ぐだぐだしながら読んでいただければ。
どことなく怠惰な雰囲気が漂う立香のマイルーム。
「いやあ、立香の部屋は快適じゃのう。何と言ってもこの炬燵、人をダメにする力に満ち満ちておる。しまい込んだ炬燵をもう一度出そうと言ったわし、天才じゃろ。これぞ世にいう炬燵御殿じゃな」
だらけ切った顔で言う織田信長には英霊の欠片も感じられない。
「いつになったら片付けるんだ―とか、さんざん毒島さんにマスターが言われていたじゃないですか、大丈夫なんですかね」
「知るか。炬燵の魔力に抗えなかったと言えばよかろう」
「最悪の場合、ノッブを身代わりにしましょう、マスター。沖田さんがマスターが有利になるよう証言します!」
「先輩。私も参考人として証言します」
「目の前で行われるえげつない会話。あっ。伯母上―。茶々もみかん欲しいかも。とってとって!」
炬燵の上にあるのにも関わらず、ごろごろ寝たままみかんを要求する茶々に立香はため息を吐く。
「目の前にあるのに・・・」
「ええい、自分でとらんか。第一、静かにしとらんと、ブッスーに感づかれるじゃろうが」
「ブッスーって誰の事?」
立香の質問に、信長は毒島のことじゃ、と答えた。
「何それ、悪口にしか聞こえない!伯母上のセンスを疑う!」
「そうか?わしとしてはあやつの常に泰然自若な顔つきと、名前をかけた絶妙なネーミングだと思うんじゃが」
「また、そんなことを言って。毒島さんに聞かれても知りませんよ。あの人、どこで話を聞いているのか、すんごい地獄耳なんですから・・・。この間もこんなことがありまして」
『私は見た。Oさんは語る』
「どこのどいつだ、俺が大事にしているたくあんのツボの上に消臭剤なんて置きやがったのは」
大声を上げながら怒り狂う新選組の副長。たくあん命の土方にとって、それは悪・即・斬に値する案件だった。が、
「あたしだよ」
名乗り出てきた下手人が、カルデアで唯一の掃除のおばちゃんのため、彼にしては珍しく話を聞いた。
「おいてめえ。殺されてえのか。何の恨みがあって、こんなことをしやがった」
「はあ?どこかのバカが、人との会話中にもたくあんをかじったりするもんだから、あっちこっちに汁がこぼれてるんだよ!誰が掃除すると思ってるんだい!」
証拠として示された雑巾の黄色い跡に、さすがの鬼の副長も言葉に詰まる。
「ぐ・・・。そ、それがてめえの仕事だろうが」
「あたしの仕事は掃除だが、仕事を増やす人間には容赦しないんだよ。これに懲りたら、こぼしたのはふきな!もしまた繰り返されるようなら、あんたがカルデア内に隠し持ってるたくあん倉庫をナイチンゲールと強襲して、強制消毒・消臭するよ!!」
「なっ・・・。どこからそれを・・・ばばあ、てめえ何もんだ」
「ふん。ただの掃除のおばちゃんだよ」
「それでですね、さすがに土方さんも悔しかったみたいで、毒島さんが見えなくなってからぼそりとくそばばあがと呟いたんですよ!そしたら、次の瞬間!!『だれが、なんだってえ?』と、地獄の奥底から響くような声が!!」
「ええっ!!あの顔怖いマンがしてやられたの!?信じられない!」
「それよりも、毒島さんがナイチンゲールさんとタッグを組んでいるのが驚きです、先輩」
「うん。まるで2000万パワーズじゃないか」
「え!?何それ。かっこいい。一千万の力は分かるけど、一千万の技は意味分からんというのをすっとばしてわくわくさせるネーミングなんじゃが」
「ノッブは茶々さんと、織田ファミリーズを結成すればいいじゃないですか」
「ノッブと沖田さんでぐだぐだーずでいいんじゃない?」
「なんじゃ、貴様。おざなりに上に振りかけたネギ並みの適当なその名前は!」
「しっ!!静かに・・・・曲者!!」
「ノーッブ!!!」
沖田が天井を突きさすと、忍者のような恰好をした妙な生き物が現れた。
「ええええ!?これって、あのノッブから作られた謎生物でしょ!こんなのいたっけ。マシュ、知ってる?」
「私も初めて見ます!何か戦車だったり、UFOだったり、新選組だったりするのは覚えてますが。それよりも、先輩。この生物がいてよいのでしょうか。またあの変なぐだぐだ粒子がばらまかれるのでは。私もマシュマシュしてしまいます!」
「新種かもしれないし。捕まえてダ・ヴィンチちゃんの所に持ってけばいくらかくれるかもよ」
「その話乗った!入った金は炬燵周りの充実に注ぐとしようかの!」
「沖田さんは何か摘まめる物が欲しいですね!!」
立ち上がる皆をよそに煙玉を投げつけ、どろんと消える忍びノッブ。
「なっ!?げえほげほげほ。あの謎生物逃げたみたい。伯母上、ちょっと換気しよう!」
「仕方ない。扉を開けるかの。立香、よろしく頼む」
