1年以上ぶりのゼノコキュを血反吐はきながら周回しつつ初投稿です。
「っだ……いきなり切れた…」
他のダイバー達も同じく急な強制ログアウトを受けて現実に引き戻されたμ……
一息ついて、何が起きたのかを知るべく机の横に置いたままにしていた携帯端末を取り出し……
「……圏外…まさか、」
美優が持つ端末は、世間に出回っている中でも最新機種に分類される代物だ。加えて世の評判もトップクラスに高い大手ブランドのものであり、通信速度や容量にも妥協の無い、少々お高い品である。
それが圏外…即ち、異常事態に他ならない。
美優は名残惜しみながらも椅子から立ち上がると凝り固まった背筋を軽く解し、部屋から出た。
向かう先はリビング、もう凡そ察しはついているが確信が欲しい。その為に階下へと降りてリビングに出て、真っ先にテレビの電源を入れるが…
「────ダメ、か。」
テレビは何処のチャンネルも受信していなかった。本来なら有り得ない事態なのだが、自身の携帯端末がこの有様だった為に予め予測はできた。
電波障害、それもかなり深刻な部類だ。
これがどの範囲まで発生しているのか、それは解らない。だが強制ログアウトの折、運営アナウンスでは深刻な障害が発生したと言っていた。それはつまり、GBNのサーバー本部…即ち大都会もこのような状況であると言っていいだろう。
「障害、っていうか…最早災害だよね…」
美優は1つ大きな溜息を吐き、そして踵を返してリビングを出る。ここまで来ると自分に出来る事の範疇を遥かに超えている。どんなにガンプラバトルが強くても、どんなに仲間が沢山いても所詮は未成年、世に溢れる子供達の1人に過ぎないのだ。
もしもこれが電波に留まらない大規模な災害ならば、と予測を立てて行動に移す。
何が起きても良いように、電気や他のライフラインが動く今のうちに保存が効く食糧やら水やらを掻き集めて非常用の大鞄に詰め込み支度しておく。
……と、粗方支度を済ませたところで美優はふと思い立って、急ぎ部屋へと駆け戻る。
────────────、
────────、
─────、
「────これでよし、と」
美優は用心深い性格だ。
もしこの後避難だとかそういう事態になって、家に良くない事が起きても良いように、部屋に飾ってあるガンプラ…ウイングガンダムとその系列機を網羅したそれ等を1つ1つ緩衝材を敷き詰めた箱に入れて、厳重に保護し片付けていく。
最後の1つであるRGウイングゼロEWを箱に入れて蓋を閉め、押し入れの低い場所に置いて一息。
そうして部屋を見回してから出ようとして…一瞬だけ立ち止まって振り返り、ガンプラ達が仕舞われた押し入れへと視線を向けると────、
「ごめんね。またすぐ、出してあげるから。」
そう言って部屋を出て行った。
───────────────────────
─────数日後、
結果としてあの後何か災害に見舞われるような事も避難する様な事態になる事も無く、電波障害は全国細部に至るまで完全に復旧した。
…とは言ってもニュースやらネットを見ていると、障害発生の当日にその弊害を受けてパニックになったり、事故が起きたり火事場泥棒が出たりと2次被害が何も無かった訳では無いようだが、それでも世間にある程度の平和は取り戻されていた。
「────ふぅ。終わった…」
一度は梱包し保護したガンプラ達を押し入れから取り出して並べ直し、小一時間掛けて全てを元に戻したところで汗などかいていないが額を拭う。
そうして傍らのベッドに身を投げ出し、機能が完全復旧した携帯端末を取り出して弄り始めた。
「ELダイバー争奪戦…?…ふぅん…あー、成程。それであの日父さん忙しそうだったのかな…?」
特にあてもなく情報を求めてネットの海を漂う事数分、幾つか知らなかった知識を得ていく。
ELダイバー争奪戦。
それはGBNという日常の中において巻き起こった、小さな戦争。奇跡の電子生命体ELダイバーの所有権…というと少し辛辣だと思われるかも知れないが、それを巡ってGBNで起きていた戦い。
美優は全く知らなかったが、どうやらその日…美優達がフォース「終末チェスタイム」に敗北した丁度その時に、世では2つの戦争が起きていたらしい。
