超次元ゲイムネプテューヌTHE AMINATION ~別次元からやって来た2人の女神~ 作:玄武の使者
「別次元の女神」
無数に存在する次元世界の中に〈ゲイムギョウ界〉と呼ばれる世界が存在する。
〈極次元ゲイムギョウ界〉から遠く離れたその世界では、同じように4つの国家と4人の女神が存在している。
4つの国はクーデリアやディオーネの出身世界と同じように国力の源であるシェアエナジーを巡って争っている。
その4つの国の中でも一番優れた技術を持つ紫の大地―――プラネテューヌ。
紫の女神、パープルハートが守護を司るその国の中心にはプラネタワーと呼ばれるシンボルが聳えている。
プラネタワーはプラネテューヌの象徴であると同時に女神を祀る教会としての一面も持っているので一般人はそう簡単に入ることができない建物だ。
その建物の頂上、許可されても立ち入ろうとしないような場所に1人の少女が腰かけていた。
外側に跳ねた薄い紫色のショートヘアーにアメジストを彷彿させるように瞳。
着ている衣装は独特で白と紫を基調にしたパーカーワンピと呼ばれるパーカーとワンピースを合体させた物。
小学生に見える少女は満天の星が煌めく夜空の下で何故かプリンを美味しそうに食べていた。
「うまうま♪ やっぱりコンパの作るプリンはさいっこうだね♪」
あっという間にガラスの容器に入ったプリンを平らげると、少女は2つ目のプリンへと手を伸ばそうとする。
しかし、少女の柔らかい手は空を切って、プリンを掴むことはなかった。
「しまった・・・・・・。いーすんに見つかって、一個しか持って来なかったんだ。」
持って来たプリンが尽きてしまった少女は固い鉄製の床に寝転がる。
落ちてしまえば、絶対に助からないような高所で命綱もないのに少女は至って平然としていた。
「友好条約の調印式まで5日か・・・・・・。それまで暇だなぁ」
雲1つない星空を見上げながら暇を持て余した少女は呟く。
その時、一筋の真っ白な流星が彼女の瞳に映った。
「わぁ・・・おっきな流星。あれ? でも、大きすぎるような・・・・・・」
ガバッ!! と急に身体を起こして真っ白な流星を見つめる。
少女の言う通り、夜を切り裂くような流星は燃え尽きるどころか、どんどん大きくなってプラネテューヌに向かってくる。
そして、ドーンッ!!という音と同時にその流れ星はプラネテューヌの郊外に墜落した。
「ねぷぅぅ!! ビックリしたぁ。隕石が落ちるなんて久しぶりだね」
少女は立ち上がって、隕石が落ちたと思われる場所を見つめる。
もう深夜手前ということもあって、どれくらいの大きさの隕石が落ちたのかは分からない。
落下地点にクレーターができていないことを考えると、それほど大きい隕石が落ちた訳ではないようだ。
「う~ん・・・めんどくさいけど、無視する訳にはいかないよね。調印式間近に何かあったら困るし。」
刹那、少女は大きくジャンプしてプラネタワーから飛び降りる。当然ながら命綱はない。
このままでは地面と衝突する羽目になるのだが、落下途中で眩い光が少女を包み込んだかと思うと、少女は立派な女性に変身していた。
背中に翼と思われるモノを展開した彼女は隕石の落下地点に向かって飛んでいった。
少女の名前はネプテューヌ。プラネテューヌの守護を任された正真正銘の女神――パープルハートである。
――――プラネテューヌ校外――――
「結構、大きな小惑星がぶつかったのね。」
〈エグゼアーク〉の推進機関の様子を見に来たアメジストハートは思わず頭を抱えた。
方舟のスラスターは装甲が大きくへっこんでしまったために内部機関が圧迫されて破損していた。
破損した箇所からは青白い火花が散っており、そう簡単には修復できそうにもない。
「自己修復機能は搭載されてるけど、どれくらい時間が掛るかは見当もつかないわね。」
〈エグゼアーク〉には自己修復機能が備わっているので放置していても推進機関と浮遊機関は修復される。
しかし、そんなに艦体を瞬時に修復できるほど高性能ではないので再び飛べるようになるまでどれくらい掛るは不明だ。
『クーデリアさん!! 聞こえますか!?』
右耳に装着したインカムからイストワールの声が響いてくる。
「どうかしたの、イストワール」
