青色の下で…First season   作:オレっち

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第20話 背番号

6月も終わりに近づき、いよいよ夏本番が近づいてきた。

梅雨空だった天気も次第に良い日が続き蒸し暑い季節となる。

野球部も久しぶりにグラウンドで練習を再開し、元気よく白球を追いかけていく。

7月に入ればすぐに夏の地区予選大会が幕を開くのだが、春瀬監督はここでも悩んでいた。

 

「あー…オーダーどうするか…」

 

グラウンドの隅でため息をつきながらぼやく春瀬監督。

残り二週間ほどで予選が開幕だがまだオーダーが決まって無いようだ。

練習試合はほんの1試合しか出来ずの夏突入とあって春瀬監督的にもデータが無さすぎるのである。

 

(クリンナップはほぼ固定は出来るんだが、問題は下位打線の繋がり…ミートが上手い竹下を一番に置くのがベストだが、そうすると下位打線に厚みが出ないのと捕手と先頭打者と重荷にならないか…ううん…悩む)

 

頭の中でいくつものオーダー表を作っては決してを繰り返しており練習に集中できていないようだ。

また選手たちも予選が近いとあって練習に力が入る。

1年生と2年生を合わせて13人の選手で構成されている野球部、ベンチ入りメンバーの規定は予選は20人の枠が設けられており全員がベンチには入れるがスタメンで出れるのは9人。

つまりは4人がベンチと言う事である。

 

(ベンチメンバーは、申し訳ないが内田はベンチしかない アイツは熱心に練習を取り組んでいるが、野球を始めたのが高校からだからな 他の連中と比べるとどうしても現時点では差が出てしまう。そして問題は投手だ 2年の桑野の他に1年には望月、長尾、鈴木の3人が投手 エース番号を誰に渡すか…)

 

またも悩む春瀬監督である。

 

そして数日後、春瀬監督は練習後に選手たちを集めた。

どうやら雰囲気を感じ取ったのか選手たちはどこか落ち着かない様子である。

 

「では予選を戦うメンバーの発表をする 背番号と名前を呼ぶから前に出てもらいに来い」

 

と束になる背番号を持ちながら話す春瀬監督に選手たちは固唾を飲み発表を待つ。

 

「まず背番号1、望月」

 

「はい!」

 

背番号1番は望月が受け取る。

望月は堂々とした表情で背番号を受け取るとジッと背番号1が書かれた布を見つめる。

 

「次、背番号2は竹下」

 

「はい!!」

 

背番号2を受け取ったのは竹下。

現状聖陵には捕手が竹下しかいないため選ばれるのは間違いないだろ。

次々と背番号を発表していく春瀬監督。

 

背番号3は長打力が魅力の明輝弘、背番号4は鉄壁の守備が光る山本、背番号5は投手であるが肩の強さと守備力を評価され2年の桑野が選ばれる。

背番号6は桑野と同級生のキャプテン早川、背番号7は俊足が光る青木、背番号8に万能選手の俊哉、背番号9に強肩強打の堀が選ばれた。

最後にベンチメンバーとして背番号10に左腕投手の長尾、背番号11に速球が売りの鈴木、背番号12に池田、そして最後の背番号13に内田が選ばれた。

 

「以上の13人でこの予選を戦っていく おそらく楽な道のりではないが…一つでも多く勝っていこう」

 

『はい!!』

 

最後に春瀬監督の言葉で絞めて終了。

選手たちは部室に帰ると背番号をマジマジと見ながら嬉しそうにする。

 

「いのかなぁ、背番号もらって」

 

背番号13を見ながら不安そうに話すのは内田。

高校から始めた野球だが、背番号をもらえるとは思っていなかったようで背番号を見ながら話す内田に、俊哉が話しかける。

 

「大丈夫。監督はウッチーを期待して背番号をあげたんだよ だから、ベンチでも堂々としてなよ 代打来るかもよ?」

 

「そ、そうかな?」

 

