ガンダムビルドダイバーズ:Ricorda   作:麻婆炒飯

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ついにフォースネストお披露目なので初投稿です




[第二十四話]家、そして家族

「今日、か…」

 

「うん。…そろそろ来ると思うんだけど…」

 

ある日、GBN中央ロビーカフェブース。

フォースGloriaの面々は一部緊張したような面持ちで、ある人物の到着を静かに待っていた。

 

待ち人のダイバーネームは、「トーチ」という。

μがメンバーに見せたプロフィール添付画像から、その人物は腰まで届く長い黒髪と、白を基調にした、ファンタジー作品に出てくる何処かの宗教の枢機卿のような法衣を纏った男性である、との事だ。

 

そんな目立つ格好をしていれば当然、姿を見れば即解るというものである。その筈なのだが…

 

「来ませんね…」

 

「そう、だね…何してるんだろ…」

 

「Zzz……」

 

トーチ本人がGloriaとの約束に指定した時間から、既に10分が経過しようとしていた。

μはトーチが心配なのかそわそわし始め、ズィーベンは愛しのお姉様を待たせる不届き者に苛立ちを募らせる。挙句ヒバリに至っては既に夢の中だ。

メンツの空気が少しピリついて来た頃…

 

「すまない、遅くなってしまったよ。」

 

カフェブースの入口の方から、そんな声と共に、手を上げた穏やかな笑顔の長身イケメンが現れた。

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

「いやすまない、例のブツをGBN内に読み込ませるのに思いの外時間が掛かってしまってね。」

 

「全く…お姉様を待たせるなんて…」

 

「ズィーベン…それはもういいから…」

 

「今回ばかりは僕が全面的に悪いね。うん、遅れたお詫びと言ってはなんだけれど、時間を掛けてしまったぶん、フォースネストの案内や今後のサポート、その他諸々…君達のフォース活動に関するあらゆる要素への助力には手を尽くすと誓うよ。」

 

「む、ん……解れば良いのです、解れば。」

 

これでもかとトーチを責め立てるズィーベンであったが、潔く非を認める姿勢と行き過ぎたとも言える誠意にそれ以上モノを言えなくなってしまう。

 

「ほっ…行こっか。案内お願いね、トーさん。」

 

「ああ、任されたよ。」

 

トーチはμの言葉にそう返すと早々に席をたち、他Gloriaの面々が着いてきているのを確認しつつ先導し前を歩く。そのままロビーへと戻り少し人混みから外れたテラスまで移動して、漸く向き直った。

 

「さて、この辺りで良いね。…実を言うと、機体そのものはμの許諾を得て、既に君達のフォースに登録を済ませてあるんだ。だから、君達はコンソールを開いてフォースネストに移動するだけで良い。」

 

「ん、……事実か、μ?」

 

「うん、予め許可は出してるよ。」

 

そう言ってμがコンソールを開くと、その通知欄には確かに「フォースネストの更新」と名打たれた通知が届いていた。それを見てふむ、と頷いたオズマが真っ先にフォースネストへの移動を開始する。

 

「なっ、ちょっとオズマ待ちなさい!」

 

「うん、元気なのは良い事だ。」

 

「わ、わ…待って…!」

 

「……ふむ、では拙も」

 

先陣を切ったオズマを追うように皆が続き、トーチが用意したフォースネストへと転移していく。

そして次の瞬間、皆の視界に広がっていたのは…

 

 

 

「わぁ…!」

 

「コイツは…すげぇ、な…」

 

「ぐ、む…むむ…」

 

一面の緑、一角には小川が流れ、機械の小鳥が住まう、中央に大樹を抱いた人工庭園であった。

唯一景観を破壊する鋼の外壁も、平時はプロジェクターに投影される映像でカモフラージュされるらしく、周囲の景色は正しく完全な緑そのものだ。

その上如何なる手を使ったのか、上方からは暖かな陽の光さえも差し込み、楽園という言葉が似合う、とても人工物とは思えない仕上がりになっている。

 

「驚いてくれたようで何よりだよ。ここは僕が手掛けた中でも一、二を争う傑作だからね。」

 

景観に魅入られた面々を背に「さ、次行こうか」と言い残し先へ進むトーチ。コンソールを開き操作すると、投影映像に隠された扉が開き無機質な廊下が姿を見せる。ハッと正気を取り戻したように、扉の横で相変わらず穏やかな笑みを浮かべて待つトーチの元へと早足について行く4人であった。

