ガンダムビルドダイバーズ:Ricorda   作:麻婆炒飯

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A帯に触りたくないので初投稿です。



[第二十六話]GBN都市伝説「黒い怪物」

とある日の深夜、GBN某エリア

空に煌々と輝く月を湛える草原にて。

あるダイバーが散策を行っていた。

 

「ふぃー。やっぱ良いよなぁGBN、何が良いってこの景色。今時都会じゃ中々お目にかかれない絶景だぜ?VRでも感覚のフィードバックとかでほぼ現実みたいなもんだし…ホント、運営様様だよなぁ。」

 

草原に身を投げ出し座って空を眺める青年。

1人で誰に言うでも無く独り言を呟くその後ろには、片膝を着き手を地に降ろしたMSが鎮座していた。

青年───イカルは自身の愛機、GP-Xカミーリアの脚に背を預け、電子の夜空に散りばめられた星々を見てくつろぎ、そして相棒へと語り掛けていた。

 

そんな時である。

 

 

『────ミィツケタァ……』

 

 

「ッ───!?」

 

イカルは飛び起きる。夜の静寂を突き破って耳に届いた不快な声。電子音と生音の中間のような不気味な高音が、小さくか細く、しかし確かに届いた。

 

「誰だ……誰かいるのか!?」

 

イカルが虚空へ向けて言葉を投げ掛ける、しかし虚空からの返事は無い。しかし─────、

 

『シヨ…ガッタイ…シヨ……』

 

「ッ!?また聞こえた…!何なんだ…!?」

 

『ネェ、ガッタイ…シヨ…ガッタイ…』

 

イカルは愛機へ飛び乗り、コックピットハッチを閉じて機体を起動、盾とライフルを構え臨戦態勢をとる。しかし数回続いた不快音は再び也を潜め……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『 ガ ッ タ イ シ ヨ ウ ヨ 』

 

 

 

 

 

「ッ!!?」

 

後ろから声がした。

イカルは操縦桿を大きく捻って機体を振り向かせ、隙を与えず後ろに飛び退いてその正体を見る。

 

『シヨ、シヨ…ガッタイ、シヨ』

 

それは、巨躯であった。

長い脚、長い腕、コードが剥き出しの長い首の胴体に無理やり乗せられたような楕円の頭。全体的に漆黒で塗り固められた躯体は闇に溶け込みしかし、躯体の要所要所へまるでこびり付くかのようにあしらわれた血のような赤色が浮き上がっている。

 

「何なんだ…コイツ…辻斬りか…?」

 

見上げた先の楕円の頭は、どうやらGN-Xのソレだ。しかし真っ黒に染まりセンサーアイ部分を起点に描かれた赤い渦模様は異形の恐怖を掻き立てる。

 

『ガッ、ガッタイ、シヨヨ、ガッタイシヨ』

 

異形の頭がグルリと縦に一回転した。

直後、それが一歩踏み出し近付く。そのまま気味の悪い挙動で素早く二歩三歩と近寄り、そして長い腕を大きく広げて、抱きつくように振るった。

 

「ぐゥッ…!」

 

イカルは再度後退する。何とか敵の間合いからは離れ、避けきれない攻撃は盾で受け止める。…たった一瞬掠めただけだというのに、核の衝撃から身を守るサイサリスのラジエーターシールドが抉れる。

 

「この爪のリーチ…カプルか…!」

 

モビルカプル、ガンダム∀にて登場した機体だ。その長い腕と特徴的なクローの形状から、イカルはカプルの腕部が使われていると判断した。

だからどうしたという話である。依然として敵は此方を見遣り、不気味な言葉を放ち続けている。

 

『ニ、ニニニ、ニゲナイデデ、ニゲナイデヨォ』

 

また敵の頭が回転する。

ギギ…と金属が軋むような異音を立てて敵機の躯体が震え……次の瞬間、脚を前方に伸ばし飛んできた。

 

「なァ…ッ!? 」

 

