聖陵学院野球部の入部者は全員で11名。
俊哉、隆彦、山本、望月、明輝弘、青木の他に一年生は他に5名いる。
坊主頭でやや褐色肌が特徴の長尾雅信《ながおまさのぶ》。
短髪ながらツンツン頭で低い身長ながらも良い体格が特徴の鈴木康廣《すずきやすひろ》。
身長は明輝弘とほとんど変わらずだが少々線の細い色白の優男風の内田浩輔《うちだこうすけ》。
身長は俊哉らとほとんど変わらず160センチ後半で髪の毛は少し眺めで少し暗めな表情の池田聡太《いけだそうた》。
そして最後は身長は160センチ後半で体格が良く、太めの眉毛が特徴の堀義隆《ほりよしたか》の5人がその他の新入部員である。
因みにこのメンバーの中で、隆彦が誘って連れてきた選手は長尾雅信、堀義隆、池田聡太と山本、俊哉の5人とまさかの人数不足になりそうという状況であった。
望月等がいたから良いものの、彼らがいなかったら人数が足らずと言う状態になっていた恐れがあったが、隆彦曰く「まぁ揃ったから良いじゃん。結果オーライ」との事である。
因みに他のメンバーはと言うと、鈴木康廣は県外の神奈川から来た生徒で野球経験は中学ではやっていたがチーム自体も弱小チームで本人もまともに練習してなかったという事である。
そしてもう一人の内田浩輔はと言うと、野球経験は無い素人で体育でソフトボールくらいしかやった事が無いのである。
この新入生11名と二年生の早川悠斗と桑野慶介の二人を含めた13人が今年の野球部メンバーである。
そして監督は春瀬京壹。
彼は正直今年もこれからも期待はしていなかった。
ここ数年でも入部はろくになく入部しても9人に満たないなど部活としての活動をしていない状況である。
しかし今年は俊哉や望月をはじめ有望な一年生が入部し、春瀬監督自身としてもようやく軌道に乗ったという形ではあるものの嬉しい限りである。
そんな中でいまいち乗り気になれない選手がいた。
(はぁ、まさかこんなに人がいるとは…)
ため息をつきながらキャッチボールをするのは明輝弘。
彼は元々野球部には幽霊部員になるつもりで入部したのだが、10人超えの新入部員が入っただけでなくやる気があるという事に悩んでいた。
(何やる気を出してるんだ。こんなチームじゃあ勝つのは無理だ。俺がやる気を出せば行けるかも分からんが、なんせ俺は高校野球を本気でやるつもりは無い。今だけ真面目に出て来週くらいから休みだせば…)
そう考えながらキャッチボールをする明輝弘。
この後は流し気味に練習をこなし終了後はグラウンド整備をし部室で着替えをする。
着替えをしている部室では竹下らが談笑をしていた。
「いやぁ一年だけで10人はすげぇよな。しかもトシの他にヒデも来てくれて、あと明輝弘」
「ん?俺か?」
「当たり前だろ?明輝弘は俺が誘おうとしてたヤツだしよ。てかなんで電話に出ねぇよ」
「俺は番号知らない奴の着信は出ない主義なんだ悪いな」
「そうなんだ。まぁでもこれで来年…いや今年にも行けるんじゃね?甲子園!なぁ明輝弘」
「あ、あぁそうだな」
内心は“無理だろ”と考えながら受け答えをする明輝弘。
こういうお気楽な人間は嫌いではないが、ここまで来るとウザったいほどである。
「あとトシもだぜ?俺の一番の功績さ」
「何俺が育てたみたいに言ってんのさ」
「まぁまぁ。でもトシが来てくれて嬉しいぜ~」
俊哉と肩を組む竹下に俊哉は笑いながら言う。
「まぁやる気なきゃついては来ないよ」
笑いながら話す俊哉。
そんな俊哉を見ながら明輝弘はとある疑問が頭をよぎっていた。
(俊哉、俊哉って、そんなに凄いのか?いつも見てても凄いとは思えない。ホームランを打てる体格にも見えないし雰囲気も何も感じない。)
そう思いながらもすぐに自分自身には興味がないとばかりにすぐに着替えて部室から出ていく。
1人歩く明輝弘、するとその先にすでに部室を出ていた望月が自販機の前でジュースを飲んでおり、明輝弘は彼なら話易いかな?と感じたのか近づき話しかけた。
「おう、確か望月だっけ?」
「あぁ、庄山だっけ?」
「明輝弘で良いよ」
「じゃあ俺も秀樹とかヒデでいいぜ?」
互いに初めて話すのか軽く自己紹介をする二人。
少し間を開ける二人であったが、明輝弘の方から話を始めた。
「あのさ、部活始まってしばらく経つけどよ。正直どうよこの野球部。俺は竹下が言うように勝ち続けるとかは無理だと思うぜ?」