唐突だが、遠坂凛という才女をご存知だろうか。彼女は冬木の第五次聖杯戦争にて、アーチャーのサーヴァントである英霊エミヤを召喚、彼と共に死線をくぐり抜けた一流の魔術師だ。しかし、そんな彼女にも魔術師として致命的な唯一の欠点があった。
『うっかり癖』である。
時刻は十八時を回り、テレビでは人気番組の放送が始まる時間帯、つまりゴールデンタイム。今、木ノ下和也の暮らす部屋ではエミヤと和也がテーブルを挟んで向かい合い、自宅会議を行っていた。内容は勿論、エミヤこと衛宮士郎の長期滞在について。
「あの言葉から予想はしてたんですけど、本当に住む場所もお金もないと...。」
「ああ、言葉も無い。もし君が滞在を許してくれるのであれば...生活の基盤が整い次第、相応の金銭は用意するつもりだ。」
「え...?あ...あぁ...。なら、まぁ...昨日も言いましたけど、何日でもいて大丈夫っすよ。」
あっさりと許可を出した和也だが、その内心では逡巡の感情が渦を巻いていた。家族への説明をどうするべきか、本当に自分が他人と暮らせるのか。今の今まで気楽な一人暮らしを送っていた彼にとっては尽きない不安である。和也自身、ルームシェアに魅力を感じているのは確かだが、ありのままを言えば、断りたい気持ちの方が強い。
しかし、昨日の時点で既に許可は出してしまっており、今更前言撤回を申し出るのは和也の心情的にも躊躇われる。視線を床に落として沈黙する和也の葛藤を機敏に察知したエミヤは、その顔に似つかわしくない柔らかな笑みを浮かべて言った。
「嫌なら、断ってくれて構わないが...?」
「あっ...いや、そういう訳じゃ...!」
しどろもどろになりながらも、必死に否定しようとする和也。彼の様子を見たエミヤはこれ以上の会話は不要とばかりに、和也へ向けて折衷案を提言した。それは明日までに和也の答えが出なかった場合、エミヤが去るというもの。勝手に話を進められた事に多少の不満はある和也だったが、改めて考える時間を用意してくれたエミヤには感謝こそすれど文句を言う気にはなれなかった。
そして自宅会議も一段落がつき、何気なしにエミヤが立ち上がった瞬間、木ノ下和也は素っ頓狂な声を上げながら、目を見開いた。理由は単純、目の前に立つ衛宮士郎の異質さに気付いてしまったからだった。最初にエミヤを発見した時こそ、レンタル彼女の件や日本では珍しい彼の容姿に気を取られて怪しむ事すら忘れていた残念な彼だが、流石に何度も視界に赤色が映り込めば、エミヤの服装に意識を向ける他はなかった。
「えっと、衛宮...さん?な、何ですかね...その格好。」
「ん、何?格好.........。」
エミヤは一度、自身の姿と和也の服装を見比べると硬直する。言わずもがな、エミヤも他の事に気が回り、失念していたのである。赤い外套を身に纏ったその服装が、この世界でいかに怪しげであるかを。彼は頭の中で失笑するしかなかった。まさか自分があの
「衛宮さん、コスプレイヤーなんすか...?」
「いいや、断じて違う。」
二人の共同生活は前途多難のようだ。