青色の下で…First season   作:オレっち

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第4話 諦めない

三回戦目を数日後に控えた聖陵野球部。

この日は視聴覚室を借りミーティングえお行い、次の対戦相手の情報をお浚いする事となっていた。

 

何故こんな事を入念に行いかというと、三回戦目に当たる高校が問題であるからだ。

 

「次に当たるのは…明倭高校だ」

 

次の対戦相手は静岡明倭高校《しずおかめいわこうこう》。

開会式の時に挨拶を交わした土屋のいるチームである。

明倭の試合風景が流れるスクリーンを背に春瀬監督が話をする。

 

「まず、このチームの特徴はなんと言っても鉄壁の守備力だ。ここまでの失策はゼロ。しかも投手力も豊富で1試合平均1失点未満で抑えてる。だが、打撃力に関しては課題が残るらしく今大会はシードの為、ウチと当たるのが初戦だが春の大会では毎試合1~3得点で勝っているチームだ。だがこの守備力あっての勝ちの積み重ねだ。」

 

データを参考に説明をする春瀬監督。

すると後ろに座っていた明輝弘が腕を組みながら話す。

 

「守備のチームだか知らないが、要は俺がホームラン打てばいいんだろ?ホームランは捕れないしな。俺が打って勝つ。それ以外に無いだろ」

 

自信満々に話す明輝弘に対し、春瀬監督はフウッとため息をつきながら話す。

 

「それが出来れば苦労はしないんだがな…。庄山は出来るか?」

 

「出来るから言ってるんです。俺の前にランナー溜めてくれれば絶対に返すんで」

 

キッパリと話す明輝弘。

春瀬監督は彼の一言一言には自信があり、不可能と言う言葉が自分には無いということを感じていた。

彼の言葉は四番としては必要であり、チームも士気が上がるであろう事は間違いない。

 

(その自信が結果に出ればいいが…次の明倭戦で俺たちの位置がハッキリと分かるハズだ。勝てれば儲けも儲け。奇跡に近いが、正直良い展開を見せてくれれば良いかな…)

 

スクリーンの映像を見ながら考える春瀬監督は、ふと目線をやると最前列で鋭い眼差しで見つめる俊哉がいた。

 

(横山はどう考えているんだろう)

 

そうふと感じた春瀬監督。

彼は選手たちに心境を聞いてみようと決め数人をピックアップし質問をぶつけた。

 

「早川、望月。それに…横山。お前たちはどう考えている?」

 

その問いかけの言葉に三人は少し考えながら口を開く。

 

「自分は…正直分かりません。明倭と当たること自体が初めてなので…でも、全力でぶつかるだけです」

 

「そうか。望月は?」

 

「俺は…難しいと思います。自信が無いわけではないのですが…今の現状では恐らく勝てません」

 

そう言う秀樹に早川と春瀬は彼の顔を見た。

エースナンバーを付けた彼の口から出てきた言葉に驚きと言うよりも、どこか納得してしまっているのだ。

となると最後は俊哉であり、俊哉を三人が見ると俊哉は口を開く。

 

「たぶん勝てない可能性が高いと思います。というよりほぼ100%負けます。」

 

「ほぼ100%?」

 

「はい。でも可能性は捨ててはイケないと思います。明輝弘も言ってましたが、打つべき人が打って勝つ。その理想的な戦いが出来れば或いは…」

 

そう言葉を口にする俊哉に春瀬監督は、彼の言葉の重さを感じていた。

これが中学の時に優勝を経験した人物の雰囲気というかオーラの様なモノが感じ取れたのである。

俊哉自身は始める前から諦めるという事は考えていなかったのである。

ほんの数%の確率でもどうにかしてやろうと言う気持ちが見えた。

 

(横山は諦めてはいないのか…なら、監督の俺が諦めてはいかんか…)

 

そう考える春瀬監督。

視聴覚室を出る選手たちを見送り、彼は後数日後に迫った明倭戦に向けて戦略を練ることにしたのであった。

そして数日が経ち明倭戦当日となった。

場所は草薙球場。

静岡駅から私鉄で10分ほどの場所にあり、県内では最大の球場である。

勿論決勝戦はこの球場で行う為、球児たちはこの場所を目指して夏を戦っている。

 

決勝ではないが、俊哉達はこの草薙球場で去年の夏と今年の春に甲子園へ出ているチームと相対する事となった。

 

またスタンドでは変化が見られていた。

聖陵側に応援する生徒が増えていたのだ。

初戦、2回戦と勝利した事で噂は広まり、“じゃあちょっと行ってみる?”という流れになったのである。

 

「今日は前より多いねー」

 

