スランプへの入口をゆったり出たり入ったりしているので初投稿です。
「挨拶結構、バトル前に顔合わせが叶うってんならお互いそれに越したこたぁ無ぇ。ですがね……」
「おい、いつまで戯れている。」
GBNセントラル・ディメンション通路にて、偶然か否か顔を合わせる事になったGloriaと、その次のマッチ相手である「終末チェスタイム」の面々。
オズマがフォースリーダーであるμを背に隠し、不思議と蠱惑的な音を放つ言葉繰りの男、コーチを警戒していると、不意にコーチの後方から苛立たしげな男の声が聞こえてくる。そこに居たのは……
浅黒い肌に、胸元が大きく開いた金の縁取りに黒のノースリーブ革ジャケットを着込み、その上から同じ色調のローブを羽織った
その男のダイバーネームは「King」、コーチのフォース「終末チェスタイム」のメンバーであり、そのキマッた外見と尊大な態度から成る強烈なヴィランロルで、知る者の多くを恐れさせるダイバーだ。
「まったく、せっかちだなぁ…ま、良いか。…それじゃ、新進気鋭のGloria、君達の綺麗な光を俺に魅せてくれるその日が来るまで、サヨナラ。」
Kingの言葉を聞いたコーチが器用に脇から上だけを彼の方に傾けて答え、そして向き直ると別れの挨拶を投げ掛ける。そしてμ達がそれに答えるよりも早く、Kingともう1人…後ろに侍った黒髪ストレートの少女を連れてその場を立ち去った。…去り際の少女が、光の無い瞳でジッとμの事を見つめていたが、それについては誰も指摘しない。
かくして、栄光を求め走る新進気鋭のフォース「Gloria」と、決して昇格戦に姿を見せない無冠の魔王たるフォース「終末チェスタイム」の邂逅が、ごくありふれた場所にて果たされたのであった。
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「────で、どうだいブブちゃん、今回の
炎の如く赤い空、血の如く紅い雲。まるで世界の終わりを謳うかのような景観が広がっている。
「ドゥームデイ・ディメンション」
かつてGBNの黎明期、一部の厨二病なダイバー達から寄せられたやけに具体的な要望を受けて実装されたものの、彼等がソレを卒業すると同時に過疎化し放置されていた、岩石のような小さい浮遊島がぽつぽつと点在するエリアの中央に、その世界を縦に裂き繋ぎ止める楔が如く存在する歪な塔の頂。
終末チェスタイムのフォースネスト「伏魔殿」にて、リーダーであるコーチは、メンバーであるKingとその名の通りチェスに興じながら、Kingの事を「ブブちゃん」と個性的な愛称で呼び語り掛けた。
そしてその言葉にKingは…ローブを目深に被ったまま己のチェスの駒を指してから答える。
「知れた事を…アレもまた羽虫よ、彼の城が目障りな程度で、余の口へ運ぶにはまだ足りん。」
「ハハ…手厳しいねぇ。ま、どんなに不味くてもバトルはバトルだ…食べ残しちゃあ、ダメだぜ?…っと、これで俺のチェックメイトだ。…あっ」
「…フン、貴様こそいい加減、余の口に合った上等な獲物を見繕って見せる事だな。でなければ、次は貴様の喉笛を喰らう事になるぞ。」
語らいの中、盤上にてコーチの「騎士」がKingの「王」を捉え、それを伝える宣言を発する。そして直後Kingが盤上の駒を薙ぎ払って威圧を投げ掛け、遊戯の勝敗を有耶無耶にしてしまった。
しかし威圧を受けた当のコーチは気圧される事も憤る事も無く、笑って流し崩れた盤上配置を1つ1つ手で直しながら、次は傍らの壁に背を預けぼんやりと赤い空を眺めている黒髪の少女……「サリィ」の名で呼ばれる少女へと言葉を投げ掛ける。
「クク……で、サリィ?さっきずっと黒兎ちゃんを見てたけど、もしかして何か感じたのかい?」
「ン……うん、あの人達、みんな綺麗だ。みんな違う色でピカピカしてて、虹みたい。その中でも、あの子が、一番光ってた。とっても、綺麗だった。」
「ンン────、そうか。成程…それならサリィ、君があの黒兎ちゃんの機体を相手するかい?」
「ううん、僕はあのお城をヤるよ。そうしないと、コーチもKingも、飛びづらそうだから。」
「ククッ…有難うサリィ、君が俺達の事を想ってくれる優しい子で、俺もブブちゃんも嬉しいよ。」
何処とも無く視線を放り投げたままコーチの言葉に答えたサリィを見て、コーチは妖しげな微笑みを見せその頭を撫でる。サリィは無表情ながらも目を閉じその感覚を堪能するような素振りを見せ、Kingは語りの中に自然と自分が含まれていた事が気に食わないのか、軽いながらも明確な舌打ちを零した。
知る人ぞ知るヴィランフォース、終末チェスタイムは次なる獲物を視界に捉え待ち構える。
夜の帳が降りようと日が登ろうと決して変わらない赤い空を背に、その時を心待ちにするのだった。
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「───オズマ、知ってるの?アイツ等の事。」
「まあ、それなりにはな。…バトル申請で見てるたぁ思うが、連中の名は「終末チェスタイム」、悪名…とは少し違うかも知れんが、知ってる奴はよく知ってるヴィラン…悪役ロルでやってるフォースだ。」
