「全く、第六天魔王たるこのわしを、飴玉一つでこき使うとはとんでもない奴じゃ」
「その割には、茶々さんと最後までコーラ味の飴を奪い合っていたじゃありませんか」
「コーラがいいんじゃ、コーラが。あのなんともいえぬ毒々しい色。傍から見たら大きな薬としか思えん色合いがなんとも言えなくてのう」
毒島さんに言われての掃除後、マスターにマシュ、沖田総司と織田信長は、ナイチンゲールの元に急いでいた。
毒島さんにつき従うちびノブたち。通称ちびノブ7(立香命名)の中で、唯一姿を見せなかった婦長ノッブが気になってしかたがなかったのだ。
「だって、婦長ノッブってことはどう考えてもナイチンゲールに似たノッブじゃないか」
「ふん。わしから生まれた分際で、他に推し変しおってからに。キャラ物では元祖こそ偉大な存在であることを知らしめる必要があるの」
「ノッブとついている時点で、相当残念な筈なんですけどねえ」
「はい。ですが、あのちびノブ7達はご本人よりも働き者です!」
「おい、マシュ。何かこの間からお主、わしに対して辛辣ではないか?」
「ノッブよりも働き者なのは同意だけどさ」
同意するんかい!という信長のつっこみを華麗にスルーし、立香は話を続ける。
「ナイチンゲールがあのちびノブ達を許容しているのが謎なんだ。イの一番に雑菌とかって言いそうなのに」
「確かに先輩の仰る通りですね。いくら毒島さんが使っているとはいえ、あの造形ですから」
「何何、わし、今ディスられとる?そういうキャラじゃったっけ?」
「ノッブの普段の行いが悪いからですよ」
「おや、マスター。どうしました、私に何か御用ですか。それとも、どこかで吐しゃ物でもありましたか。でしたら、まず吐いた本人は移動せず、吐しゃ物に消毒液を浸した新聞紙をかけておいてください。私とミス・ブスジマですぐに向かいます」
廊下の向こうからやってきたナイチンゲールは一息にそう言うと、くるりと医務室の方へと向きを変えた。
「いやいや、違う違う!」
慌てて立香が止めると、ナイチンゲールは首を傾げた。
「それでは急病人でしょうか。下痢・腹痛である場合に備えて、正〇丸なる薬をミス・ブスジマより頂いています。効果については、すでにDr.ロマンで検証済みですのでご安心ください」
「なんじゃと、下痢なら鼻くそ丸めた万金丹の出番じゃろうが!」
「おや、こんな所で何をやっているのです、メルセデス。貴方には食堂の除菌をお願いしておいたと思いますが」
「えっ!?ノッブはメルセデスさんだったんですか?初耳です。いつ改名したんです?」
「そんな訳あるかい!世界で唯一の存在であるわしが改名するわけなかろう!なんじゃ、そのどこかで聞いたような車みたいな名前は!」
「恐らく記憶のどこかにあったんじゃないかな」
「行きますよ、メルセデス。除菌が済まなければ、食堂に来る者が困ります」
「お、おい。ぐいぐいと引っ張るでない!わしはメルセデスとやらではないぞ!ってか立香よ。こやつ、全くこちらの話を聞いておらんではないか!」
「はい。ナイチンゲールさんですから」
「うん。ナイチンゲールだからね」
「ちょおい!それで終わりか、おぬし達!!ええい、なんちゅう怪力じゃこやつ!」
ずるずると信長を引きずっていくナイチンゲールに唖然とする3人。
そこへやってきたのは毒島さんと、ナイチンゲールっぽい服装をして眼鏡をかけたちびノブ。
「ノブ、ノブノブノブ・・・」
「ナイチンゲール、メルセデスが『その者と私を間違えるなんて遺憾です・・』だってさ」
「ああ、ミス・ブスジマ。貴方でしたか。成る程、確かにメルセデスにしては随分大きいですね。成長したかと思っていました」
ぽいといきなり信長を手放すナイチンゲール。
「あ痛ああ!いきなり手放すではない!」
