滑り込みセーフのエイプリルフール特別回の前編なので初投稿です。
※この特別編は2話構成です。
※物語の本編とは今後一切絡まない話なので飛ばしてもなんら問題はありません。
これはいつかの未来の話。
物語の本筋とは何ら関係の無い、幕間劇。
フォースGloriaは数多のバトルを重ねて躍進を続け、いつしかフォースランキングに載るレベルとなり、更にはリーダーであるμ自身も個人ランキングに名を連ねる程の強者へと成長していた。
その活躍は遂に名だたる上位ランカー達の目に留まる程となり、またリアル事情からμこと有栖川美優は父に連れ立って、GBNに手を出す一大企業の顔役との面会を果たす機会も増えていた。
これはそんな折に偶然に偶然が重なり合って起きた、些細ながらも大きな事件の話────。
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「ハハ…僕のは組み上げ以外にも幾つかこの中でしか使えない手を使っているからね。純粋なビルドの腕には君にまだまだ及ばないよ、クオン嬢。」
「よく言う……あの要塞、中身までスクラッチされているのは我が眼でとうに確認済みよ。」
「─────はて、何の事やら。」
とある部屋にて、法衣の男と人外少女が語り合う。絵面だけを見れば魔王と司祭の密談……とまぁ何とも裏の有りそうな光景だが、その実はGBN…ひいてはガンプラビルダーという界隈に名高いビルド狂いダイバー同士のイカれた対談会である。
そして────、
:どっちもどっちなんだよなぁ…
:クオン様相手に対等のビルド談話を展開するのはGBN広しと言えど数え切れる程しかいない
:時々何言ってるのか解らん時がある
:安心しろ、俺もだ
:同志よ…
テーブルとティーセットを挟んで対談する2人、そしてその傍らには大きな画面が映し出され、次々と2人の会話に反応してい紡がれた言葉が流れていく。
ここはG-tube。クオンが所有する配信枠、
「クオンの放送局」特別座談会の場である。
ある日を境にクオンが初めた独自の配信枠で、その目的は世間に注目されてまだ日の浅い有望株との談話を通じて彼等彼女等のまだ見ぬ可能性を発掘しよう…という、一風変わった趣旨のものだ。
その何回目かのゲストに呼ばれたのが、新進気鋭のフォースGloriaメンバーにして、フォースネスト「空中要塞ガラッシア」の製作者、トーチだった。
ビルド狂い仲間……もとい、ガンプラにある種の情熱を賭ける者同士の会話というものは不思議と盛り上がるものであり、気付けばその配信時間は1時間に迫ろうとしていた。だが未だに終わりを告げる気配の無い語らいは……唐突に幕を降ろす事となる。
「いやしかしクオン嬢、君の創り上げる作品は何度見ても素晴らしいモノだよ。」
「フフっ、当然だ。我が組み上げたガンプラ達はひとつ残らず全て、至高の品だとも。」
「ああ、特に君が普段操るジャバウォック。戦場においてあれ程の畏怖を撒き散らしながら、いざこうしてガンプラとしてのサイズに落とし込んだ姿を見ると、不思議な愛らしさを感じる。」
「そうとも、ジャバウォックは我が……ん?」
「そう……『手乗りのジャバウォックは可愛い』と、僕は本心からそう思っているよ。」
空気が凍り付いた。
クオンの顔から威厳や普段取り乱した時に見せる崩壊具合が両方消え失せ、静寂が場を支配する。
そうして数秒……ようやくクオンが口を開く。
「────今日のところはここまでとしておこう。少々急だが予定を思い出した。」
「ん?そうかい、僕はもう少し語り合いたかったけれど…時間が無いのなら仕方ないね。」
「ああ、すまぬなトーチよ。では良い終末を。」
そう言ってクオンは画面を操作し、配信状態を終了させる。それからほとんど間を空けずにトーチとほんの少しの挨拶のみを交わしてログアウトし、現実の世界へと帰っていくのであった────。
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「あぁぁぁぁぁもう!!!」