空中要塞ガラッシア、ブリーフィングルーム。
フォースGloriaの面々は、機械的な大部屋の中央に配置された会議用テーブルを囲んで次の対戦相手であるフォースについて、作戦会議……のようなものを開いていた。というのも、今回の対戦相手となる「終末チェスタイム」、非公開設定にしているのか、バトルに関するアーカイブや機体データ等のバトルに役立つ情報が何一つ残っていないのだ。
見つかる者と言えば、リーダーであるコーチやKingがやっているヴィランロルの評判やリアル考察等のダイバー個人に対するデータばかり、作戦とは相手の情報を元手に組み立てるものであり、それが有るのと無いのとでは雲泥の差が生まれる。
曰く、「情報を制する者は戦いを制する」。
誰が言ったかこの言葉は、「砂を見つけたら親の仇の如く追い回し撃ち落とせ」等々、GBNに限らず戦いを愛する者達が残した様々な名言に並んで、集団戦における1つの真理として知られている。
そして今回の戦い、この言葉に則るならば既に敗北していると言って相違無い状況であった。
敵の詳細は一切不明、逆に此方のやり方は事前の宣言やこれまでのバトルアーカイブが全体公開に設定されている事もあって、おそらくは敵である終末チェスタイムも既に知っていると見て間違い無いだろう。こと情報の扱いにおいて、相手はGloriaと戦う前から実力が数手上である事を示していた。
「でも、情報は無いんでしょ?…なら今までとやる事は変わらないよ。オズマとヒバリさんが突っ込んで、私が後ろから撃つ。ズィーベンはいつも通り私の傍にいて、オールレンジ系が来たらトーさんがNT-Dで掌握する。…これしか出来ないとも言えるし、これさえあれば良いとも言える。…情報が無い以上は、どっちみちやるしか無いんだよ、オズマ。」
「そりゃ確かにそうだが…」
「ふんっ!!!」
「なんでッッ」
μの硬い意思から来る断言に、オズマが苦笑しつつも言い返そうとした直後、またもやズィーベンがオズマの懐へ飛び込み、鳩尾に拳を突き入れる。
力無く崩れ落ちるオズマを後目にズィーベンは手を払って立ち上がり、そして激痛にうずくまるオズマを見下ろしながら、再びその口を開いた。
「何を躊躇う必要があるのです?私達はただお姉様の後に続き、お姉様を支え、お姉様の為に在ればそれで良いんです。それに…仲間を信じなさい。私達は仲間なのでしょう?なら、互いを信じ背を任せ合うのが道理なのではありませんか?」
彼女の口から続けて放たれたその言葉に、オズマは目を見開く。自然と口角が吊り上がり、未だに痛む鳩尾を手で抑えたままながらもゆっくり立ち上がり、そしてズィーベンの方へと向き直った。
「ッぐ…ズィーベンお前言うようになりやがって…解ったよ、無茶で今更、やってやろうじゃねぇか」
「ふふっ…それでこそ、です。」
不敵に笑った2人は互いに手を差し出し、そして同時にお互いの掌を素早く叩き払った。
2人揃って皮肉の効いた、しかして息ピッタリの連携は最早1つの絆と言って差し支えない、そんな光景だ。そしてそれを見たμは笑い、その日決めた事柄を父…トーチへと伝える事にしたのであった。
個性的な絆な築いたオズマとズィーベンにμ、そして未だに立ったまま居眠りを決め込むヒバリに、不在のトーチ。かつてまだフォースを組む前、亡霊騒動の禊として闘ったチャンピオンに次ぐ強敵は、もうすぐ目の前に迫っていた─────。
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後日、汎用宇宙バトルフィールド。
激戦の余韻を匂わせる、無数の鉄片やデブリが浮遊するその場に、一機のMSが漂っていた。
「ンン……才能やその辺は悪くなかった。けどまぁ…まだ若いね。どっかの鬼ちゃんに肖って言うなら、「まだ食べ頃では無い」、ってところかな。」
「ッあ…こん、な…なんで…」
漂うMS、鮮やかな躯体を煤に汚したブリランテは、両腕と左脚を失い腹部を抉り取られながらもコックピット内のパイロットを護ったまま漂い続ける。
そしてその近くにある大型デブリに片膝をつき、大鎌を手に携えた機体…大きな笠のような頭部パーツに、笠から膝上までの長さで横と後方を隠す布状のパーツに全身を包んだ、EW版ガンダムデスサイズヘルの改造機…コーチが愛機として使用する、
「ガンダムDeathscythe・Lust」が、ブリランテの…フォースGloriaが陥った惨状を見下ろしていた。
既に要塞ガラッシアは墜ち、掛け替えの無い仲間であるオズマ達4人のMSも撃墜、または戦闘不能と言える状態にまで追い込まれていた。
「ま、これも勝負だ。…また遊ぼう。」
「ッ……ァ…」
コーチが通信機越しに投げ掛けたその言葉を最後に、μの意識は擬似的な死亡による強制送還という措置を以て、暗闇へと沈んで行った────。
『Battle Ended』
これ以上アウトプットしたら自己ノルマの2倍になって遅くなってしまうので二分割、続きはまた次回なのですわ…( ˇωˇ )