さぁ!! 存分に助けを求めるんだ!!(しかし救われない
(助けて真乃……めぐる……)
風野灯織は困っていた。イルミネーションスターズとして同じ事務所のアイドルグループと一緒にテレビに出て、今は楽屋にいる。
テレビで何か問題が起きたか?
いやいや、346が誇る京都の最終兵器アイドルのクソ無茶ぶりはあったが、一緒に出演していた同じ事務所のアイドルグループがどうにかしれくれた。
それだったら無茶ぶりに反応できなかったこと?
いやいや、それはプロデューサーが「あの無茶ぶりに反応できるのは芸人さんだけ」という太鼓判つきだ。
だったら何が問題なのか?
「やは~、テレビ局だから期待していたのにおかしざんね~ん」
「ぴゃ!! そ、そんなこと言っちゃダメだよ雛菜ちゃん!!」
(ものすごくいずらい!! 助けて真乃、めぐる!!)
そう!! 今日のイルミネーションスターズはノクチルと一緒に出演だったのだ!!
プロデューサーの予定ではイルミネーションスターズのバーターとしてノクチルを出すつもりだったのだが、ノクチルがその存在感の濃さを出してしまって共演していた芸人から「あんな芸人殺しのアイドルグループがいるか!」と怒られるレベルでノクチルは暴れ回ってしまったのだ。
そのためにプロデューサーは土下座行脚、イルミネーションスターズの他の二人は用事があって席を外しており、ひおりんは一人でノクチルの中に取り残されるという地獄を体験していた。
しかし!! いい子なひおりんは一味違う!!
(いいえ、きっとノクチルの皆さんも初めてのテレビ出演で緊張していたはず……!! 先輩である私がそのケアをしてあげないと!!)
使命感に燃えるひおりん。しかし当のノクチルは初のテレビ出演で大御所相手に完全正論なダメ出しをするという暴挙をしている。
「あ、あの!!」
ひおりんの言葉にノクチルの視線がひおりんに集まる。
事務所において孤立はしていないが、その独特すぎる空気感とキチガイな言動で完全に浮いているノクチルである。それを相手にするにはひおりんのレベルは低い。
だが、ひおりんは先輩であるという義務感でキチガイ達に挑む!!
「きょ、今日の塩見周子さんの無茶ぶりでやったラップ上手でしたね。れ、練習していたんですが?」
そうなのだ。346が誇るキチガイアイドルがイルミネーションスターズとノクチルに対して「よぅし!! 事務所対抗ラップ対決だ!!」とか言い出して急遽ラップ対決に持ち込まれたのだ。
慌てることしかできないイルミネーションスターズと違って、ノクチルは即座にラップ(四人ハーモニー)で対抗してみせたのだ。
ひおりんの言葉にノクチルメンバーは少し考える。
「練習……はとくにしてないかな」
「? それだったら有名な曲だったりとか?」
ひおりんは聞いたことがない曲であったが、実は有名な曲の可能性もある。
透は首を傾げながら口を開く。
「確かに日本人だったら一回は聞いたことあるかもしれないね」
「え!?」
透の言葉にひおりんは驚く。だってひおりんはその曲を聞いたことがなかったからだ。
「じゃ、じゃあ原曲があってそれを日本語にしたとか?」
「「「「原曲……」」」」
ひおりんの言葉にノクチル全員が黙り込む。
焦るひおりん、聞いてはまずいことかと思ったからだ。
すると視線で会話していたノクチルメンバーの中から円香がすすみでる
「風野さん」
「な、なに?」
「私達がやったのは般若心経の現代語訳です」
「……はんにゃしんきょう」
「般若心経」
「……南無阿弥陀仏?」
「ぴゃ!! それは宗派によって違いますから!!」
ひおりんの言葉に焦ったように突っ込んでくる小動物がいるが、ひおりんの心境はそれどころではない。
(全国区のテレビで即興で般若心経の現代語訳を歌うってどういうこと!? 助けて、真乃、めぐる!!)
