ゴジラvsシンデレラガールズ   作:キシ

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第二節・守護者
〈幕間:胡蝶のユメ〉


〈2021年11月〉

 

 私がG対策センターに就職したのは、本当になんでもない理由で、ただ安定した職場で事務仕事が出来ればいいと思ったから。

 国連組織と言っても下の方にいる限りはそこまで他の公務員と変わりはしない、そう聞いていたし半年間働いてみても人類の平和を守る組織に属しているとは思えないほど、仕事内容は普通だった。

 

 申し遅れました、私は三船美優。 今年大学を卒業し、G対策センターに事務員として就職しました。

 

 私が所属しているのは大阪G対策センター、東京に変わる新首都大阪へ越してきて8ヶ月あまり、岩手からやってきた私も都会に慣れてきた頃、M研究所という聞いたことの無い部署の所長からお達しがあって、私は本所横の建物へと案内された。

 

「あの、M研究所とはどう言った事をなさっている部署なんでしょうか? ここへ来て半年ですが、初めて聞いた名前なので……」

 

 私を案内する所長に尋ねてみるが、詳しいことは教えられないの一点張りだった。

 所長は還暦を迎えた男性で、物腰も柔らかく親しみのある人だと評判のようで、確かにそんな印象は受けたけど口は硬かった。

 セキュリティロックのかかった扉を2つ抜けると、何人かの子供たちの声が聞こえてきた。

 G対策センターに子供......? 疑問を口にするより先に、ガラス張りの部屋の向こうに4人の女の子たちの姿が見えた。 いずれも小学生、10歳前後に見える。

 3人はビーズでアクセサリーを作って、1人は黙々とスケッチブックに向かい絵を描いているようだった。

 

「皆さん、おはようございます」

 

 所長がドアを開けて中に入ると、女の子たちも一斉に挨拶を返した。 私もよく分からないままに挨拶する。

 ビーズアクセで遊ぶ女の子たちは溌剌としており初対面の私に対しても元気よく挨拶を返してくれたが、奥で絵を描く女の子だけは少し人見知りなのか、私の顔を見てスケッチブックを閉じてしまった。

 

「ああ、手は止めなくていいですよ、授業はもう少し後から始めます」

 

 後で聞いたところによると、彼女たちは怪獣災害孤児との事で、女の子ばかり少人数なのも理由があっての事だとか。

 所長はその中で1人、絵を描いている女の子だけを隣の事務室に呼び出して、私を連れて3人で部屋に入った。

 

「三船さん、唐突で悪いんだけど、君にはこのM研究所へ異動してもらいたいと思っている」

 

 本当に唐突な話で言葉が出なかった、所属して8ヶ月で人事異動など想像出来るわけが無い。 ただそれにも、理由があったようで……。

 

「ほら、自己紹介して、この人でいいんだろう?」

 

 所長の隣に座る女の子は、スケッチブックで顔の下半分を隠しながらもじっと私の顔を見つめていた。

 

「わ、私……成宮由愛……です……はじめまして……」

 

「はじめまして由愛ちゃん、三船美優です」

 

 彼女は人見知りに加え、重度の恥ずかしがり屋だった。 別に怖がられてる訳では無いのだと知って安心した。なんてことは無い、普通の女の子、けどその安心は次の瞬間に恐怖にも似た感情に塗り潰されることになる。

 

「由愛ちゃん、スケッチブックを彼女に見せてくれるかな」

 

「……はい」

 

由愛ちゃんはまだ恥ずかしそうにしながらも、スケッチブックを開いて見せた。 そこに描かれていたのは……。

 

 ──2021年9月、オルガが鳥取県にあらわれる、にげないと

 

 そんな文字と共に、オルガが炎上する街を襲う光景が色鉛筆で描かれていた。

 

「え……? あの……これは……」

 

由愛ちゃんがページをめくる。

 

 ── 2021年12月16日。 クモンガとカマキラス、神奈川県。 ゴジラ、花のかいじゅうとたたかう。

 

「12月16日……? クモンガとカマキラスに……ゴジラ……? 花の怪獣......?」

 

 おかしい、何もかもおかしい。

 だって今はまだ、2021年の11月なのに、どうして絵日記のように1ヶ月後の事を描けるの?

 

「所長……これは一体……?」

 

「三船美優さん、あなたを研究所へと異動させるのはこの子の意見です、この子があなたを適任だと選んだから、呼んだのです」

 

 意味が分からなかった、どうして1人の少女の意見で異動が決まるのか、さっぱりだ。

 

「この子には未来が見えます、この事は極秘であり、機密レベル2に該当する重要機密となります、決してこの事をレベル1以下の情報権限しか持たない職員や一般人に口外してはなりません」

 

 所長の口調はやはり柔らかかったが、強く釘を刺されたのは分かる。そして、ただ狼狽えるばかりの私に由愛ちゃんはこう言った。

 

「夢を見るんです……黄金の太陽が語りかけてくる、夢……何人もの女の子達と一緒に……その中で、私だけが会話できる」

 

「……?」

 

「美優さん、どうか私と……この世界を守ってください」

 

 ただの大学生からG対策センターの平職員になって8ヶ月……私は、未来を見通す事のできる少女に出会い、レベル2の情報権限を持つ中級職員になってしまった。

 その1ヶ月後、由愛ちゃんの見た未来は現実のものとなり……私の生きる世界は、見え方が大きく変わる事になる。

 彼女はまた夢を見ている、これから起こる現実を、誰よりも早く。 それは果たして、夢なのか?

 

 ただ一つ言えることは、彼女はただ純粋な普通の女の子だということです。

 

 

 

〈幕間:胡蝶のユメ〉 -完-

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