弱小魚の生存戦略   作:カシオミル

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第四話 逆撃! 物理と化学の合わせ技!

第四話 逆撃! 物理と化学の合わせ技!

 

 

 相手はスピードを緩めず、斜め上から急速に迫ってくる。だがそれは、ドリフトを使わなければ、急な方向転換ができない状態に誘導できたということだ。

 

(今だ!)

 

 回復させた体力を使って全力で右に向かって逃げ始める。この距離なら、相手は急いで方向転換しようとドリフトして、自らの腹部に毒の棘を打ち込むことになるはずだ。

 いくら巨体を誇るダンクルオステウスとはいえ、体の中心で重要臓器もある腹部に麻痺毒と出血毒のWパンチを受ければタダでは済まないだろう。

 

 だが、もしかすると行動不能にしきれず、大暴れしてくるかもしれない。噛みつかれずとも、その膨大な筋力から生み出される一撃は即死級だ。策はうまくいったのに暴走に巻き込まれて結局殺される、なんてのは御免被る。

 

 だから相手の動きをしっかり視界に収める。いざという時に避けられるようにするためだ。

 

 そうして相手の動きを注視していると、妙なことに気づいた。

 

 斜め上から、岩場より少し手前の地点へ向かって軌道を微修正しているのだ。追跡しようとするならすぐにドリフトして方向転換するのが当然であり、奇妙という他ない。

 

 もしかして、岩場の近くに他の捕食対象があって、狙いを変えたのだろうか。そんな淡い希望を抱いて見ていたが、間違いであったと分かった。

 海底に到着すると同時に頭をこちらに向け、右腹部で砂を巻き上げながら急カーブを描いて高速で迫って来たのだ。

 

 本来ならあり得ない挙動を、海底に自ら体を押し付けて摩擦を生じさせ、よりコンパクトなドリフトをすることで実現していた。

 

 相手としては方向転換のタイムロスを減らし、より確実に追い詰めるために行ったのだろう。だが、相手の軌道の変化によって、毒の棘が刺さる前にドリフトが終わりかねないという意味でもこちらを追い詰めていた。

 

 (まずいまずいまずい!どうする!?針山に戻って頭から突っ込ませるか?そして小さな目玉へ棘が刺さるのに賭けるか?)

 

 駄目だ。相手はトラバサミの如き頭部と、その側面に装甲に囲われた眼球を持っている。今更針山に戻っても、棘が刺さるどころか相手の鼻先に当たった時点で弾かれて砕け散る未来しか見えない。

 

 

 (ん・・・?砕け散る?)

 

 ここは水中だ。地上とは違って、物体は浮力の影響を受ける。質量に比して体積の大きい物、例えば棘の破片のような物体ほど沈みにくく、漂いやすい。

 

 この状況、利用できるかもしれない。いや、利用する!

 

 

 急いで無数の棘の中に戻ると、一瞬の間を空けて、さらに軌道修正した【ダンクルオステウス・アシアナメリディエス】が頭から衝突してきた。

 直前に棘に気付いたようだが、自分の頭部の甲殻に自信があるのか、構わず突っ込んで来た。様子を見てもやはり刺さることは無く、むしろ装甲に覆われた頭部が棘を折り砕き始めている。棘の影響があるとするなら、ぶつかった棘の硬さで衝力が減ったことくらいだろう。

 

 それでも、相手の衝力が減り、速度が下がったおかげで時間の余裕ができた。その時間で深く水を吸い込み、逆撃の準備をする。

 

 そうしている間に棘を砕き終え、障害物を排除した【ダンクルオステウス・アシアナメリディエス】が大口を開けて迫ってきた。このままでは死から免れられないだろう。だが・・・!

 

(準備は整った!!)

 

ドオン!

 

 【ダンクルオステウス・アシアナメリディエス】の巨体が海底に叩きつけられ、砂埃が舞い上がる。

 

 奴は自らを襲う力から逃れようともがくが、身動きもままならないようだ。

 

 その正体は海流だ。さっき俺が、海底で海水を必死に吸い込んでいたのはこのためだ。目前の海底付近の水を移動させ、その真上にある大量の海水が滝の如く海底に叩きつけられる海流を生み出したのだ。

 

 ダルマ落としの最下段を抜き取ればどうなるか?言うまでもない。その上にあるものが落ち、落下地点へ向かう。

 

 水の吸い込みによる海流の生成は移動手段であり、海底に着いたら役に立たない物だと思っていたがそうではなかった。条件さえ揃えられれば、膨大な水をその重量とともに上から叩きつける攻撃へと変化させられる。

 水の重さは1㎥あたり1トン。つまり、海面から何メートルも深く離れたこの場において、攻撃の威力は数トンにも及ぶ−−−!