「相変わらずお茶目だね、あんた。北側の廊下の清掃、消毒は終わったよ」
「素晴らしい手際です。やはり、あなたはとても優秀ですね」
「せ、先輩・・。ナイチンゲールさんが普通に会話しています・・」
「うん。いつもは一方的にしゃべっているだけなのに」
「もしもし、わしの抗議は無視?わしの人権いやサバ権どうなっとるの?」
「偉い人の話で擦り切れるほど読んだ偉人にそう言ってもらえて光栄だよ」
「ブッシュ―もええ加減にせんかい!」
「なんだい、そのブッシュ―って」
「お主がわしの考えたネーミングにケチをつけたからじゃろう?どうじゃ、イケてるじゃろ?」
「いやいやいやいや。どういう判断基準なんです、ノッブ。手へん、とかごんべんとかを思い浮かべますよ、普通」
「外国の大統領の名前でもなかったっけ」
「何かの発射音みたいな名前ですよ、信長さん」
「なに、そのフルボッコ!擁護コメは一つもないのか!」
『ノーッブ、ノブノブ・』
「なんじゃ、こいつ。ため息つかんかった?」
「『これが私のオリジナルですか、頭の消毒が必要ですね‥』だとさ」
「謎生物まで!ええい、待っとれ!キラキラネームを考えてやるわい!」
「いや、キラキラネームは駄目でしょう、ノッブ・・・」
立ち去る信長の寂しそうな背中にそっと声を掛ける沖田。
「それで、あんた達はなんだい?掃除の手伝いはいいよ」
「いえ、その毒島さんが連れているちびノブ達が非常に気になりまして。ちびノブ7と言われていたので、後一人婦長ノッブを見てコンプリートしようと」
「それに、ナイチンゲール。このちびノブ達はぐだぐだ粒子とかってのをまき散らすらしいんだけど、大丈夫なの?」
「平気です。問題ありません。事前にレオナルドダヴィンチに頼み、あらゆる検査を行い、滅菌・漂白済みです」
「まるで、茶渋のついた湯呑みたいな言い方ですね、マスター。」
「その言い方だとノッブが茶渋・。ううん、はっきり違うとは言いづらい・・」
「先輩のお部屋のマグカップは私がこの間ハ〇ターで漂白しておいたのでばっちりですよ!」
「お話はそれだけですか?では私は忙しいので」
「あ、ちょっ、ちょっと!!」
あっという間に医務室の方に姿を消すナイチンゲールに呆然とする一同。
「あたしも今度は南側の掃除が残っているから失礼するよ!」
「あ、毒島さん!そのナイチンゲールさんとは親しいんですか?」
マシュの質問にああと答える毒島さん。
「彼女とは衛生や消毒についての考え方が似ていてね。いつだったか、戦闘の後に血をだらだら流しながら笑って歩いてきたバーサーカー連中をのした時に意気投合したものさ」
「あの、マスター?言っている意味がよく分からないんですが。バーサーカーをのした?毒島さんが?ただの掃除のおばちゃんですよね、この人」
「せっかくあたしがきれいにした廊下に血をばらまいてて平気そうにしてやがったからね。闘った後で気分がハイになってたんだろうが、困ったもんだよ」
「すいません、先輩。私もついていけません。脳の容量オーバーです・・」
「げえっ。ぶ、毒島・・・」
そこへ通りかかったのはクーフーリンオルタと森長可。
「ほれ見ろ。今日はしっかりと血は拭ってあるからな!」
じろりと睨む毒島さんに見せつけるようにくるりと回転する二人。
「うん、行ってよし」
助かったと胸をなでおろしながら立ち去る二人にぽかんと開いた口が塞がらない3人。
「なんて言っていいのか、そのう・・・」
口ごもる立香の前にやってきたのは婦長ノッブ。
『ノッブブノブノブ~』
「『是非もないよネ~』だとさ!」
「いや、このノッブ。無駄に高性能じゃありません?」
登場人物紹介
毒島さん・・ほかにもしめられたバーサーカーはいた模様。毒島さん本人は敢えて黙して語らず。
メルセデス・ナイチンゲールが命名。なぜかその名にしたとのこと。