ガンダムビルドダイバーズ:Ricorda   作:麻婆炒飯

17 / 38
筆トランザム解除から結構な休憩を挟んだので初投稿です。

※今回も青いカンテラ様のGBN掲示板より、ヨノモリ塗料の名前が登場します。


[第十六話]無双ミッション HARDモード

GBN内バトルエリア、

眼下に青き星、地球を称える宇宙。

ひとたび背を向ければ何処までも広がる昏い宙の只中に、2機のMSがそれぞれ陣取っている。

 

1つは鮮やかなる天使。

ウイングガンダムゼロ・ブリランテ・SC

ただ主の指示を待つのみ、とでも言うかのように静寂を保ち、純白に輝く六枚翼を折りたたみ頭部を除く機体全身を包み隠した「防御形態」で待機する。

 

1つは真紅の悪魔

ガンダムバルバトスレグルス・R

狩りの時間はまだか、まだかと急かすように回路を胎動させ、時折開かれる排熱口から放たれる熱気がその躯体をより恐ろしく幻視させる、「排熱待機状態(スタンバイモード)」でその瞬間を待ち続ける。

 

正反対な2つのガンダムが待っているのは、

「無双ミッション:HARDモード」の開始を告げる電子音。周辺宙域には既に、頭部にX字状の光を称える白灰色の機影───GN-X(ジンクス)が無数に配置されている。

 

今回μ達が選んだ無双ミッションは───、

「機動戦士ガンダム00」───歴代作品の中では珍しく西暦、つまり現実から連なる未来を舞台に描かれており、他にも今までには無かった要素を多数取り入れた事も相まって中々の人気を誇る作品───その1stシーズンをテーマにしている。

 

開幕前から見える敵影はGN-Xが主体という事もあり、このミッションは1stシーズンの中でも後半を舞台としているのであろう様子が伺える。となればそこから敵の予測もある程度容易なものとなる。

まず主体はGN-X、そして節目ごとの乱入枠に戦争屋アリー・アル・サーシェスの搭乗するガンダムスローネツヴァイ、アレハンドロ・コーナーの駆る黄金のMAアルヴァトーレ及びその内部に仕込まれたMSアルヴァアロン、そして締めにグラハム・エーカーのGNフラッグ、といったところだろう。

 

「となると、まず警戒すべきはサーシェスの強襲。金ジムはオズマに任せるとして、問題はこっちがある程度疲弊した後に出てくるフラッグ…」

 

ブリランテSCのコックピット内でミッションの詳細を考察するμ、しかしそこまで思考を巡らせたところで通知にミッション開始間際、そこに至るカウントダウン開始を知らせる電子音が鳴り響く。

 

「ッ!始まるよオズマ、行ける?」

 

『はいはい、新機体のお披露目会にしちゃ少しばかり過激過ぎる気がするが、問題はねぇよ。』

 

考察を一旦中断させて通信回路を開き、隣で脈動する悪魔を駆るダイバー、オズマへと声を掛ける。

返ってきた反応は普段と何ら変わりない軽いものであり、それが逆にμの心を落ち着かせてくれた。

 

「はぁ…こんな所で負けたら絶交だから。」

 

『随分と手厳しいなぁオイ…わかったわかった、こっちもできる限り全力でやらせてもらうよ。』

 

他愛ない会話だ。それでもμの心はこの短期間で、あれ程嫌っていたGBNで人と真っ当に会話が出来る程度には立ち直ることが出来ていた。

μのリライズ、その証を皆に示す為の1つの仕上げが始まる。そしてついに、それを知らせる電子音と共に虚空へコンソールが現れ───、

 

『Mission Start !!』

 

 

真っ先に動いたのは───μだった。

startの通知が鳴るなり両手に非連結状態で装備したツインバスターライフルを左右斜め前に構え、引き金を引いて山吹色の閃光を撃ち放つ。

二条、黄金の輝きが真っ直ぐ飛び、彼方に展開されたGN-Xの軍団を薙ぎ払うように呑み込んでいく。

その数実に12機。HARDモードという事もあって決して低くは無いランクの思考ルーチンに設定されたNPDに前身も後退も、反抗や降伏を選択する余地すらも与えずに容赦無く消し去って行く。

