ガンダムビルドダイバーズ:Ricorda   作:麻婆炒飯

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もう少し文字数を伸ばしたい欲

感想、お気に入り等々ありがとうございます。承認欲求が満たされ執筆意欲へのバフになります。


[第四話] 無双ミッション[EASY MODE]

「───────。」

 

静かな部屋に本のページをめくる音が鳴る。その日はまだGBNにログインせず、GBNの関連週間誌のバックナンバーを1人読み耽っていた。注目のG-tuber(じーちゅーばー)や当時の最新イベント情報、今週のガンプラetc……幾つもの項目を無視して隔号ごと後半のページに書かれている、「ELダイバー特集」の項目へと目を向ける。

ELダイバーとは、GBNへのアクセス時スキャンされたガンプラのデータを転送した際に生じる総容量100万分の1程度の余剰データが蓄積された結果生まれる電子生命体である。GBN運営はそう定義付け、説明している。そしてガンプラのデータから生まれた彼等彼女等は、皆総じて「ガンプラの声」を聞くことが出来るのだという。

 

『この子も喜んでるよ。貴女と一緒に飛べて、一緒に戦えて嬉しいって言ってる。』

 

先日、ヤナギランの採取に赴いた先の花畑で聞こえた声。ガンプラが…私のブリランテが喜んでる、とあの声は言っていた。この特徴はELダイバーのそれと一致するだろう。だが……

 

「うぅん…流石に無いか…GBNの中で自由自在に姿を消せるELダイバーなんて…」

 

あの後すぐに起き上がったけど、その場には誰もいなかった。隠れる場所なんて近くには何処にも無かったのに。それに何より、自分自身でブリランテについて思考を巡らせるまでその声と自分が会話している事にさえ何の不審感も抱かなかった。少なくとも調べる限りでそんな事が出来るELダイバーの情報は何処にも書いていない。…もしかしたら運営側が意図的に隠してる線も無くは無い…がもしそうならどんなに探しても見つからないだろう、こうなったら業腹だけど考えるだけ無駄と諦めるしか無い。

 

「ぅうあぁ…これ以上は頭痛くなる…やめた」

 

考えるのを止めた、この案件については暫く頭の片隅に追いやっておこう。何か進展があったらまた考えればそれでいい。閉じた週刊誌を傍らに積み重なる本の山に置くと背筋を伸ばし解して、息をつき視線を本の山とは反対側のスタンドに置かれているダイバーギアへと向け、思い出したように先程積んだ雑誌を開いて中程のページを開く。

 

「無双ミッション…新アップデート…か…」

 

無双ミッション。GBNにて実装されているミッション形式の1つで、無数に湧き襲い来る敵機をひたすら撃破し続ける、というもの。かなり前から実装されているダイバー達にお馴染みのミッションでもあり、最近では予め敵機の強さだったり目標撃破数を設定する等の細かい要素がアップデートにより追加された事でGBNにおいて無数にあるミッション群の中でも埋もれる事無く、未だに根強い人気を保っている。

 

「…初級ぐらいの調整なら息抜きがてらでも行けそう、試してみようかな。」

 

再度を本を閉じると山の中へ返し、家庭用ダイバーギアを手元に手繰り寄せてヘッドセットを被る。

二度目のログイン、今回は目的も決まっているし、前と違いアバターメイクの必要も無いからより万全の状態でミッションに挑めるだろう。そう思考を巡らせながら電子の海へと意識を潜らせて────。

 

 

────────────────、

 

───────────、

 

──────、

 

 

 

──────Welcome to GBN !!──────

 

 

 

─────廃都市型ディメンション

宇宙世紀におけるコロニー落としや様々な攻撃で荒廃した都市をモデルにした汎用ディメンションで、多種多様な戦闘ミッションに利用される重力圏設定での基礎となるディメンションの1つである。そんな場所の中央、背に翼を携えた一機のガンプラが佇むその中で……

 

「設定にミスは…無し、通信環境も良好、これなら万が一にもラグは無い。いつでも行ける…」

 

コックピット内でコンソール画面を開き最終確認を行うウイングゼロブリランテのダイバー、μ。無双ミッション開始まで残り10秒のカウントが鳴る中大きく1つ深呼吸をして、正面を見据える。ブリランテの右手は左腕に装着されたウイングシールドの裏側へ添え、勢いよく飛び出す為に姿勢を低くして……

 

3……2……1………

 

──────Battle START !!

