ガンダムビルドダイバーズ:Ricorda   作:麻婆炒飯

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今回でバトルロワイヤル編はおしまいです。


見て見て、μちゃんが何だかんだGBNでのバトルを推し機体と一緒に楽しんでるよ、可愛いね。


[第九話]クアドラプル・バトルロワイヤル[後2]

陽炎の中に舞い踊る巨影が2つ。大地に燻る炎を踏みつけ空より降り掛かる火の粉を払い、2機のMS(モビルスーツ)が一進一退の熾烈な格闘戦を繰り広げていた。

 

ここはシャッフル・ディメンション、フィールド設定地上、森林地帯……だった場所。2機の苛烈な戦闘の余波を反映するようにフィールドは目まぐるしく変質し、そこは周囲に燃え盛る樹木やらかつてそうであった煤の塊が散乱する焼け野原となっていた。

その惨状すらも気に留めず、未だお互いの武装を全力で振るってぶつかり合い続ける2機のガンプラ。

 

片や全身を真紅に彩った躯体で独特な形状の剣を振るう紅い悪魔、ガンダムバルバトス・レグルス。

 

片や鮮やかなトリコロールの躯体に大振りの剣と盾を構え、時には格闘補助兵装の射撃も織り交ぜて応える鮮烈な翼、ウイングガンダムゼロ・ブリランテ。

 

「あぁもう…ガンダムフレーム系統機…無駄に素早いし装甲も堅くてやりずらい…!」

 

「そりゃあスイマセンね、けどそういうお嬢さんこそ…ルーキーの動きには見えないよッ!」

 

「ッ!わざわざ声まで掛けてきて…気が散る…!」

 

「はは…おじさんこう見えて結構寂しがり屋なんだよ。ちょっとぐらいお喋りに付き合ってくれると、おじさん的にも嬉しいんだけど…とォッ!」

 

多少の相違はあれ、かれこれもう10分は似たような会話を繰り返している。また同じくらいの時間状況が動かず膠着状態のままで、いつまで経っても終わりの見えない打ち合い避け合いが続いていた。

その最中、紅い悪魔のパイロット───オズマは先の戦闘でMr.炒飯が言っていた言葉を思い出す。

 

(「GPDの亡霊といい…ホント参っちゃうよ…」)

 

GPDの亡霊。そのまま解釈するのならばそれは正しく、GBNを受け入れられなかった引退組が思い浮かぶ。だが受け入れられずに辞めていった者が今更ルーキーとして現れるだろうか?

仮に心機一転GBNに参入したとして、態々そんな異名で呼ばれるようになる事をするだろうか?

答えはNOだ。これが数年前のGBN黎明期だったり、それこそGBNの歴史…という観点で大きな事が起きた2年前───マスダイバー動乱こと第一次有志連合戦や、ELダイバーが命として認められる契機となった第二次有志連合戦が発生した混迷期───ならばまだ分からない事も無い。だが今はGBNもそれなりにアップデートを重ね、ここ最近は特別大きな事件も無かった、謂わば安定期と言える時期だ。このタイミングで、GPD引退組がわざわざそんな行動に出るというのはあまりにも効率が悪い。

以上の観点から、「GPDの亡霊」が引退組の誰かである可能性は限りなく低いだろう。

 

(となると、やっぱ考えられるのは───、)

 

かつてのGPDの栄華を見て育った、もしそのままGPDが健在だったならば、次の世代を担っていたであろう子供達。その中でも、世界大会本戦出場者の誰かに憧れた重度のファン。それが出来の良いガンプラを組めるぐらいまで成長して、その上で今の「GBN人気」に対して度合いの程は不明だが、多少なりとも己のGPD愛を拗らせた厄介者───。

 

(なぁるほど…見えて来たぞ…この娘の正体…こういう場でリアルに踏み込むのは宜しく無いんだが…先達として話を聞く義務ぐらいはあるか…)

 

オズマは1つの決心を固めた。これはきっと自分達の…かつてGPDを愛し彼方で戦った者達がGBNへ時代を継承するにあたって、やり残した課題だ。

同じくGPDを愛してくれた者達、自分達の戦いを見てくれていた人達。その中にも少なからず存在する、GBNへの移行に従って楽しみを失った人達への落とし前。多くの人は考え過ぎだ、と。そう言うだろう。けれど今目の前にそうして拗らせたファンがいるなら、無視する訳にはいかない。

そう決めてオズマは、通信機をプライベートチャットに切り替えると、今この瞬間も斬り結び合っている眼前のガンプラを操るGPDの亡霊(かつてのファン)へ、自身の頭で思い付く限りの言葉を投げ掛けた───。

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

視点は移り変わる。

 

ビームソードを振るい、敵の斬撃を避け、時に耐ビームコーティング塗料での対策を測ったシールドで受け流し、十数分もの間幾度となく斬り結び合う。この膠着状態を繰り返すブリランテのコックピット内で操縦桿を握る力を強め、μは歯噛みをする。