もしもこれが本物の戦争で、彼方のGN-Xに生身の人間 が乗っていたのならば、あまりにも無慈悲であると社会から糾弾されかねないような手口だ。

だがこれはGBN(本気の遊び)だ。μは消失させた敵を気に止める事もせず、次なる一手へと着手すべくスラスターを燃焼させて、高速での移動を開始した。

そんな中オズマの駆るレグルスは───、

 

「ははッ…μの奴、相変わらず良くやるよ。…さてと、じゃあ俺も…やってやるかねェ…ッ!!」

 

髪を掻き上げる。予めダイバールックに設定されたギミックにより髪型が炎のように変化し、その表情も普段のくたびれたおじさんを彷彿とさせるものから、獰猛な獣が浮かべるそれへと変貌する。

二条の黄金によって切り開かれた一本の道を、猛り昂る紅い悪魔が一気に飛び翔け抜ける。

手にした双刃を構えそして────、

 

「ハッハハ!どうしたNPD!テメェ等上位のAIだろうが、ちょっとは反応して見せろよォッ!!」

 

陣形を組んだGN-X2機の間を潜り抜け、その刹那に2機の胴を抵抗の間すら与えず真っ二つに切り裂く。

豹変したオズマがコックピット内で咆哮し、操縦桿を大きく引いてレグルスを旋回させるとそのまま踊るように飛び回りそして…一撃目と併せ7機のGN-Xをナマス切りにして、瞬く間に葬って見せた。

 

これで19機。無双ミッションはテーマごとに多少差異はあれど、基本的に量産機の合計出現数は100機、と相場がだいたい決まっている。

そして次の一手を撃つべくμが移動させたブリランテが左右にツインバスターライフルを構えて発射、続けてそのまま機体を360°旋回させる技能…

通称ローリングバスターライフルを用いて新たに出現した11機のGN-Xを、出現座標を高精度に再現されたゼロシステムの力で予測する事で、宙域への登場直後に次々と薙ぎ払って撃破していく。

僅かな座標ズレによる討ち漏らしは周辺を飛び回るオズマのレグルスが討ってくれるので無問題だ。

当然オズマがローリングバスターライフルの流れ弾を受ける可能性は想定していない。この程度、彼ならば確実に避けて抜けられると思ったから。

そうして予測の通りレグルスは回転して迫る黄金の光を縦横無尽に回避し、そのまま戦闘を続行する。

 

ここまでで30機、おそらくは史上最速、ミッションの開始から実に19秒間の出来事である。

これが1度の作戦会議も無く編み出したぶっつけ戦法、ただひたすらμが撃ち、残りをオズマが片付ける。至極単純で、しかしそれ故に、2人の間に確かな絆が無ければおそろしく難易度の高い作戦だ。

 

そして似通った戦法でGN-Xに対する見敵必殺を続けていると…ついにμが危惧していた相手が出現した。

 

「来やがったか…サーシェスゥッ!!」

 

アリー・アル・サーシェス。

機動戦士ガンダム00の主人公、刹那・F・セイエイの幼少期を詳しく知る男にして、その余りにも凄惨で、過酷すぎる過去を作り上げた元凶の一人。

 

作中時間においては戦争屋として再び刹那の前に姿を現し、そしてその後に現れる「チームトリニティ」からガンダムスローネツヴァイを強奪、乗機としてソレスタルビーイングの前に立ちはだかる。

その機体も新型の名に相応しく、格闘戦に長けた機体でありながらオールレンジ兵装「GNファング」による多角的戦闘にも長けた実に厄介な機体である。

そしてそんな新型機とアリー・アル・サーシェスに対し、μが選んだ行動は────、

 

『よォ、楽しそうd───、』

 

アリー・アル・サーシェスの思考ルーチンを精巧に再現した上位AIが通信機越しに語り掛けてくる。…がμはその会話が始まるよりも早く、真下からツインバスターライフルの不意打ち射撃で消し去った。

 

「どんなに強い相手でも、戦う前に不意打ちで勝ってしまえばその他大勢と変わらない。」

 

「容赦ねぇなぁ……」

 

μ、無表情で勝利のVサイン。

一方オズマおじさんドン引きである。

 