 

先手必勝、一気にバーニアをふかして飛び出すブリランテがシールド裏からビームソードを抜き、電子の海からリーオーNPD───GBNにおいて初心者用バトルミッションにも出現する最弱の汎用MSである───へ、出現とほぼ同時に薙ぎ払う。襲われたリーオーは胴体の丁度中央から上下へ真っ二つに分かたれ、回路が焼き切れる爆発音と共に電子の海へと返還されていく…

 

「一機目、次───、」

 

μは、ブリランテは止まらない。そのまま機体を起こし90°右へ向いて次のリーオーに肩部マシンキャノンを放射する。本来近距離牽制において使われる武装によく名付けられるその武装は、しかしブリランテの原型となるウイングゼロには当て嵌らない。彼のMSは原作においてその速射のみで一般普及装甲MSを破壊し、最新鋭機の装甲すら傷付けた代物だ。そんな武装の集中発砲を受ければリーオーNPDはひとたまりもない、瞬く間に装甲を貫かれ蜂の巣が如く風通しを良くして…1機目と同様に爆発音を響かせ電子の海へと還って行った。

もしリーオー達に人が乗っていたのなら、これだけで怯み場合によっては背を向け逃げ出していただろう。しかしこれはNPD、人格の無いコンピューターが操る人形だ。ブリランテが2機目を破壊した瞬間から半拍置いた程度のタイミングで、後方3箇所から3機のリーオーNPDが同時に襲いサーベルで斬り掛かる。…ブリランテはそれでも止まらない。右手に持ったままのビームソードの出力を一段階上昇させると中段に構え、バーニアの放出を応用してその場で一回転して見せる。今にもブリランテを打ち倒さんとしてきた3機のリーオーはそのまま、胸部から2つに割れて弾け、そして消えた。

 

「同時に出るのは5機…?なら…!」

 

ビームソードの発振器をシールド裏にしまうと、腰にマウントしていたバスターライフルを手に取り右側いっぱいまで手を伸ばして、無造作に撃ち放つ。光の軌跡を引いて飛ぶ高威力のビーム射撃はある程度飛んだところで遠方に複数現れた新たなリーオーの内1機を的確に貫き、更にその後方に現れたリーオーも巻き込んで吹き飛ばす。加えてブリランテは更に2発バスターライフルを撃ち、やはり的確なターゲティングで2機、射線上に巻き込んで追加でもう1機爆散、消滅させる。

 

「これで10機…次…!」

 

まだ無双ミッションは始まったばかりだ。次の出現地点を予測し再び装備をバスターライフルからビームソードへと持ち替えながら、その予兆が見える位置へと飛んだ。

 

 

─────────────────、

 

────────────、

 

───────、

 

 

 

どれ程の時間が経過しただろうか、周囲には演出の為に敢えて残されたリーオーNPDの残骸が無数に転がっている。その中で灰と煙と炎に煤焦げたブリランテが、尚もビームソード一振のみを一心不乱振るい続け敵を斬り倒していた。

肩部マシンキャノンは30機程破壊したところで撃ち尽くした。バスターライフルも50機程度のところで使い物にならなくなって投げ捨てた。シールド内蔵のマシンキャノンはとっくに弾切れで、シールドそのものも途中現れたやたら強くて優雅な、騎士然としたリーオーから隙を奪う代償に裂けて落ちた。苛烈だった。イージーモードとはいえ仮にも初心者、Fランク───確認していないだけで、正確には最初のヴァルガ戦で得たDPでEランクに昇格可能なポイントが溜まっている───のダイバーにはとても挑めない難易度のミッションだった。それでもブリランテは、μは被弾を最小限に抑え格闘戦において常に優位を取り続け、そして最後のリーオーにビームソードを突き立てた。

 

「─────これ、で……100…!」

 

突き立てたビームソードを引き抜き離れる。最後のリーオーは胸部中央に穴を開け、力無く崩れ落ちて動かなくなる。そして周囲に散らばり転がったリーオーNPDの残骸達と共に、連鎖的に次々と爆発四散し、そして電子の海へと還って消えた…

 

 

───────Mission Complete !!

────Congratulation !!

 

ミッションの完全クリアを告げるコンソール画面の表示を見て、μは息をつき操縦桿を手放し数歩離れる。緊張の糸を途切れさせて壁に背を預け、ズルリと音の鳴りそうな挙動でその場に座り込んだ。

 

「終わっ…た…思ってたよりキツい…っていうか途中のリーオー何…レアエンカウントか何か…?…まぁ、いいや…戻ろう…お疲れ様、ブリランテ……」

 

予期せぬ戦いに少々の悪態を突きながらも再度コンソール画面を開き、愛機を労ってから消し去りそして自身をセントラルディメンションへと転送する操作を行う。身体が電子の海へと潜り移動する感覚に身を委ねる。戻ったら少し休んで、報酬を受け取り、今日はブリランテの詳細な調整だけしてログアウトしよう。そう思考を巡らせた。……今回のミッション戦闘における映像ログの公開設定が、永続的な全体公開のままになっていた事にすら気付かないまま────。

 

 

 

 

──────なぁ、さっきのログ見たか?

 

────見た見た、無双ミッションだろ?

 

─────Fランダイバーの動きじゃないだろアレ…

 

────元GPDプレイヤーじゃないの?

 

───GPD出身の俺が言う、あんな奴知らん

 

──────期待の新生再びってか?

 

 

μは気付かない。自身の戦闘ログが一部で噂になっていた事に。無双ミッションの成果が、話の流転が早いネットの海においてほんの僅かな間だけでも話題として取り上げられていた事に。μがこの周辺環境の変化に気付くのは、まだ先の話である。




ピロリロリーンッ

「μは 称号「百騎無双」を 獲得 した !」
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