青色の下で…First season   作:オレっち

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第18話 まさかのまさか

夏休みも八月中旬が過ぎ、あと僅かとなってきた頃、俊哉宅の部屋ではマキと明日香の三人でテレビを観ていた。

 観ていたのは勿論甲子園大会の中継で、この日秀二と神坂のいる陵應学園が三回戦に挑む日である。

 秀二の試合が始まる前から野球中継を見ている3人は冷たいジュースやお菓子などを食べながら「このプレーはこう」や「あの守備は良かった」とか互いに話しながら盛り上がっている。

 

 そして秀二ら陵應学園の試合となり俊哉らは戦況を画面越しに見つめる。

 秀二の好ピッチングで序盤から優位に立つ陵應学園は3回に神坂が甲子園で自身1本目のホームランを放つと俊哉らは手を叩いて喜んだ。

 

「凄いすごーい!!」

「すご……」

 

 神坂のホームランに大はしゃぎのマキと打球に言葉を失う明日香。

 俊哉は目を輝かせながらダイヤモンドを回る神坂を見つめる。

 自分もこの舞台に早く行きたい、そう考えが更に強く出ていた。

 

「さぁシュウ君!!リュウ君(神坂の事)のホームランを守りきるんだ?!!」

 

 テレビの前でそう言いながら手を叩くマキ。

 この回も秀二は難なく抑えるんだろう、そう思いながら見ていた。

 

 『おっと?陵應の村神君にアクシデントか?』

 『本当ですね?』

 『脹脛でしょうか?押さえてますね』

 『ハリでしょうかねぇ』

 

 テレビ中継の実況アナウンサーや解説から溢れる言葉に先ほどまで笑顔だった3人の表情が曇り出す。

 一球目を投じた所でマウンドの秀二が地面に片膝を着いてうずくまったのだ。

 球場もザワつき出しマウンドにはキャッチャーや内野手らが集まる。

 暫くしてファーストの神坂の肩を借りマウンドから降りていく場面が中継される。

 

「え?怪我?」

「わかんない 脹脛押さえてたね」

 

 動揺するマキに明日香が答える。

 俊哉はただ黙ってテレビ画面を見つめるだけである。

 試合は再開されリリーフに二年生の氏家が上がる。

 暫くするとアナウンス席に情報が届いたのかアナウンサーが話を始める。

 

『どうやら水分不足による脹脛の張りの様ですね』

『今日は今年一番の暑さですからねー、緊張感もあるのかもしれないですが水分補給は常にしとかないといけませんね』

 

 アナウンサーと解説者の話にひとまず安堵の表情を浮かべる3人。

 だが次はこの試合に集中をする。

 1点リードのままリリーフを受けた氏家は3回こそバックの守りもあり無失点に抑えたが、4回になると制球が乱れて連続フォアボールでピンチを作ってしまうと入れに行ってしまったボールを叩かれセンターオーバーの逆転タイムリーを許してしまう。

 そして5回、6回にも失点を許してしまいリードを広げられてしまう苦しい展開の中、7回の打席に入った神坂が二打席連続のホームランを放つ。

 

「よし!!」

「リュウ君ー!!」

 

 勢いを取り戻そうと言う執念から飛び出した神坂のホームラン。

 そして四番の栗原からもホームランが飛び出し4対3と1点差まで縮める。

 

 しかし・・・

 

『あっと押し出しのフォアボールです』

 

 8回に押し出しの四球で5対3と点差を広げてしまう。

 そして9回。

 陵應の攻撃は二死ながら二三塁とチャンスを作る。

 打席には代打松村が打席へと立つ。

 

『さぁ追い込みました ピッチャー、投げた!』

 

 ピッチャーの投じたボールを松村はフルスイングをする。

 テレビから聞いていても分かる“ギィィン”という鈍い金属音が響くと打球はショートへの当たりになり、ショートの選手が捕球すると一塁へ送球。

 飛び込むようにヘッドスライディングを試みるも、審判の右腕は横ではなく縦に掲げられた。

 

『アウト!!』

 

 その瞬間、ワッと球場から歓声が沸き起こる。

 マウンドに選手らが集まりグラブタッチを交わす中で、一塁へヘッドスライディングをした松村は蹲ったまま起き上がれない。

 ベンチでも他の選手たちが涙を流しているのが映し出され、陵應学園の大会が終わった事が告げられた。

 

「ふぇぇぇん・・・」

「え?なんでマキが泣いてんの?」

「だってぇ、シュウ君が悔しいだろうなと思って?」

「まぁ、気持ちは分かる」

 

 泣いているマキにギョッとしながらも理解を示し泣いているマキの頭を撫でながら慰める明日香、そして俊哉はただ黙ったままテレビを見ているだけだった。

 

 そしてその夜。

 俊哉は自分の部屋でスマフォを眺めていた。

 

「なんて書こうか・・・」

 

 秀二に対してどう話をしていいかが分からなかった。

 不本意な形での交代で敗北となればおそらく精神的にも辛いであろう。

 そんな親友に俊哉はなんて言おうかが分からなかったのだ。

 

「まぁ、普通でいいかな・・・」

 

 呟きながらスマフォで文字を打ち始める。

 “今日は不本意な形で降板して残念だったな。でも水分補給は基本だぞ?気をつけろよ?”と打つ俊哉は少しキツイかな?と考えながらも思い切って送信ボタンを押す。

 そして暫くすると返信が返ってくる。

 

「なになに・・・“うるさいわ!俺だって緊張してたんだ、まさかこんなことになるとは考えてなかったよ!”なんだよ逆ギレかよ」

 

 秀二からの返信にボヤく俊哉だが少し安心する。

 そして連続の返信が来て確認すると俊哉の表情がほころんだ。

 

「“でも、ありがとう。気をつける”か・・・」

 

 笑顔になる俊哉。

 そのままスマフォを閉じるのであった。

 俊哉は地区予選三回戦敗退、秀二は甲子園大会三回戦敗退。

 こうして、二人の最初の夏が終わったのであった。

 

 そして、俊哉たち聖陵学院野球部は次なるステージへと向かう。

 

 第弐章 完

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