此方がビーム兵器主体で、相手は高度なビーム耐性を備えている以上この状況は充分予測の範疇だ。

だとしても敵の格闘センスが高い、一手一手が巧く力強く、中々上手を取る事ができない。

そして何より気に食わないのは、相手が何処か全力で無い事だ。この敵は何故かは知らないが、私のガンプラ(ブリランテの戦い方)を見定めるような戦い方をしている。まるで戦い方を教わっているような気分になる。

…そしてこの戦いをほんの少し心地良いと思ってしまっている自分自身にもどうしようもなく腹が立つ。

ここで勝って、Dランクのルーキーがいきなりある程度知られた大会イベントで優勝したとなれば確実に注目度はあがるはずだ。そうしてあわよくばチャンプを含む高ランク帯のダイバー達の目に留まり、彼等に挑みかかる機会を手に入れる。

そして、そうして…彼等から本心を聞き出す。GPDの事をどう考えているのか。…それを聞いて私がどうするのかは、未だに決めあぐねているけれど、それでも、そこまではとっくに決まっていた。

…当然、この問は勝った後でこの男にもするつもりだ。仮にもGPD世界大会の本戦に出場経験がある者、それだけ深く関わって来た彼が、今のGPDに対してどう思っているのか。本心を聞き出す。

そうすればきっと、この先の私がどうするのかも、決まるはずだから。だから、ここで必ず勝つ。

そう思考の内で何度も決めては自分自身を洗脳し、この戦いに対する戦意を維持させ続けていた。

その時───、

 

『なぁ、お嬢さん。アンタは何がしたいんだい?』

 

「ッ────!!」

 

質問が聞こえてきた。今戦っている、あの男の声だ。何がしたい?そんな事は決まっている。このGBNで最強になって、その最強がGPDを推す方針を広める。そうすれば、かつての最盛期程では無いにせよ、少なからずある程度の人がGPDへと今より良い目を向けてくれるはずだ。そう───、

 

(GPDの復権…それが私の……)

 

『もうGPDの流行りが過ぎ去ってから随分経つ。…なんだって今更、そうもGPDに拘り続ける?』

 

「──────は…?」

 

意味が解らない。この男は何を言ってるんだ?

流行りは過ぎ去った?

拘り続ける?

そんな事、私が強くなって、それでGPDを推せば…

 

『今となっちゃGPDの事を知らない奴だって少なからず出てきてるくらいだ、そいつらも亡霊の名で脅かすのか?GPDを忘れさせない為に?』

 

知らない?このGBNの源流にもなっているGPDを?そんな心無い人がこんな所にいるはず───、

 

『今更GBNでそんな事をして何になるんだよ、お嬢さんも、もう少し気楽に生きようぜ。』

 

『もう、縛られる必要は無いんだよ』

 

 

 

そこで身体が勝手に動いた。こんな事は非効率的だというのに、相手が振るうビーム刃に自身のビームソードの刀身を打ち当て、粒子同士の干渉を発生させ刃の競り合いへと状況を落とし込む。

 

「そんな事、思ってたんだ。…貴方みたいに、他の人よりも、ずっと、GPDに近しい、人が。」

 

『───は?いや、えっと…お嬢さん?』

 

怒っていた。…違う、哀しかった。自分の好きが、こんなにも遠い存在だった事が。こんなにも、下手したら、上位ランカー達よりもGPDに近しい人が、GPDを縛られるものだと思っていたなんて。

 

「もう、いい。話す事はもう無いよ。」

 

もう何も聞く事なんて無い。

やるべき事は決まった。

 

私は、GPD(私の好き)を陥れたGBN(この世界)を赦さない。

 

両手に握る2つの操縦桿の真ん中。コンソール画面を操作し1つの確認画面を開く。Dangerと表示された最終確認欄を承認して、奥の手を起動した。

 

 

HA···DE···S······

 

 

不穏な機械音が木霊する。

続けて生物とも機械とも形容しきれない、

不気味な、まるで……

 

冥府の王が嘲嗤っているかのような音が響く

 

ウイングゼロブリランテのツインアイに、

これまでと違う紅い光が灯り、刃を打ち合わせていた腕部が力を失うように垂れ下がる。この事態に、オズマは形容し難い不安を覚えた。

そして…聞こえた音に対する覚えに辿り着く。

 

『何だ…ハ、デス…?…ッ!まさかッ』

 

『隙有り!貰ったァーッ!』

 

その刹那、ブリランテの後方の燃え盛る森林地帯の中から突如としてガンダムTR-6ウーンドウォートの改造機が踊り出て飛び掛る。

1人撃墜されて残り3人…その内今まで存在が視認出来なかった決勝常連組最後の一人、ウーンドウォート乗りのフラファは何らかの機構を用いてずっと潜伏していた。どちらかが隙を見せ、背中ががら空きになったところを狙って討ち倒す為に。

