(誤字修正)
μちゃんの身長を10cm縮めて160cm手前くらいにしました( ˇωˇ )
電子の海の更に先、仮想世界GBNのスタート地点にして最も人が集まる場所、セントラル:ディメンションにその日新たなダイバーが降り立った。
「っ、と…ふぃー、まさかキャラクリに2時間近くも掛かるなんて思わないよ…アバターも組み合わせもパターン多過ぎだってGBN……」
降り立って早々ボヤく者の姿は───
腰下程まで隠れる大きな獣耳付き黒パーカー、黒のニーハイソックスに黒のシューズ、と怪しいのか少女趣味なのかわからない黒ずくめ衣装の、これまた黒髪少女。160cm手前程の身長にスレンダー体型で纏めた現代っぽいアバター。
多種多様なアバターを設定出来るGBNにおいて、そこまで浮かない格好をしている彼女のダイバーネームは『
「さ、てと…ミッション受付は…」
『おやおやお嬢ちゃん、新入りかい?』
声を掛けられ振り返るとそこには、紫に緑のアクセントが加えられたモヒカン、黒革に痛々しい棘が生えたジャケットと、見るからに無法者と言わんばかりのアバターを纏った男がいた。μはその誰に聞いても満場一致で怪しいと言われそうな姿の男に目を細め、一応話を続けてみる。
「あぁ、はい。つい先程始めたばかりのμです。それで、どちら様ですか?」
『おうよ、オレサマはDランクダイバーのヤン・チー、右も左も分からねぇ新人ダイバー達に始めの手解きをしてやってるのさ。もし何をしていいのか分からねぇんなら、簡単なミッションをアッセンしてやるぜ?』
「あー、はい。分かりました、ミッションの斡旋よろしくお願いしますヤンチーさん。」
『いよし来た!んじゃあコイツをそこのカウンターで受けて来な、そしたらコンソールのここを押して格納庫に移って、そっから出撃すりゃあミッションスタートだぜ!』
そう言ってヤン・チーが自身のコンソール画面を操作して、μへクリエイトミッションを送信する。受け取ったμは何の気なしにカウンターへ向かい言われるままにミッションを受注して…男に見送られて格納庫へと向かって行った。
ミッション内容
目標:ヤナギラン3本の採集、提出
推奨ダイバーランク:F
開始地点:ハードディメンション・ヴァルガ
GBN格納庫、そこはログイン時にスキャンしたガンプラが原寸大───この場合はHGこと144分の1を基本とする為MGやPGガンプラはスキャン出来なかったり大き過ぎたりする───で格納されている、GBNプレイヤーが始めてまず最初にGBNの何たるかを知る場所である。
それは予め情報を収集しつつも実際には初見であるμもまた同様で……
「わ、ぁ…これが本来の大きさのブリランテ……」
凄い、圧倒される。これがGBN。そのまま十数秒そこへ立ち尽くしたままになってしまったところで気を取り直し、己の頬を軽くひっ叩いて気を引き締める。
「っ…よし、こんな事で足踏みしてたら話にならない。行こうブリランテ、ここから始めるんだ。」
答えるはずの無いガンプラに声を掛け、リフトからハッチへ飛び乗りコックピットへと乗り移る。内部の機械類はおそらく再現なのだろう、見るからに小難しそうな機器やらコードの羅列が混乱を呼び起こす…事は無く何となく感覚で弄り方が分かってしまう。感覚が告げるままにシステムを立ち上げれば同時に機体が射出口へと運ばれ、目の前の扉が開き全ての支度を終える。あとは…やはりお決まりのアレは必要だろうか。必要だろう。
「すぅ………はぁ……よし」
深呼吸を1つ、心を落ち着け正気を確かめ、操縦桿をその手に握る。正面をしかと見定め……
「ガンダムウイングゼロブリランテ、μ、
射出レーンから機体が勢い良く滑り出される。レーンが途切れ空中へ放り出されると共にブリランテはスラスターをふかし光を灯らせ、力強く飛び上がった。目指す先はハードディメンション・ヴァルガ、ミッション詳細に書かれたその場所へと転移するポータルゲートへ、真っ直ぐ飛び込んだ。
────ハードディメンション・ヴァルガ────
そこは無法地帯である。GBNにおいてダイバー同士のバトルとは、専用のミッションやフリーバトルエリア、互いの同意を得て解禁するフリーバトルモードが基本となるが、ヴァルガと名付けられたそのディメンションは唯一、そこにいるだけで不特定多数とのフリーバトルに同意した状態になる。即ちいつでも誰でも、どんな相手でも自由にバトルを仕掛け仕掛けられ、撃ち落とし撃ち落とされが罷り通る場所なのだ。しかし、その欠点は実装から早々に発見されていた。害悪ダイバーによる、初心者を言葉巧みに誘い出し問答無用で刈り取る情の欠片も無い戦法。直接ルールに抵触せず、また一応は双方の同意という扱いであるが為に運営も違反と明言できない現状にある。故に普段は上位クラスのダイバーやお節介焼きの先輩ダイバー達が目を光らせているのだが…彼等も人だ、全てに手が回る筈も無く、その日もまた1人、初心者が巧みな言葉に乗せられて無法のヴァルガへと足を踏み入れてしまった。