ある部屋で、少女が1人荒ぶっていた。
「何なのよあの男!私のジャバウォックを!可愛いですって!?そんなつもりで作ってなんかいないわよ!あーもう解釈違いッ!!!」
近所迷惑にならない程度に部屋の中でひとしきり暴れ回った後、息切れを起こしつつもどうしてくれようかと思案する。仮にも「終末を齎す龍の端末」として活動しあの機体を駆る身として、可愛いガンプラだ等と侮られたままでいられる訳が無い。
……自分でもどうかしている自覚はある。
らしくない、あらゆる日常に心を掻き乱される事はあっても、こんなにも純粋に腹が立つ経験は中々無いだろう。限界オタクが解釈違いに晒された時に荒ぶるのはこういう気持ちなのだろうか。……等と考えているうちに少しずつ心が落ち着いて視野が広がり……偶然置いたままにしていた雑誌に偶然挟まっていた広告が、これまた偶然目についてしまう。
「────これだわ。」
夜ノ森零───クオンはこの後数週間、最低限の活動や配信を除いてめっきりとGBNへのログイン頻度を落とす事となる。その裏で計画を遂行する為に。
そして────、
この偶然こそが、後にGBNを揺るがす事件の切っ掛けであり、始まりであった────。
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暫く時は経って、ある日の休日。
地獄の釜、猿共のラストリゾートと名高い、
ハードコア・ディメンション・ヴァルガにて。
とある区域の廃墟街エリアで相も変わらず徒党を組む、アウトローな世紀末ダイバー集団がいた。
「うっへへへアニキぃ、今日は大量ですねぇ」
「ガッハッハッ!これでこそ俺らよッ!」
ザクIIやザクIII改、サイコ・ザク等々の機体の各部位にスパイクを追加する世紀末改造を施した、30機程の部隊が周囲を警戒しつつ補給を済ませる。
この日もいつも通り初心者狩りに勤しんでいた悪党ロール軍団である彼等は、その日は日常にしては珍しくメンバー30人全員が完全集結していた。
「よォしテメェらッ!!休憩はここまでだ、張り切って次の獲物を狩りに行くぜェェッ!!」
「うぃーっす」 「ちょいやっさ」
「ヘイッ!」 「あいよー!」
「締まらねぇなァ……おらしゅっp…」
「あ、兄貴ィ!なんか上から来ますッ!」
「は?」
直後…世紀末集団の前方、廃墟街の外れに、突如として1つの巨影が現れ降りて来た。
その余りの衝撃に土煙が立ち上り、一時的に視界が遮断される。無数の塵が舞いセンサー類を狂わせ…
……視界が復旧した直後、彼等は腰を抜かす羽目になる。無論、それはどう足掻いても敗北必至の強敵が現れた事とは全く異なる理由によって、だ。
そこ居たのは……怪物であった。
ジャバウォック、
それはとある小説にて語られる怪物の名である。……が、このGBNにおいてはそれをモデルに象った、「エターナル・ダークネス」の「クオン」…が操る愛機であり、MGユニコーンガンダムをベースに竜らしい躯体を模した、異形の大型MSだ。
それは彼女のビルダーとしての実力に裏付けされた脅威の高性能を誇る機体として名を馳せている。
そして、そのジャバウォックは時折ヴァルガにも姿を見せる為に、この世紀末部隊のリーダー、アニキことヤン・チーも幾度かその姿を見て、もれなく消し炭になった経験があるのだが────、
「なん、だよコイツ……」
「あ、アニキ?コイツは「エターナル・ダークネスのクオン」が使ってるジャバウォックじゃ……」
「違ぇッ、アレはこんなんじゃねェッ!」
「あ、アニキ……」
「ッ……いや悪ぃ。確かにこの見た目はジャバウォックだろうよ。だがよォ……コイツは…!」
「デカ過ぎんだろ……」
それは、巨大なジャバウォックであった。
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────、
「ふふ…ふふふふ……」