 

 

 

───────────────、

 

──────────、

 

──────、

 

 

「そしてここがブリーフィングルーム。あとは外観と動力部だけど…その前に少し話をしようか。」

 

あれからおよそ1時間近く掛けてフォースネスト内を練り歩き、各部屋の案内を受けた面々。

まさか4人の個室まで用意されているとは思わず面食らったが、それも暫く歩くうちに落ち着いた。

そして基本的な部屋案内の最後…ブリーフィングルームの紹介を終えたところで、トーチが大型のデスクを挟んで4人と反対側に立って向き合いそして…

 

「…さて、ここまで長々と紹介して来たこのフォースネストだけど…動力、耐久度、そして修復、あらゆる要素において、君達に心配は掛けさせない。」

 

「…それはもしや、貴方が先に仰っていた全力でのサポートに関する事柄でしょうか?」

 

「そうとも言えるけど…これは先のお詫びの有無に関わらず、恒常的に保障されている要素だね。」

 

トーチの言い出しに先ずズィーベンが質問を投げ掛け、そして間髪入れずにトーチが答える。

最初はトーチに対し若干反抗的な気を見せていたズィーベンであったが、彼の物腰の柔らかさやμの態度、フォースネストの出来栄えから否応にでも解らせられるその実力。それ等を鑑みて、己が示せる最低限以上の敬意は払う事に決めていた。

ズィーベンが問いに納得の頷きを返し引き下がると、その様子を確認したトーチが再び口を開く。

 

「話を戻そうか。…もしかしたら気付いている子もいるかも知れないけど、このフォースネストは移動要塞としての機構を有している。敢えて名前は付けていないから、君達で決めてあげて欲しいな。」

 

名前はまだ決まっていない。

その言葉にヒバリ以外の3人が息を飲んだ。

自分達で、この要塞の名を決めようというのだ。皆が皆、己の愛機に己が考える最高の名を与えた面々にとって、第二の家と言っても過言でない場所の名前を決められるのだから悪い話では無いだろう。

 

「名を決めてあげるのは、また後でね。…さて次に、この要塞はGP-Ex…ガンプラを読み込んでこのGBNに出力する、ここの最たる基礎機能だね。そのGP-Exシステムのサーチ機能に対し要塞に幾つか工夫を施して、要塞を大型MSとして認識させている。」

 

「ッ!?」「─────っ」

「そんな事が…?」「Zzz…」

 

空気がザワつく。

それもそのはず、本来フォースネストとはGBN内で用意されたものを使うのが定例であり、ただでさえ自作の要塞を持ち込むのは異例の事態だ。

そんな事をしているのはおそらく、GBN運営と根深い繋がりがある…と予測される彼の大企業フォース「GHC」ぐらいだろう。そこについ最近組まれたぽっと出の新参フォースが名を連ねるというのだから、その異常性はそう苦労せずとも伝わるはずだ。

それだけでは無い。

「要塞をMSとして登録する」。GBNのガンプラスキャン機構の緩さを突いた戦略であり、似たような事をしている────全く別作品のプラモデルをスキャンしたり、どうやって持ち込んだんだと言いたくなるような超巨大MAをスキャンしたり────そんなダイバーは少なからず存在する。だが要塞を丸ごとガンプラと言い張って登録に成功させたのは、後にも先にもこのトーチという男のみだろう。

そしてその恩恵は計り知れない────。

 

「このシステムの秘密はこれから案内する動力部にある。さあ、そろそろ次に進もうか。」

 

トーチはそう言ってブリーフィングルームの最奥にある鉄扉を、画面操作で開くと、そこに開かれたリフトと思しきスペースに乗り込み手招きする。

 

全員が乗り込むとリフトは暫く降下し…そうして扉が開いた先には、機械室らしい空間が広がっていた。

 

「コイツは…考えたな…」

 

その光景に対し、真っ先にオズマが一言呟く。それもそのはず、そこには無数の機器類と共に、このフォースメンバーの中でもオズマが最も見慣れているモノが、動力として接続されていたのだから。

 

「ガンダムフレームの胴体…コイツ単体じゃどの機体かは流石に解らんが…ツインリアクターをそのまま動力にしちまうとは…だがそれよりも───、」

 

