6月…空梅雨化と思いきや、本格的に梅雨の季節がやってきた。
しとしとと降る雨にジメジメとする教室。
この時期は外で部活動は出来ないため、各運動部は階段等の屋内を使い基礎練習をする以外方法がない。
野球部もまた、他の運動部に交じりながら階段を駆け足で上がったり下りたりと基礎練習を続けている。
また屋外の屋根のある所を見つけ素振りをしたりと出来ることを黙々と行う。
だが、ボールを使えなくグラウンドで思いっきり体を動かすことができないのはやはり彼らにとっては苦痛であろう。
一日でもいいから晴れてくれと願うばかりである。
「トシちゃんお疲れー」
「おう、お疲れー」
そう言いながら来たのはマキ。
マキの所属する女子ソフトボール部も野球部と同じように階段で基礎練習をしている。
汗を額から流しながら俊哉の近くに座るマキはニヒヒと笑みを浮かべながら俊哉の顔を見る。
「何?顔に何かついてる?」
「ううん。すごい汗だなぁと思ってー」
「何それ」
と俊哉も笑いながらマキと話していると、明日香が汗をタオルで拭いながらやってくる。
「このジメジメ最悪…」
文句を言いながらやってくる明日香に対し俊哉は笑いながら対応していると、堀が丁度終わってやって来ると明日香を見るや否や凄いスピードで近づきながら話し出した。
「そのライン最高だよね!!汗で引っ付く服からクッキリと映し出されるその身体のライン!!上からの凹凸具合なんかもう最高!なので服の上からでも良いので触らせ…ウボァ!?」
全てを言い切る前に明日香の右ストレートが堀の脇腹を貫く。
軽く吹っ飛ぶ堀に俊哉とマキは爆笑である。
因みにこの堀義隆は、一言で表すと変態であり、特に明日香に関してはヤバい位の執着心を持っている。
彼曰く明日香のスタイルは理想であり、最高のプロポーションの持ち主であるそうだ。
「ひ、ひどいじゃないか…」
「何べんも同じことを…次は殺す!!」
カンカンに起こりながら練習を再開する明日香。
堀はムクリと起き上がるとパンパンと服の汚れを払い自分も何事もなかったように練習を再開するのであった。
「さて、俺も再開するか」
俊哉も立ち上がり練習を再開する。
マキも俊哉についていくように立ち上がり練習を始めていく。
ジメジメとした室内練習が終わり、俊哉達は汗を拭いながら部室へと戻っていく。
その帰り道で、青木が俊哉に話しかけてきた。
「トシ、今週の日曜日は暇かい?」
「え?暇だよ?」
「おぉマジで?そんじゃあ遊びに行こうぜ?」
「おぉ、いいよー。どこに行くん?」
「東京」
「え?」
「東京、秋葉原」
「秋葉原?!」
唐突な青木の言葉に戸惑うも、最後の秋葉原の一言で俊哉の目に輝きが出る。
秋葉原は俊哉にとって行きたくても中々行けない場所である。
なんとここで青木から誘いが出てくるとは思ってもいなかったのである。
「でもお金が…お小遣い前借りで行くしか・・・・」
呟く俊哉。
学生にとってのお小遣いは死活問題と言っても過言ではない。
だが、せっかくの誘いに俊哉は断ることが出来なかった。
「あ、因みに二人?」
「いんや、あと3人ほどいる」
「誰?」
「えぇっと…早乙女と南瀬、そんで姫野かな」
青木から出てきた3人の名前。
その3人は俊哉も顔見知りであったが、司の名前を聞いてあの時の事を思い出した。
「お、おう」
「ん?どうした?」
「いや大丈夫!楽しみにしてるよ!」
そう言いそくささと帰る俊哉。
まだ強く残っているあの時の記憶を思い返しながら、彼は部室へと戻っていくのであった。
青木と俊哉が秋葉原へ行く話してしている数時間前。
帰り道でもハルナ、由美、つかさの3人でも同じ話をしていた。
「ふぇ!?俊哉君?!」
「そうよ?」
「連絡先交換をしたんですよね?ならもう大丈夫では?」
驚く司に対し話す由美だが、彼女の反応を見てハルナは詰め寄る。
「まさか、まだ俊哉君と連絡取り合ってないの?」
「あ、うん…」
「このおバカ!!てか俊哉君も俊哉君よ!!」
司と同時に俊哉に対しても怒るハルナ。
ハルナはハァっとため息をつくと、司を見ながら何かを決心したのか話を切り出す。
「つかさ、アンタは次の秋葉原で俊哉君と行動しなさい」
「えぇ?!皆で遊ぼうよー」
「勿論よ、でも途中から二人で遊ぶの!!いい!?」
威圧しながら詰め寄るハルナに司はただ頷く事しかできなかった。
その夜から日曜日まで、緊張で寝れなかったのは言うまでもない。
また俊哉もどうして良いのか分からずに落ち着かなかったのである。
そんな事をしているうちに時間はあっという間に過ぎていき日曜日となった。
天の悪戯か天候はジメジメが嘘のような快晴となっていた。
朝七時ごろの静岡駅では、青木と俊哉が先に来ており3人を待っている。
「お待たせー」
言いながら来たのはハルナ。
その後ろには由美と、由美の手に引っ張られながら司がやってきた。
「お-う」
青木は手を振りながら応え、隣では俊哉が笑顔を見せるもどこか緊張していた。
マキと明日香と遊ぶとは少し違う感覚が俊哉にあった。
その原因となるのが、由美の後ろで恥ずかしそうに隠れている司の存在である。
「あの!」
俊哉は意を決して司に声をかけると、彼女はビクッとしながらもオズオズと由美の後ろから出てくる。
彼女の服装はシャツにスカートと地味目というか決して御洒落では無い服装をしており前髪も顔を隠すように長い。
「連絡先、交換したのに全然連絡できなくてゴメンね」
「い、いえ、私も…全然できな…くて…すいません」
「こちらこそだよ 今日は…楽しもうね」
「あ…はい」
笑顔を見せながら話す俊哉を、司は思わずジッと顔を見てしまう。
屈託のない笑顔をみた彼女は、どこかスッと心が軽く感じたであろう。
そして自然と笑顔を作りながら話す。
「私も、楽しみにしてました その…よろしくお願いします」
「あ…うん」
ペコリとお辞儀をしながら話す、司に対し照れながら頷く俊哉。
その光景を見て、ハルナと由美は目を合わせサムアップを互いにしてみせるのである。
こうして東京へ向けて電車に乗り込む5人。
普通電車で移動となり、何回か乗り換えを得て約3時間ほどで東京へと着く行程の中、俊哉と司は多少慣れてきたのかぎこちないながらも会話をしていた。
二人で話したり5人で話したりと電車に揺られながらも、この時間を充実したであろう。
そして10時ごろ、ついに目的地秋葉原へと着く。
改札から出て駅から出ると目の前にはゲームセンターや大型商業ビルが飛び込んできた。
道ではメイド姿の女の子がビラを配ったりしており賑わいを見せている。
「きたぞアキバー!!」
叫ぶ青木。
俊哉も始めてきた秋葉原に驚きと同時に感動を隠せずに目を輝かせていた。
「んじゃあ!行きますか!」
そう言い歩き出す青木に、ついていく他の面々。
日帰りの秋葉原巡りが始まった。