「ねえねえいろは先輩〜」
「なにお米ちゃん? 」
「生徒会室って紅茶とかないんですか? せっかくお菓子あるのに」
「……つーか、何でお米ちゃん生徒会室にいんの? お前部長だろさっさと奉仕部戻れ」
「……それはそうと、最近ほとんど奉仕部に顔を見せなくなったいろは先輩は一体何が起きたんですか? もしかしてちょっと太ったからとかですか? プニプニですかね」
「はっ倒すぞ……ほら、私はアレだし。生徒会長であって正式な奉仕部員ではないから」
「……最近になるまで生徒会放っておいてずっと奉仕部に入り浸っていた人がそんなこと言いますかそーですか」
「……部活をエスケープしてる部長に何言われてもね〜」
「……」
「……」
こんにちは。比企谷小町です。
……さっきまでのいろは先輩との会話を聞いていただけると分かると思いますが、小町は今、生徒会室にいます。
本来なら、紅茶の香りに包まれながら、雪乃さんと結衣さん。お兄ちゃんの3人と、オマケの一人であの部室にいるはずの時間なのですが……
今日は何故かいきなり生徒会室の大掃除とか始めたいろは先輩を、奉仕部らしくお助けしようと、小町はここにいるわけです。
……ええ、別に他意はありません。
断じてありませんから。
「まあ、、あの部室は今、黒歴史持ちなガチ百合とドMがカオスだからね〜……正直お米ちゃんがここに逃げ込んでくる気も分かるんだけどさ」
「……お兄ちゃんには悪いことをしたと思っています」
大掃除のため、開けっ放しにしているドアを見つめながらいろは先輩は言いました。小町もついそれに追従して、諦めたような顔で返事をします。
はぁ……ええ、なんとなく察してもらえたと思いますが、そうです。
今の奉仕部はカオスなのです。
熱のこもった瞳でお兄ちゃんと結衣さんを見つめる雪乃さん。最初こそそんな雪乃さんにドン引いていた結衣さんも、最近ではそれすらイイ刺激になってしまったのか瞳をキラキラさせて興奮し始めたんですよ。
想像してくださいよ。そんな二人の作り出すヤバイ雰囲気を。そりゃいろは先輩もテキトーに仕事作って早々に奉仕部に入り浸るのやめますし、小町だって部長の癖にテキトーな言い訳つけて生徒会室に逃げ込みますよ。
きっと、お兄ちゃんはあの部屋の中で、小町たちを呪っていることでしょう。可哀想なことをしました。
「ねえ、お米ちゃん」
「なんです。いろは先輩」
「……せんぱいには、可哀想なことしちゃったねぇ」
「……小町、今後お兄ちゃんにはもっと優しくしてあげようと思います」
「……それまでに、せんぱいもなんか変なふうに毒されてなければいいけど」
「やめてください。縁起でもないです」
「……」
「……」
「「ハァ」」
さっきからずっとこれです。
小町といろは先輩は、現在進行形であの部室の中に流れているであろう淀んだ空気を、それはもう一身に浴びているお兄ちゃんに同情し、溜息を吐くばかり。
「結衣先輩のドMもヤバイけど、まさか雪乃先輩が百合に目覚めるなんて思わなかったなぁ」
「贅肉は落としたものの、無駄な要素つけちゃいましたねぇ……陽乃さんも言ってましたけど、過度なストレスは人格を破壊してしまうってよく分かった気がします」
「「ハァ」」
今日何度目かの溜息を吐く小町たち。
しばらくそれからは無言が続いたけど、その静寂は目の前のアザトBBAによって断ち切られました。
「でもさぁ……お米ちゃんって、本当にせんぱいのこと好きだよねぇ……ブラコン? 」
は?
「は? 」
いきなり何を言いやがるんでしょうかこの年増は。
思わずキュートでラブリーな小町がメッチャ低い声を出してしまいました。いけないいけない。
いろは先輩は、そんな小町を見て口角を上げます。
「いやだってさ〜、お米ちゃんって二日に一回せんぱいの布団に夜潜り込んでくるんでしょ? そんでわざわざ朝早くに自分の部屋に帰って行くって、せんぱい前言ってたよ? 気づかないふりしてるだけで気づいてるって」
「へ? 」
小町が思わずあげてしまった素っ頓狂な声を聞いたBBAは、ニヤァっと顔を歪める。
「いやぁ……千葉の兄妹ってほんとに結構異常なんだねぇ……お米ちゃんはお兄ちゃん大好き♡♡って感じなのかな? ね? ね? 」
「あ、ハハハ……なんのことだか、、、小町さっぱりなんですけどね。いろは先輩の哀しい妄想なんじゃないですか? 」
平常心平常心……
小町は決して脂汗を流してなんかないし、ドキドキしたりなんてしてない。冷静に、冷静に。
「あれれ〜? そうなのかなぁ? じゃあ、お米ちゃんが布団に潜り込んできたときに、決まってパジャマの上からせんぱいのナニをツンツン触ったり、ちょっと触れるだけのキスを何度も何度も嬉しそうにしていくことを私に話してくれたせんぱいの言葉も私の妄想だったのかなぁ? 」
「っ!? 」
ま、まさかお兄ちゃんそこまで気づいて!?