「ここがヴァルガ……こんなところに花なんて…」
『へへへっ…悪ぃが嬢ちゃん、オレサマの為に
無慈悲、この言葉通りだろう。哀れな初心者ダイバーμを誘い出したヤン・チーの駆るジャンキー・ザク───肩や胸部、機体の各所に痛々しいスパイクをあしらった正しく悪そうな改造ザク───がヒートホークを振り上げ、高らかな叫びと共に、振り下ろした!赤熱した刃は無惨にもブリランテの背を切り裂く………事は無かった。
『─────あぇ?』
ズシャン、と重たげな擬音が見えてきそうな音を立てて、ジャンキーザクのヒートホークが右腕の先半分ごと灰色の地に落ちる。ヤン・チーはすぐさま状況を理解する事が出来ず、間抜けな声を上げ…その声は通信機越しにμの耳にも届いていた。走った軌跡の先には、ブリランテの右…その手に大振りなビームソード───ガンダムXに登場する他作のビームサーベルよりも大型の剣───が握られた右腕がある。ブリランテを駆るμは、既に見抜いていた。その上でのこのことヴァルガまで付いてきて、奇襲を仕掛けた敵の腕を切り落としたのだ。
「───あれ、少しズレた。やっぱり練習は必要だな…まあいいや。ねぇおじさん、騙すならそんなあからさまな悪党スタイルじゃなくて、もう少し優男みたいな優しそうなアバターでやった方がいいと思うよ。じゃあね。」
『は、はぁ!?テメェ…おいお前らいつまで隠れてんだ!さっさとこのガキや…ギャアアァァァッ!!?』
μの若干煽り地味だ発言に逆上し、不測の事態に備え周囲に隠れさせていた仲間を呼ぶ…がそれよりも早くブリランテは左腕に装備したウイングシールドの先端をジャンキーザクの腹部へ押し当て直後、複数回の発砲音と共にジャンキーザクが蜂の巣になる。シールド裏に隠された二門の砲口…マシンキャノンから流用したソレを発砲したのだ。如何に改造されたザクといえど、相当に作り込まれたマシンキャノンをゼロ距離から撃たれれば無事では済まない、それが連射となれば尚更だ。ヤン・チーのジャンキーザクは瞬く間に重要機関部を破壊され、爆発と共にデータの海へ…格納庫へと強制送還された。
『『あ、アニキーっ!!?』』
「うるさい邪魔」
『『なっ、ウワァーッッ!!?』』
一瞬で撃破されたヤンチーに遅れて反応する手下と思しき2機の色違いジャンキーザク───ヤン・チーの機体は黒紫に彩られて居たのに対し、手下2人は青灰色と濃緑色である───は最早おまけと言わんばかりに、片やビームソードを投げつけ紫胸部を貫き、片やすぐさま腰裏にマウントしていたバスターライフルで撃ち抜き消し炭にする。…その時間、ヴァルガへの到着から実に2分弱の出来事であった。ブリランテはそのまま投げつけたビームソードの発振器を取り戻しシールド裏へしまい込むと警戒態勢を続けたまま、セントラルディメンションへと帰るポータルに飛び込んで消えていった。
その姿を、ヴァルガに常駐し戦いに身を費やす戦闘狂達のうち幾人かが見ていた事にも気付かないまま………
─────セントラル・ディメンション─────
「ふぅ…ぶっつけ本番はやっぱキツいか…ちゃんと正規の初心者ミッション受けよう。」
つい先程、ハードディメンション・ヴァルガにて3人の無法者を葬った機体、ウイングゼロブリランテを駆るダイバーμは、微妙な疲れを蓄えたような顔つきで受付カウンターへ向かう。そして練習ミッションをこなして機体操作への慣れと、あわよくばあの男…ヤン・チーから受けた、時間無制限ミッションのヤナギランを安全に収集出来る場所を探そうと試みるのであった。
ヤン・チー
ハードディメンション・ヴァルガを拠点にする害悪ダイバーにして初心者狩りだけでDランクまで上り詰めた害悪ダイバー。つまり害悪。
両肩本体と付属片鎧、胸部装甲に膝と各部に黄金色のスパイクをあしらった黒紫色の痛々しい改造ザク、ジャンキー・ザクを操る。武装はヒート・ホークとザクマシンガン。もっぱら不意打ちで稼いで来たので正面からの戦闘技能は下の下である。手下に色違いのジャンキー・ザクを駆るEランクダイバー、『メン・チー』と『カッツ・アーゲ』を抱える。
3人ともダイバールックは世紀末ヤクザ風アバターである。何故そんな見るからに悪党とわかりやすい見た目で人を騙せると思ったのか。きっとこれでも引っかかる可哀想な初心者ダイバー達の被害が後を絶たないのだろう。
※当作に登場するオリジナルキャラクターは、ハーメルン内のビルドダイバーズ二次創作作品において良識の範囲であれば自由に使って頂いて構いません。ヤンチー3人組はヴァルガ入口周辺を拠点にしている点のみ留意して頂ければ、ご自由にサンドバッグにして貰って大丈夫です。