4/22
昨夜深夜テンションで仕上げて投稿しましたが、後半部分に大幅なミスを確認した為編集しました。
主に新機体の解説が増えています。
「っん────。」
窓辺から朝の日差しが入り、瞼に閉ざされた視界を照らす光の眩さに眠りから引き戻される。
突っ伏していたせいで右頬が少し痛い、どうやらそのまま眠ってしまっていたらしい。
まだ少し眠い眼を擦り、意識を覚醒させる。
目の前に置かれた、漸く完成したガンプラにぶつけてしまっていないかを確認して、何も問題が無い事を確認すると……思わず笑みが零れた。
「やっと……出来た、私達の切り札。」
こんな高揚感は、ブリランテが完成した時以来だ。…あの時はGBNへの悪感情が競合してテンションが上がってくれなかったけれど、今はもう違う。
今すぐGBNにログインして、皆に報告したい。
「でも……それは後、」
そうだ、幾ら気分が高揚しているからと言って、リアルを疎かにする訳にはいかない。何より今日は平日、ヒバリさんは解らないが、オズマもズィーベンも今呼んだってまず来れないだろう。
一先ず椅子を立ち、顔を洗いに部屋を出た。
───────────────────────
場所は変わってGBN。
ディメンション・ドゥームデイ、
一面に広がっている紅蓮の荒野を眼下に収めた歪な塔の頂点に、彼等は…終末チェスタイムは居た。
「ンン…暇だよブブちゃん、何か無い?」
「知るか、獲物探しは貴様の仕事だろう」
「そりゃあ確かにそうだけどさぁ…やっぱり知名度はもうちょっと上げていくべきなのかねぇ…」
この日もいつものように、フォースネスト
「ンンー……なぁサリィ、一応君にも聞くけど、何か面白そうな話とか聞いてないかい?」
「あるよ」
「だよなァ……そんな簡単には…え、マジ?」
虚空に背をもたれさせていたコーチが起き上がって喰いつく。伏魔殿の外壁をハンモック代わりにして背中を置いていた小柄なダイバー、サリィがコーチにとって予想外の言葉を口にしたからだ。
「ある、というか。もうすぐ…来る?」
「来る?……ハァん、成程ねェ…?」
サリィの言葉にコーチが納得して見せた直後、フォースリーダーであるコーチの目の前に突如フォース関連通知を示すコンソール画面が現れる。
それは外部からのフォースネスト入場申請であった。コーチはその申請者のIDとダイバーネームを見定めて…悦びに口角を吊り上げた。
ダイバーID:******-***-***
ダイバーネーム: μ
───────────────────────
「ヨウコソ黒兎チャン。あの時の敗北で心が折れなかったようで、俺達としても何よりだよ。」
「あれくらいで折れるメンタルしか持ってないなら、最初から頂点なんて目指してない。」
フォースネスト伏魔殿の頂点に、彼等の許諾を得て入場したμ。彼女は真っ先に出迎えたコーチと共に景色に似合わないアンティークのテーブルとティーセットを囲んで、フォースリーダー同士のお茶会…という名のリベンジ予告を敢行していた。
周囲にはその姿を威圧する大男…Kingと、
まるで興味が無いと言わんばかりに空間を漂っている少女…サリィが囲むように陣取っている。
「───で、今日はいったい何の用事かナ?」
「解ってる癖に。…私達Gloriaは、終末チェスタイムにリベンジバトルを申し込む。まさかこの期に及んで嫌だなんて、貴方達は言わないよね。」
「当然だ、何度群がろうと諸共に消し飛ばす。…が、貴様等、よもや何の策も無く挑み掛かる気ではあるまいな?味の抜けた贄は喰うに値せんぞ。」
そこでKingが口を挟んで来た。
普段ならばこの威圧感…よくゲーム等の創作物で技として扱われている「プレッシャー」とは、こういうものの事を言うのだろうか。そんなものを前にして怯んでいたかも知れないが……今は、違う。
「当然。そっちこそ胃靠れして吐かないでよ」
「クッ…フ、ハ…ぬかしおるわ。」
Kingが笑う。
その光景を見てコーチの目が見開き、そしてニンマリと口角を吊り上げる。そしてKingの同行に対して驚いたのは、サリィも同様であったようだ。
「へぇ……良いぜ、そのリベンジ受けた。」
そうしてついに、終末チェスタイムのリーダーであり最終的な決定権を有するコーチが、リベンジマッチを快諾したのだ。μにとって唯一の不安……自分達は既に負けたのだからと、リベンジマッチを蹴られてしまう可能性は、ここで確と消え去った。
「で、場所はどうする?前はランダムだったけど…今回はリベンジボーナス、君達が選ぶと良い。」
「ならお言葉に甘えて。場所は────、」
────────────、
───────、
────、
「それじゃあ、そういう事で。」