ここまでの撃破数は50、ミッションのテーマを考慮すれば問題の2機は最終版と思っていいだろう。

そうして次の敵機出現に向けて再度陣取ると…

 

『EMERGENCY!』

 

2人の機体センサーがアラートで新たな敵の出現を知らせる。しかしそれは────、

 

「はぁ……?」

 

「誰だよこの構成考えた奴……」

 

センサーに表示される敵影、その数50。

2人は作った奴出てこいと言いたくなる気持ちに駆られた。何をどう罷り間違ったら後半の量産機を全部同時に出してしまおうだなんて思えるのか。

だが起きてしまったものは仕方ない。これもHARDモード故なのだと、割り切るしか無い。

μは息を飲んで再度操縦桿を握り直すと、通信をオズマに繋いで若干早口気味に語り掛ける。

 

「オズマ!10秒…ううん、8秒だけ場をもたせて。前にちょっと言ったアレ、やるから…!」

 

「はぁ!?お前マジで…ああもう仕方無ェ!解った、直前でも合わせっから合図はしろよな!」

 

その会話のみで互いに全てを理解し、そしてオズマは前方の大群を見据える。μは機体を翻して宙を飛び、ブリランテの防御形態解除を開始した。

 

白銀の六枚翼がゆっくりと開き、天使がその全容を露わにする。胸部の物体が緑光を帯びて煌めき…

μの機体操作によって、ブリランテの腰翼へ隠すようにマウントされた装備が解禁された。

三本の棒状オプションパーツが、連結されたツインバスターライフルへと装着される。

『メッサーツヴァーク』、作中において製作、装備されたバスターライフルの威力強化用追加オプションパーツ。それによって齎される威力は凄まじく、ある男が見せられた悪夢の中ではその一射のみで国家を丸ごと1つ滅ぼしてしまう程であったという。

 

そしてそれを、理論上は可能ではないかというμの結論から3機、ツインバスターライフルに連結装備させた超広域殲滅用強化収束形態────、

名を『ドライツヴァークツインバスター』という。

着々とランクを上げながらも、今だ明確な決め手の獲得に至っていないμが考案した、ただひたすらに威力上昇を突き詰めた結果の武装だ。

 

そしてそれはオズマという男に全力で頼る事によって、彼女が考えた真価を発揮する────、

 

「収束完了、行くよオズマ!」

 

「よし来た!ぶち抜くぜェッ!」

 

ウイングゼロブリランテが、六枚翼での姿勢制御を維持したまま正面彼方に広がる大軍勢に砲口を向け、その中心を仄かに輝かせる。

過剰火力が空間に電磁波を生み出し、放たれる前からその威力の凄まじさを伝えそして────、

 

「ドライツヴァーク・ツインバスターッ!!」

 

「からのォ…拡散だァッ!!」

 

放たれる閃光。

先程までとは比べ物にならない黄金の輝きが真っ直ぐに飛び……その中心へ突如割り込み飛び込んできたバルバトスレグルスの躯体へと、見事命中する。

自前の双刃を投げ出し大型クローを重ねるように組んだバルバトスレグルスが受けたビームは、その躯体に施されたナノラミネートアーマー…それも元の完成度から来る基本的なソレに、ヨノモリ塗料による追加装甲を経た事で獲得に至った、通常よりも遥かに堅牢な鎧が極大の光を八方へ拡散させる。

8つに割れた極光はしかし、拡散されて尚もそれぞれが最大出力バスターライフルの一撃と遜色ない威力を発揮したまま敵の群れへと襲いかかる。

かつてμがまだ迷走しオズマに追われていた頃、彼との戦いの中でμの放った砲撃がレグルスの装甲に拡散されて周囲に降り注いだ現象を覚えていたμが、それを更に突き詰めた戦法てして成立させた技。

無数の閃光が敵を1つ1つ確実に呑み込み消し去っていく。そうして発射から5秒が経過する頃には、敵の数は残り10機までその総数を減らしていた。

 

「上手く…いった…!」

 

「流石のヨノモリ塗料だな…こっちも問題無しだ。んじゃあ残りをさっさと、片付けねぇ、と…!?」

 