『こちらに物凄い早さで向かってくる生体反応をキャッチしました。確認をお願いできますか?』
「分かったわ。」
アメジストハートは何処からともなく刃渡り50㎝程度の双剣を取り出す。
何処か機械的な二振りの剣を握りしめると、6枚の翼を広げて星空を飛翔する。
(こっちに向かってるのが現地の人なら、助かるけど・・・・・)
そんなことを考えながらイストワールに指示された方向に向かって飛翔する。
そして、あまり時間の経たない内にアメジストハートは街の方角から飛んでくる紫の光を見つけた。
アメジストハートはその場に立ち止まると、愛用の双剣を構えて光の発生源を警戒する。
(あれは・・・・・・人? それにあの瞳、私たち女神と同じモノ)
紫色の光の正体はレオタードを身に纏った整った体型の女性だ。
その瞳にはアメジストハートと同じ文様が浮かんでおり、見た目の年はそう変わらなく見える。
彼女もアメジストハートの存在に気付いたのか、その場に立ち止まる。
(さっきまではおぼろげだったけど、今ははっきりと感じる。失って久しい暖かいシェアエナジーを・・・・・・)
お互いの姿が視認できるほどの距離まで近づいて、アメジストハートは確信した。
目の前に居る女性は自分やディオーネと同じ女神である、と。
相手も驚いたような表情を浮かべている所を見ると、アメジストハートが女神であると察したようだ。
「貴女も、女神なの?」
「ええ。プラネタリアの女神、アメジストハート。それが私の名よ。」
「プラネタリア? 聞いたことがない国ね。」
「聞いたことがなくて当然よ。私は別次元よりやって来た女神なのだから。」
「別次元?」
アメジストハートに首を傾げる女神――パープルハート。
「そうね・・・簡単にいえば、異世界よ。こっちに来たのは単なる偶然だから、この世界で悪さをするつもりはないわ。」
「・・・・・・本当みたいね。」
パープルハートは剣を下ろす。
あっさりと信じてくれたことにアメジストハートは少なからず驚いた。
「意外とあっさり信じてくれるのね。」
「これでも人を見る目はあるの。貴女は嘘をつくように見えないわ。」
「ありがとう。えっと・・・・・・・」
「パープルハートよ。此処、プラネテューヌの女神をしているわ。」
「パープルハート、ね。もしかしなくても、貴女が出てきたのはついさっき墜落した物を調べるためかしら?」
「ええ、そうよ。よく分かったわね。」
「分かるわよ。だって、墜落したのは私が使ってた異世界を渡る船だから。」
「あら、そうだったのね。てっきり隕石が落ちてきたのかと思ったわ。」
「騒がしてしまったようでごめんなさい。」
アメジストハートは頭を下げる。
「それで、騒ぎを張本人が起こした私が言うのもなんだけど、続きは明日にしないかしら?」
「そうね。私もいーすんに何も言わずに出てきたから。」
「決まりね。明日、こっちから出向くわ。」
「分かったわ。それなら、あそこに見えるタワーの所に来て頂戴。迎えを送っておくから。」
「ええ。」
アメジストハートは6枚の翼を羽ばたかせて〈エグゼアーク〉の方へと戻っていった。
その後、パープルハートもプラネタワーの方に帰って行った。
(やれやれ。目立つことをするつもりはなかったけど、予想外だわ。)
パープルハートと別れたアメジストハートは心の中で呟いた。
当初の予定では〈エグゼアーク〉は衛星軌道上に待機して、備え付けの転送ポートを使って穏便に目的を達成する筈だった。
しかし、予定になかった小惑星の衝突のせいでその予定は全面的に修正せざるを得ない状況に陥ってしまった。
(それにしても、あの女神から感じたシェアエナジー、懐かしいな。ちょっと嫉妬しちゃう)
アメジストハートとパープルハートが纏うシェアエナジーは同質のモノである。
しかし、完全に同じモノではなく、パープルハートのソレは人々の思いが込められたモノ。
極次元ゲイムギョウ界の女神である彼女は少し前に失ってしまった純粋な信仰の力である。
争いの根源であったシェアエナジーを人為的に生み出すことが出来ても、それには人々の思いなど宿っていない。
(っと、ディオーネとイストワールに明日の会談のこと、話しておかないと)
アメジストハートは6枚の翼を羽ばたかせて、〈エグゼアーク〉に戻っていった。