嘘だ!!!!!
だ、だってお兄ちゃんって昔から異常なくらい寝つきよかったじゃん!! 昔から一回寝たら小町がいくらイタズラしても絶対起きなかったじゃん!?
「あれれ〜? お米さん? 顔が青いですよ〜? 」
声を出せない小町に、いろはBBAは畳み掛けてくる。スッゲエ楽しそうな顔で、スッゲー下衆な顔で小町をおちょくるその姿には、結構本気でイラついてきた。
だから……小町はつい、言ってしまったのです。
「な、何が悪いんですかっ!? 私はお兄ちゃんと10年以上一緒なんですよ!? あんたたちとは年季が違うんですよ! 私がどんだけお兄ちゃんが好きだってloveだって変な気起こしてたってどうだったっていいでしょう!? そうですよ! 小町はお兄ちゃんラブですよ!! チュッチュしたいですし毎日一緒に堂々と寝たいですよ!!!!! お兄ちゃんだけど好きですよっ!!わ……私がブラコンで、悪いかあああああああああああああああああああ!!!!! 」
言ってやりましたよ。
ああ、言ってやりましたとも。
まあ? 正直小町的にもっともっと言えることは沢山あるんですけれども。
だけど、目の前には未だ呆然と、なぜか小町の方を無視してドアの方を見ているいろは先輩。
なんか少しムカついたので、またお兄ちゃんに対する思いの丈を叫んでやろうと……思ったんだけど
だけど、、、この後、小町は目の前のBBAに、何も叫ぶことはできなかった。
なぜなら……
「……小町さん……今の本当? ……あ、いえ、別に私は怒っているわけではなくて……」
「あ、、うん。……ごめんね小町ちゃん……今のは出来るだけ忘れるようにするから……」
「……」
声は、いろは先輩が呆然と見ていたドアの方から聞こえてきました。
その開けっ放しだった生徒会室のドアの外からは、
結衣さんとその後ろから抱きついた雪乃さん、二人の横に立っていたお兄ちゃんがこっちを見ていて、、、
正常に戻っているのか、結衣さんと雪乃さんは申し訳なさそうに
お兄ちゃんは……顔で手を隠しながら、、羞恥で真っ赤な顔でソッポを向いていたのでした。
「い……い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!! 」
小町史上一番の爆音が、生徒会室に響いた。
* * *
あれから、小町は家に帰ると、すぐに翌日の授業で必要なものを回収。そして敢えてゆっくり帰っているであろうお兄ちゃんと家でバッタリ会わないように、すぐに家を出て雪乃さんの家にお世話になりました。
なんでも、事情を知った雪乃さん曰く
『今のあなたの気持ち、痛いほど分かるわ』
らしく、しばらく小町は雪乃さんの家で預かってくれる、と言ってくれたのですが
しばらくとかそんなに時間をかけることは小町はしません。
だって明日、あのあざとBBAに目にもの見せてやるのだから。そのスッキリ感で、この羞恥を塗りつぶしてやるんだから。
* * *
翌日
「えっと……生徒会室に行くん……だよね? 」
「なんでこんなところで隠れないといけないのかしら……」
「……あの、、小町ちゃん? ……説明してくれない? 」
昼休み。
小町はあの憎き亜麻色BBAを処するため、すぐに奉仕部の3人に生徒会室の隣の隣の空き教室に集まってもらいます。
3人はまだこれから何が行われるのか分からないようで、口々に疑問を持っているようです。
……正直昨日の今日でお兄ちゃんと顔を合わせるのはちょー辛いけど……あいつに仕返しするには絶対にお兄ちゃんの存在は必要不可欠。小町、頑張りますっ!!!
