弱小魚の生存戦略   作:カシオミル

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第二話 物理と敵とデッドレース

第二話 物理と敵とデッドレース

 

 さて、そろそろこの辺りで目を覚まそう。

 

 夢以外あり得ない状況だが、それにしては意識がはっきりしすぎている。中途半端に脳が覚醒しているのだろうか。

 なら、何も考えず意識を薄れさせていけば、しっかりとした眠りについてから目を覚ませるはずだ。

 

 ゆっくり意識を飛ばし、再び目を開ける。

 遠くに行くほど暗くなっていく透明に、揺れる海藻、小さい生き物、小さく丸い物体のある景色が広がっていた。

 

 ゆっくり意識を飛ばし、再び目を開ける。

 遠くに行くほど暗くなっていく透明に、揺れる海藻、小さい生き物、魚影のある景色が広がっていた。

 

 ゆっくり意識を飛ばし、再び目を開ける。

 遠くに行くほど暗くなっていく透明に、揺れる海藻、小さい生き物、大口を開けた巨大魚が目の前にいる景色が広がっていた。

 

 

 

(・・・・・)

 

 

 

 

 ここまで状況が好転しないどころか、むしろ悪化してしまっているこの状況においては腹を括って対処する必要がありそうだ。

 それに、夢だとしても、このまま何もせずに夢の中で死ぬのは不吉すぎる。

 

 遠目から見ているだけでも嫌な予感はしていたが、相手を明確に視認したことではっきりと目の前の脅威に関する知識が流れてきた。

 


 

 種族【ダンクルオステウス・アシアナメリディエス】

 

 頑強な牙と顎を持つ巨大魚で、体長は8mほど。古代の海において暴食を体現したダンクルオステウスの名に恥じぬ凶暴性・攻撃性を誇り、その顎の力は百獣の王を超える。

 また、骨格が変化した顔面の重装甲は、大抵の棘や牙による攻撃や締め付けも寄せ付けず、防御力も高い。

 旨味の強い獲物を好んで捕食することから、その身にも旨味成分が濃縮される傾向にあり、腐敗が進んだ死肉でさえ様々な生物を引き寄せ、取り合いの元になるほどである。しかしそれは、この巨大魚を仕留め、新鮮な死肉を喰らえる者はほとんどいないことの裏返しでもある。

 


 

 (は?????)

 

 とんでもない化物が迫ってきていた。ライオンを上回る噛みつきなど、あまりにも殺意に溢れている。

 しかも、大抵の生物の急所である顔面もしっかり守りを固めており、サメやクマなどに襲われた時のように、鼻先に逆撃することもできない。

 

 こうなったら逃げの一択しかなく、必死に身をくねらせて向きを変え、少しでも遠ざかろうと泳ぎ始めた。

 不幸中の幸いにも、相手は頑丈だが重い装甲を身につけている。こちらも泳ぎが上手くないとはいえ、相手は機敏に動くことなどできないはずで、そこを突くしかない。

 

だが・・・

 

(くそっ!全然離せない! むしろさっきより近い!)

 

 こちらが相手に勝る、数少ない要素の一つである小回りの良さを活かし、小刻みに進路を変え、時には直角に曲がってみる。だが、全く突き放せない。それどころかどんどん命綱である距離を狭められている。

 

 あれだけの巨体と重量で泳いでいれば、大型トラックが慣性のせいで急には曲がれないように、進路変更には時間がかかるはずだ。

 それにも関わらず、こちらに迫ってきている。その事実に驚愕して目を見開いていると、相手のある動きが目に入った。

 

(魚がドリフト・・・だと!?)

 

 アンカーを打ち込むかのように重い頭部を斜め下に振りおろし、部分的に急発生する抵抗を利用して体を横滑りさせていた。そうして大きく方向転換し、強力な尾部を使って推力を強引に発生させることで距離を詰めてきていたのだ。

 

(そんなのアリか!?)

 

 単純な身体能力でも敵わないのに、物理法則まで活用して追い詰めてくる。

 このままでは逃げ切れない。何か、何かないか、対抗できる物が。焦りで鼓動が速くなり、呼吸が荒くなる。

 

 全神経を集中して周囲に意識を向けると、ある物に気付いた。

 

(っ!これだ!)

 

 そして、真下へ高速で突き進む。当然相手も進路を下に変えて追いかけようとするが、距離が徐々に開いてきた。

 

(よし!このまま海流を利用して、一気に突き放してやる!)

 

 そう、下方向の海流に乗ってスピードを上げたのだ。そしてそれは、偶然生まれたものではない。自分が生み出した海流だ。

 呼吸が荒くなった時に頭上から強い海流を感じたのがきっかけだが、呼吸を応用して、弱いながらも自分の周囲のみに海流を作れることに気づいたのだ。

 

 現状、自分・・・というか魚全般に言えることだが、呼吸の時、口からエラに水を通して酸素を得ている。

 だが、泳ぎが下手な魚ということになっている自分は、速く泳いで口に大量の水を流し込み、充分な酸素を得ることができない。だから、それを補うために、種族的特徴として大量の水を吸い込んで呼吸するようだ。

 その際、頭部周辺に水圧の低い空間が発生するため、上方や周囲から水が流れ込んで一瞬だけ下方向への海流が生じる。それを連続で力強く行うことで自分を動かす力へと変化させたのだ。

 

 相手も同様のことができるかもしれない、ということが懸念だった。だが、様子を見るに【ダンクルオステウス・アシアナメリディエス】は、その巨体を動かすのに足る海流を生み出せるほど大量の水を吸い込めないようだ。これなら一時的にでも引き離せる。

 

 


生物詳細

 

種族【ダンクルオステウス・アシアナメリディエス】 

 

 脅威度5(攻撃力、気性の荒さ、追撃能力のどれを取っても脅威であり、遭遇の際には即時退避が推奨される。可能であればだが。)

 

 体力        2561/2561

 

(攻撃力)→咬合力         約570375kg/m² [ライオンは約456300kg/m² ]

〈ライオンのPSI(ポンド平方インチ)≒650 1インチ=0.0254m 1ポンド=0.453kgより、650×0.453/0.0254²=456300〉

(防御力)→生体硬度   モース硬度 約7   [歯並みの硬さ]

(素早さ)→泳力(直線移動時) 時速 約2km [ウミガメ並みの速さ]

 

[種族特性]

  「板皮類型甲殻」〈七〉(骨が変化した甲殻。多量の甲殻を重ねるように形成されており、高い硬度と可動性を両立している。)

   「多重強筋」〈六〉(密集した大量の筋肉。パワーとスタミナが向上する。)

 

 

 

種族【アランダスピス・レグルッスス】 

 

 脅威度:1(害が極めて小さい。食料に利用することが推奨される。)

 

 体力        9/10 (全力の遊泳で、体力減少。)

 

(攻撃力)→咬合力        約5g [人間の3歳児の約1/3の噛む力]

(防御力)→生体硬度  モース硬度約1 [チョーク並みの硬さ]

(素早さ)→泳力(直線移動時)時速約1km [小型の川魚並みの速さ]

 

[種族特性]

  「翼甲類型甲殻」〈二〉

  「吸水用口腔」〈一〉

 

[個体特性]

  「考える葦」

 

[獲得技能]

  [特性「考える葦」により、技能「高速潜行」を獲得]

 New「高速潜行」〈一〉

   (速く潜行する技能。上位技能に高速遊泳がある。)

 

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