「あぁ、良い終末を。」
リベンジマッチの日程擦り合わせを終えて、μは背を向け…「伏魔殿頂点から飛び降りる」という、コーチ達がフォースネストに設定したフォースネスト離脱手段を実行して、その場から退去する。
μの姿が見えなくなった直後…コーチが天を仰ぐと…手を顔に当てて視界を隠しながら言葉を放つ。
「はあ……驚かされたよ。なあブブちゃん。 」
「フン、随分と嘗められたモノよ。だが…クク、アレはくいでのある者の眼だ。余を煽る自信の程、しかと味あわせて貰おうではないか」
この日、フォース終末チェスタイムの面々はかつて無い程に昂っていた。一度は完膚なき迄に負かした相手が、絶対的な自信を携えて舞い戻って来た。
そんな彼女達の復活を悦ぶ声が真紅の空に伝播していく中…意味も無く浮かぶ少女は、呟く。
「……次も、負けないよ」
───────────────────────
数日後、リベンジマッチ当日。
奇しくも前回とは逆の配置で陣取られた2組…
フォースGloriaと、フォース終末チェスタイム。
お互いの機体が真正面から相対し、バトル開始を知らせるゴングを待ちつつも静かに睨み合う。
片やフォース終末チェスタイム、
仄かに輝く躯体を黒翼で覆い隠す悪魔に、煌黒の躯体に黄金を纏った魔王、そして未だその全容を包み隠す狙撃手、と…3機で構成された少数精鋭だ。
片や、フォースGloria、
彼女達のフォースネストである要塞ガラッシアを背にして、「真紅の悪魔」、「紫檀の武者」……
そして────、
『───ン?エピオンのお嬢さんは…そこか』
自機に搭乗したコーチがGloria側の布陣を見遣る。その数は要塞を除けば三機……フォースGloriaのメンバー数として見るには、1人足りなかった。
そのあと一人…そこには居ないエピオンライデンシャフトを駆っていたズィーベンは、μと共に在る。
ウイングガンダムゼロは、通常18m程度の機体サイズである。しかしその戦場に降り立った新型は、目算にして23m程はあろう大型機と化していた。
四肢は延長され、手首にはゴッドガンダムのマニュピレータと酷似したパーツが装着されている。脚部には重力圏の出力制限もものともしない程のスラスターを追加され、全体的な重厚感も増している。
またその中で最も目を引くのは、その翼。
背中にデスティニーのバックパックをベースにしたと思しき基部を装着し、そこからアームを複数伸ばしてEW版ウイングゼロと似た翼を装備している。
その数は背中から8枚、
…肩近くのアームから2枚、
…腰付近のアームから2枚。
併せ12枚の翼が、神話に語られる大天使の長を彷彿とさせる神々しい姿を演出している。
それが見掛け倒しでは無く、一つ一つにゼロの機動力を発揮させる力があるのなら脚部のスラスターも相まって、それはかつての愛機を遥かに上回る出力を叩き出しパイロットを振り回す、恐怖の暴れ馬が如き天使と化している事であろう。
コーチの目算であれば、μにはそんな暴れ馬をぶっつけ本番で操縦するような才能は無い。
だがそれに対する解決策も既に理解していた。
ズィーベンが、そこに乗っているのだ。
機体のコックピットを副座式に変更して操縦機構を分割し、そのメイン操縦を、ズィーベン……かつて初めて操縦したEGガンダムで、道を踏み誤っていた頃のμの強襲を初見で数度躱し捌き、更にその数ヶ月後にはμの殿を務める程の腕へと昇華させた、天賦の才覚の持ち主……そんな彼女に背を託したのだ。
結果として新型機は初お披露目でありながら、長年寄り添ったかのようにズィーベンの腕によく馴染む…μとズィーベン、2人の相棒として成立していた。
しかしこの組み合わせによって減った頭数は補わねばならない。三機vs三機によって実質互角にも見える戦力図はしかし、一度明確な敗北を喫した事によって実力差がついているものと思われた。
だが──────、
『けど本当に良かったのかい、黒兎ちゃん? 』
「当然。前回みたいには行かないから。」
『そうか……じゃあ、始めよう。』
「絶対に、勝つ。」
実力差が解りきっているが故に、
終末チェスタイム側の全員一致を以て決められた、Gloria側へのバトルフィールド選択権譲渡。
それを受けたGloria側が選んだフィールドは…
眼下に赤き大地、天空に赤き空を掲げた大地…
それは「ディメンション・ドゥームデイ」の一角、フォース終末チェスタイムが有するフォースネスト周辺に該当する、彼等のホームグラウンドであった。
「行くよ皆、私達の『ウイングゼロ・Ricorda』は…私達のガンプラは、絶対に……負けないッ」
Battle Start ! !
次回、本編ラストバトル開戦です。