1つはELダイバー「セツ」を巡った、
フォース「オリンポス」とフォース「春夏秋冬」、そして互いとアライアンスを組んだフォースによる全面戦争。単純戦力は圧倒的にオリンポス側が有利だったようだが、結果として勝利をもぎ取っていったのは春夏秋冬だったらしい。
もう1つは…あまり情報が多くなかったので、掲示板やネットの深いところで漁った情報によると、
とある人物により虐待されていたELダイバー
「チハヤ」、「イリハ」を巡って下手人側に雇われた傭兵まで出張った大規模戦争であった…らしい。大半が噂を繋いだ推測なので微妙なところだが。
此方はどうやら結果としてその人物は罰を受け、当の2人のELダイバーはチハヤの希望もあって今度こそ善良な保護者に引き取られたのだとか。
こちらの情報はあまり多くないが、その中でも珍しくハッキリしているのは「チハヤ」というELダイバーはネット上では「チィちゃん」と呼ばれていて人気があるらしい、という事ぐらいだ。
「……大切な仲間の為、か。」
仲間を取り戻す、守る。
2つの争奪戦に共通して言えるのはこれだ。フォース春夏秋冬も、チハヤを引き取ったフォース何某も、奪われた、或いは奪われそうになった仲間を取り戻した、と言う点で共通している。
大切な仲間の為に全力を尽くす姿勢は尊いものであると、美優もそう思う。きっと彼女達…彼等かも知れないが。この子達も、「自分の好き」を諦めない為に戦って戦い抜いて、勝ち取ったのだろう。
そんな顔も知らない誰かの奮闘を想うと、何処かから不思議と力が湧いてくるような気がした。
「─────。よし、決めた。」
美優は1つの決意を確かにするとベッドから起き上がり、ゲーミングチェアへと移動してGBNの操作機器を手繰り寄せ、簡易ログインの手順を踏む。
そうして何やらメッセージを打ち込むと、フォースメンバー全員へと送信するのだった。
───────────────────────
「────ふぃー…やっと一段落…と?」
大規模電波障害の復旧に人手として駆り出され、自分に宛てがわれた全ての仕事を終え一息つく青年────御堂和真が携帯端末を開くと、そこに同機されているダイバーギアにメッセージが届いた旨の通知が届いている事に気付く。
とはいえ今は仕事中、和真はすぐさま確認したくなる欲を堪え、帰ってから確認する事にした。
「─────あら…?お、お姉さま…!」
某所住宅街、とある民家の一室にて。
復旧からまだ日が経っておらず、作業に追われている為に休校となって暇を持て余す少女が手慰み程度に触っていた携帯端末に、同機したダイバーギアからの通知が届く。それが誰からのモノかと分かるや否や、すぐさま簡易ログインの支度を整えてGBNに接続し、届いたメッセージを開いた。
「ふぅ。腕に鈍りは無いが、今少しばかり刺激が足りぬな……む?めっせーじ、とやら…ここか。」
復旧したてのGBN、ジャパン・ディメンション。エリアを二つに分け隔てる大河を繋ぐ大橋にて。
フォースの活動が未定である為、幾日かぶりに古巣で辻斬りに勤しみ、その日も丁度一機叩き斬って電子の海に返したヒバリの元へ、フォースメンバー全員に宛てられたメッセージが届いた。
ヒバリは慣れない動作にぎこちなくなりつつもコンソールから通知欄を開いてメッセージの部分をタッチし、届いたメッセージに目を通す。
そこに書かれていたのは─────、
to. フォースGloriaメンバー
突然のメッセージごめんなさい。
今日は皆に提案があります。
近いうち彼等に、終末チェスタイムにリベンジ戦を挑みます。今度こそ、皆で彼等に勝つ為に。
オフ会をしましょう。
[special Thanks !!]
ELダイバー争奪戦×2
[前者]二葉ベス様作、「レンズインスカイ」より
あのシーンやあのシーンが見られる名作です。現在無許可につきURLは貼れませんが、是非探してみてください。
[後者]守次奏様作、「リビルドガールズ」より
此方も言わずと知れた名作。
もしまだ読んでないよってGBD二次民がいらっしゃるようでしたら是非とも探してみてください。
続編的なのもあるからたくさん楽しめるよ!!