ガンダムビルドダイバーズ:Ricorda   作:麻婆炒飯

3 / 38
暇を見つけて書き上がったので本日2度目の初投稿です。同時投稿じゃないし話が飛ぶような事態は起きないはず…起きないといいなぁ……


[第三話] はじめてのミッション:リトライ

「あ…あった。」

 

本当にあった、初心者向けミッションにヤナギランの採取、しかも1本。どうやら連中にも「本物の初心者向けミッションを真似する」程度の頭は回っていたようだ。そんな搦手が出来るのに何故自分の格好じゃ怪し過ぎるって気付けなかったんだ…??

気を取り直して再びミッションへ向き合う。GBNの仕様上、複数のミッションを同時受注するのも不可能では無い、が…目的が受付への採取納品であるのだから、今受けてる初心者用ミッション(嘘)を済ませてからその場で受注、納品してしまえば問題は無いだろう。初心者ミッション(本物)の概要欄に書かれていた群生地に行けば、併せて4本ストレージに入れて飛ぶのも容易だと思う。

 

「…よし、この案で行こう。」

 

1人そう呟くと受注を中止して受付から離れ、さっさと格納庫へと転移する。…そこへ声を掛けようとした紅いジャケットを纏う大柄な乙女(漢女)をスルーして。

 

 

 

「すっごい景色……さっき見えたサンクキングダムの再現度も完璧だったし、人がGPDを忘れてまでのめり込む理由も分からなくは…ううん、駄目だ、私まで呑まれてたら意味が無い。」

 

ブリランテで雄大な空を翔ける中、次々と切り替わり見えてくるディメンションの景色に視線を奪われ、心まで奪われる前に気を取り直してを何度か繰り返す。概要に記されたヤナギランの群生地へ辿り着く少し手前、花を踏んでしまわない程度に離れた草原へブリランテをゆっくり着地させると身を屈め手で階段を作り、ガンプラをしまうのではなく敢えてコックピットハッチを開く方式で外に出る。ここに着くまでに2回ほど通ったフリーバトルエリアで1度襲われたが、その戦闘では特筆すべき案件も無かったので割愛しよう。

 

 

「綺麗……はっ、ダメだダメだ。早くヤナギラン4本摘んで戻ろう。それでこのミッションと次のミッションは終わり……いや…まだ時間には余裕あるし、少しだけ休んで行こうかな……」

 

一面に広がる花畑に見惚れてつい本音が漏れる。ここのスクリーンショットを撮って、普通の写真と言っても疑われないだろう、それ程までに美麗でリアリティ高く、雄大な景色の誘惑に負けその場に座り、そのまま仰向けに寝転がってしまう。感覚再現システムで実際に嗅覚をつく草花の香りが心を落ち着かせ自然と瞳を閉じる。

 

「はぁ……幾ら資料で見ても実物とはやっぱり違うな。この景色も、飛んできた景色も、一緒に飛んだブリランテも。…ただ暴れるだけで刻みつけられるのかな。もっと、ブリランテと一緒に……」

 

『その子の事、好き?』

 

「うん、好きだよ。最初はあの人の真似をしただけだったけど…1年掛けたら流石にね…」

 

『そっか。この子も喜んでるよ、貴女と一緒に飛べて、一緒に戦えて嬉しいって言ってる。』

 

「…そっか。ブリランテ、君も一緒に……え?」

 

そこまで答えたところで慌てて飛び起き振り返る。私は今誰と話をしていた?周りには誰もいない。人が来てすぐに去ったなら、徒歩で隠れられる程周りに障害物は無いし転移の時に音がするはず。なのに周りには誰もいない。……何だか少し怖くなってきた。休憩もこれくらいにして戻ろう。若干周囲を警戒しながらも足元のヤナギランを4本摘んでストレージにしまい込み、その場を後にする。

 

「ブリランテ…ありがとう、よろしくね。」

 

誰の言葉かは全く解らないが、嘘は言っていない気がした。傍らに跪くブリランテに手を触れ誰に向けるでもなく呟くと、手に飛び乗りコード伝いでコックピットに戻ってハッチを閉じた。それ以上ヤナギランの花畑を振り返る事は無く、立ち上がりその場を飛び立つ。その後ろ姿を、2つに分けて結わえた金髪に特徴的な白のドレスが映える、儚げな雰囲気を湛える少女が見守っていた……

 

 

 

────────────────、

 

───────────、

 

──────、

 

 

 

「────ん…?」

 

花畑からセントラルディメンションへと飛んで戻る最中、行きに一度通ったフリーバトルエリアの下方から鉄と鉄のぶつかり合う音が聞こえた。何事かとモニターで下を確認すると……

 

 

『どうしたどうしたァッ!もっと食いごたえのある奴はいねェのかッ!!こんな程度じゃあ間食にも前菜にもなりゃァしねぇぞォッ!!』

 

