ガンダムビルドダイバーズ:Ricorda   作:麻婆炒飯

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今回と次回、主人公が登場しないので初投稿です。


[第十七話]それぞれの戦い/悪魔と武者

天使と悪魔、μとオズマがたった2人の無双ミッションHARDモード攻略から数日が経ったある日。

GBNセントラル・ディメンション中央ロビー。

この日オズマは、μの予定的な都合がつかないというのもあって久々にソロでGBNを満喫していた。

 

「さて…暇になって来たは良いが…こっち来ても暇だな。まだレグルスの新装備…ついでにアレも完璧には使いこなせちゃいねぇし、軽く腕慣らし出来るミッションか相手でも見つかれば好都合なんだが……」

 

「もし、そこの紅い人」

 

「…んお?アンタは───、」

 

カウンターへと足を向け踏み出そうとした直後、背から掛けられた声にオズマは振り向く。そこにいた声の主に、オズマは見覚えがあった。

 

「あー…あの時の…この間は助かった、お陰で放蕩兎は見つかったよ。…で、何か用か?」

 

そう、手指にのみ穴が空けられた鎖骨程までの長さで途切れている黒の全身タイツに身を包み、その上から和風のコートを羽織って、腰に刀を提げた長身の女性。以前μが約束をすっぽかして新作パフェに攫われた時に、その行先を教えてくれたダイバーだ。

記憶を明確に思い出したオズマは一言礼を述べてから要件を問い、女性もそれに応じて口を開く。

 

「いやなに、拙は昼間というものがあまり慣れぬ身故、気まぐれに足を踏み入れてみたは良いものの、何をするか今一つ決まらぬ。そこで辺りを眺めておれば、手持ち無沙汰のようであった其方を見掛けたのでな、一戦交えぬかと誘いに来たまでよ。」

 

「……ふ、む?んん…?…あー、これはつまり…バトルのお誘い…って事で良いのか…?」

 

女性…いつまでも性別で呼び続けるのは失礼に当たりそうなので、仮に「侍さん」と呼ぶことにしよう。ネーミングセンスが酷い?だまらっしゃい。

侍さんの何とも言えない古風な物言いに少し混乱し、普段よりも言葉の意味を噛み砕くのに時間が掛かってしまう。聞き慣れない言葉を聞いて即座に理解するというのは、存外に難しいものだ。

 

つまり、侍さんはオズマとバトルがしたいのだという。言われてみればそこまで不思議な話では無い。彼女は言葉遣いだけでなく立ち居振る舞いが正しく武人のソレであるし、そもそもここは元々ガンプラバトルを主目的として存在している場所だ。何も驚く事は無い。オズマ自身がこれまでここの主な趣旨と若干ズレた活動方針を執っていたせいで、オズマの脳が麻痺していただけだったのだ。

 

「受けては…くれぬのか…?」

 

「うっ……解った、受ける。」

 

180cm程度に設定している自分とあまり身長が変わらない、中々の高身長である侍さんが少し悲しげな声音で再び問い掛けてくる。武人然とした雰囲気で気付かなかったが思ったより可愛いぞこの人。

オズマとていい歳の男だ。異性に精一杯甘え頼って来られれば、そう簡単には断れない。

 

「そうか…!そうか…!では早速参ろう!さあ参ろう、ほら参ろう、すぐ参ろう…!」

 

侍さんは途端に元気になると物凄い速度で踵を返し、次の瞬間にはもう空いているフリーバトルエリアの選定に入っていた。行動力の化身かこの人は。

オズマは乗せられたかと深くため息をつくも今更決めた事を反故にする訳にも行かず、気付けば既にバトルエリアを決めて歩き出した侍さんの後ろを、渋々とついていくのだった────。

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

GBN ウィルダーネス・ディメンション

ガンダムシリーズにおいて数多登場する荒野のフィールドを律儀にほぼ全て再現しているGBNであるが、とあるダイバーの発した「全部荒野なのにいちいちエリア移動するの面倒じゃね?」という言葉を切っ掛けに生み出された、リアルの地球中のあらゆる荒野地帯を繋げた「荒野のごった煮」ディメンション、それがウィルダーネス・ディメンションだ。

 

その中でも特に平地としての性質が強い、正しく1対1の決闘(タイマン試合)にはお誂え向きのエアーズロックエリア。フリーバトルエリアとして成立している広大な台地の上で、2人の人物が向かい合っている。

 

「そういやお互い、名前も聞いて無かったよな。これからタイマン張る相手の名前も知らないってんじゃ夢見も悪いだろ?…俺はオズマだ。」

 

「ふむ…確かに一理ある。…拙が此の身に抱いておる名は「ヒバリ」、しかと覚え置くが良い。」

 

侍さん改め、ヒバリの名を確かに聞き覚えた。成程、口ぶりだけかと思いきや名まで和風ときた。和をテーマにしたダイバーなのは間違い無いだろう。

和…武者をテーマにしたファイターといえば、第7回GPD世界大会にて名を馳せた、米国の若き天才(アーリー・ジーニアス)を思い出す。彼は一度出場した後は一線から退き運営側へ回ったと聞いたが…その辺りの詳細は一部の彼と懇意にしている者達しか知らないのだろう。

 

一度懐かしい記憶に思いを馳せたオズマは、しかしすぐに現在へと思考を戻し瞳に強い力を宿す。

コックピットの外では初めて、人の見る前で己の髪を根元から搔き上げて意識をシフトさせ…

 