「安心安定の他人任せ。さすがにノッブはゆるぎない・・分かったよ、ちょっと待って・・ってうわあああああ」
立香がドアを開けると。
そこにはなぜか毒島さんが仁王立ちしていた。
「一度片付けた炬燵をまた出した奴がいるってええええ?」
「げ、げえええええ。なんじゃ、ブッスー。なぜにこの神タイミングで来るんじゃ!」
「ぶ、毒島さん。マスターは悪くありません。そこのノッブが勝手に仕舞ってあった炬燵を出してきたんです」
「汚い!壬生狼汚い!!散々炬燵をエンジョイしおった後にそれか!」
「沖田さんの言う通りです、毒島さん。先輩には寛大な処置を」
「ふん、どきな!!」
片付けられる炬燵。あまりの寒さに悲鳴を上げる面々。
「のう、そんなに寒くない筈なのに、出たとたんにこの世の終わりみたいに寒く感じるのはなぜじゃろう」
「知りませんよ。ううっ。もう少しみかんを食べておけばよかったです」
「まったく、ぐだぐだだか知らないがあんた達も少しはこの子達みたいに働いたらどうだい」
「毒島さん、この子達とはどういうことですか」
「あんた達、出てきな」
毒島さんの呼びかけに答えて現れたのは、さっき姿を見せた忍びノブを合わせて6人のちびノブたち。
「ノッブーーー!!!」
「え!?伯母上、こんな変な種類のいたっけ」
「わしも知らんぞ。こいつらまた独自に進化したのか!」
「ノッブ―ノブノブ!!!」
「自己紹介をするそうだ、聞いてやんな」
と言っても、ちびノブたちはノブノブしか言わないため、なぜか毒島さんが通訳をする。
侍姿のノブ→二天一ノブ
弓を持ったノブ→那須のノブ
槍を持ったノブ→つるっぱげノブ
騎馬のノブ→武田騎馬ノブ
忍びノブ→風魔ノブ
陰陽師っぽいノブ→安倍のノブ
「なんじゃ、その種類の多さは。単体ではなくチームで売っていこうというのか!抱き合わせ万歳な汚さじゃ!」
「いえいえ、ノッブ。それより、普通に会話が成立している毒島さんのおかしさに注目すべきなのでは?」
「あれ、でも。6騎しかいないけど。バーサーカーは?水着の伯母上みたいのがいないの?」
「ああ。婦長ノッブのことかい?今ナイチンゲールに貸してるんだよ。消毒作業で手が足りないらしいからねえ」
「ええい、貴様ら。わしから生まれた存在の筈じゃろうが。わしの言うことをきかんかい!」
「ノブッブ~」
ぷいっとそっぽを向くちびノブたち。
「そりゃあ、こんなところでぐーたらしていたらいくら名君でも見切りをつけるよねえ。」
「ノッブ―!」
「ああ。報酬かい?それじゃ、この飴ちゃんをどうぞ」
毒島さんの出した飴の袋を見て、マシュが驚きの声を上げる。
「ああっ!あれぞ世に聞く大阪のおばちゃんが常備する飴袋!!」
「知っているのか、雷で・・じゃなくて、マシュ!!」
「はい、先輩。日本の大阪という地方に住むおばちゃんたちが常備している飴の袋です。なぜかあげてもあげても無くならないとか!」
「何その素敵仕様!わしも欲しい!サイダー味かコーラ味はあるかの?」
「働いてない奴にはやらんよ!欲しけりゃきちんと掃除ぐらいしな!」
「掃除の対価に飴?すごい搾取っぷりじゃの!」
「あんた達がこぼしているおかしのカスの片付けを毎日しているあたしにそれを言うのかい?」
ニッコリと微笑みながら後ろに修羅が見える毒島さん。
「ひいいい。ちゃ、茶々は箒を持ってくる!!」
「沖田さんも、縮地を使ってちりとりとってきます!」
「おい、わしを置いていくな!立香にマシュ、おぬしたちなら分かるであろう?」
「先輩、私ぞうきんをとってきますね」
「ああ、頼むよ。俺はバケツを用意する」
「ちょおい!何わし、まるで駄々っ子?孤立無援?」
「ノッブー?ノブノブ?」
「ノブ・・・。ノブノブノブ」
「ほんやくこ〇にゃくを持て―い!!何を言っているかよく分からん!」
「『やらないのかな?本当に?』『ダメだろこいつは・・・。典型的なダメ人間だ』だってさ」
「なんじゃ、お前ら謎生物の分際で!!」
「あれ、後コーラ味の飴は一つしかないねえ」
ニタリと笑う毒島さん。
「なにい。それは駄目じゃ。茶々の奴もコーラとか好きかもとか言っとった。ブッスー、はたきを貸せい!塵一つない部屋にしてくれる!!」
「いい加減そのブッスーというのを止めな。レディに失礼だろう」
「レディというのは大分前に置き忘れてきたように思うんじゃが・・・ってひいいい。分かった分かった。他の呼び名を考えておこうかの。是非もないよネ!!」
この日、炬燵御殿は陥落した。
登場人物紹介
毒島さん・・・いついかなる時でも減らない飴は「ゲートオブアメロン」「無限の飴袋」などと呼ばれ、毒島さんの宝具だとはもっぱらの噂
7人のノブ・・・どこから現れたのか、なぜか毒島さんに付き従っている。かなり強くてスキル持ち。