「まあ……雪ノ下が、そういうわけなんで……ご協力願えないでしょうか……」
比企谷君が綺麗なお辞儀を私にしてきた。
前に私に辛く当たってきた手前、頼みづらかっただろうに。
それでも頑張ってこの時間に起きてきて、私を待っていてくれた。
いいの。これは雪乃ちゃんのためなんだよね? 彼の目には、今はまだ雪乃ちゃんしかいないんだと思う。
でも……いいの。
まず何より、こうして彼とまた会えて話せることが、この上なく嬉しくて、むずがゆくて、痛くて、でも幸せ。
だからね? あなたが喜んでくれるなら、私は喜んであなたの力になります♡
「うんっ! 私に任せて! 比企谷君!!!!! 」
* * *
あれから私は急いで自宅に帰り、シャワーを浴びて、とんでもない労力をかけながら史上最速で身だしなみを整えて、夢にまで見た比企谷君の家の前まで来ていた。
雪乃ちゃんが幸せ太りする原因になった、比企谷君ディープキス事件は、結構前のことだ。
あれから、実は私は雪乃ちゃんと会っていないの。
私があれから鍛錬の毎日だったのもあるけど、それからは雪乃ちゃんは比企谷君の家に泊まっていたからね。
……そんなこと、普段だったらお母さんもお父さんも絶対に許さないと思うんだけど、お母さんは相手が比企谷君だからという理由で、小町ちゃんによる定期報告をすることを条件で許していたらしい。
お父さんはもちろん猛反対だったみたいだけど、お母さんが脅して、雪乃ちゃんの上目遣いによる「父さん……ダメ? 」で撃沈したと聞いている。
だから、、、雪乃ちゃんが実際どの程度ヤバイことになっているか分からない。あの体中スレンダーな子が太ったと言われても、想像出来ないのが正直なところかな。
でも……私は頑張るもん。だって、彼に頼まれちゃったから……きゃっ♡
「えっと……大丈夫ですか? 、、陽乃さん」
「う、う、うんっ!! 」
「ええ、、なんでそんな離れるんですか……あと目も合わないし、俺の顔は地面にはないんですが」
「だ、だって……恥ずかしい……し」
無理して頑張って彼と目を合わせようとしたら、中途半端に上目遣いになってしまった。顔が熱いから、多分顔も真っ赤だろうし、目もウルウルしている。
そう、なんだか今日久々に彼に会えてから、私はどうしてもまともに目を合わせることが出来ないの。
今までみたいにしようとしても、湧き上がる恥ずかしさが私にそれを許さない。彼の近くにいるだけでこんなに幸せなのに、目を合わせて……手とか握っちゃったら……きゃあああああ……一体私どうなっちゃうんだろ。
「ぅっ……なんだよ反則だろ今の」
「えっ……どうしたの比企谷君」
「いや……べつに何でもないです。とりあえず、入ってください」
比企谷君は私から顔を背けて、家の中に入った。言われるままに私もお邪魔する。
う〜ん……いま、私なんかまずいことしちゃったかなぁ?
* * *
いたよ。うん。たしかに私の妹はいた。雪ノ下雪乃がいた。……でも、認めたくないのが正直なところだ。
「ねえさん……久しぶり」
「雪乃ちゃん……? もしかして、ゆきのデラックスとかに改名した? 」
私はいま小町ちゃんの部屋にいる訳だけど、その部屋の中には小町ちゃんだけじゃなくて、比企谷君もいる。
その総勢四人、雪乃ちゃんを除いた三人が、今の私の言葉に反応して思わず顔を雪乃ちゃんから背けた。
「っぷ……陽乃さん……実の妹にそれは……ふふ」
「こ、小町は大仏、小町は釈迦、っぶぷっ……色即是空……プハァッ! 」
「い、いや雪乃ちゃんちがっプハァっ……ごめ、お姉ちゃん何も言ってないからっ……ぶぶ」
そう。私はともかく、比企谷君と小町ちゃんすらも吹き出してしまうほどに、今の雪乃ちゃんは……ゆきのデラックスだったんだ。
「……あなたたち……」
キレたのかどうなのか、ゆきのデラックスは徐に立ち上がる。怒りのオーラは物凄い感じることが出来る……けど。
「「「ぶふぉっ!!!!!!!」」」
無理だった。
どうしても、今のゆきのデラックスが凄んでも面白いだけなのだ。三人とも、溢れる笑いを抑えることができなかった。
しばらく笑うと、ゆきのデラックスは拗ねてしまったのか、床に下を向くきながら座ってしまう。