『ヒィッ、アッ、アァァァァッ!?』

 

 

血のような紅に彩られたガンプラが、獣の如き雄叫びと共に相手のガンプラを真っ二つに叩き斬っていた。あの機体は掻き集めた資料で見た覚えがある。確かフォース『百鬼』のリーダー、獄炎のオーガだ。紹介されてたガンプラの名は…GP羅刹?全てのガンダム作品を広く網羅した訳じゃないからベース機がいまいちよく分からない。それに前見た資料と少し見た目が違う気がする。あ、でも資料じたいが結構前のやつだし改良を加えたのかな。

そんな事を考えながらブリランテの速度を落とし眺めていると……うっわヤバっ、一瞬だけど目が合った気がした。このGBNで暴れる事が目的である以上勇み足で挑んでも良いが、私は1度受けたミッションは寄り道せず熟す派なのだ。彼に挑むのはまた今度、手持ち無沙汰な時にしよう。

そう決めると操縦桿を握り直し速度を上げてその場を去るのだった。決してオーガの迫力にビビって逃げた訳じゃ無い。ないったらないのだ。

 

 

 

 

 

一方その頃、ハードディメンション・ヴァルガ

荒れ果てた大地を眼下に広げる曇天の空より、4機のガンプラが高速鬼ごっこを繰り広げていた。

 

『オラオラァッ!いつまでも逃げてちゃ話にならねぇぞぉひっひゃはははァっ!!』

『そうだそうだ!いい加減にさっさと諦めてぇ、アニキのDPになっちまいなァっ!』

『ほらほら追い付くぜ追い付くぜェっ!』

 

鬼ごっこの鬼を勤め追い回す3機のガンプラ…機体の各所に厳ついスパイクをあしらったザク…ジャンキー・ザクとそれを駆る害悪ダイバー、ヤン・チー一味である。昼間のうちにμから手酷く反撃を受けて負けた後も懲りる事無く、夜に機体修復を終えればまた初心者らしき獲物をヴァルガへと追い詰めていた。今回は不意打ちを避けられ逃げられてしまったが、それ故の鬼ごっこタイムである。標的となるのは全身をワインレッド基調に彩ったガンダムバルバトスの改造機───両腕部にガンダムレギルスのパーツを利用し、背にはガンダムバエルのスラスターウイングを4機備えている───その機体のビルドスタイルはミキシングの相性も相まって、スリムなシルエットに機械らしい力強さをバランス良く備えた姿に仕上がっている。……鬼ごっこで必死こいて逃げ回っていなければ、の話だが。

 

「あーもう、めんどくさいなぁ…ッとォッ!!!」

 

紅いバルバトスを駆るダイバーはコックピット内で気怠そうに呟くとその直後、つい先程まで全速力でふかしていた4機のスラスターウイングを突然前方に向け、一気にブーストを掛けて逆走させる。急に進路を180°変えた進行にヤンチー達は即座の対応ができず一瞬だけ反応が遅れて……それが致命的なミスになった。急速転換して飛んできたバルバトスはその勢いのまま手から出したサーベルを振るい、強引にジャンキー・ザクを頭から真っ二つに叩き斬って通過、続けてスラスターウイングを真下に向けると上へ90°方向を変えて急上昇。右手に持ったレギルスライフルの高威力射撃で2機目を呑み込み更に一気に速度を付けて加速落下すると、バルバトスの強靭な脚部で3機目のコックピットを踏み貫いた。急転換からここまでの時間僅か14秒、先程まで楽しそうに追っていたヤンチー達は状況の急激な変化に気付く事さえ無く、電子の海へと帰っていく。後に強制送還された先の格納庫でやんややんやと騒ぎ立てる3人組の滑稽な姿が見られたという。

 

「はぁ…何だか今日はどぉっと疲れたなァ…今日はもうログアウトしようか。」

 

荒れ果てた大地に降り立つ紅いバルバトスの中で、一瞬で3人を切り捨てたダイバーはコンソールを操作して格納庫まで転移撤退すると、いかにも「疲れた」といった顔を浮かべてログアウトする。その日ネットの海ではヤンチー達が、1日の間、昼前と夜に二度(おそらく)初心者に撃墜された害悪ダイバーの中でも底辺雑魚として不名誉な話題に上げられるのであった。3人組を瞬く間に撃墜した2人の(きっと)初心者の話題も織り交ぜながら……

 




ヤンチーくん達は今後も定期的にボコられます。
※μちゃんが見掛けたのはGP羅刹では無くGP羅刹天です。知識が1〜2年程遅れ気味。
※紅バルバトスの人がμちゃんと出逢うのはまだまだ先、次の出番も結構先です。今回はちょっとした顔出し。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。