青色の下で…First season   作:オレっち

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第6話 土屋明彦

2回に竹下のタイムリーで2点目を入れた。

湧き上がる聖陵ベンチ、すると明倭ベンチから背番号10を付けた土屋が出てくるとブルペンへと向かう。

 

「土屋だ…」

 

口々に土屋の名前を出す聖陵ベンチの選手。

またマウンドにいる明倭のエースも土屋がブルペンに入る姿を見てより気合が入る。

 

(こんな情けないピッチングでマウンドを降りるかよ!)

 

逆にマウンドに立つ投手は燃えた。

その思いが乗ったのか、9番の秀樹を空振り三振に打ち取りマウンドを降りると土屋が出迎える。

 

「ナイスピッチです」

「土屋。お前の出番はまだだぞ」

「…了解です」

 

投手の言葉に笑みを浮かべながら答える土屋。

しかし打線は振るわず2回裏は三者凡退でチェンジとなってしまう。

 

その後の両者の攻撃はどちらも得点は無い。

3回表の聖陵の攻撃は青木、山本が倒れツーアウトから俊哉がこの日2本目のヒットをレフト前へ運びランナーが出るも4番の明輝弘は変化球を降らされ三振となりチェンジ。

その裏の明倭の攻撃はヒットでランナーを出すもセカンド山本への併殺打でチェンジとなる。

 

4回表の聖陵の攻撃は5番早川から始まる打順だが三者凡退で終わり、明倭の攻撃に移ると先頭打者をヒットで出してしまい犠打と進塁打でランナーを三塁に置くピンチとなる。

しかし、秀樹は四番打者に対して強気のピッチングを見せ空振り三振に打ち取りチェンジとしたのだ。

 

そして迎えた5回表。

明倭の投手がまたしても調子を崩してしまう。

8番竹下から始まる打順だが先頭の竹下を四球で歩かせてしまうと、続く9番の秀樹も四球で歩かせる。

無死一二塁とチャンスを作り打席には青木が立つが青木は敢え無く三振に倒れ、続く山本も内に行くもライトへのフライでツーアウトとしてしまい打席には俊哉。

 

ここまで2安打の俊哉に対し、もう打たせたくはない明倭バッテリー。

しかし、俊哉はツーボールとなった三球目を弾き返すと一二塁間を抜けるヒットを打ち、二塁ランナーの竹下は一気にスピードを上げホームへと帰って来た。

 

「よっしゃ!!」

 

ホームを踏んだ竹下が叫ぶと同時に聖陵スタンドでもワッと歓声が上がる。

3本目のヒットがタイムリーとなった俊哉。

一塁に立つ俊哉を見ていた司は、目を輝かせていた。

 

(カッコいいなぁ…素敵だなぁ)

 

ジッと俊哉を見つめる司に隣にいた由美は気付くと笑みを浮かべながら彼女の耳元で囁く。

 

「もうずっと見ていますよ?」

「ふぇ!?」

 

顔を赤くしながら反応する司。

その様子を見ていたマキは司の顔を見るも何も言わずに黙っていた。

 

遂に3点目が入った聖陵。

すると明倭ベンチから古屋監督が出てくると審判に交代を告げる。

 

「ピッチャー交代。土屋」

 

監督の言葉の後に、ベンチから土屋がマウンドへと向かう。

内野陣が集まる中に土屋が向かうと、先ほどまで投げていた投手が黙ってボールを土屋に渡す。

 

「悪い。あとは頼むわ」

 

「はい。了解です」

 

短く言葉を交わす二人。

ボールを受け取った土屋は捕手と打ち合わせを簡単にしグラウンドへと散らばる。

二死一二塁として打席には4番の明輝弘。

 

(俺と同じ1年か…、まぁどんな実力か知らないが。同じ一年同士正々堂々とストレート勝負しようぜ)

 

そう考えながら打席でバットを構える明輝弘。

その土屋の投じた初球はアウトコース低めへ落とすフォークボールであった。

 

「な、にぃ!?」

 

スイングするも空振りをする明輝弘は土屋を見る。

明輝弘本人は初球ストレートと頭にあったのだろうが土屋はフォークボールを投じた。

続く二球目も変化球を投じ明輝弘は空振りをする。

 

(クソ!ストレートを投げろよ。ストレートを!!)

 

二球続けての変化球に多少苛立ちを見せる明輝弘。

対する土屋は涼しい顔をしながらボールを受け取っている。

 

(最後はストレートだろ。男はストレート勝負だろ!)

 

バットを構える明輝弘に対し、土屋の投じたボールは

 

「なん…だと!?」

 

投じたのは初球と同じアウトコースへ落とすフォークボール。

明輝弘は初球と同じスイングをしてボールに当たらず空振り三振を喫してしまった。

 

「クソが…」

 

小さな声で怒りを溢す明輝弘。

彼はまだ怒りが抑えられないのか、ファーストミットを持ってきてくれた内田から乱暴に受け取りそのまま一塁へと向かう。

 

(なんで変化球ばかりなんだ…これが勝負って言えるのかよ!ガッカリだぜ土屋)

 

ベンチへ戻る土屋を睨むように見る明輝弘。

その頃、明倭ベンチでは捕手と古屋監督が話をしていた。

 

「3点目は意外だったな…」

 

