弱小魚の生存戦略   作:カシオミル

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第一話 とある生物の目覚め

第一話 とある生物の目覚め

 

 意識がゆっくりと浮上していく。

 まるで海の中にいるような浮遊感を感じる。

 

 ゆっくり目を覚ますと、遠くへ行くほど濃さを増していく、透き通った青色が眼前に広がっていた。

 さらに、踊るように揺れる海藻、小さい魚が揺蕩っているのも見え・・・いや、よく見たら魚に似た虫だった。何だあれは。

 上を向けば光がカーテンのようにたなびいており、下を見れば岩の下から姿をのぞかせるウニやウミウシがいた。

 

 (!?)

 

 まるでどころでは無かった。本当に海の中にいた。

 全身を圧迫感が押し包み、口を開けば水が流れ込んで来る。

 

 動揺し、思わずもがいて水上に向かおうとするが、今度は手足が無いことにも気づく。

 いや、正確には足のようなものはあるにはあった。ただし、ヒレだ。体を動かす時に視界に入ってしまったのだ。

 

 すると、突然頭の中に妙な知識が流れ込んで来た。

 


種族【アランダスピス・レグルッスス】

 古代魚である、アランダスピスと類似した魚類の一種。体長は20cmほど。泳ぎが下手で、様々な捕食者の餌になることが多い。

 

 顎の力が弱いので、甲殻類の幼体やワカメの幼芽などの柔らかく、小さい生物を主食としている。そのため、旨味成分が体に凝縮される傾向にあり、とても美味。捕食しやすさより味で選んで狙う捕食者も多い。


 

(は・・・?)

 

 自分の体と思わしき物を目にした途端、何やら悲しい宿命にある魚の知識が浮かんで来た。まさかこれが俺だと言うのだろうか。

 

 

 

 

 (夢だな!!!)

 

 衝撃的な出来事に頭を打ちのめされたが、むしろ一周回って冷静になれた。

 

 突然魚になるだなんてあり得ないし、口が水で満たされているというのに全く息苦しさを感じない。

 何なら近くの物を見た時に、詳細情報が頭に浮かび上がるのも現実的じゃない。リアルなVRゲームをしている夢だと言われた方がしっくりくる。

 

 そう思いつつ少し目を上に向ければ、近くを泳ぐ魚みたいな虫の詳細が頭に入ってくる。

 


 種族【カンセラ・スクイラ】

 カニとエビの因子を持つ甲殻類の一種。体長は約80cm。幼体は殻が柔らかく、魚に近い形をしているが、成体になれば殻が厚くなり、カニとエビの中間の姿に変化する。

 

 幼体は魚のように泳いで移動するが、成体になると海底を歩くようになる。

 移動時には、カニ部分とエビ部分で接地面を広げて歩く。高い安定性が保持され、不安定な地形や海流が激しい場所も行動できるため、生息域が広い。

 戦闘時は、腹部を丸め、脚の下から尾部を体の前に出して広げ、正面防御力を高めて戦う。勝てないと判断した時はそのまま尾部を腹部に密着させ、水の抵抗を減らした横移動で高速退避する。

 正面へ移動する速度は速くないが、貝や動きの遅い魚、死んで間もない生物を主食とするため、特に問題にならない。

 

 カニとエビ両方の味を有しており非常に美味なために、一部の捕食者からよく狙われる。だが成体ともなれば、高いレベルの攻撃力、防御力、素早さを備えるため、捕食されることはとても少ない。


 

 やはりこんなものが浮かんでくるのは現実ではあり得ない事だ。まったく、おかしな夢を見る事もあるものだ。

 

 それにしても羨ましい。「成体になれば」と但し書きは付くが、生存率が非常に高いようだ。どうせなるなら、あっちが良かった。夢とはいえ、何でここまで差があるのかと思わずため息をついてしまう。

 

 (あっ)

 

 ため息の後に吸い込んだ水とともに、【カンセラ・スクイラ】の幼体を飲み込んでしまう。思わず吐き出そうとするも時すでに遅く、口内にカニとエビの味が広がっていた。未成熟故に殻が柔らかかったようで、口内の圧力だけで潰れてしまったようだ。何故か味を感じられるせいで、少し罪悪感を持ってしまう。夢の中のはずだよな?

 

 微妙な気分になってしまったが、命を奪った以上は感謝してしっかり味わい、食べなければいけないだろう。

 

 口内に意識を集中してみると、その味がより鮮明になった。濃厚なカニの味が口一杯に広がり、ほんのりと顔を出す海鮮系の甘味と、口の中を駆け抜ける強烈な旨味が波のように交互に現れてくる。

 カニの味がゆっくりと引いていくと今度はエビの味が主張を始め、芯の通った旨味が口の中を踊り、後を引く名残惜しさとともに去っていく。

 そして、程よく濃縮された海の塩辛さと苦味がそれらをまとめ上げ、一つの味として完成させている。

 

 なるほど、幼体でこれならば、一部とはいえ捕食者から執着されるのも分かる。

 しかし、よく考えれば自分も捕食者からそのように見られているということでもある。流れ込んできた知識からすると、自分は【カンセラ・スクイラ】よりさらに美味ということになるのだ。改めて過酷な環境にいる事態を認識し、身を竦ませてしまった。

 

 

 


生物詳細

 

種族【アランダスピス・レグルッスス】 

 

 脅威度:1(害が極めて小さい。食料に利用することが推奨される。)

 

 体力        10/10 [大気圧(水圧)を除く1N/m2の継続した圧力に対し、5分間抗い続けられる生命力を1とする]

 

(攻撃力)→咬合力        約5g [人間の3歳児の約1/3の噛む力]

(防御力)→生体硬度  モース硬度約1 [チョーク並みの硬さ]

(素早さ)→泳力(直線移動時)時速約1km [小型の川魚並みの速さ]

 

[種族特性](各種生物の保有する特性)

 

  「翼甲類型甲殻」〈二〉

  (骨が変化した甲殻で、覆われた部分の硬度を上げる。ただし体の前半身しかない。)

 

  「吸水用口腔」〈一〉

  (水を吸い込む口内機構。体格に比して大きい。)

 

[個体特性](各個体の保有する特性)

 

  「考える葦」

  (思考を止めぬ特殊個体が有する特性。知は力であり、扱いきれねば死因となるが、御しきれば生存の一助となる。行動と技能獲得に影響を与える。)

 

 

 

 

種族【カンセラ・スクイラ】

 

脅威度:3(戦闘力は高いが追撃能力は低いため、狙われてもある程度素早ければ逃げられる。美味であり、食料に利用することが推奨される。ただし、捕獲は困難を極める。)

 

 体力        150/150

 

(攻撃力)→挟力       約300kg [大抵の貝の殻を砕く力]

(防御力)→生体硬度 モース硬度約8 [象牙を超す硬度]

(素早さ)→走力(横移動時)時速約3km [大型の回遊魚並みの速さ]

 

[種族特性](各種生物の保有する特性)

 

  「多層硬質甲殻」〈七〉

  (関節部までも複層式の殻で守る甲殻。防御力と柔軟性を両立している。)

 

  「破砕鋏」〈六〉

  (硬い貝殻も砕いてしまう強力な鋏。外敵への牽制にも使われる。)

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