イカルは咄嗟にラジエーターシールドを囮に投げ捨て横飛びに避ける。敵機の脚は一度抉られたシールドを深々と貫き、しかしシールドそのもののサイズから脚が上手く抜けなくなり立ち往生していた。

 

「今度はドリルキック…グレイズアインか…!」

 

グレイズアイン、鉄血のオルフェンズに登場したラスボスたる大型MSだ。その特徴は延長されたフレームから成る長い脚であり、確かに単体で他と繋ぎ合わせれば、状況次第で異形に見えるだろう。

 

「それに胴は…バウンドドック…なんて奴だ…歪なデザインにも限度ってものがあるだろう…!?」

 

そう、異形の黒い機体は歴代作品における長駆を誇る機体を寄せ集め縫い合わせて、あまりにも歪な巨躯を強引に作り上げていたのだ。

イカルは怒りを覚える。

それが本当に、このビルダーが良いと思い作ったのならまだいい。だがこれは無理やり動かしているような、歪な性質が丸見えなのだ。だからこそ色は黒塗りで誤魔化されているし、不気味極まりない顔面があまりにも異様な不快感を演出している。

少なくとも、仮にもひとかどのガンプラビルダーであるイカルは相手に対しそう判断した。

イカルは、通信を繋ぎ敵との対話を試みる。…停戦などでは無い、一言文句を言ってやりたかった。

 

「ッ!おいお前!何考えてる、ここはバトル非推奨の中立地帯だぞ!それにその機体……は…?」

 

GP-Xカミーリアのコックピット、そのコンソール画面に映ったのは……一面の暗闇だった。

 

返事は無い。音も聞こえない。

その現象はイカルの心を一気に恐怖で支配した。

 

「あ…な、何だよこれ!有り得ないだろ!?」

 

有り得ない、あってはならない。

何故なら、通信画面が開かれているという事は、通信が繋がっているということ。そして通信が繋がっていて、画面が映し出されていれば、例え相手が隠れていようと何かしらのコックピットぐらいは映るはずなのだ。加えて、仮に相手が隠れていたとしても、システムを通じて漏れ聞こえる電子音さえ聞こえないというのは、絶対に有り得ない事だった。

 

だが、その有り得ない事が起きてしまった。

何かのバグか?これくらいなら運営から何かしら動きがあるはずだ。ではブレイクデカールのような改造ツール?それも運営が動かないのはおかしい。

では、何故?

わからない、イカルには何も解らなかった。

 

恐怖に竦んだイカルの心は、反骨心を失った。異形の敵がラジエーターシールドから脚を引き抜いて近付く。そしてソレは…抵抗を止めたカミーリアを、

 

そっとやさしくだきしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゴチ、ソサマ、デ、デデシ、シタ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

「────なんて言う噂が最近あちこちで流行っててだな、これがまたGBN都市伝説ー、なんて昔懐かしい呼ばれ方をしてるってぇ訳だ。」

 

Gloriaのフォースネスト、空中要塞ガラッシアのロビーにて。立て続けの対戦の休憩に寛いでいたμ、そしてズィーベンにオズマが小話を披露していた。

 

最近GBNで流行り始めた都市伝説。

真っ黒な巨躯のガンプラが、真夜中に突然現れて襲い掛かってくる、というもの。

その詳細は語る人によってまちまちではあるものの、それ等を集めていくと、その多くはグレイズアインの脚、カプルの腕をバウンドドックの胴が繋ぎGN-Xの頭部を乗せている、という話だ。

 

一通りの話を終えたオズマが2人を見遣ると、ズィーベンは語り出す前よりも少し離れてオズマを睨み、μは怯えているのか少し手を震わせていた。

 

「は、はは…馬鹿だねオズマ、GBNはVRゲームだよ?そんな馬鹿げたオカルト話がある訳…」

 

「はっはは、そりゃμお前、そういうのは抜きにして語るもんだろ。だいたいGBNは既にELダイバーなんつー奇跡まで起こしちまってるんだ、今更オカルトも何もあったもんじゃねぇだろうさ。」