そして今この瞬間、ついに腕を脱力させたブリランテから明確な隙を見つけだし飛び掛って来たのだ。

ウーンドウォートの改造機はその両腕に装備したコンポジット・シールド・ブースターに備えられた併せ2機の高出力ビームキャノンを撃ち放つ。

二条の光線は的確にブリランテの背中を捉え…地面を吹き飛ばす爆風と共にその姿をかき消した。

 

『よし…次は君だよ、ルーキー君…!』

 

『当たってねぇよ馬鹿後ろだッ!!』

 

『は?何言っ……て…嘘……』

 

ウーンドウォートが次の獲物を狙い定め、それに対しオズマが通信機越しにフラファへと怒鳴りつけた直後、ウーンドウォートの胴部にX字状の熱線が走る。一瞬の出来事にフラファは理解する事すら出来ないまま…爆散し電子の海へと還った。

燃え盛るフィールドと、爆散の光に紅い瞳が映える。右手にビームソードを、もう片手に元々ウイングガンダムに備え付けられているビームサーベルを構えたブリランテが、生き物らしい動き全てを廃して立ち、そして無造作にスラスターをふかし飛び出す。即座に振るわれる2本の剣を、オズマのバルバトスは辛うじて受け止める事しか出来なかった。

 

『ガぁ…ッ!くっそ…重過ぎる、だろ…!』

 

ブリランテは一瞬たりとも止まらない。通常ならば人間が操作している以上必ず発生する、思考から行動へアウトプットするまでのコンマ数秒のラグすら存在しない。本来なら有り得ない挙動だった。

それもその筈、μが起動させた『HADESシステム』はニュータイプ殲滅を掲げた開発者の執念によって生まれた対ニュータイプ用OS『EXAMシステム』、そのデータを簒奪した研究機関がそれをベースに、新しく開発した戦闘用OSである。

このOSは最早パイロットを1つの制御器感としてしか扱わず、それ故に常軌を逸した反応速度、戦闘技能を発揮する。…が当然その対価は大きく、パイロットの安全性を一切鑑みない挙動は強大な肉体的負担を与え、適合率やセンスが上手く噛み合わなければ、最悪の場合コックピット内でミンチになる可能性さえ有り得るというあまりにも危険な代物。

勿論VRゲームであるGBNでそんな非人道的なシステムを再現するはずは無い。精々が反応速度と性能強化、理論上の最大値まで再現しても多少の演算から相手の行動を予測、回避して見せる程度だ。

だがこのブリランテの挙動はあまりにも苛烈で、まるで『本物のHADESシステムが積まれているのでは無いか』と疑いたくなる程。

 

『どうなってる…!これじゃまるで…ッぐぁ…!』

 

ブリランテの膂力がバルバトスのそれを上回り、圧倒的な力量差で競り勝つ。直後、ブリランテが上体を低く下げ…その真上を弾かれビーム刃を消失させたレギルスライフルベースの兵装から放たれたビーム砲が通過する。

 

『読まれた!?くっそ…が…』

 

最早遅かった。回避に当てる動作を反撃に費やしそれすら読まれたバルバトスには大きな隙が生まれ、

そして情けも慈悲も無い今のブリランテは決してそれを逃さない。下げた上体から腕を回してビームソードを返し振り上げ…そのまま的確にバルバトスの胴と腰の間。フレーム部分を斬り裂いた。

駆動部を容赦無く断ち切られ、立つ事が困難になったバルバトスがその場に膝をつく。既に戦闘能力を失った相手に対しブリランテ…否、HADESは…

赦す事無く、その場で振り上げたビームソードを再度振るい、頸や肩…フレームがある程度露出し防御の甘い箇所を的確に破壊し、わずか数十秒の間にバルバトスをスクラップへと変えてしまった。

 

 

《Battle Ended Winner μ !!》

 

 

フィールドに勝利を告げるアナウンスと、μの完全勝利を祝う盛大なファンファーレが鳴り響く。

だが今のμにその音は聞こえていない。

司会のトラッキーが何やら言っている気もするが、それもうまく聞こえない。燃え盛るフィールドに立つブリランテは獲物を失って沈黙し、HADESシステムの余波で未だ赤熱しているスラスターをふかし紅い光を放って飛び立つ。帰還ゲートを越えて誰とも会話する事無く、トラッキーから贈呈されるメイン優勝景品すらも無視して、自動的にストレージへと贈られる副賞のみを受け取り、勝った割にそっけない態度に唖然とする人々へ振り返る事も無く、全てを置き去りにして1人その場を立ち去った───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「GPDを蔑ろにする奴は…誰だろうと……」

 

 

 

 

 

 




作者の歪んだ性癖のせいでμちゃんが闇堕ちしてしまいました、あーあ

※主人公闇堕ちにつき今後の言動を加味してタグにアンチヘイトを追加しました。
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