八幡、つらいです。
え、いきなりネガティブなこと言うなって?
まあな、言いたいことは分からなくもないが、でも断言してやるよ。無理だから。ほら、お前らもこの空間にいたら分かるから。
とりあえず、今の俺の周り、奉仕部部室の状況を説明してやろう。
由比ヶ浜と俺に熱いドロッとした視線を向けている我がパートナー、雪ノ下雪乃。
最初こそ百合の下さんに怯えていたが、何がドMセンサーにひっかかったのか、最近は目を危ない色に染めてそれに悦んでいる由比ヶ浜結衣。(「禁断の関係って、なんだか心が踊らない?」ってハアハア言いながら由比ヶ浜談)
小声で「イロハエル……」とか囁き、笑いながら一色を見つめる小町。
にこやかに「近親相姦……」とか小町に囁く一色。
ついでに、奉仕部のドアの向こう。ほんの少しだけ空いたドアの隙間から、ウルウルと上気した目線を俺に向けてくる雪ノ下陽乃。
ほらな?
俺だけが傷つく世界の完成だ。
* * *
あれから1時間が経った。
1時間前から、奉仕部部室内の雰囲気、様子はほとんど変わっていない。あ、いや、さっき雪ノ下と由比ヶ浜が抱き合い始めて、雪ノ下が由比ヶ浜の胸に顔を埋め始めたくらいか。くすぐったそうに異常な目で喘ぐ由比ヶ浜がエロい。マジエロい。
色即是空、空即是色。
そんな、あまりの俗世の厳しさ、痛ましさ、理不尽さに、俺は出家して仏の道に入る事を真剣に考え始めた頃。
淀み切った部室に、勢いよく開いたドアの音を引き連れて、一迅の風が吹いた。
「ちょ……なにこれ……」
「か、かわさき……よく来たなっ……よく来てくれたっ!! まじ女神だわお前!!!!! 」
「へ、ふぇっ!? ちょっ、ひき、比企谷……手……そんな握られると……困る」
俺にとって無限にも感じられた魔界に外の光を見せてくれたのは、川なんとかさん……
いや、女神様にそれは失礼か。
川崎沙希。その人だった。
* * *
「ね、ねぇ……あの空気なんだったの? あんな、、殺伐とじゃなくて、、ドロっとした空気っていうか……雪ノ下の姉ちゃんもなんで部室の外でモジモジしながらアンタをのぞいてたわけ? 」
あれから、俺は逃げるように川崎を引き連れて、ららぽーと近くのコーヒー屋に来たわけだ。川崎は何故か途中から全く抵抗しなくなったが、俺にとってはそっちの方が楽なのでありがたい。まあ、部室に置いてきたあのモンスター達が追ってこないのも謎なのだが、とりあえず魔境から抜け出る事が出来ただけよしとしよう。
「ちょ、ちょっと、聞いてるの? 」
痺れを切らしたように、川崎は思考の渦に巻き込まれていた俺を呼んだようだ。俺は、やっと外の世界に思考を戻す。
「あ、ああ。悪いな。それでなんだっけ? 」
「いや全然聞いてないじゃん……ハァ……まあいいや」
「ああ……それにしても、悪いな。なんか依頼があって来たんだろ? 」
部室があんなことになっていなかったら、川崎の依に関して今頃行動に移せていたかもしれない。しかも俺一人でこのままでは依頼に当たるわけだから、完全にこっちの過失だ。川崎には少し申し訳ない気も出てくる。
テーブルを挟んで向かい側にいる川崎は、俺の言葉を聞いて、一気に顔を綻ばせた。
……そんな顔されると、ちょっと心臓に悪いんですけどね。
「ああ、、うん……でもいいの。どうせ依頼っていうか、言いたいことがあったのはアンタにだから」
「え、俺? ……ああ、けーちゃんとか大志関係か? 」
「ううん……いや、今回は違うよ……そうじゃなくて……ちょっとさ、絶対に誰かに見られたらいけないものを見て欲しいから、、、もうちょっと顔をこっちに近づけてもらってもいい? 」
「あ、ああ。まあ……仕事なら仕方がないが、、どんなやつなんだ? 絶対に見られたらいけないものって」
いやほんと何?