どうかしてる。今なら仲間や知人にそう言われても肯定してしまうだろう。それ程に今の自分は理性をトばしていると、クオンは自覚していた。
あの時見てしまった広告に付随する衝動に突き動かされるままネットで注文したのは、1/48……俗に言うメガザイズモデルのユニコーンガンダムだ。
通常、GBNにて一般的にスキャンされるガンプラのスケールはHG、1/144サイズである。
とはいえ勿論、他のサイズを登録する事も可能だし、何ならクオンが操るジャバウォックもそのベースは1/100サイズ、MGユニコーンガンダムなのだ。
だが────それをあの男は、事もあろうに可愛いなどと言いやがった。許さん絶対に許さん私の本気をみせてやる。驚き天を仰ぐがいい、物理的に。
そうしてクオン……零は、購入したメガザイズユニコーンをベースに、ジャバウォックを組み上げた時と同じ手順で……とは言っても、このサイズに見合ったキットはMGの時のソレよりも格段に減っている為にその多くはスクラッチに頼る事となるのだが。
ともあれ、ほぼフルスクラッチのような状況で何とか機体を組み上げプラグインも再現し、今に至る。
「ふふ、ふふふふ……貴方達には、コホン。貴様等には悪いが、此度は我がハイメガジャバウォックの試運転、その栄えある最初の的になって貰おう。」
あまりの高揚から崩れ掛けたキャラを再構築し取り繕って、目線の遥か下にたむろする世紀末ミニチュア軍団へと全体通信を繋いで語り掛ける。
無論相手からの答えを聞く気は無い、これはただ蹂躙を開始する為の宣言に過ぎないのだから。
その間にも左右前後、更には上や下からも無数の弾幕が襲ってくるがそこはそれ、全く無意味だ。
ハイメガジャバウォックにはツインリアクター由来のナノラミネートアーマーは勿論、Iフィールド発生装置も併設されている為にビーム射撃は全くと言っていい程通用しない。加えてサイズ由来の装甲の分厚さはそんじゃそこらの実弾兵器が豆鉄砲以下にすら思える程に威力を減衰させてしまう。
正しく移動要塞、超巨大MSが、「ただ歩くだけ」で発生する衝撃波や物理効果を主体戦力として、眼下のミニザク軍団を相手取った蹂躙を開始した。
そしてソレを離れた場所から眺める者が1人。
危険地帯であるヴァルガにあってMSを収納した状態、生身でその荒れ果てた丘に立ち、双眼鏡で巨龍の蹂躙劇をまるで他人事のように観戦する。
そうして双眼鏡を目から離した「法衣の男」は…
「驚いた。クオン嬢、暫く配信の熱意が他所にあると思ったがこんな事になっていたとは。……やはり僕のせいかな。それなら…僕は僕の
法衣の男……此度の大災害の実質的な元凶であるトーチは1人そう呟くと、それが繰り広げられる方角に背を向け電子の海へとその身を分解していった。
[Special Thanks !!]&[情報解禁]
ハイメガジャバウォック (青いカンテラ様作:GBN総合掲示板(※現在跡地)より許諾と打ち合わせを経て派生)
全高およそ70m(推定値)
ベース機:メガザイズモデル1/48ユニコーン
カスタムパーツ:たくさん
フォース「エターナル・ダークネス」のリーダー「クオン」が駆るジャバウォックを更に巨大化させた狂気の結晶。
1/48ユニコーンガンダムを核とした最大最強最悪の邪竜。もはやMSというよりも駆逐艦や戦艦と言った方が正しいのではと思える程の圧倒的なサイズを誇る。出演するゲームを完全に間違えているような外見だが、何故かログイン時にスキャンが通った。通ってしまった。
ここまで来ると歩くだけでも災害級の被害を撒き散らす為、武装や火力面にエネルギーを割く必要があんまりない。そのサイズ及び重厚さから防御力が極まり過ぎて、一説によれば彼のロータス要塞と正面からタイマン張って殴り合えるらしい。通常のジャバウォックの兵装に加えて背中にはミノフスキードライブを備え、更に機体各部に搭載したIフィールドとの連動でファントムライトを発生させる事が出来る。この状態だと機体の航行速度は易々と限界を超え、ビーム射撃と同等以上の速度に到達する事もあるらしい。