 

「それに───、」とオズマはため息の後に歩き出してμの横を通って過ぎ際にそっと息を吸うと…

 

「ガッタイ、シヨシヨ」

 

「ひぅ────ッッ!!?」

 

μが飛び跳ね、そのまま傍らに置かれたテーブルの下に隠れて半泣きでオズマを睨みつける。オズマは…ニヤついていた。μの耳元で、悪ふざけに裏声を出して例の怪物のモノマネをしてみたのだ。

その結果は効果覿面、そして────、

 

「お姉様を泣かせるとは、万死ッ!!!」

 

「ギヒィッ!!!」

 

オズマには天罰覿面。

愛しのお姉様を泣かせた罪によって、ズィーベンに刺され床に転がるオズマなのであった────、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

深夜、GBN内某ディメンション。

風に揺らめく草原に、轟音が鳴り響いた。

 

巨大な鉄塊が、電子の草木を押し潰し倒れる。

黒く長い体躯、所々に散りばめられた赤い模様…それはまさしく、昨今GBNにて都市伝説に語られる巨躯の怪物、それそのものであった。

 

『シヨ、ガッタイ…ガタ…イシ……ユヨ゚ッッ』

 

怪物は、羽を失った羽虫の如く蠢き、か細く不気味な言葉を零す。直後巨躯の怪物の顔面に、真上から降ってきた刃が深々と突き立てられた。

 

「ハァ───終わったか……」

 

「お疲れ様、コーチ」

 

「やァ、ありがとうサリィ。」

 

「うん。…コイツ、何?」

 

「さぁ、ねェ…カツラギちゃんの言うバグ…では無さそうだ。NPDならもう消えてるからね。映ったコンソールも異常…ンン……これも奇跡、か。」

 

「────奇跡…?」

 

「そう、奇跡。ダイバー達の「好き」からELダイバーが生まれたのなら、ダイバー達が少なからず持つ「コワイ」「キライ」からこういうモノが生まれたってオカシく無い。そうだろう、サリィ?」

 

「そう、なの?……そう、だね。」

 

「うん、いい子だサリィ。じゃあ行こうか」

 

「うん。」

 

コックピットの中に2人立って語り合う、幼げな少女と長身の男。男が操縦桿を握ると乗り込んでいる機体…笠を被り、尖端に槍を備えた大鎌を怪物に突き刺した、ガンダムデスサイズヘルの改造機が獲物を引き抜き、軽く振り回してから背負うとアクティブクロークを閉じて飛び上がり、そしてステルス機構によって夜闇に紛れ、その姿を消し去った。

 

静かな夜、

風に揺らめく草原の中、たった一機倒れふす巨躯の怪物は、誰にも気付かれる事無く、その躯体を黒い塵へと霧散させ、跡形も無く、消滅した───。

 

 

 




今回限りの簡易機体情報

????(黒色の怪物)
GBNに突如として現れた黒い巨躯のMS
常に意味不明な言語を放ち、出会ったダイバーの機体をマスダイバーさながらの異常な攻撃力で襲う。
パーツ構成は
頭部 GN-X
胴体 バウンドドック
腕 モビルカプル
下半身 グレイズアイン
全体的に漆黒に染められ、爪や胴体の導線部分のみ紅の斑点模様が散りばめられている。

全高31m
武装 クロー、ドリルキック


ガンダム試作完成形GP-Xカミーリア
コウ・ウラキ風のダイバー「イカル」の愛機。
ステイメンをベースに、肩にサイサリスのフレキシブル・スラスター・バインダー、背中にガーベラのシュツルムブースター、フルバーニアンのユニバーサルブーストポットを組み合わせたバックパックを装備させ、ハイパー・ビームサーベル、ロングバレルライフル、ラジエーターシールドを持たせた高機動タイプのMS。
シュツルムブースターを外せば、ユニバーサルポットをズラす事でオーキスを扱う事も可能である。

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