スタンドを見渡しながら言うのはマキ。

隣には明日香がおり明日香はタオルを頭に被りながら手を団扇代わりにパタパタと振る。

 

「今日アッつい…」

 

「今日は30度超えるみたいね」

 

マキも熱そうに苦笑いをしながら明日香の隣に座る。

するとその二人の元へ3人の女子生徒が近づいてくる。

 

「おー、明日香ー」

 

「あら、ハルじゃん」

 

手を振る明日香の先にはハルナ、由美、司がいた。

ハルナは団扇を仰ぎ、由美はダルそうにジュースを飲み、司も暑さに参っているのか少し表情が冴えない。

 

「隣良い?」

 

「いいよー」

 

明日香の隣に座っていいか聞くハルナに了承する明日香。

ハルナ、由美、司の順で席へと座る。

 

「珍しいじゃん。ハルが来るなんて」

 

「まぁねぇ。ね、由美に司」

 

「私は行きたくはなかったのですが…ハルが無理やり…」

 

「あはは…」

 

文句を垂れる由美に対し苦笑いをする司。

すると、マキが司の方を見ると話しかけてくる。

 

「えっと、姫野司ちゃんだっけ?」

 

「え?あ、はい」

 

「私、宮原マキ。トシちゃんから聞いてるよ。よろしくね。」

 

「あ、はい。よろしく…お願いします」

 

照れ臭そうに話す司。

だが彼女の心に少し言葉が残っていた。

 

(俊哉さんの…お友達なのかな?でもトシちゃんって言ってたし…)

 

そんな感情が出てくる司。

その表情の変化に気づいたのは隣にいた由美。

由美は小声で司に話しかける。

 

「司、マキさんは俊哉君と幼馴染です」

 

「幼馴染…なんだ」

 

「はい。ですので、司の心配しているような間柄ではないかと」

 

「ふぇ?!」

 

「顔に出てるですよ?」

 

「え?!あ…」

 

由美の言葉に顔を真っ赤にしながら俯いてしまい、由美はクスリと笑うのである。

そんな彼女らの少し後ろでは、真琴、美咲、絵梨がいた。

 

「もー。チアはダメってー」

 

「まぁ仕方ないよ。練習もできてないし」

 

どうやらチアでの応援は許可されなかったらしくムッと膨れる美咲を宥める真琴。

そして絵梨はその二人の隣でペットボトルの飲み物を飲みながら明倭側のスタンドを眺めて、話し出す。

 

「向こうは凄い人だねー」

 

「まぁ、向こうは強豪校だしね。ブラスバンドやチア、応援団も駆けつけて本気だよね」

 

応援団も万全に整えてあるのが伺える明倭側のスタンド

どの試合でも妥協はしないという学校側の方針があるため生徒らが出れる場合は吹奏楽やチア、応援団などの生徒らは駆り出される。

また生徒らも、半数以上の生徒が休場へ駆けつけており野球部の期待が高いのが伺える。

 

それに比べて聖陵は見に来ている生徒や保護者がチラホラと寂しい状況である。

またこの状況は、選手たちにも感じていた。

 

「向こうは凄いね…」

 

「まぁ方針はどんな相手でも妥協はしないが明倭の方針だしな。もちろん応援も本気だよな」

 

そう話すのは内田と竹下。

内田は初めて見たようで圧倒されているが竹下は分かっていたのか幾分かは余裕がある。

 

「なに、大丈夫だ。俺が打って勝てばいいんだ。そんで相手を黙らせよう」

 

「ホント明輝弘は…まぁ、ここまで来たらそうするしか無いか」

 

半分あきれながらも自らも吹っ切れる竹下。

そして明輝弘は俊哉を見ると

 

「俊哉。今日は勝つぞ。俺のバットで決めてやるからな」

 

「…あぁ、期待してる」

 

明輝弘の言葉に一間置いて話す俊哉。

先日のミーティングで俊哉の言葉が明輝弘にとって不服であることは間違いないのは明白だ。

彼自身もバットの絶対の自信を持ってこの大会を挑んでおり、ここまで順調すぎる成績を収めている為、この試合も自分で決めてやろうという気持ちが伝わってくる。

俊哉も正直な話、諦めているつもりは毛頭ないし、おそらく他の選手らも同じであろう。

 

だが、明倭という大きな壁に対してどう挑めばいいかが分からなかった。

明輝弘のように純粋に真っすぐにぶつかれる自信が無かった。

 

(でも、ここまで来たら…やるしかないよな)

 

そう心に誓いながら立ち上がる俊哉。

両者が整列し、県予選大会3回戦の火ぶたが切って落とされたのである。

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