「ご、ごめんね雪乃ちゃん……とりあえず、どうしてこうなっちゃったの? 」
出来るだけ優しく、私は小さい頃の雪乃ちゃんにしたように心がけて接する。絶対に笑わないことを固く心に誓いながら……ちょっと自信ないけど(笑)
「……ここに来てから……食べ物たべすぎたし……全く運動もしなくなったし……おやつ、、、お菓子を夜遅くにもたべてたし……」
雪乃ちゃんはたどたどしくも、ここに来てからの生活習慣を告白した。それを聞いて小町ちゃんが申し訳なさそうに私に付け加える。
「えっと、ごめんなさい……私がお菓子やら夜食やらを勧めてしまったばっかりに……まさかこの短期間でこんなことになるなんて」
「あー、いや、小町ちゃんは悪くないよ……多分、今までそんなことしてこなかったから、雪乃ちゃんは加減が分からなかったんだろうねえ……それで、最近の比企谷君関連の幸せ感に飲まれて自制できずにズルズルここまできてしまったと」
「……」
比企谷君は、片手で顔を抑えて何も言えないみたい。
まあ、そんな姿でさえキュンときちゃうのは秘密♡
「とりあえず雪乃ちゃん、お菓子をやめてさ、運動しよっか? 」
私が優しく雪乃ちゃんに言うと、雪乃ちゃんは涙目になって、こう言い返してきた。
「姉さん……私、もともと運動する体力なかったでしょう? ……こうなってしまってから、どうやらもっと体力がなくなってしまったみたいなの。……そんな自分に絶望して、、お菓子も一回やめてもまた手を出すようになって……」
それに続いて、目をゆっくり閉じながら、思い出すように小町ちゃんが言う。横の比企谷君も目を閉じていた。
「……今の雪乃さん、50メートルも走りきれないんです。」
「……はぁ……しかも帰り道、途中から俺がおぶって帰りました」
「ならばと思いお菓子を隠したら、持ち前の頭脳で隠し場所をすぐに探り当てて食べちゃってるし……」
「学年一位の頭脳の使い方マジ間違ってんだろ……」
どうやらこの兄妹は、私の知らないところで相当頑張ってくれていたみたいだ。その苦労が滲み出てきている。
想像以上だ。ヤバイ。いくらなんでもこれはヤバイ。我が妹ながらとんでもなく面倒な女だ。
さて、運動は出来ない。
そのせいでストレスから暴食も止まらない。
頭がいいせいか悪知恵が働く
あー詰んだね。
「陽乃さん、、、これどうにかなりませんか? もう正直小町たちにも限界で……」
「お願い、できませんか……」
比企谷兄妹の切実な願い。
相当苦労したのだろう。もう藁にもすがりたいという思いがよく分かる。
どうにかしてあげたいのは山々だ。
特に愛する比企谷君の頼みだし。
うーん……でも、今の雪乃ちゃんなら……無理矢理にでも走らせたりするしか手がない気がするんだよなぁ……でも、そんなことを今の雪乃デラックスにさせられるほどの要素なんて……どこに、、、も……
「ある」
「え? 何か手があるんですか? 」
「お、教えてくださいっ! 」
私が呟いた一言に、兄妹は助けを求めるように食いついてきた。
……でも、これは相当な危険を伴う。
だって、有り得ないくらいの恐怖を雪乃ちゃんに与えてしまうだろうから。
「……ねえ、二人とも……雪乃ちゃんにとっての、鬼になる覚悟はある? 」
* * *
3時間後。
「ハァハァ……姉さん……もう限界よ」
「雪乃ちゃん、まだ公園についたばっかりだよ? 」
近くの原っぱのある公園まで歩いてきただけでこの様子。 やっぱり今の雪乃ちゃんには荒治療が必要なんだね。
お姉ちゃん、辛いけど……心を鬼にするよ。
「小町ちゃん」
「はい……もうすぐ到着するそうです」
「……ほ、本当に、やるのか……」
神妙な顔つきをする小町ちゃんに、これからくるであろう惨劇に顔を青くする比企谷君。カッコいい。
私だってヤダよ。本当はこんなことしたくない。だってアレは取り扱いに細心の注意を払わなくちゃいけないしなにより……雪乃ちゃんのトラウマにならなきゃいいけど……
「やっはろ〜〜〜〜〜!!!!!!!!!! 」
来てしまった。
「なっ!? ゆ、ゆいがはまさんっ!! 」
驚く雪乃ちゃん。
当然だ。声のした方には、あのやっはろーの悪魔。空前絶後のドM。
前に私たちの戦意を根元から挫いた、ガハマちゃんがいるのだから。