「すいません。横山はこの試合要注意ですね。奴さえどうにか出来れば次は怖くないですし」

 

「あぁ、弱点をわざわざ本人が見せてくれるとはな」

 

「えぇ。あの4番の弱点は変化球ですね。掠りもしませんでした。」

 

「まぁ向こうさんは納得してない表情だったが。」

 

「でしょうね。ストレートに強いみたいでしたし…でも甘いですよ。」

 

打者の分析をしながら話す捕手と古屋監督。

 

その裏の明倭学園の攻撃でついに動きが出る。

5番からの打順となり、望月と竹下のバッテリーは警戒をしたものの甘く入ったボールを叩かれライトオーバーのツーベースヒットを打たれてしまった。

 

(甘く入ってしまった…)

 

竹下が座りながら考えており、秀樹もおそらく同じ気持ちだろう。

竹下を見ると右手を顔の前に置き“わりぃ”というジェスチャーを見せる。

 

続く6番打者にはツーストライクと追い込むも進塁打を打たれてランナーを三塁へと進めてしまう。

一死三塁となり打席には7番打者。

 

キィィィン…

 

打球音が響く。

初球を打ちに行くと打球は高くセンターの俊哉へ打ち上げられる。

高く上がったが定位置より少し深めの打球で俊哉はすぐに捕球位置へと向かい捕球をするとランナーはスタート。

俊哉の返球も虚しく判定はセーフとなった。

 

「まずは1点…」

 

ぽつりと呟く古屋監督。

これで3-1と2点差に縮める明倭だが、8番打者がピッチャーフライに打ち取られチェンジとなった。

 

「さぁ取り返せるぞ!!」

 

鼓舞する明倭の選手たちにベンチ内は一気に沸き上がり士気が上がる。

その影響なのか、6回表の聖陵の攻撃を土屋は打たせて取るピッチングを披露し三者凡退でこの回を終えた。

 

「ナイピッチ!!」

「ナイス!!」

 

ベンチに戻りながら声を掛け合う選手たち。

聖陵の選手らは逆に声が出ないまま守備へと向かう中、秀樹はマウンド上で大きく深呼吸をして息を整える。

 

(6回か…意外と体力の消耗が激しい気がする…)

 

深呼吸をしながら考える秀樹。

明倭相手とあってか、緊張をしながら投げている事が自分自身分かってきていた。

 

6回裏の攻撃は9番の土屋から。

右打席へ入りバットを構える土屋に対しての初球はボール。

続く二球目もボールとなり秀樹に少しの異変が見え始める。

 

(コントロールできない…)

 

コントロール出来ない自分の投球に焦りを見せる秀樹。

続く三球目はその焦りなのか、真ん中に甘く入ってしまう。

 

キィィン…

 

打球音が響くと土屋のはじき返した打球は秀樹の股下を抜けていくセンター前ヒットとなる。

ここで秀樹に動揺が出たのか、続く先頭の1番打者にライト前に運ばれこの日初めての連打を許してしまう。

続く2番打者に送りバントを決められると秀樹と竹下のバッテリーはスクイズを警戒し、厳しいコースを攻め続ける。

 

「ボール!!フォア!」

 

しかし秀樹の制球が上手くいかず3番打者を四球で歩かせてしまい打席には4番が入る。

一球目、二球目とボールとなった後の三球目のストレート。

これを打者は見逃さない。

 

カキィィン…

 

会心の当たりだった。

打球は低い弾道で飛んでいくと右中間を真っ二つに破るヒットとなりランナー二人を帰す同点タイムリーとなってしまった。

「よっしゃ!」「ナイバッチ!」と喜び合う明倭ベンチ。

マウンド上の秀樹は呆然としており立ち尽くしており竹下が慌ててマウンドへと向かう。

 

「おいヒデ大丈夫か?」

 

「あ、あぁ…」

 

返事を帰す秀樹に竹下はベンチを見ると春瀬監督が指示を出し長尾と鈴木をブルペンへ向かわせていた。

そのまま試合は再開されるも5番打者に対して秀樹は四球で歩かせてしまう。

しかも明らかなボール球とあって完全に切れている事が伺える。

 

「ピッチャー交代!!」

 

ベンチから交代の指示が出る。

春瀬監督が審判に交代を告げ動きが出た。

マウンドにいた秀樹はベンチへと下がりサードにいた桑野がマウンドへ上がる。

そして空いたサードには池田が入る形となった。

 

ベンチへと戻る秀樹はそのままベンチへ崩れる様に座り顔を下げた状態で俯く。

 

「望月君アイシング」

 

内田が秀樹に話しかけるも黙ったままの状態が続く。

どうしたら良いのか分からない内田に春瀬監督は声をかける。

 

「望月、アイシングしとけ。」

 

「…はい」

 

小さく答えて立ち上がる秀樹。

ベンチ裏でアイシングをする秀樹と、その手伝いをする内田。

 

「…内田」

 

「ん?何?」

 

「ちょっと一人にさせてくれ」

 

「…分かった」

 

何かを察したのか内田はベンチへと戻る。

内田が去ったベンチ裏からは、小さくすすり泣く声が響く。

 

「ちくしょう…ちくしょう…不甲斐ないピッチングしやがって…」

 

何度も何度も自分で自分を責めながら…。

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