ガンダムビルドダイバーズ:Ricorda   作:麻婆炒飯

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終了とか言いつつまだ筆トランザムが止まらないので投稿しちゃいます。
歓喜の筆トランザム効果恐るべし。


[第十四話]それぞれの時

某日、現実(リアル)────、

少女は自室に籠り、

机に向かって愛機の改造を行っていた。

 

ガンダム・ウイングゼロ・ブリランテ

 

全ての始まりは、GPD世界大会の記録映像。イタリア代表、「不死鳥」の異名を冠する男に憧れた。

そして彼の影を追うように、彼の愛機を最大限にリスペクトしたガンプラで、GBNへと参戦した。

それから短い間に様々な事があった。

時には道を誤り、多くの人に迷惑を掛けて。

それでも何とか軌道を修正し、自分が本来歩みたかった道を再確認して、新たな道を見つけ出した。

 

GBN世界ランキング一位、

不動のチャンピオン「クジョウ・キョウヤ」と、彼の率いるフォースAVALONとの禊は、道を誤った事で酷く曇った私の心を晴らしてくれた。

 

そして何より、これまでの戦いの中で初めて、

「友」と呼べるような人が出来た。

名をオズマ───ある時期のGPDにて、たった一度ではあるが世界大会本戦にまで上り詰めた経験を有する、相応の実力を持ったダイバーだ。

 

私が1人でやるつもりだった禊に乱入して来た彼の愛機───ガンダムバルバトス・レグルスは正に悪魔の所業とも言える戦いぶりを中継を通じて見せつけ、そして後一歩というところで逆転敗北を喫した。

 

今回、彼等との禊を通じて私には本来の目的以外にも幾つか得たものがあった。

1つは、気付き。

これまで誰にも頼ろうとせず1人でやってきたから気付けなかったが、どうやら私は「近接格闘が苦手」な部類だったらしい。考えてみればオズマと初めて会ったバトルロワイヤルでもHADESシステムが無ければ間違い無く負けてたし、「ビルドダイバーズのリク」にも剣の打ち合いで思いっきり競り負けた。

だがその反面、精密狙撃や砲撃殲滅etc…種類は数あれど射撃系統技術ならば一抹以上の自信がある。

 

これが以前…まだ道を踏み誤っていた頃の私なら頑として認めず、格闘重視のままでいただろう。

けれど今なら理解できる。

リスペクトは、ただその人の真似をする事では無い。それは切っ掛けであり、心なのだ。

そして、その心を私自身が忘れる事さえ無ければ、決して私の好きが忘れられる事は無い。

 

私は、私の好きをただ一箇所に集約した。

私の好きを───彼の「不死鳥」への憧れを、彼の代名詞たる、左肩アーマーただ一点に。

あらゆる改造を施していく中で、この肩だけは譲れない。財団Bが名だたる世界ランカーとの交渉の末に実現した、通称「GPD世界級ビルダーMSレプリカ」の1つである、「ウイングガンダムフェニーチェ」、

その肩を採用し、そして強化を施していく。

ヨノモリ塗料───GPD最盛期以前から界隈に名を轟かせる超高級塗料。他企業の塗料を子供の玩具と幻視する程に高額な品だが、その品質は圧倒的だ。

その精度はGBNにおいても、ただ素人技術で塗るだけで耐ビームコーティングとしての性質を獲得する上、上手く使いこなせばガンダムフレーム系統でも無い機体がナノラミネートアーマーとも並び得る強靭なビーム耐性、及び剛性を獲得する。

 

だがそれだけではダメだ。

少女は予め用意していた箱からプラスチック性の極薄フィルムを取り出すと巧みに切り取り、ヨノモリ塗料で青くと白に塗装し乾燥一歩手前の左右非対称の肩アーマーにそれを貼り付け馴染ませる。…完全にフィルムが塗料と馴染み張り付いたら、今度はその上から更にヨノモリ塗料を塗り施す。

謂わば三重の防御。決して削れず、壊れず、貫かれない、究極の鎧。私の意志の象徴。

だが当然こんなやり方を全身にやれば何処かでボロが出て、逆効果になってしまいかねない。

なのでこの手法を使うのはほんの一部、

「私の好き」の象徴である肩アーマーと、

「私の個性」の象徴である新たな翼(・・・・)だけだ。

他はこれまで通りの塗装…とはいえ使用するのは

ヨノモリ塗料だが、それだけで済ませる。

 

肩の完成を待つ間に席を立ち、水分補給と小休止、換気を挟んでから部屋の片隅にある押し入れの扉を開け、奥に隠した箱を取り出す。そこから取り出す小箱を開いて中身…私が最初に作り、けれど途中で「これは彼らしくない」と封印した物を手に取る。

 

ブリランテの新たな翼。

EW版ウイングゼロ…通称ゼロカスタムのウイングバインダーを更に2枚増やした、六枚翼のユニット。

これに先程の肩アーマーと同じ塗装、乾燥、極薄フィルムに再塗装、と処理を重ねていき…乾燥待ちの枠に設置して、今すぐに出来る事は全て終えた。

開け放たれた窓から冷たい空気が流れ込んで来る。幸いにもこの地域は他より幾らか湿度が低く、乾燥にはだいたいどの時期でも困らないから良い。

既に日が傾き初めた外の景色を一瞥し、窓を閉めて夜用の乾燥機を起動した。そして小休止の間に梱包したとある箱を持って部屋を出る。

 

「あと少しだよブリランテ…また一緒に飛ぼう。」

 

分解され乾燥段階にある愛機をもう一度見て、誰に言うでも無く呟き、そして部屋を出た───。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