「ゆきの〜ん、肥えたその体で私にこれから毎日すごいこと私にしてくれるって本当かな〜? ♡♡♡」
奴は恍惚の目をして、段々と、ゆっくり雪乃ちゃんに迫ってきた。そんなドMを見て、次に雪乃ちゃんは私を見る。
「ね、ねねねねえさんっ!! あなた、人の心はないのっ!? 」
私は雪乃ちゃんの問いには何も答えない。
その代わりに、雪乃ちゃんに背を向けて、一言だけ放つ。
「雪乃ちゃん……無事を祈ってる」
その直後。欲に塗れたドMと、恐怖から逃げるデラックスの運動会が始まった。
* * *
1週間後。比企谷家。
「ゆ、雪乃さん〜戻ったぁぁ!!!!! 」
「よかった、、本当に、よかったなっ!! 雪ノ下……」
ドMとの追いかけっこのお陰で、すっかり雪乃ちゃんは元通りのスレンダーな体型に戻ったみたい。
「雪乃ちゃん……ごめんね? 荒治療すぎた……よね? 」
私は雪乃ちゃんに謝罪する。
いくらこれしかなかったとはいえ、結構残虐な仕打ちをしたつもりだ。嫌われる覚悟はあった。
やはりというべきか、雪乃ちゃんはユラユラと私に近づいてくる。拳が飛んでくるのを覚悟して、私は目を瞑った。
「姉さん」
「えっ」
雪乃ちゃんに抱きしめられる。
何が起きたかわからない。
そんな私に、彼女は優しい声でこう言った。
「姉さんは、私を助けようとしてくれたのよね……ありがとう。私に、立ち向かうことの大切さを気づかせてくれて……私は、もう負けないから。気づいたの、私」
そうして、雪乃ちゃんは私から離れる。
ピンポーン
同時に比企谷家のインターフォンが鳴った。
「……雪乃さん……いいんですね」
「ええ、お願い。小町さん」
固い決意を秘めた、雪乃ちゃんの精悍な顔を見る。
やはり、何かが吹っ切れたようだ。今の雪乃ちゃんは強い。自分の意思をちゃんと持って、それをきちんと伝えられる人間だ。
そうして、小町ちゃんは来客にドアを開けにいく。
* * *
来客がリビングに来るまで、ほんの10秒程度だった。
「やっはろ〜♡♡♡」
予想だにしない来客に目が丸くなる私と比企谷君。
緊張した顔をした小町ちゃん。ヤバイ目をしたドM。
そして、精悍な顔を崩さない雪乃ちゃん。
どうする気なの……雪乃ちゃん。
奴はまともな精神じゃ、とても相手をできる存在じゃない。
私の心配をよそに、雪乃ちゃんはドMに歩いていく。
「えへへぇぇ……まさかゆきのんから呼び出してくれるだなんて……何をシて、私を悦ばせてくれるのかなぁ」
なんかドMがヤバイ目でヤバイこと言ってるのにも関わらず、雪乃ちゃんはドMの真正面に、抱きしめられる距離に立ち……
「由比ヶ浜さん。私、あなたに言わなきゃいけないことがあるの」
毅然と、言い放つ。
それは凛としていて、とても変態に屈するようには思えなくて……とても、美しかった。
そして……
「あなたが好きよ……結衣さん♡♡♡」
「んふぐぅっ!! 」
……ありのままを話すわね。
雪乃ちゃんがガハマちゃんを抱きしめて、そのまま押し倒して、ディープなキスをかました。
「っぷはぁっ!? ゆ、ゆゆゆゆゆきのんっ!? な、なにを?? 」
久しぶりに取り乱すガハマちゃん。
正常なガハマちゃんだ。由比ヶ浜さんだ。
そんな彼女を、目をハートにした私の妹は熱い視線で見つめて……
「わたしね……比企谷君のことが好き……でも、気づいたの。この1週間あなたと追いかけっこをして、やっと気づいたのよ。……わたしはね? 結衣さんのことも比企谷君と同じくらい……大好きだって♡♡♡」
またも、ガハマちゃんにゆっくりとにじり寄る雪乃ちゃん。
「ひぇっ……ちょ、ちょっと待ってゆきのん私そういう趣味はないんだけど……」
「うふふ……もう離さない……大好きよ結衣……私はもうあなたに夢中なの。だーいすき♡♡♡」
次の瞬間。私の脳内で百合の花が咲いた。
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スキルまとめ
雪ノ下雪乃
・乙女ポエム
・ガチ百合←new
・ぷよぷよ
雪ノ下陽乃
・ド変態
・乙女←new
・ぷよぷよ
由比ヶ浜結衣
・悪魔的ドM
一色いろは
・⁇
比企谷小町
・⁇
川崎沙希
・⁇
比企谷八幡
・⁇