〈視点、由比ヶ浜結衣〉
やっはろー! みんな。由比ヶ浜結衣だよっ!
突然だけど、今私は小町ちゃんからGOサインが出て、ゆきのん家に突入したんだ。
そしたら何故か正座をしていたゆきのんと陽乃さんは、最初こそいきなり現れた私に目を丸くしていたけれど、次の瞬間には、この二人は同じタイミングで同じように目を厳しくしたんだ。
「……あなた、どういうつもりよ。由比ヶ浜さん」
「……ガハマちゃんはもっと色んなことが分かる子だと思ってたけど」
怖いなあ、もう。フフフっ……二人してオーラが危険だよ。
「どうして? 私はゆきのんと陽乃さん家に入っちゃダメなのかな? 」
酷いなあ。私二人に別に酷いことしてないのに。
「あなた、分かって言っているでしょう。……入ってくるなり特大の戦線布告をしてきたのだから」
「……そんな写真を見せられて、私たちが黙っていると思う? ガハマ」
「うふふ……ああ、これのことね」
どうやら、この姉妹は私の来訪に怒っているのではないみたいだった。この二人が機嫌を損ねる原因となったもの、それは二人がまだ目を丸くしていた時に、私が二人の目の前に何枚かバラ撒いた写真……
そう。私とヒッキーのツーショット写真。
私はここに来るまでに、小町ちゃんに頼んでヒッキーとヒッキーの部屋で二人きりにしてもらっていたんだ。バラ撒いた写真はその時に撮った物。
私がヒッキーに膝枕してる写真。
私が無理矢理ヒッキーの顔を私の胸に埋めている写真。
ヒッキーの頰に吸い付くようにチューした写真。
ヒッキーを押し倒した形の写真。
他にもたくさんあるけれど、とにかく私が持ってきた写真は、ゆきのんも陽乃さんも激怒しそうなものしかない。
「あ、でも大丈夫だよ? ヒッキーの口にはキスもしてないし、一戦も超えてないからさ。そこら辺は安心してね……うふふ」
肌を刺す殺気が凄まじい。肌が異次元の空間に反応し、今自分がヤバイ場所にいるのだと教えてくれる。
一見まずい状況。でもね……それでも……いいの。
だって、これこそが私が望んだ展開なんだから。
* * *
二人はユラユラと、陽炎のように、揺れるように立ち上がった。
その歩みはゆっくりだが、とんでもない圧力だ。きっといろはちゃんは、この迫り来る絶大なパワーに恐怖し、絶望したことだろう。
二人の目には、もはや私しか見えていないだろう。そしてただ私に鉄槌を下すことしか頭にないはずだ。
そんなことを考えていると、ゆきのんと陽乃さんが何か言葉を発しているのに気づく。
「由 ヶ さん」
比
浜
「ガ
ハ
マ」
ほら、キレすぎてこの世のものとは思えない発音になってる。なのにちゃんと意味がわかるところがすごいよね。
二人はゆっくりと、やっとと言うべきか、私を挟むように取り囲んだ。
うふふふふ……きた……とうとうきたよ……狙い通りだよ。
「由
さん。
比ヶ浜
謝るなら 今」
「謝 ガハマ」
れ
そう。これからが、これからこそが私が待ち望んでいたことだ。これの先のために、利害が一致しているとはいえわざわざ私は小町ちゃんやヒッキーに頑張って頼み込んだんだから。やっとこの時が来たことに心が躍る。
そんなことを思った瞬間に、ゆきのんの手が私の胸をものすごい力で鷲掴みにした。それなりの痛みが襲ってくる。
きっと、今までの私だったら痛みで泣いちゃっていただろう。
……だけど
「ハゥゥん!!!!!!!!!!!!!!!!!!! もっとやってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「へ? ゆ、由比ヶ浜さん? 」
「ふぁ? がが、ガハマちゃん? 」
二人から鬼気が消えた。
でも私はもう構えない。
……スイッチ入っちゃった♡
「ハァハァ……ねえ? 何でやめちゃうのゆきのん。もっと……もっとやってよ、、、痛いのしてっ!!!!! ああ、これから私はどうなっちゃうんだろう。ゆきのんと陽乃さんに一体どんな酷い目に遭わされちゃうんだろう! やっぱりもっと痛いのかな? それとも心にくる感じ? ああん一生のトラウマとか植え付けられちゃったらどうしよう⁇ あ、それともこれから私は雪ノ下家の奴隷になっちゃって、休む間も無くこき使われちゃうのかなぁ……ハァハァハァハァハァハァ」