 

ズズズズズ!ギギギッギシッ!ズズズズズ!

 

 

グオオオオォォ!!!

 

 あまりの圧力で海底へ押しつぶされる苦痛と怒りに【ダンクルオステウス・アシアナメリディエス】の全身が震え、咆哮となって響き渡った。

 

 だが、これほどの力を以ってしてなお、対抗するには足りなかったらしい。保有する膨大な生命力と筋肉に物言わせてじわじわと近づき始めたのだ。

 そして、巨大な顎がすぐそばまで迫った時、突如としてその動きが鈍り、体を痙攣させ始める。

 

 ようやく2つ目の攻撃が効いてきたようだ。

 

 先ほど【ダンクルオステウス・アシアナメリディエス】に叩き込んだのは、ただの水ではない。無数の毒棘の破片を含んだ海水だ。

 滝のような海流でうちのめすと同時に拘束し、海流とともに打ち込まれた毒棘の毒が回るまでの時間を稼ぐという二段構えの攻撃だったのだ。

 

 元より、重力を利用したとしても外部からの攻撃だけでは倒せないだろうと思っていた。そのため、棘の毒による内部破壊を狙っていた。とはいえ、相当量を相手の体内深くに流し込まなければいけなかったから容易なことではなかった。

 

 まず毒棘を刺す段階で、頑強な装甲や強靭な筋肉と表皮に弾かれかねず、まともに自力で刺し込むのは不可能だった。

 だから工夫した。吸い込みで相手の上を漂う棘の先端が下を向くようにして刺さりやすくし、その上で数トンに及ぶ海流を以って大量の毒棘を打ち付け続けた。そうして、なんとか皮膚や筋肉、装甲の隙間を突破して深く突き刺せた。

 

 さらに、その巨体ゆえに毒の量が足りなくなると予想し、追加して毒を取り込ませる策も込めた。

 装甲に毒棘の一部を叩きつけてわざと砕けさせ、内包した毒を撒き散らし、【ダンクルオステウス・アシアナメリディエス】の呼吸に合わせて飲み込ませるというものだ。

 通常、タンパク質系の毒は、血管に入った場合と異なり消化器に入った場合は大した効果はなく、脅威にはならない。だが、口内に傷があるならば話は別で、そこから体内に入り、体を中から壊してしまう。

 【ダンクルオステウス・アシアナメリディエス】は巨大な牙と口を持つため、獲物を喰らう時に細かく噛み砕けず、獲物の骨や歯、甲殻で口内に細かな傷が生じてしまっていると推測したのだが、この様子からすると当たっていたようだ。

 

 


生物詳細

 

種族【アランダスピス・レグルッスス】 

 

 脅威度:1(害が極めて小さい。食料に利用することが推奨される。)

 

 体力        5/10 (技能使用で体力減少。)

 

(攻撃力)→咬合力         約5g [人間の3歳児の約1/3の噛む力]

(防御力)→生体硬度  モース硬度約1 [チョーク並みの硬さ]

(素早さ)→泳力(直線移動時)時速約1km [小型の川魚並みの速さ]

 

[種族特性]

  「翼甲類型甲殻」〈二〉

  「吸水用口腔」〈一〉

 

[個体特性]

  「考える葦」

 

[獲得技能]

 Level Up「高速潜行」〈二〉→〈三〉

 

[「高速潜行」の習熟度・理解度の向上に伴い、「超重瀑布(グラビティ・フォール)」を内包する技能へ進化]

 

 「超重瀑布(グラビティ・フォール)」〈二〉

    (「高速潜行」の派生技能。「高速潜行」の習熟度・理解度の向上により獲得。重力を利用した滝の如き海流であり、格上にも通用する威力と拘束力を誇る。)

 

[「超重瀑布(グラビティ・フォール)」をレベル〈二〉で獲得したことにより派生技能「流星連弾(フォーリン・スターズ))」を獲得]

 

「流星連弾(フォーリン・スターズ)」〈一〉

    (「超重瀑布」の派生技能。「超重瀑布(グラビティ・フォール)」を高理解度で得たことにより獲得。創り出した海流に複数の鋭利な物体を乗せることで、流星群の如き弾丸を打ち込む技。厚い装甲も貫く威力を有する。)

 

 

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