時は少し遡る。
俺は色々と訳合ってヒロアカの世界にスタズの姿で転生した訳だが、にも関わらず、これまでの16年間……原作登場キャラに一切出会わなかった。
一 切 出 会 わ な か っ た !!
おかしくね? 父も母も現役ヒーローだった頃に原作に登場したヒーローと一緒に戦ったり、先輩風吹かしてあれこれ教えたり滅茶苦茶美味しい立ち位置を確保しているらしい。
兄貴のディオは当たり前のように時止めに目覚めて以降サー・ナイトアイんとこで夜だけ働いているとかいう何それうらやまなポジションに居るらしいし、姉のユエは原作に登場するビッグ3の中に入りそうだったが目立つのが嫌だから辞退するとかいう逆にそれ目立つだろっていう転生者ムーブしてて俺もそんなんやりたい。
俺は今までそんな話を聞く度に指をくわえて羨ましがるしかなかったわけだが……。
今日! この日! そんな現状を、一気に覆す、天下分け目の大勝負に出るのだ!
……というのも、ユエが雄英に入った直後に判明したんだが、俺どうも原作主人公達と同い年なんじゃないかって事がユエの話で明らかになった。
ぶっちゃけそれが分かるまで無気力になんとなく生きていく気満々だったのだが、主人公と同じクラスになれちゃうかもってなったら話は別である。
俺は 怠けるの を やめた! ▼
前世とは出てるゲームが違って新鮮だったが今後は一切やらない!
……のは! ストレスが溜まるので一日一時間!……一時間半!!
魔力を使って色々する訓練! ……は、もう出来るから身体作り!
勉強! ……! ……!! ……ッなんとかする! とりあえず猛勉強!!
今までが、吸血鬼を理由にいじめっ子にいじめられるとか……公園で遊んでたら偶然小さい頃の原作キャラに出会うとか……そういうのが一切無かった俺は、もう原作に関わるチャンスはここしかねえと覚悟を決めて頑張った。
その甲斐あって……というか元(前世)が大人だったから今までがおかしかっただけで、なんとか「う~~~ん……まぁ……最低ラインは越えたかな?」っていう程度にはなった。
出久と違って3年頑張ったんだけどな……おかしいな……。
……ちなみに兄貴達はナチュラルにもう一回勉強が出来るのが楽しくて普通に受かってたらしい、意味不明である。
ともかく、後は俺が実力を出し切れればそれでいいはず……!
「やっべー……滅茶苦茶緊張してきたぜ……!」
「やだなんか不良みたいなの居る……」
「こわ……記念受験とかか?」
「なにニヤニヤしてんだろ……こわ……」
「てかあっちにも金髪の不良居るし……」
A few moments later...
「(多分いけた……よな? うーん……なんか……緊張で自分がどんな答案出したのか全然思い出せねえ)」
……まあ筆記試験の結果はさておき、次はあの「いやこれ普通に死者出るだろ」という内容で最早お馴染みの実技演習試験だ。
えーっと、決められた時間内で仮想ヴィラン(っていう
が、実はその間審査員によって他の奴の手助けや救助をした奴に対してレスキューポイントとかいう加点が加わるのがあるんだっけ?
だから、人助けもしつつ、敵もぶっ壊しつつがいい……だったよな?
『はいスタートォ!!』
……でこの突然のスタートに乗り遅れないようにする!!
俺は原作知識でそれが唐突に来る事を知っていたのでスタートダッシュを早めに切る事が出来た……けどよ!
知ってたから良いようなもののこんなん咄嗟に反応とか無理だろ!? こちとらまだ説明が丁度終わったところで心の準備とかもろもろ出来てないんだけど!?
あそうだ、折角だし俺の能力についてここで実演しながら説明しちまうか。
『ヒーローハッケン!!ブチコロ』
「オルァ!!」
『オババッ』
……と、言ってるそばから一機ぶっ潰した訳だが、たった今腕の一振りでロボットを破壊した力、これが『魔力』だ。
原作では『魔素』と呼ばれる物を体内に保有し、それを体外に放出して操る事で、念動力のようなものが使えたり、敵の攻撃を弾いたり、敵の心臓を直接つかんで潰したり……なんて事が出来る力だ。
更に……これまでの努力で魔力で足場を作り、事実上の空中浮遊や、周囲の物を幾つも持ち上げる事だって出来るようになった! 滅茶苦茶神経使うけどな!!
……この世界に魔素なんてあるのかって? さぁ……分からん。
でもユエも魔法とか使えるしあるんじゃないかな……?
あっ、俺は魔法とか無理。
覚えようと思ったけどそもそも世界観が違うのかちょっと何言ってるか分からなかった。
「オラオラァ! 次だ!!」
それに俺はこうやってもっと直接的に戦う方が性に合っているしな。
「なんだアイツ!?」
「念動力みたいな個性……か?」
「それにしちゃ随分荒々しいけど……」
「ま、負けてらんねえ!!」
しかしやっぱ……分かっては居たけど俺ら家族ってチートだよな……。
俺ですらこんなんだけど、ユエとかもっとヤバイし、兄のディオなんか時間止めるなんてことしてくるし……もっと言えば父母が一番ヤバイ、下手したらラスボスよりヤバイってどういう事なんだよ。
「よし!これで……何体目だ!?忘れた!!」
でもそろそろポイントも良い感じに集まっただろ。
レスキューポイントも稼ぎたいんだけど……うーん……そんなん探すより普通にロボット倒してた方がよさそうな気もするな。
「ひえ……やばあいつ、こっちはやめとくか……」
「ぎゃっ、こっち見た!」
「引き返せ引き返せ!」
……てかなんか俺怖がられてるような気がする。
なんでだ……?
