゃろうか?」
ユーミルは、先日マチルダに依頼された品々から取り出した魔宝石を、分解前と同じ性能にすることはできない。彼女の従姉妹ならもしかすると可能かもしれないが、ユーミル自身はそういった技術に長けていない為に、まだエンチャントが出来ないのだ。これにはガイノスで言うところの、魔法と錬金術の研究が必要になるだろう。ただ鉄にルーンを刻んだだけで、体力や魔力を転換して使える魔法の武具になるのならガイノスの鎧は、歩兵のものですらもっと複雑な形になっているだろう。
マチルダはひとつ、大きな過ちをおかしていた。ユーミルが人語を使える亜人という、ハルケギニア特有の先入観と、先祖から伝わる魔法のガントレットのせいで、ユーミルはマジックアイテムを作ることも出来ると勘違いしたのだ。彼女にそんなことが出来るのならば、力を増幅させるガントレットを右手だけではなく、左手にも着けていただろう事を見落としていた。
だが、彼女にに再構成目的の品を、分解するよう渡してなかったのは幸いだった。高性能を売りにしている、そんなマジックアイテムを再構成する前提で渡していたら、もちろんユーミルはもとに戻せない。いくら金や魔法石が多くても、経費を削減できたとしても、もとの価格と比べれば二束三文の値打ちに成り下がっていただろう。
同時に、ユーミルは完全に行き詰まってしまった。方式はガイノス式でも、ハルケギニア式でも構わない。だが、どうにかして決められた性質を持たせられなければ、魔法石の力を用いた武具の開発は進めそうにない。研究や技量の問題ではなく、自己の魔法や錬金術に対する研鑽の問題だった。
「ぬうぅ、エイリンの奴もこっちにおればのう」
また別の日……口を尖らせながら、一族自慢のガントレットをテーブルにのせて、ユーミルは指でつついていた。従姉妹ならば、今の問題を打破したかもしれない。従姉妹の宝石姫は財こそ力と唱うものの、決して宝石山の宝石を売り、その金で自分の山の武器を買って殴る、札束……もとい、金貨袋でビンタをするだけの人間ではない。むしろ趣味が倹約な彼女は、自己を高められることでなくせる出費ならば、なるだけそうする。昔、戦斧を作ったときよりも遥かに宝石に関する知識や加工に長けているはずだ。
「ユーミル、なんだかここ最近はずっと唸ってばかりだけど、もしかして悩みごとなの?」
そんなふて腐れているような姿の友達に、家事を終えたティファニアが声をかける。鍛冶という力仕事では役に立てないことを気にしていたのか、ここぞとばかりに悩むユーミルへ寄ってきた。
「良ければわたしにも教えてくれない?」
「お、おお……そういえば最近は、あまり話しておらなんだの」
「そうだよ。わたしにも相談してよ……おともだちって、そういうものなんでしょう?」
というよりもティファニアは、ちょっとコミュニケーションをユーミルと取りたくて、餓えてたまらないように見える。ぐいぐいとくる押しの強さを珍しく見せたティファニアに、ユーミルは少したじろいだものの、意見を欲しかったのも事実だ。全く関係のないティファニアだからこそ、何か意見をもらえるかもしれない。
ユーミルはティファニアへと悩みと考察、マジックアイテムを作れない問題を話した。ユーミルは知恵もあるが、大好きな専門知識を除くと、正直思考はフィジカルに寄りがちだ。楽しくない研究によってストレスもたまっていたのか、愚痴も交えてたっぷりティファニアにぶちまけた。
「せめて、何らかの形で金属に混ぜられればのー」
「混ぜてみたら?」
「ぬう?」
「風石はたくさんあるんだし、火石じゃないんだから……混ぜてみたら良いと思う」
「お主意外と怖いもの知らずじゃの」
「えっ……えっ?」
鍛冶を知らないティファニアなので仕方のないことだが、破裂したら風を起こす風石を、溶解した金属に投げ込むのは危険すぎる。溶岩の跳ねる火口付近に立つようなものだ、
「そんなに危ないの?」
「金ならばともかく、跳ねたのが鉄なら蝋燭の炎より熱いぞ。せめて、やるなら土か水石じゃな」
これにはティファニアも流石に苦笑いだ。森で暮らしている彼女は、液体という物体は火よりも冷たいものだと考えていたのだろう。ひょっとすると、この前の熊鍋みたいなものを考えていたのかもしれない。
「ねえ、わたしもユーミルの実験するところ、見てみたい。」
そして、ユーミルの話から鍛冶をしている小屋は、自分が全く知らない世界だと気づいて興味をもったらしい。今日はもう家事はない。子供たちの風呂の世話も、回復したマチルダが請け負ってくれている。
「ん? まあ水石か土石ならばそう心配することもないじゃろう。」
ユーミルとしても今日はまだ引き下がれない。何らかの成果をそろそろあげたいのだ。
「テファよ。折角じゃからな、お主の案を試してみるとしよう。じかし、お主を鍛治場へ連れていくにはひとつ条件がある。」
「条件?」
「うむ……寝巻きから着替えて参れ。それと、もう一度風呂に入ることになるから、そのつもりでな。」
ユーミルの言うことの意味が、ティファニアには解らなかった。しかし、未知の場へ立ち入る許しを得たことで、彼女は夜だというのに元気を取り戻し、はじめての世界への期待を押さえきれないのか、羽でも生えたような軽い足取りで、部屋へと着替えに戻っていった。
クロムウェルのせいでまるごと一度没になりました
あいつ完全平民なのに指輪を使えるんだもの……この辺もしかしてゲルマニアの平民貴族が革命されなかったりとか、国内のメイジ貴族と拮抗できる理由なのかも
戦闘方法が全てマジックアイテムと魔法石……みたいな?