ああ、つい大きい声を出しちゃったよ……
ああ、快感だ。ゆきのんに胸を力一杯握られた時、体中に電撃が走ったんだもん。……もっと……もっとだよ、、この痛みとか快感がクセになるの……
「もっと……もっとやってよ……この痛みと快感が……たまらないのぉぉぉ」
私はたまらず、私から離そうとしていたゆきのんの手をガッチリと握った。ヤダ、逃がさないんだから♡
「い、、いいいいいやいやいや離して由比ヶ浜さん」
ゆきのんの顔が心なしか青い気がする。さっきまでの威圧感も消えちゃった。……もう言葉責めはしてくれないのかなぁ。
「陽乃さんもぉ……蹴るなり殴るなり抓るなり……やって? ♡」
そう言って、私は陽乃さんの腕をガッチリと握った。
「い、いやいやいやガハマちゃんお願い落ち着いて離して!? ……って力つよっ!!!!! 」
いやだなぁ……私はこんなにも落ち着いているのに、
もう、私がこの時をどれだけ楽しみにしていたか……
「二人が悪いんだよ? ……私ね? ゆきのんと陽乃さんがお互いにお互いをえげつないやり方でやり返してたり、いろはちゃんを襲撃してたのを見て……目覚めちゃったみたい♡」
青い顔をして言葉を失う二人。
歯はガタガタ震えていた。さっきから私の質問に全く答えてくれない。
今の私の目はきっと血走っている。断言しちゃえる。
「あ、もしかしてこれって無視プレイかなぁ? ……あっなんだかそう考えるとゾクゾクしてきた……ほ、ほかに、もっとやってよ。でもまだまだ言葉責めも欲しいなぁ」
私はゆきのんと陽乃さんを力一杯抱きしめる。二人は顔を全力でそらそうとするが、離す訳がない。絶対に離さない。
そして、私はそのまま二人に密着するんだ。
「お願い……お願いします、由比ヶ浜さん元に戻って!!!!! 元の優しいあなたに戻って!!!!! 」
「ガハマちゃんごめんなさい私が悪かったからぁ!! 」
うふふふふふふふ
まだまだ、私は全然満足してないんだ。
だから言うよ。ゆきのん、陽乃さん。
「お願い……ふたりのほんき、見せて♡ もっともっともおっと……私をイジめて? 」
なぜか次の瞬間、二人の余裕のない絶叫が聞こえた。
* * *
〈視点、比企谷小町〉
もう、決着はついただろうか。
あの時、いろは先輩から盗聴器を抜き取ったあと、結衣さんから自身のドM化を相談されたのは、私たち比企谷兄妹からしたら不幸中の幸いだった。いろは先輩が蹂躙されているのを見ていた結衣さんはたしかに鼻息が荒かったけど……それにしても、自身のドM化を確認するためだけに、いろは先輩をダシに使ったのには未だに恐れを抱く。
あの状態の結衣さんはまさに天災だ。
何も残さないレベルで、通る場所全てを破壊していくんだから。結衣さんから、怒られたり罵倒されながらも雪ノ下夫妻からあの盗聴器もゲットしてきたと聞かされた時は、流石に冷や汗が止まらなかったよ。
だからこそ、あの破壊力だからこそ、あの姉妹もこれからは自分たちの黒歴史をそんなに気にしないで生きていけるだろう。
お兄ちゃんと相談して決めた、苦渋の選択。
全てを破壊する代わりに望んだ、あの姉妹のこれからの安寧。なによりも強烈なインパクトを与えることにより、これから冷静になった時に起きるかもしれない姉妹の関係の悪化や自分の黒歴史への後悔を防ぐ、正に荒療治。
ただ、そのための犠牲は計り知れないはずだ。
あの姉妹の心に深いトラウマを負わせるんだから。
私は、一度雪ノ下家の方角を向いて、小さく頭を下げた。
ーーーーーーーーーーーーーー
スキルまとめ
雪ノ下雪乃
・乙女ポエム
雪ノ下陽乃
・ド変態
・ぷよぷよ
由比ヶ浜結衣
・悪魔的ドM←new
一色いろは
・⁇
比企谷小町
・⁇
川崎沙希
・⁇
比企谷八幡
・⁇