竹下が席を外してる間の俊哉と山本のショートコントが行われ、山本は冷静を取り戻し再び話し出す。
「俺も竹下に誘われてな、最初は俊哉と同じ反応を見せたよ でもな、アイツにはやると言ったことは絶対にやるという信念があった 正直竹下のやることは常識外れで無謀で誰に言っても笑われる事だ でも話をしていくうちに、少し楽しみになる自分がいたんだ そんで決め手は・・・俊哉、お前だよ」
「は?俺!?」
まさかの自分の名前い驚く俊哉。
「そんなんあるわけないじゃん。俺より村神とか神坂じゃない?」と必死の言い訳に山本はフウッとため息をつくと話を切り出す。
「いや、俊哉は自分が思ってるより凄い力を持つ人間だと思うよ?現に他にも何人かを誘ったときに俊哉の名前を出したら少し考えるって言ってくれたし」
「い、いやいやいやいや それはない」
と手を横にブンブン振りながら話す俊哉。
気が動転しているのか目をキョロキョロとさせ、手汗いっぱいになった手でカップを持ち気持ちを落ち着かせるように飲み物をグイッと飲み干す。
「俺にはそんな力はないよ」
「そうか?俺にはその力があると思うけど?俊哉がいると何かが違うんだよ 俺も上手く説明できないけど、何かが違う なんていうか・・・気持ちが落ち着くっていうか、何か大丈夫って気持ちになる」
思わず顔を赤くする俊哉。
そんな面と向かって言われたことのないセリフを言われて嬉しくない人はおそらくいない。
しかもこれがこんな眼鏡男子ではなく女性だったらなおさらだ。
そこで俊哉はハッとした。あの時に秀二が誘ってきた意味を今なんとなくではあるが理解が出来たのだ。
(なら、なおさら秀二と行った方が・・・)
と考える俊哉。
そんな彼を見ながら山本はまた話を切り出す。
「そこでさっきの竹下の話だけど、ただの強豪校の選手でいいのかって話になるんだけどさ、強豪を蹴ってあえて弱小校へ入り他の強豪校を蹴散らしていく。そんな無謀な夢、俺らで叶えてみないか?俺は俊哉とならできると踏んでるんだが?」
そう言い放つ山本に俊哉の心が少し揺れた。
そんな時に、ちょうど竹下が席に戻ってくると二人を交互に見ながらいう。
「悪い悪い、彼女からの電話でさ ん?どこまで話した?」
「竹下はここまでの馴れ初めと覚悟 そんで今俺がもう一度誘った」
「なるほど、てことでどうだ俊哉 このアホな夢、俺らで叶えてやろうぜ 俊哉がいるんなら出来る!」
最後のセリフに俊哉の心の何かがパンと音を立てて割れた。
俊哉の中では今までほぼ10割で陵應だった、しかし彼らの真剣な目で話されたこのバカみたいな夢物語に、俊哉は乗っかってみたいと思ってしまったのだ。
(我ながら本当に単純だと思うよ・・・でも、確かに・・・これは面白そうだ)
そう考えながら下を向く俊哉。
少し時間を置き、その顔を上げると真っ直ぐとした目でひとこと言い放った。
「その馬鹿げた夢、乗った!」
その言葉に迷いはなかった。
いくらでもバカにされても構わない、でもこの二人、いや高校生活で共に歩んでいくことになろう仲間となら、最高の高校野球が出来そうだ。
でもやるからにはとことんやり切るという思いだ。
この話はここで終わりカフェを後にする俊哉。
帰り道、俊哉は秀二と神坂にどう言おうかを考えていた。
「ん~、なんて言おうか・・でもやると決めたんだ とことんやってやんよ」
独り言をつぶやき、俊哉は駆け足で家へと戻ったのであった。