「さァやろうか、ヒバリさんよ…ッ!」

 

出撃演出をカットしてストレージから出現させたレグルスに飛び乗る。そして応じる様にヒバリも笑みを浮かべ、同様に出現させたガンプラへ搭乗する。

 

「アストレイベース…機体まで侍かよ…」

 

ヒバリの乗ったMSは、見る限りアストレイシリーズベースと思しき機体。フレームカラーこそ和風の紫で落ち着いた雰囲気を宿しているが、X1フルクロスをイメージしたらしい肩アーマーのデザインが陣羽織のようで、アストレイ元来の鋭角的な頭部や胸鎧風の胴も相まって武人の威容が伝わってくる。

 

「武装は刀…だけ、か…?」

 

全容の見えない肩アーマーの中身こそ分からないものの、それ以外の部分には射撃武器もビームサーベルも見当たらない。あるものと言えばレッドフレーム恒例の、腰にマウントされたガーベラストレート…であると思われる日本刀一本のみ。これがレッドフレームベースならば、掌の「光雷球」にも警戒が必要だろうが、それを加味してもヒバリの愛機は近接格闘に全てを振ったような構成の機体であった。

 

『観察は、もう良いか?』

 

「ッ───!」

 

レグルスの操縦桿を握ったまま考察を重ねていると、不意に通信が繋がれ声が掛かる。ディスプレイに映っていたのは、ヒバリだった。どうやら此方が考察を終えて動き出すのを待っていたらしい。

随分と律儀な事だ。彼女からすれば此方は隙だらけなのだし、不意打ちも先手も好きにできただろう。なのに、彼女は此方が動き出すのを待っていた。

 

「ったく…ああ良いぜ、始めようか…ッ!」

 

『では拙も参ろう、いざ…ッ!!』

 

 

『Battle Start !!』

 

戦闘開始を告げる電子音。

2機は同時に踏み出し、間もなく衝突した。

レグルスは2本のレグルスリッパーを振りかざし、紫色のアストレイはただ一振りの日本刀を抜刀し、互いにその刃をぶつけ合う……筈だった。

 

光が舞う。

 

オズマは咄嗟に操縦桿を引いてレグルスの身を後方跳躍させ、相手と距離をとる。両手を見れば、構えていた自慢の双刃はベースとなったレギルスライフルの真ん中から真っ二つに断ち斬られていた。まるでビーム耐性の全くない物体をビームサーベルで斬ったかのような、乱れ1つ無い見事な切り口。

敵のアストレイは、実体剣でありながらビームサーベルに比肩する圧倒的な斬れ味を見せ付けたのだ。

 

「嘘だろオイ…どういう理屈だよ…!?」

 

「何、どうと言う事は無いとも。ただ刃を限界以上に研ぎ澄ませ、限界を超える我が身に追いついてくれる躯体を用意した。ただそれだけのこと。」

 

そう言う通信機越しに映ったヒバリのいる場所に、オズマは何処と無く奇妙な見覚えがあった。

デフォルト設定のガンプラ操作コックピットでは無い、μやオズマが設定しているオーソドックスコックピットとも違う。輪を組むように配置された複数の機械と、その中心に立つヒバリの姿。…オズマはその異様性からすぐに、コックピットの正体に気付く。

 

「も、モビルトレースシステム…!?GBNはこんな代物まで再現してるってのかよオイ…ッ!」

 

モビルトレースシステム。

機動武闘伝Gガンダムに登場するコックピットシステムで、搭乗者が生身に直接着用する専用の「ファイティングスーツ」を介して、機体とペアリングする事で操縦者の動きをそのまま反映、再現するという他作品には見られない異色の操縦システムだ。

加えてこの機体、「ガンプラとはとても思えない人らしい動き」をしている事から、ヒバリが言っていたついてこれる躯体、というのも想像がつく。

このアストレイはモビルトレースシステムによるヒバリの動きに合わせて中身を弄ってある(・・・・・・・・)のだ。

流石にどんな改造を施しているのかまでは解らないものの、それが解っただけで目の前のアストレイと、ヒバリ自身が今までの誰とも違う、常軌を逸したモンスターダイバーである事は明白だった。

 

「チッ…想定外にも限度ってもんが…あぁもうこうなったら仕方ねぇ、やるっきゃねぇか!」

 

オズマは1つ吹っ切ると操縦桿を握り直し、切断された事で役割を果たせなくなり放電しているレグルスリッパーを放り投げ、肘に被さっている大型クローを展開装備して、再び両手を構える。

最早相手の姿は見知ったダイバー侍さんでは無く、1人の敵…油断の出来ない強力な武人、アストレイ使いのヒバリへと認識を改めざるを得なかった。

 

「どうだ、拙の操る躯体アストレイ・月煌と、我が愛すべき真打「八咫(ヤタ)」の味は?」

 

「ああ、あぁ驚いたさ。だがもう食らってなんかやらねぇ。来いよ侍、悪魔の異名が伊達じゃねぇってとこ、見せてやらァッ!!」

 

オズマが吼えた。レグルスも呼応して排熱機構を開き悪魔の威容を見せつける。その姿を見たヒバリは、コックピットの中で…これまでに無い、過去最上の圧倒的な歓喜に身を震わせていた────。

 

『嗚呼…愉しみだ…ッ!』

 




このバトル、続きはまた次回───( ˇωˇ )

誤字脱字報告等とても助かります、些細なことでも教えて下さると幸いです。
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