やっべ、周りに人が居ないせいでレスキューポイント稼げねえじゃん。
なんて思っていると、何やら大きな地響きのような音が聞こえ始めた。
えーと……あー……なんだっけ……あそうだ、0Pのお邪魔ロボット!
いいタイミングを見計らってアイツぶっ倒せばレスキューポイントも手に入るんじゃねえか? うん、よし行こう。
叫び声や逃げる受験者の流れに逆らうように地響きの聞こえる方向へ向かうと、そこに居たのは……お前、出る作品間違えてない? っていうレベルの大きさの0Pロボットが今まさに拳を振り下ろし、仮想の街の一角で猛烈な脅威を振るっている所だった。
「いや……デカくね? 出久これを殴り壊したの? マジで?」
何mあんだよこれ、100mくらい? 良く分かんねえ……見上げようとすると首が居たくなるくらいデカいのだけは分かる。
うわ~……あんなん相手にしようとする奴居んの? 居るんだよな……。
「おいアンタ!逃げねえのか!?あんなん俺らじゃ無理だ!逃げないと!!」
「ん?おう」
「いやおうって……人の話聞いてる!?」
俺は……え、誰コイツ? まいいや、受験生の一人の言葉をスルーしてスタスタ向かっていく。
「まさか……アレどうにかするってのか!?ムチャだって!どんな個性か知らんけど!」
うん、誰だか知らんけどお前の言いたいことは分かるよ? 俺も個性吸血鬼だし、本来ならあんなん絶対相手にしようだなんて思わねえ。
でも俺は……個性が吸血鬼である前の一個人としての俺は……“憧れのボス”になってまで……「敵前逃亡なんてダセぇ真似したくねえ!!」
「何故なら俺は!吸血鬼である前に!スタズである前に!!俺と言う一個人だからだ!!」
俺が拳に力を籠めると同時、ロボットからギシギシと嫌な音が鳴り始め、キャタピラが停止する。 そのまま出力を上げ続け、ミシミシと軋み合い、火花を散らし始めるロボット。
「……潰れろやデカブツが!!」
グッ、と拳を握ると同時、ロボットの身体が巨大な手によって握りつぶされたかのように破壊される。
火花と爆発音が鳴り響き、ぺしゃんこになったそいつが爆発しながらゆっくりと後ろに倒れていくと同時に、爆発音に紛れて遠くでタイムアップの音が鳴り響いていた。
「ヨシ。……いや、ちょっとやり過ぎたか?」
「ちょっとじゃねえよ!?」
まあ何はともあれ、こうして俺の入学試験は終わった。
とりあえずやる事はやったし、後悔は無い。
終わった事だし家に帰って買うだけ買って積んでたゲームやらねーと。
―――――――――――――――――――――
『何故なら俺は!吸血鬼である前に!スタズである前に!!俺と言う一個人だからだ!!』
審査員席でモニター越しにそれを見ていた現役ヒーローの教員達はそれまで真剣な表情で画面を見ていたが、思わず「おお」と歓声を上げているものがチラホラ居た。
それも、今ので二回目だ。
「イェア――――――!!!今年はアレをぶっ壊す奴が二人も出るとはな!?」
「片方はヴィランポイント0点だがレスキューポイントで合格……片方はどちらも優秀だが筆記試験の結果がギリギリって感じですか……」
「てか、何の個性なんだコイツ? 念動力?」
「それが……用紙には【吸血鬼】とあります」
「「「吸血鬼だって!?!?」」」
吸血鬼。
そう聞いた途端、その場にいた教員達全員がざわつき始める。
「てことは……あの人たちの子……!?」
「それならあの馬鹿力も頷ける……」
「火力と破壊力だけなら姉のユエちゃんを上回るんじゃ……」
「あ、あの……あの人達っていうのはやっぱり……」
「ああ……
生ける伝説にして無敵の
鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(本名)、ヒーロー名【ブラッディークイーン】
「……でもよ、どう見てもアレ、吸血鬼っていう感じじゃないんだが」
「では一応詳細な記載も見てみますか」
ブラッド・チャーリー・スタズ! 個性【吸血鬼】! の割には日光を浴びても「肌がチリチリする」で済んでいるし、流水も十字架もにんにくも平気だぞ!
魔力と呼ばれる不可視の力を使って敵を攻撃したり、物を浮かせたり、攻撃を弾いたり、足場を作って空中を移動、果ては手を触れずに心臓を握りつぶして破裂させる事が可能だ!(あくまでも可能なだけでそんなことしませんよ! ほんとに!)
あー、あと他にも、牙から分泌される液体には人をコントロールする力があり、水で薄めて吹きかけるだけで催眠できるぞ! さらに眼力で人の動きを止める事だって出来る!ちょっとの間だけだけど! あと……えー……あっ、普通なら瀕死になるレベルの怪我だったらその内修復する再生能力持ってます。
「いや、再生能力おまけかよ!!」
「っていうか多すぎるだろ出来る事!! 魔力? とかいう奴だけでも十分強個性だっつーの!!」
「多分、他の家族が凄すぎて再生能力くらいは今更って感じなんでしょうね……怖い……あの一家怖い……」
ブラッド・チャーリー・スタズ
日本のアニメ・ゲーム・漫画が好きな次男。
前世からオタクで明るく大雑把な性格。
今作における主人公の一人である。
元22歳のフリーター。現在、16歳のヒーロー科1年生。