時と場所は移り変わる。

とある格安マンション、その中層階にある一室に彼は住んでいる。日が中天まで高く登る時間帯、休日で仕事も無い男は、家事を終え干し終えた布団をベッドに敷き直して、気だるそうに寝転がっていた。

 

「あ”ぁ”〜……燃え尽きた……」

 

だらしない声を上げ1人怠ける男の名は、

御堂 和真(ミドウ・カズマ)、一世を風靡したGPDにおいてそこそこ名を轟かせ、引退から10年以上のブランクを経て数ヶ月前、ついにGBNへと参戦したCランクダイバー、

「オズマ」のリアルの姿である。

名の由来は幼い頃、漢字の意味を知った悪友達からミドウ、をオドウと読まれていた事に由来する。

オドウ・カズマ→オズマ。随分と安直な気がするが、歳をとって若々しいセンスを失ったアラサー一歩手前の男にはこれが限界だった。

それでもこの名はそこそこ気に入っている。

 

そしてつい先日、GBNにて一世一代の大立ち回りを演じたカズマは熱意を使い果たし燃え尽きていた。

真っ白である。

男の一人暮らしに似合う最低限の家事洗濯、自炊こそしているものの後は仕事と怠けるのみ。

GBNに参戦する前と同じ生活で英気を養っていると……部屋備え付けのインターホンが鳴り響く。

 

「…んぁ?誰だ…」

 

怠惰の海から引きずり出されたカズマはこれまた気だるそうにベッドから這い出て、眠たそうに目を擦りながらのそり、のそりと玄関へ向かう。

 

「はいはーい、どちら様です、かぁ…っと?」

 

「宅配です、此方にサインをお願いします。」

 

「んぉー…そうかい。」

 

何か注文した記憶は無いんだが…田舎の両親も仕送りしてくるようなガラじゃない。…の割に配達員が持ってる箱は両手で抱える程度には大きい。

怪しく思いながらもカズマは配送表へサインを済ませ、一仕事終え離れていく配達員を見送った。

 

「お疲れ様ですよぉ…っと。んで、何だこれ…送り主に覚えは…無いな。…いや、この住所どっかで見た覚えが……ダメだ分からん、まぁいいか。」

 

不信感より怠惰が勝ったカズマは思考停止。

玄関の扉を閉めて確かに施錠し、部屋へと戻って怪しい箱を開封する。すると中には───、

 

「これは……ん、手紙…?」

 

入っていたのは、カレトヴルッフのキット6個とフライトユニット、それに幾つかのパーツ。

そして手紙と上げ底を挟んで…上げ底の下より手紙が先に目がついた為、其方を先に読む事とした。

その内容は────、

 

『私の再起に付き合ってくれた貴方へ、ささやかな御礼の品を贈ります。これでGPD最盛期の頃の、もっと強い本気の貴方を見せてください。…とはいえ今の貴方の武器は十二分に強いと思うので、贈ったキットはスラスター特化で採用すると良いと思います。箱は上げ底になっているので、その下に詰めてある贈り物も、遠慮なく使ってください。』

『亡霊から紅い悪魔へ、感謝を込めて───。』

 

「───μか…いやアイツどうやって俺の家の住所を知った?それに上げ底の下って……うぉっ、マジか…ヨノモリ塗料じゃねぇかよ…しかもこの種類と数…アイツ何だ、石油王か何かだったのか…?」

 

感謝とか驚愕とか、それ等よりも先に困惑が頭を支配した。μはどうやら只者では無かったらしい。

誰がどう見てもささやかでは無い品々に息を飲み、しかしこれが事実なら、と思考を巡らせ…

 

「ふ、む……いや、コイツが贈られて来たのは事実だ、住所も間違いじゃない。…解ったよ、信じてやる。後で返せとか言っても知らねぇからな…!」

 

燃え尽きていた心に再び火が灯る。自然と口角が吊り上がり、かつての獰猛さが返ってくる。…もう止まれる気にはならなかった。作業台の荷物を片付け贈られた品と作業道具を広げ、その中央に己の愛機を巧く分解して作業手順ごとに配置した。

 

レグルスを進化させる作業を始める。

…否、ガンダムバルバトスレグルスがかつてGPDで失った翼を取り戻す為の作業が始まる。

これを初めに見せ付けてやるのは勿論、μ。まさかアイツが機体をあのままにしておくとは思えない。

 

「待ってろよ…次は互いに驚させ合う日だ。」

 

時は進む。日が落ち、夜が更ける。

再起を果たした2人の亡霊は、互いに互いを高めるべく改修作業に没頭していった──────。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

夜が深くなる。

GBN、JAPANディメンション。

以前よりも少し欠けた月を背に立つ白に紫檀の刀使い。今日も武者は挑み来る者達を斬り伏せ、敵の全滅を以て再び訪れた静寂にため息を吐く。

 

「些かばかり、飽いたのう。…件の「もびるすーつ斬りの悪魔」とやらも此処にはおらぬ様であるし、名だたる猛者も此処には未だ出向き来る気配も無し。…外へ征くか。風情は今より拙好みでは無くなるであろうが、やはり戦えなければ意味も無し。」

 

刀使いは納刀し、月を見上げる。

それを操るダイバーはコックピットの中で、静かに、しかして獰猛さを感じさせる笑みを浮かべた。

 

「く、ふふ…待っておれよ若武者共。亡霊、悪魔、龍に羅刹に魑魅魍魎。全て…全て拙の糧としよう。」

 

 

夜は…深くなる──────。

 

 




次話から第2部本格スタートになります。
…まぁ具体的に何をするかとか何にも決まってないんですけどねっ!!

そして、青いカンテラ様作、GBN総合掲示板より、ヨノモリ塗料の設定をお借り致しましてございます。どうやらμちゃんはただでさえ高級なヨノモリ塗料を爆買いしていったようです…
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