明輝弘と望月の会話から翌日のとある練習の日。
練習が終わると春瀬監督は選手らを集めた。
「今度の日曜日に練習試合を行うことになった」
その一言に選手らは驚き喜んだ。
待ちに待った試合に選手らは隣の者と顔を見合わせながらザワザワと話を始める。
「ほれ静かに。相手は沼津北高等学校《ぬまづきたこうとうがっこう》で俺らが沼津まで行くからな」
「んだよ向こうが来いよ」
「バカ言うな。ここでは試合できる大きさのグラウンドは一つしかない。それにその日は他の部活が使う予定だからな。試合を組んでもらうだけ有難い話だろ」
ぼやく明輝弘に言葉を返す春瀬監督。
続いて春瀬監督は詳しい試合時間と集合場所を伝え解散となった。
部室では先ほどの試合の話で盛り上がっており、まずは対戦校がどんなレベルかで討論になっていた。
「なぁ山本、沼津北ってどうなん?」
「いや俺が知るかよ」
「え?そうなん?見るからに何でも知ってそうな顔だったからつい。眼鏡クイッとかやりそうだし」
「おい」
コントを繰り広げる竹下と山本。
すると隣で先に着替えを終えていた青木がスマフォでチームのデータを調べており画面を見ながら話を始める。
「えっと、去年の夏は3回戦敗退で秋も…同じく3回戦。チームの特徴としては打撃が良いみたいね」
「なんか微妙、まぁ仕方ねえか。」
青木の話につぶやく竹下。
すると竹下は俊哉のほうを向くと話しかけてきた。
「トシ。この試合で俺らがどの位かが分かるな」
「第一段階としてはね。まずは試合が楽しみだね」
笑顔を見せながら話す俊哉。
そんなワイワイと騒がしい部室から明輝弘が鞄を持ち帰ろうとドアノブに手を差し出そうとした時、俊哉が明輝弘に向かって話し出した。
「明輝弘はどう思う?今度の練習試合。」
「ん?勝つのは当たり前だろ?俺がいるしな。」
「おぉ自信たっぷりだね。」
「当たり前だろ。自信がなきゃ言わん。」
振り返りながら話す明輝弘にニコッと笑みを浮かべる俊哉。
竹下ら周りの選手は明輝弘の自信に満ちた言葉に少し動揺したのか静まり返るが、すぐに山本が口を開く。
「そんなら期待してもいいのか?」
「あぁ。遥か遠くまでかっ飛ばしてやるよ。」
「まぁ、そのくらいやってもらわなきゃ困るがな。今度相手投手の情報探してみるわ」
「いらねえよ、そんなん。誰であろうと俺はストレートを叩く。それだけだからな。じゃあな。」
そう言いながら部室から出ていく。
そんな明輝弘が出ていった後の部室は少し静かになったが内田が口を開く。
「庄山君って、なんか一匹狼な感じだね」
「まぁ言われてみればそうかもなぁ。群れるの好きでは無さそう。」
内田の言葉に青木が返答し今度は明輝弘の話に移り変わると、あーだこーだと様々な話が沸き起こってくる。
だがこの話題はすぐに熱が冷め、選手らはゾロゾロと部室を後に後にしたのであった。
そんな中、先に部室を出た明輝弘はというと帰りのバスに乗りながら今度の試合の事を考えていた。
(試合か。俺は四番固定としても、他のメンツがどうなるかだな。少なくとも俺の前には出塁してもらわなきゃ…って何考えてんだ俺。これじゃあ野球してんのが楽しくて試合も楽しみみたいになってる。だけど、前に秀樹が話してたこと。俺はこの目で確かめるまでは止めん。俺のプライドが許さん。)
考えにふけこみながら揺れるバスの座席に座り帰路へと着く。