校長の前で。
皆様は寝るときはバレないように寝ましょう!
知波単学園バンザイ(∩´∀`∩)
春
それは出会いの季節
それは新しい始まりの季節でもある
ここにも新しい出会いと新たなる物語の幕が上がろうとしていた。
学園艦
学園艦とは正確な時代は不明だが、ずっと昔、まだどの学校も陸の上にあったころに、来るべき国際化社会のために広い視野を持った人材を育成し、学生の自主独立精神を養い高度な学生自治を行うために、これからの教育は海上で行うべし、と唱えた人物がいたらしく、その人物が私費を投げ打って最初の学園艦を作ったらしい。
こうして作られた最初の学園艦は良好な結果を挙げたほか、様々な災害にも強いことが分かり、次々と学園艦が作られることになった。
その歴史は非常に古く「大航海時代から続く学園艦」や「400年の伝統を誇る学園艦」なんてものもあり、欧州では少なくともローマ時代には学園艦があったとカエサルが書き残しているとか。
他にも、海洋国家たるヴェネツィアは古くから学園艦があったらしく、同じく古くから学園艦があったイギリスが今のような学園艦を完成させたといわれている。
そんな古い歴史を持つ学園艦の一校である知波単学園。
その入学式がまさに始まろうとしていた。
「まさか三人全員が同じクラスとは、たまげたなぁ~」
「良かったね沙耶、孤立しなくて」
「だからそれはあんたら二人の事よ!」
教室で入学式が始まるのを待つ新入生の中でも堂々としている……と言うかうるさいぐらいに話をしている三人がいた。
身長と胸が同年代よりもある
可愛らしい顔の持ち主
中々鋭い目の持ち主でツッコミ担当
この三人がこの教室で誰よりも話していた!
「しかし学園艦は凄いな!本当に街が海の上にあるんだから!」
「陸が懐かしい……」
「陸から離れてまだ三日目よ、まったく二人とも子供じゃ無いんだから大きな声ではしゃがないでよ……恥ずかしい」
「何でだ?僕たちはまだ子供だぞ?」
「成人は二十歳から、沙耶はそれも分からない子だったんだ」
「そういう意味じゃないわよ!周り見なさいよ!この視線浴びても何にも感じないの!?」
沙耶の言う視線とはほぼ全方位から注がれる、『うわ、なんだコイツら関わらないでおこう』とか『田舎から出て来た世間知らずかな?』とか『テンションが高過ぎぃ!』などなどの視線のことである。
「だからどうした?僕は僕だ。僕がやりたいようにやって何が悪い?」
「然り、然り」
しかし当の本人達は何処の吹く風がごとく、一切気にしていなかった。
「むしろ自分を偽ってお淑やかにしてる方が失礼だろ」
「そこは今日ぐらいお淑やかにしなさい!」
「え~面倒臭い」
「そんなんじゃ友達出来ないわよ!」
「戦車道やるから大丈夫」
「いや、戦車道以外でも友達作りなさいよ……」
小中学生を通じて友達と呼べる人間が両手で数えきれる人数しかいなかった上総に対して説教臭く言う沙耶。
しかしその会話を聞いていたクラスメイトの反応は違った。
「あの、少々よろしいでしょうか?」
そう声をかけてきたのは長く美しい黒髪とスタイルの良い身体を持った少女だった。
突然の少女の登場に沙耶は『絶対何か言われる……初日から孤立するとか最悪だ……聖グロに転入しよう』と要らぬ決意をしていた。対して声をかけられた上総は笑顔でそれに応じた。
「何かな?もしかして貴方も戦車道やるのかな?」
「はい!その通りです!お三方が戦車道と言う言葉を発したのを耳にしまして……」
「なるほど、では今日からよろしく黒髪美少女!」
「び、美少女!?」
「おっとこれは失礼した。しかし名前知らないのでそう呼ばせてもらいました」
「あ、これは失礼いたしました!私は西絹代と申します!本日からよろしくお願いいたします!」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします」
見事な礼を披露する西に、上総と愛はこちらも見事な礼で答えた。
その光景を見せつけられている沙耶はと言うと
「…………」
たった一日で上総に同年代で自分と愛以外に会話する相手が出来たことに、脳の処理スピードが追いつけず停止していた。