もしかして……小町とあの羽虫が……いや、小町は……まあ、アレだからそれはないか。八幡安心。
「……なに気持ち悪い笑い方してるのアンタ」
「っ……いや、悪い。こっちの話だ、とりあえず顔をそっちに近づけたらいいんだな? 」
「あっ……う、うん」
つい、俺は勢いに任せて、川崎の言うがままにしてしまったんだ。今思えば、俺はほんの少しでも警戒するべきだったのかもしれない。
え? 何故かって?
「えっと……川崎さん? なんで俺の顔を両手で固定したの? 」
前に座る形になっている川崎に、俺は言われるがまま顔を近づけた。すると、彼女は彼女の顔を俺のそれに近づけて、両手でガッチリと俺の側頭部をもって固定する。
「大事なものを見せるから、私の目を見て」
????????????????????????
いや、これはなんだ?
もしかして川崎さん中二病か? いやだ川崎さん一色さんとキャラ被ってるじゃないですか〜……なんて思っている間に、どんどん川崎の目からは光が失われていく。
そう、至近距離から見える川崎沙希の目からは……光が…どんどん失われていって……
「ねえ、比企谷……前さ、私に告白してくれたんじゃないの? まさか忘れたわけないよね? 私は一生忘れないよ? だってうれしかったんだもん。何であれから私に会いにきてくれなかったの? 私待ってたんだよ? まさか私の事は遊びだった訳じゃないよね? もちろん比企谷だって私のことを心から愛してくれてるから、文化祭の時の愛してるとか、この前の告白とかしてくれたんだよね……? 」
頭が離せない。側頭部を持つ彼女の力が強すぎる。
俺が危険を感じて頭をずらそうとすると、側頭部に川崎の爪がめり込まれて激痛が襲い、彼女の目がまた黒くなっていく。
「比企谷……私のこと、好きって言って? 私は好きだよ? 大好き」
「ま、待て川崎。他の人の目もあるんだから、な? お、おおおおおおお落ち着け、な? 」
「大丈夫だよ……カップルがイチャイチャしてるようにしか見えないから」
「ま、待て川崎。考え直せ、な? お前なんか疲れてるんだよ。今日はゆっくり寝たらいい。そうしたらまたスッキリして頭もクリアになるから、な!? 」
「……もう。私の質問に答えてよ……私はアンタが好き、だから前会った時に、比企谷が告白してくれて嬉しかった……アレからずっと待ってたんだよ?……だからね? また私に愛を囁いてほしいの……それとも、まだ私がどれだけ比企谷のこと好きか分からないの? だったら……」
川崎沙希は暗い目をしたまま、ほんの少しだけ顔を綻ばせ、至近距離で俺に熱い吐息と共に言う。
「私ね……比企谷のためなら、大志だって殺せるよ? 」
うっわ。
ヤバイ。
俺、言葉を間違えたら冗談でもなんでもなく死んでしまう。
雪ノ下雪乃からも、雪ノ下陽乃からも、由比ヶ浜結衣にも一色いろはでも比企谷小町からも感じることが出来なかった、純粋な命の危機。
ああ、あいつらはただのちょっと度が過ぎた変態だっただけなんだ。
だがな……俺は今確信した。
目の前のこいつは……変態ではない。だが……
本物の、ヤンデレだ。
「比企谷……どうしてなにも言ってくれないの? ……ああ、そっか。言葉じゃなくて行動でってことか。……じゃあ、このまま……」
川崎沙希は、徐々に俺に顔を近づけてきた。
綺麗に整った顔を喜色に染め、ほんの少しだけ口元を歪め、黒い目が近づいてくる。力が強すぎて一ミリたりとも顔を動かせる気がしない。
4.3.2.1.……
顔と顔の距離が、1センチをきった時。
その声は聞こえた。
「ダメ。八幡はあなたのものじゃない」
そこからは早かった。
その声の主が、近くにあったフォークでヤンデレ川崎の手を刺したのだろう。
真近にあったヤンデレの顔が苦痛に歪んだ後、素早く俺の顔から自らの手を離し、彼女はその声の主から距離をとろうとする。
