八月に入った。
甲子園では全国高校野球選手権大会が開催され熱戦が繰り広げられている。
そんな中の朝の静岡駅では、俊哉が改札前にスマフォで時間を確認しながら待っていた。
「お待たせしました?」
「あ、おーい」
待っていた俊哉の所へ急ぎ足で駆け寄ってくるのは司だ。
スカートで半袖のTシャツを着て来た司。
地味目で決してお洒落とは言い難いが、彼女にとって精一杯なのであろう。
それは俊哉も同じで半ズボンにTシャツに野球帽である。
「じゃあ行こうか」
「は、はい」
前髪で隠れた司の顔だが恥ずかしそうにしているのが分かった。
俊哉も司の表情を見て急に恥ずかしくなったのか言葉少なになりながら電車へと乗る。
静岡駅から電車で走らせ約1時間。
二人は東部の港町である沼津へと降り立つ。
駅から市営バスを乗り南へ真っ直ぐ降りる事20分。
「到着ー」
「わぁー」
バスから降りると目の前には沼津港が広がる。
ここ数年で盛り上がりを見せている沼津港、二人は深海水族館へと足を運んだ。
日本でも珍しい深海魚を中心に展示されている水族館で普段見ない様な深海魚が数多く展示されている。
二人は水槽を見ながら楽しそうに話をする。
冷凍保存されたシーラカンスの前で写真を撮ったり、お土産店でぬいぐるみを手に取ったりと時間をたっぷりと使い楽しむ。
水族館を後にし隣接されたカフェにて小休止をする二人。
飲み物を買い店内の椅子へと座り一呼吸入れる。
「楽しかったね」
「そうですね」
互いに笑顔で話しながら飲み物を口にする。
すると司が俊哉の顔をまじまじと見ながら話しかける。
「その、夏の大会惜しかったですね」
「うん、本当にね・・・力不足かな」
「でも私、感動しました」
「え?」
「だって、あんなスピードのあるスポーツで活躍する俊哉さんを見てたら。凄いんだなぁって思って。今まで見た事無かったから・・・とても感動しました。」
「あ、ありがとう」
顔を赤らめながらお礼を言う俊哉。
ここまで感動してくれたのかと嬉しい反面、面と向かって言われた事で恥ずかしさも出て来たのだ。
また司も自分の言葉に恥ずかしくなったのか顔を赤らめながら下を向いてしまう。
「ご、ごめんなさい。偉そうな事言っちゃって」
「ううん。全然!むしろ凄い嬉しい。ありがとね?」
満遍の笑みを浮かべながら話す俊哉に司も笑顔が溢れる。
小休憩が終わり二人は沼津港を後にし次は駅前にある仲見世通り商店街へと向かう。
本屋に行き雑誌や漫画を見たり、沼津で有名なパンを買い歩き食いをしたりしながら商店街を歩いていく。
そして最後はアニメショップへと足を運び買い物をする。
楽しい時間はあっという間に過ぎて行き夕方となり帰る時間となってしまう。
沼津駅のホームで電車を待つ二人。
並んで立ちながら話をしており終始笑顔でいる。
電車が来て乗り込み、二人は空いている席へと並んで座り暫くすると電車のドアが閉まりゆっくりと走りだす。
タタンタタンと揺られながら座る俊哉。
すると俊哉の右肩に何かストンと重みが感じられた。
「あ・・・」
チラリと横目で見ると寝てしまった司の頭が俊哉の右肩に寄りかかっていた。
スゥスゥと寝てしまっている司。
俊哉はこの状況に驚くも、動いて起こしてはマズイと感じそのままジッとすることにした。
静岡駅に着くまでの時間、俊哉は司に肩枕をされながら過ごすのであった。
俊哉はこれはこれで良いかなと思いながら、今日一日の思い出を噛み締めているのであった。