「西さん、私のことは呼び捨てで良いし、堅苦しいしゃべり方じゃ無くても良いから、と言うか砕けて喋って、そっちの方が私の好みだから」
「好み?……かしこまりました!」
「あ~……うん、ありがとう西さん」
「ところで私はまだ貴女の名前を聞いていないんだが……」
「あれ?言ってなかった?それは失礼した。僕の名前は武者上総、これから三年間よろしく」
『ただ今より、入学式を挙行致します』
厳かな雰囲気と熱気が混ぜ込まれた空気が会場内には包まれていた。
そこに染みわたるようにアナウンスが流れた。
『新入生入場。新入生が入場いたしますので大きな拍手でお迎えください』
ゲートが開かれ新入生が入場を開始すると同時に、在学生、教員そして保護者達が拍手を開始した。
「いやはや……中学校とはえらい違いだな……」
「流石は学園艦」
「…………」
「おや?沙耶の様子がおかしいぞ?」
「おそらく緊張している」
「意外と言えば意外だねぇ~」
未だにショックから立ち直れていない沙耶は上総と愛の会話が右から左へそのまま流れている状態であった。
用意された席に教員の指示通りに座り、各々が学校長、来賓代表、在校生代表などから言葉を贈られる。
多くの者が真剣な表情で耳を傾けていたが、ある者はあくびを噛みしめ、ある者は目を閉じ、ある者はボーっと眺めているなどしていた。
ちなみに上総も愛も沙耶も真面目に聞いている。
こういう時は空気を読む上総と愛である。
長い長い有りがたーいお話しが佳境に入る頃には、上総も愛も重いまぶたを上げることに全力を尽くしていた。
一時間以上座りっぱなしで何の面白も無い話を聴き続けていれば睡魔も襲ってくるであろう。
二人以外にもちらほらと似たような子が、その中には頭で船をこぐ子もいる。
そして何事も無く入学式の全工程が終わった。
教室に戻ると明日以降の予定と必要な物が伝えられ解散となった。
「やっと終わった……」
「座りつかれた……」
疲れ切った顔の上総と愛が呟く。
「疲れたのは分かるけどそんなにぐったりしないでよ……だらしない」
「うるさ~い……沙耶だってあくびしそうになってたじゃん」
「仕方が無いでしょ、眠かったんだから」
何の悪びれることなく言い返す沙耶に、内心ツッコミを入れつつ重い身体を立ち上がらせた。
上総が立ったことで二人も察したのか、各々帰る準備を行った。
帰るとなれば学校という名の牢獄(笑)から離脱する為に、迅速に貰ったプリントをできるだけ綺麗にカバンの中に突っ込んでいき、二分も掛からずに準備を終えた。
「よし帰ろう!」
「帰ろう」
「ホント、切り替え速いわね……」
「褒めるなよ、照れるぜ」
顔引きつらせながら上総に皮肉を浴びせようとした沙耶だが、周りにまだ人が居るのでぐっとこらえて、さっさと教室の外へ出て行ってしまった。
「……沙耶も早く帰りたかったんだ」
「みたい」
まるで見当違いなことを考えていた二人であった。
その後、上総と愛は沙耶に追いつき仲良く三人で自分たちの寝床へ向かった。
「じゃ、私はこっちだから」
「じゃあねぇ、また明日!」
「また明日」
「寝坊するんじゃないわよ?特に上総、アンタ二度寝しやすいんだから、一回起きたら寝るんじゃないわよ」
「いや、目覚まし掛けるから大丈夫だからそんなに心配しなくてもいいから」
疑いの目を向けながら沙耶は、自分が借りた部屋があるアパートへと入っていった。
残された二人も自分たちの寝床に歩みを進める。
沙耶と別れて十分ほどで寝床であるマンションへ着いた。
「じゃあ、また明日」
「また明日」
上総と愛がそれぞれ別れ自分たちの部屋に入っていた。
あっという間に夜となり、明日の準備をして横になっていた。
照明が消されてカーテンの隙間から僅かに光が差し込んでいる。
上総は、天井をジッと見つめていた。
「早くやりたいな……戦車に乗りたいなぁ……」
そう呟きながら、目を閉じた。
知波単学園生としての初日はこうして幕を下ろした。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
感想など頂けたら大変嬉しいです。
最近寒くなり雪も降り始めてきました。皆様もお体に気をつけてお過ごし下さい。
ガルパンはイイゾォ!