二学期が始まった日。
姫野司はいきなり絶望の淵に立たされていた。
その理由はと言うと、転校生であった。
転校して来た彼女は藍野菫、容姿端麗の美人である。
また海外にもいた時があり、司自身叶う相手ではないと思っていた。
そんな彼女は、なんと俊哉に目の前で抱きついたのだ。
(い、いきなり抱きついた!)
しかもどうやら初対面では無く昔馴染みである事が分かる。
(そう言う仲なのかな!?)
「え、でもよく分かったね。俺がここにいるって」
「私のママと俊哉君のお母様が仲良いからね」
(互いの親同士承認の仲なの?!)
会話のたびに心の中でツッコミを入れると同時にショックを受けていた。
そして2回目のハグに司の心が折られる。
抱きつかれた俊哉が司の方を見るも司は目の前が真っ白になっていたのか気づいていない。
だが、司は俊哉では無く菫と目が合った。
「あ・・・」
菫と目が合い呟く司。
すると菫は司にニコリと微笑むが、司は思わず目を逸らしてしまったのだ。
思わずの行動に罪悪感を抱くが、今更見ることもできずにそのまま時間が過ぎて行き昼休み。
「・・・て、事があって・・・」
図書室で俯きながら話す司。
聞いていたハルナと由美は互いに顔を見合わせる。
「こりゃデカいライバルが来たわね」
「ムゥ・・・」
「二人とも?・・・」
涙声になりながら話す司。
ハルナと由美は少し考えると司の肩をポンと叩きながら。
「大丈夫。次があるよ」
「出会いは俊哉さんだけではないですよ」
「ちょ、ひどいよ?!!」
まさかの対応にガンとショックを受ける司。
「冗談よ冗談。でもなぁ・・・」
「相手が良過ぎるですね。しかも抱きついたとなると」
そう言いながら“うぅん”と唸る二人にションボリする司。
するとそんな3人の元へ誰かがやって来た。
「あの?」
「は・・・い!?」
3人の元へとやって来たのは菫だった。
ギョッとする3人に菫はニコッと微笑みながら、司を見て話し出す。
「あの、姫野司さんよね?」
「は、はい!」
声が裏返りながら返事をする司。
時間がゆっくりと流れるような空気の中、菫が口を開く。
「司さん。あなた」
「は、はい・・・」
「俊哉君の事・・・好き?」
「!!???」
ストレートな質問に驚き固まる司。
菫は彼女の反応を見て察したのか、話を続ける。
「そうなのね・・・じゃあ・・・」
(お?ライバル宣言か?)
(俊哉さん争奪宣言ですね)
ハルナと由美がそれぞれ考えている中、司の心臓はバクバクと打っていた。
ライバル宣言などされたら叶うわけがない、そう思っていたのだ。
「私・・・」
「ひゃ、ひゃい」
すでに泣き出しそうな司。
すると、菫は司の手を取りギュッと握るとパッと笑顔で話し出した。
「私!応援するわ!!」
「はい!御免なさい!・・・・え?」
ポカンとする司を始めハルナと由美。
菫は司の表情を見て首を傾げながら話す。
「あれ?違った?」
「いえ、あの・・・え?応援?」
「えぇ。勿論よ?」
「あの・・・菫さんは俊哉さんが好きなのでは?」
由美が会話に入ってくる。
すると菫はキョトンとしながら話す。
「えぇ好きよ?でもね、私はlikeの方なの。Loveではないのよ?それに?」
菫がそう言うと、司の長い前髪を手で?き上げる。
「やっぱり、可愛い?」
「ふぇ!?」
「勿体ないわよ可愛い顔してるのに」
「可愛い!!??」
「あら自覚ないのね?」
クスクスと笑いながら話す菫に顔を真っ赤にしながらワタワタとする司。
菫は司の前髪から手を離すと再び手をギュッと握りながら話を始める。
「私、司さんの事気に入ったわ?俊哉君が気になってる子何ですもの?」
「ふぇ!?ふぇぇ!?」
「私、凄い応援するわ!」
「え・・・えぇ?!」
満遍の笑顔から出て来た菫の言葉に、司は終始動揺していたのであった。