「逃がさんよ、川崎……まかり間違ってそれに手を出されては、私たちも困るからな」
顔が解放された俺が最初に見ることができたのは、離れようと距離をとった川崎を逃すまいと、彼女の両手首をまとめて片手で捕まえた状態の大人の女性。薄くタバコの匂いがついた、見慣れた顔。
「……あの五人以外にも、こんなにやっかいなのがいたなんて。本当に私たちがいてよかった」
幼いながらも、記憶よりは大人びた声。俺のパートナーを思わせる黒髪ロングに、中学校の制服を着こなした華奢な体躯。おそらく、ヤンデレの手にフォークを突き刺したのは彼女なのだろう。
「……ひ、平塚先生に、ルミルミっ!! 」
「やあ、比企谷……ギリギリだったな」
「ルミルミじゃない、留美」
きっとこれからも、この時の2人ほど俺の人生の中で心から頼もしいと思った人はいないことだろう。
それほどまでに目の前の2人は、紛れもなくヒーローだった。
* * *
「ありがとうございます、、本当に、どんだけ礼を言っても足りないと言うか…… 」
あれから、俺は平塚先生の車の中に移動し、今は先生が恐らく俺の家まで運転してくれている。
「まったく、八幡はあぶなっかしい。……まああのヤンデレなら、私が遊んでおいたからしばらくは大丈夫だと思うけど」
ルミルミは車に揺られながら、そんなことを言ってきた。ただ、その言葉にまた疑問が生まれる。
「ああ、、だがな、留美。どうやってあいつを大人しくさせたんだ? 」
俺の疑問に、留美は欠伸をした後
「べつに、まだあの人はヤンデレが板についてないだけ。たまに意識が正常に戻る時があるから……あの人の弟妹への罪悪感を刺激しただけだよ。……まあそれがなかったら、私も本気で相手をしなくちゃだったけど」
あまり要領を得ないルミルミの返事に補足するように、平塚先生が運転しながら声を上げる。
「川崎はヤンデレと同時にブラコンでもありシスコンだからな。留美君は弟妹が第一であるべきという、ブラコンやシスコンの本能に働きかけるやり方をしたんだよ……まあ、いくら川崎のヤンデレの権能がまだ不完全だからとはいえ、あそこまで川崎にダメージを与えられたのは留美君の権能によるものだがね」
そう言って、平塚先生はハンドルを動かす。
「とりあえず、今日はもう帰りなさい。あとはこっちで上手くやっておくから」
そう言った後、平塚先生は車を止める。
俺の家の近くに着いたのだろう。
と、思ったのだが
「このアパート……どこですか? 」
全く知らない場所。知らないアパート。
俺の家とは全然違う場所に、純粋な疑問が生まれた。
その問いには、
「ここで、比企谷君は私たちとしばらく暮らすんだよ」
ちょうどアパートから、エプロンを装着した大学生くらいの女性が出てきた。相変わらず……ホンワカほんわかめぐりっしゅしている。
「城廻先輩……」
「ふふ……いっぱい疲れたよね? ちょっと早いかもだけどご飯も作ったんだっ! 一緒に食べよ? 」
一色いろはが俺の唯一の後輩なら、
対をなすであろう俺の唯一の先輩
城廻めぐり先輩が、俺の手を取ってアパートへとまた歩いて行く。その後ろから、平塚先生とルミルミがゆっくりと着いてきていた。
Ps・平塚先生はしっかり駐禁とられました。
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スキルまとめ
雪ノ下雪乃
・乙女ポエム
・ガチ百合
・ぷよぷよ
雪ノ下陽乃
・ド変態
・乙女
・ぷよぷよ
由比ヶ浜結衣
・悪魔的ドM
一色いろは
・中二病
比企谷小町
・ガチブラコン
川崎沙希
・ヤンデレ(不完全)←new
・メガブラコン←new
・メガシスコン←new
比企谷八幡
・⁇
鶴見留美←new
・⁇
平塚静←new
・⁇
城廻めぐり←new
・⁇