「まあ、静かに見ててください。もうすぐ来るはずです」
その小町の声に、三人は空き教室から顔だけ出して、隠れつつ奴が現れるのを待ちます。
「ふっふふっふふ〜ん」
現れました。鼻歌なんぞ歌いながら、あのBBAが生徒会室に入っていきます。そして、完全に生徒会室に入ってから小町は三人を引き連れて、今しがた閉められたドアの前まで歩いてきました。
「……一色さんに何か用事でもあるのかし……ら? 」
ふふっ、さすが雪乃さん。小町が何をしたいか少し勘付いたみたいです。
さて、未だに頭上にハテナを浮かべた結衣さんとお兄ちゃんにも、ちゃんと説明しなくては。
小町は、三人に言いました。
「ここにタブレットがあります。これには、今日の朝に生徒会室に仕掛けたカメラの映像が流れるようになっていましてですね……今から三人には、いろは先輩のこの部屋の中での姿を見てもらいたいんです」
いうが早いか、電源を入れて、三人に見せるようにその画面を向けました。
そこには……いつものように、普段は生徒会室のいろは先輩専用ロッカーに隠してある、ティンカーベルみたいな衣装に着替えたBBAが映っていて
『みんな〜!!!!! 大精霊いろはだぞっ! ☆ 』
『生徒会長とは、世を偲ぶ仮の姿……わたくしは、高貴でキュートな大精霊ですから♡ 』
『さあっ! 皆のものぉ!!!!! わたくしを崇め奉るのですっ!!! 』
『うふふふふ……この聖なる大精霊の前には、どんな攻撃も無力なんだぞっ!!……』
『どうでしょう……このわたくしの魅惑のダンスの前にひれ伏しなさいっ!! ☆ 』
『正しい心がなければ、わたくしは見ることができません……だから、あなたは誇っていいのですよ? ハチマン』
『大丈夫……このわたくしを見て、心を奪われるのは当然のこと……大精霊の加護を受けたければ、わたくしを褒め称えるのですっ!!!!! 』
『さあ、我が魔道書に記された呪文を唱える時です! 』
『いきますよ〜〜、必殺の、イロハエル・ウィンク!!☆☆☆ 』
「……」
「……」
「……」
三人は何も言えずに、タブレットを見ながら口を開けたままでした。
固く閉ざされた生徒会長のドアの向こう。
もう何ヶ月も前から小町だけは知っていて、温情からバラしてこなかった事実。特に何もなければ、バラす気もなかったのに……
だけど、小町だって甘ちゃんじゃないのです。
昨日の屈辱と羞恥があれば、躊躇せずにバラしますよ。
「分かっていただけましたか? 」
小町は澄み渡った空のような声で言う。
そしてもう一回ためて……
「いろは先輩は、イッたい中二病だってことを!!!!! 」
高らかに、あの憎きあざとい先輩の生態を宣言した。
「あ、あれ? 4人とも……どうしたんですか? 」
私が宣言した直後、やたらスッキリした顔のいろは先輩が生徒会室のドアを開けて出てきました。そんないろは先輩に対して、お兄ちゃんも、結衣さんも雪乃さんも、乾いた愛想笑いを浮かべて目をそらします。
そんな三人の姿をいろは先輩はなんだかよく分からないと言った困惑した表情で見つめて、最後に小町に視線を固定します。
「うふふ……いろは先輩知ってますか? このタブレットですね、生徒会室に設置したカメラと繋がってるんですよね」
「え」
小町の一言に、思わず声を出して一気に顔を青ざめたBBA。
優しい顔をしていろは先輩を見る結衣さん。
どこか遠い場所を見るような雪乃さん。
ゆっくりと、哀悼の意を表するように目を閉じたお兄ちゃん
そして、きっとニヤァっと笑いながら、さっきまでの映像を再び流し始める小町。
勝利を確信して、小町はいろは先輩に語りかけた。
「お疲れ様ですっ……大精霊いろはさん!!!!! 必殺のイロハエル・ウィンク! 小町痺れましたっ!!」
「い、いやああああああああぁああああああああああああああああああああぁああああああああああぁああああああああああああああああああああああぁああああああああああぁああああああああああああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!! 」
大精霊さん(笑)の叫びが、大変耳に心地よかった。
Mission complete
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スキルまとめ
雪ノ下雪乃
・乙女ポエム
・ガチ百合
・ぷよぷよ
雪ノ下陽乃
・ド変態
・乙女
・ぷよぷよ
由比ヶ浜結衣
・悪魔的ドM
一色いろは
・中二病←new
比企谷小町
・ガチブラコン←new
川崎沙希
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比企谷八幡
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