「きっと来るよ」

 

「うん、ありがとう」

 

俊哉の言葉に笑顔でお礼を言う内田に俊哉も笑顔を見せるのである。

着替えを終え部室から出る俊哉達。

すると丁度練習を終えたマキと明日香がおり俊哉は嬉しそうに背番号を二人に見せる。

 

「おー背番号8だ」

「中学の時と同じね」

 

嬉しそうに話すマキと表情を変えないがどこか嬉しそうに話す明日香。

俊哉も二人の言葉に嬉しそうに笑顔を見せながら帰路へと着く。

背番号を受け取った日の夜。

俊哉は部屋でスマフォを弄っていた。

試合用ユニフォームに縫い付けられた背番号を写真で取りラインで送っていたのだ。

送り先は司。

するとすぐに司から返信が来ると、文面には“おめでとうございます♪頑張ってください”

と書かれており、俊哉は嬉しそうに返信をするのである。

 

「背番号8…シュウ達も背番号もらったって言ってたし あと10日間・・・・やるぞー!!」

 

部屋の中で大きな声を出し気合を1人で入れる俊哉であった。

場所を変えて静岡市内の某マンションの一室。

 

ここには背番号3を付けたユニフォームを見る明輝弘の姿があった。

 

(背番号3…最初はホントやるつもりは無かったのに、まさか夏の予選を迎えるとはな。まぁ、恐らく4番は俺だろうから、塁にランナーで出てようと出てまいと俺はホームランを打つだけだ 静岡一の…いやそんなチッポケなモンじゃねぇ、日本一の四番になってやるよ)

 

マンションのベランダに出て夜の街を見つめながら心に誓うのであった

各々がそれぞれの思いを込めながらいよいよ迎える夏の予選大会。

静岡県約120校の頂点を決める戦いが始まる。

 

背番号配布から数日後に、主将の早川と春瀬監督の二人が予選大会の抽選会へと出向いていった。

約120校ある静岡県予選を勝ち抜くための運命のクジである。

 

そして放課後の練習の頃に早川と春瀬監督が戻って来た。

二人に群がる選手たち。

春瀬監督は選手たちを落ち着かせると、部室へと行きクジの結果を聞かせる。

 

「初戦は大会2日目の第二試合で対戦相手は島田第一高校 場所は島田球場だ」

 

日程を発表し、今大会のトーナメント表を見せ部室の壁へ貼り付ける。

選手たちはトーナメント表を食い入るように見て他の高校の場所などを確認する。

 

「うげ、明倭と同じブロックじゃん」

 

指で指しながら話すのは竹下。

明倭と言えば俊哉が最初入学しようかと悩んでいた高校だ。

県内では№1の評価がある強豪校でここ5年連続夏の甲子園へ出場している。

 

「まぁ余裕じゃね?」

 

そう話すのは明輝弘。

強がりなのかは分からないが、彼の表情からは自信に満ち溢れていた。

 

「よく言えるねぇ」

 

と若干引きながら話す竹下に、明輝弘はケロッとした表情で話す。

 

「なんでだ?明倭だか明治だかどんな実力かは知らないが、俺がホームランを打って勝つ それで十分だろう?」

 

言い切る明輝弘に竹下は鳥肌が立った。

自信をもって言い切るその強心臓もそうだが、これが四番なのかと感じたのだ。

ただ、明倭がどういう高校なのかが分からなかったのは別としてだが、チームとしては心強い存在ではある。

 

「トシ」

 

「何?」

 

「甲子園まで進むぞ」

 

「…だね」

 

明輝弘の言葉にひと間置き笑みを浮かべて頷く俊哉。

そして望月もトーナメント表を見ながら何かを思うのであった。

 

(監督から背番号1を貰ったんだ。情けない真似は出来ないし、したくない。待ってろよ…)

 

各々の思いを胸に、聖陵野球部は夏の予選大会へと向かっていく。

 

第壱章 新たな出会い  完

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