たぶん二人がいても助けてくれないだろうが、ひおりんは心の中で必死に叫ぶ。
そして絶句していたひおりんは絞り出すように口を開く。
「そ、そっか……すごいね……」
「やった。褒められたよ、樋口」
「やは~、突然透先輩が般若心経(現代語訳)をやり始めた時はどうなるかと思ったけど、成功して良かったね~」
「よくないから、たぶんネタが通じる人達にはドン引き案件だから」
「乗っちゃった円香ちゃんが言えることじゃないよ……」
ノクチルの中で完全にお前が言うなのブーメランが飛び交ったが、ひおりんは気にする余裕がない。
「でも~、イルミネのみんなも無茶ぶりに慣れてないんだね~」
「こふ」
雛菜のさりげない言葉にひおりんの心にクリティカルヒット。確かにひおりんはアドリブに弱いが、めぐるはそうでもない。
今日の無茶ぶりレベルがひどすぎたのだ。
だが、キチガイの凡人の気持ちなどわからない。とてもいいことをするかのように透が口を開いた。
「それじゃあこれから亮介から送られてきた『作麼生』に『説破』って答えるから、来る問題を風野さんに答えてもらおう」
「待って」
ノクチルメンバーは当然のように理解していたが、ひおりんには聞いたことがない単語があったので口を挟む。
「『作麼生』と『説破』ってなんですか?」
「「「「え?」」」」
「え?」
ノクチルの『何言ってんだこいつ』的表情にひおりんは自分の勉強不足かと思う。
だが、安心して欲しい。普通の女子高生は仏教用語に詳しくなくて当然なのだ。つまり理解しているノクチルがおかしい。
そして透はひおりんの質問を無視してきたであろう言葉を読み上げる。
「『SEXとはなんぞや』」
「セッ!?」
透の平然とした表情から繰り出された言葉にひおりんの顔が真っ赤になる。
だが、ノクチルメンバーの顔は真剣だ。
雛菜が真剣な表情で口を開く。
「亮介先輩の分際で深い質問をするね~」
「!?」
「一般的な回答なら生殖活動になるかと思うけど……」
「!?」
当然のように議論を始めた小糸を『マジかこいつ』的表情で思わず見てしまうひおりん。
しかしノクチルは止まらない。小糸の意見に待ったをかけたのは透だ。
「でも最近はいわゆる避妊用具を使ってすることが一般的だよ? 一概に生殖活動のためとは言えないんじゃない?」
「!?」
「でも浅倉。セックスとは本来は生殖活動のはず。確かに最近は快楽のためにセックスをする人も多いけど、生殖活動が原点なのは忘れちゃいけないと思う」
「!?」
円香の言葉に顔がこれ以上ないくらい真っ赤になるひおりん。
そこからしばらくはノクチルメンバーによる喧々諤々の議論が交わされる。何故セックスの話からギリシャ神話の話題にまで発展するのかはひおりんは理解できなかった。
そして意見が出尽くしたのか全員の視線がひおりんに集中する。
「「「「さぁ!! 貴女の見解やいかに!!」」」」
なんていうか返答の拒否は許されない空気になっていた。
顔を真っ赤にしながらもひおりんは頭をフル回転させて答えにたどり着く。
「お」
「「「「お?」」」」
「おしべとめしべのドッキング……」
もう最後のほうはひおりんの声が聞こえるか聞こえないくらいか細かった。
だが、ノクチル的にその答えはありだったらしい。
「そっか~、アイドル的にはそれでいいんだ~」
「私達は難しく考えすぎたのかな?」
「で、でも。大事なことだよ!!」
「小糸はセックス問答はアイドル的に必要だと思う」
円香の言葉にノクチルメンバーから笑いが出る。それを見て安堵のため息をつくひおりん。
(よかった。うまくコミュニケーションがとれたみたい)
「それじゃあ第二問」
(続くの!? 助けて!! 真乃!! めぐる!!)
当然のように助けはない。
風野ひおりん
今回の被害者。ノクチルメンバーに真面目に接しようとする勇者。しかし圧倒的にレベルが足りない
ノクチル
やっぱり周囲から浮いているノクチル。原作と違うのは排他的なわけではなく、そのキチガイぶりから敬遠されているという点。芸人から芸人殺しと呼ばれる恐怖の集団
プロダクション対抗ラップバトル
般若心経(現代語訳)283プロVS厨二ポエム(あすらん特製)346プロ
作麼生、説破
仏教用語にも詳しいなんてノクチルったら博学~(なお知識を植え付けたのは亮介くん)
そんな感じで久しぶりに更新です。
今回の犠牲者は風野灯織ことひおりん。ひおりんに「助けて、真乃、めぐる」と言わせたいばかりにこの話を書きました。
そしてテレビで般若心経(現代語訳)をラップにして披露するノクチル。
大丈夫? 頭の病気だよ?