エミヤさんの異世界転移   作:夕叢白

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欠点と七海麻美

次の日、一ノ瀬千鶴との話し合いの結果。毎週、水曜日の一時間だけ水原千鶴のレンタルを本人に許可された和也は自室の布団の中で元彼女である七海麻美の写真を見ながら過去の幸せな記憶に浸っていた。

 

「あぁ...麻美ちゃん...。」

 

彼自身、最近は身の回りで様々な問題が発生していた為に感じる事はなかったが、麻美に対する未練は未だ消えず、心に傷として残っている。

 

自分の何が振られる原因を作ってしまったのだろうか、当時は多少なりとも有頂天になっている自覚はあったが、まさか健全な男子のそんな反応如きで見限られたとは思えない。和也とて、人を見る目はある。七海麻美がそこまで心の狭い人間ではない事くらい、彼だって把握していた。

 

ならば、やはり麻美の言っていた通り、ただ単純に自分と言う存在が霞む程の運命()に出会ってしまったのだろうか。

 

そう今更ながら過ぎた出来事に頭を悩ませていた彼は気怠けに布団から体を起こすと、テーブルの上に置かれているラップのかかった和食に目を移す。

 

「あれ...ご飯...?そう言えば、衛宮さんは...。」

 

和食を用意したであろう張本人が部屋の中にいない。恐らく、自分が目覚める前に何処かへ出掛けたのだろう。漠然とそう結論付けた和也は和食の横に一枚の書き置きがある事に気が付き、それを手に取る。

 

「何何、図書館に行く、夕方には帰る......と。」

 

あの人らしい書き置きだ、と苦笑いする和也。

 

「そう言えば...俺ってあの人の事まだ全然知らないよな。...いや、俺が知ろうとしなかった...のか。」

 

思えば、機会は幾らでもあった。彼がこの部屋への滞在許可を求めてきた日、彼への服を買ってきた日、彼に自分なりの答えを出した日。結局、どの機会もふいにして自分の事ばかりで、相手を知ろうとしなかった。

 

「だから、麻美ちゃんは他の人を好きになったのかもしんねぇな。」

 

エミヤを切っ掛けに自らの欠点を見出した和也は、改善へ向けての道を頭の中で思い描く。その傍らで、テレビに映っているニュースキャスターの男性が不穏な気配を含んだ事故について読み上げているのを、彼は気が付かなかった。

 

『次のニュースです、都内の各地で原因不明のガス漏れ事故が多発しており────』

 

 

 

一時間後、大学の構内で参考書に目を通しながら歩いていた和也は件の彼女、七海麻美と偶然にも顔を合わせていた。

 

「ハロー、和くん。」

 

「ま、麻美ちゃん...。」

 

シャイニーブロンドの髪色にウェーブのかかったショートボブ、間近で見れば見る程に虜にされてしまいそうな貌はまるで小悪魔。

 

「(何気に別れて以来...近くで見るとやっぱすげぇ可愛いな。目もくりんとして、髪もふわふわで...ってその前に聞け、俺!何でSNSブロックしてんの?って、聞けっ!)」

 

「ふふっ、どうしたの?和くん、ぼ〜っとして、参考書落ちてるよ。...はいっ。」

 

いつの間にか落ちていた参考書を拾い、和也へと手渡した麻美は手を振りながら直ぐにその場を去って行く。

 

頭に思い浮かべていた人物と鉢合わせてしまった衝撃で未だに硬直した状態の和也の後ろでは、木部芳秋と栗林駿が面白可笑しそうに友人の様子を観察していた。

 

「お巡りさ〜ん、朝っぱらから元カノの体を視姦してる人がいまーす。」

 

「確かに麻美ちゃん良い女だもんなぁ。」

 

木部に続き栗林が口を開き、硬直中の和也の肩に悪戯っぽく手を這わせる。

 

「女子力高いし、あのルックスだもんな。ちょっと軽そうな所もグッジョブだし...何より、ベッドの上でも尽くしてくれそうだしなぁ?」

 

「だあぁぁぁっ!?少し黙れ、お前らっ!」

 

「...やれやれ、とにかく...幼馴染として悪い事は言わねぇ。麻美ちゃんの事は忘れろ、お前には高嶺の花だよ。」

 

木部にそう釘を刺され、返す言葉すら浮かばない和也は黙って俯くしかなかった。

 

 

 

大学内、七海麻美の連れである二人は数分前に会った木ノ下和也について談笑していた。

 

「麻美、さっきの元カレでしょ?」

 

「まだあんたに未練あるっぽいねぇ。」

 

「何か目怖かったよぉー。」

 

 

 

「あっそう。」

 

 

 

「あっそうって...罪な女だね〜。」

 

「ほ〜んと、他人事みたい。」

 

「ちょっと彼に同情しちゃうな〜。」

 

 

 

「あっそう。」

 

吐き捨てるかのように強く一言を口にした彼女、七海麻美の顔は和也と顔を合わせていた時とは打って変わり、どこまでも冷たい無表情だった。

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