残された敵を掃討してしまおうと彼方を一瞥した瞬間、前方から迫り来る極太の光にオズマが驚き機体を急操作するも、咄嗟の回避は僅かに間に合わず左肩を一部掠める。…今度はヨノモリ塗料が無ければ危なかった。そう言っていい程の火力であった。

 

「おいおい…最終版にはちと早ぇぞ…?」

 

「ホントこれ考えた奴殴りたい…」

 

2人が一瞥した彼方に現れたのは、黄金。

全身を黄金色に染め上げたド派手な機体が赤い粒子の尾を引きながら向かってくる。そしてその後方…

遥か彼方を捉えたセンサーは、高速で迫り来る黒の機体を映し出した。

 

アルヴァトーレ、そしてGNフラッグ

どちらも機動戦士ガンダム00/1stシーズンの最終決戦において出現する、所謂ラスボス枠である。

だが本来その2機が同時に現れる事はまず無く、まず黄金のMAアルヴァトーレ、そしてそのコアユニットであるアルヴァアロンを撃破し、その後に表れるのが原作再現であり、定石である筈だったのだ。

 

だがしかし、今それが2機同時に現れている。それも未だGN-X10機を残したままで。

つまりここからはGN-X10機とアルヴァトーレ、遅れてくるGNフラッグの相手をせねばならない。

この状況になった時点で、μは沸点に達した。

 

「…あぁぁもうッ!オズマ!もう1回ドライツヴァークするから持たせて、多分金ジムは耐えるからその後の相手はお願い、私は変態を潰すッ!」

 

「お…!?お、おう解った。」

 

本来ドライツヴァークはそう何度も放つものではない。インターバルも挟まず次を撃てば損壊は必至だろう。…だがここはGBNだ、壊れても暫く使えなくなるだけ。負けさえしなければ大金星である。

 

そうしてμとブリランテは、次なる一射へと手を講じた。…戦いはまだ、長い────、

 

 

 

───────────────、

 

──────────、

 

────、

 

 

 

あれからどれ程の時間が経っただろうか。

宙域は再び静寂を取り戻し、無数のMS/MAだった残骸と、2機のMSのみが漂うように静止している。

2機…レグルスとブリランテ。紅い悪魔の手には激戦の中でもぎ取ったアルヴァアロンの頭部が握られ、その周囲には金色の残骸が散乱している。

鮮やかな天使の両手には酷使によって自壊しボロボロになったツインバスターライフルとメッサーツヴァークの破片が、そして周囲にはGN-XやGNフラッグの残骸が散らばり、最早どれがどの機体の残骸だか、訳の分からない状態になってしまっている。

混迷の極みにある惨状ではあるが、

それでも2人は…勝利を掴み取った。

 

『Congratulations !』

『Mission success !』

 

両機のコンソールに映されたミッションの攻略を告げる画面を見て、また同時に消えていく機体の残骸に認識してようやく、勝利の自覚が芽生えてきた。

 

「や、った…!」

 

「ハハ…案外出来ちまうもんなんだな…」

 

機体が電子に包まれ、格納庫へと帰っていく。コックピットに入ったまま、愛機と共に移送される2人の心は途方も無い疲労感と、それを遥かに上回る確かな達成感に占拠されていた────。

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

セントラル・ディメンション、中央ロビー。

ミッションカウンターにて報告を済ませた2人は、これまでに無い満面の笑顔を湛え、そして互いに───2人には身長差がある為μが兎の如く跳ぶ羽目になってはいるものの───手を叩き合わせた。

「ああお姉様、笑顔のお姉様も素敵…!私、私…影から静かに、お姉様の事を見守っております…!」

「────っ…!?」

 

「ん?どうしたμ」

 

「…ううん、何でもない。」

 

その日の残された少しの時間を他愛ない会話に費やした2人は日が完全に落ちると共にお互いログアウトし、現実世界へと帰っていくのだった───。

 

 

 




無双ミッションは思っているよりもずっと鬼畜な仕様です。何ならNormalモードでも量産機だけとか言っときながら「強い人が乗った量産機」も稀に登場するのでとてもタチが悪い。

…ここまで読んでくださった皆様、
ちょろっとページ最下部の夜間モードをONにして、少しだけ遡ってみてくださいね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。