そう、それだけでは無い。

正面の基盤に埋め込まれたガンダムフレーム胴体の後方、まるでソレを抱くように安置され、無数のコード束で各部位を繋がれた全身黄金色のMS。

 

「そう、これがこの要塞がMS判定に入る絡繰にして本体。そして僕が掲げるサポートの最たるもの。

ASW-G-37、ガンダムフェネクス。」

 

フェネクス。

それは本来、この黄金のMSのベースであると思しきガンプラに与えられたはずの名前。

ユニコーンガンダム3号機フェネクス。

宇宙世紀の一つの区切りを迎える外伝作品にて、遥かな彼方の宙へと旅に出た、黄金の不死鳥。

この機体は、その外装をベースに内部フレームをガンダムフレームへと置き換え、それだけに飽き足らず、そのガンダムフレームを全てクリアパーツでフルスクラッチする事で、フルサイコフレームに鉄血作品のガンダムに象徴される機構を掛け合わせた、

フルサイコ・ガンダムフレームを採用する、世に2つと存在しないガンプラとして仕上がった機体。

それこそが、ガンダムフェネクスである。

トーチはその機体を要塞の主要動力として安置接続し、更にサブ動力としてツインリアクターを埋め込む事でスキャンシステムには超大型MSとして認識させつつ半永久的な稼働時間を達成したのだ。

 

そしてトーチが言うサポートとは…この要塞を戦力として投入する事で、主砲やらを注ぎ込みかつ、仮に要塞が損壊してもガンダムフェネクスがその中から増援として出現し、果てにはMS判定であるが為に時間はかかれど全損しても自動で修復される、という今後のバトル相手達からすればまるで悪夢のようなフォースネストの存在、それそのものであった。

 

「動力の秘密やサポートの凡そは理解してくれたみたいだね。…それじゃあ次は外を見て回ろうか。」

 

「まだ何かあるってのかよ…」

「もうお腹いっぱいなのですが…」

 

予想を大幅に超えるオーバースケールの要塞に半ば疲れ始めた2人と、3度目を覚ましてその後ろをついて歩くヒバリがリフトに乗って上に上がる。

そんな中、μは未だに歩き出さず、主要動力となっているガンダムフェネクスを見上げていた。

そんなμに、トーチが語りかける。

 

「────気付いたかい?」

 

「…このフェネクス、母さんのだよね。」

 

「あぁ。母さんを…エレナを1人仲間外れにしておくなんて真似、僕には出来そうにないからね。」

 

「言うと思った。父さん、母さん一筋だもんね。」

 

「ふふ…でもこれで、母さんも一緒だ。」

 

「もう…」

 

父娘は誰とも知れず微笑み合い、そして傍らの不死鳥を見上げる。その黄金の輝きは金属の冷たさでありながらしかし、サイコフレームの暖かさか、エイハブウェーブによる機械熱か。はたまたもっと別の暖かさなのか…2人の空間を包み込んでいた。

 

 

「───さて、皆を待たせて良いのかい?」

 

「っと…そうだった。いかなきゃ」

 

まるで忘れていたとでも言うかのように、半ば慌て始めるμの背を優しく押し、共に機械室を出る。

 

「やっと来たか。」

「さ、お姉様行きましょう!」

「ん。待たせてごめん、行こ。」

「────はっ」

 

「さ、要塞の外は宇宙空間だ。じっくりと、これから君達を護るその砦を、見ておいで。」

 

4人はトーチに背を押されて予め確認したポータルから格納庫へ移動、各々の愛機に乗って支度を整え、共に射出カタパルトへと移る。

 

「オズマ、バルバトスレグルス。」

「ヒバリ、月煌。」

「ズィーベン、エピオンライデンシャフト(お姉様への愛と共に。)

「……μ、ウイングゼロブリランテ」

 

「出るぜッ!!」「征くッ!」

「行くよっ…!」「参りますっ!」

 

 

4つの機影が、遥かな宇宙へと飛び立った。

そしてその5分後……

 

 

4機は模擬戦の相手である己の要塞を相手に、為す術も無く撃墜され、呆気ない敗北を告げた。

 

 

 




Special Thanks !!

GHC
笑う男様より、名前だけお借りしました。

次回、要塞がその本領を発揮します。
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