ガンダムビルドダイバーズ:Ricorda   作:麻婆炒飯

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ネタの噴出が止まらないので初投稿です。頭の中にはあっても出力するのは一苦労ですね。


[第五話]フリーバトルモード 1回目

ある日の昼、GBNセントラル・ディメンションからMSの平均的速度で飛ぶ事数十分程の場所にある平地に、1機のガンプラが佇んでいた。

機体の名前はウイングゼロブリランテ、ネット上にてまことしやかに噂が囁かれる新進気鋭のルーキーダイバー、μの駆るガンプラである。

 

「…うん、間違いなくここには一番乗り。不意打ち狙いの潜伏者もいない……よし」

 

ブリランテのコックピット内でμは1人そう呟く。

この日μはとりあえず誰でも良いから対人戦をこなしておこうと、その為に適当なフリーバトルエリアを陣取ったのだ。今日は丸一日余暇を見繕ってあるし、幸いにも朝のうちからログイン出来て人が来る前に今居るエリアを確保出来た。あとは何度か挟む小休止のログアウト時以外、入って来る奴に片っ端からバトルを挑んでいくだけだ。ある程度戦績を稼げばランクも上がるしもしかしたら噂になるかも知れない。そうなれば恩の字だろう。……そんな事をμはコックピットの中で自信たっぷりに思考していた。自分がプロフィールと通知をガン無視しているせいで既にランクアップしている事に気付かず、且つ一部では既にそこそこの噂になっている事も知らずに頷いた。

そんな期待のルーキー、μのランクアップと実績獲得を目指す連続対人戦が今、始まる───!

 

 

 

 

──────────────────、

 

─────────────、

 

────────、

 

 

 

 

 

「───なんで…?」

 

μの意気込みから実に3時間が経過した。率直に結論から言おう、0戦0勝0敗0分である。この3時間、このフリーバトルエリアには誰一人として現れなかったのだ。μは3時間を棒に振った。

ごく一般的なオンラインゲームの過疎気味のサーバー内での話であればまぁこういう事も無くはないだろう。だがここはGBNだ、世界中に数多の熱心なファンを抱えそのアクティブユーザーは100万や200万では済まされない。甘く見ても500万以上、広い目で見れば世界中から1000万、場合によっては2000万を優に超えるアクティブユーザー達が集っているのではないか、と言わしめるぐらいにはメジャーなオンラインゲームだ。いくら今が平日、それも中日の真昼間であろうと、世界規模であれば1つのエリアに数時間誰も来ないなんて事はそう易々と起きる事では無いはず。…であるにも関わらず、このフリーバトルエリアには3時間もの間静寂に包まれていた。

μの操縦桿を握る手が震える。肩が震え息を大きく吸い込んで吐き出し、落胆を抱えた大きな溜息になる。しかしその悲壮感が誰かに伝わる事は無いだろう。

「いいや…今日はもう帰ろう……」

 

心が折れた気がしたがそれは気のせいだ。ただこれだけ運の悪い日は誰にも巡り会える気がしない、だからまた折を見て出直すだけだ。他意は無い。無いったら無い。そう心の中で言い聞かせてからブリランテのスラスターをふかし、セントラル・ディメンションに向けて飛び立とうとしたその時───

 

『ようッ!お前が「GPDの亡霊」だな!』

 

「っ!!」

 

ようやく1人来てくれた。機体を振り向かせ立ち直り、そして空から降下してくる相手を見据える。相手のガンプラ、その素体は───GAT-X105ストライク、そのカスタム機だろうか。加えて背には圧倒的重武装。搭乗者であったキラ・ヤマトでさえ使用を控えた程に取り回しの難しいバックパック、マルチプルストライカーが装備されている。それだけでは無く腰にエールストライカーのスラスターを改造したであろう装備が追加され、また脚部にはランチャーミサイルが、胴にはフルアーマー系のキャノン砲付き追加装甲が装置されストライクらしくない超重武装機に仕上がっている。当然そのコストもとてつもないものになっているだろう、対策無しでは30秒も稼働すればフェイズシフトダウンを引き起こしてしまうのでは無かろうかという有様だ。だが相手とてこれ程の武器を積み込んで飛んできたのだから、核エンジンなりGNドライヴなり、何かしら制限時間を取り払う措置はしてあるはず。

 

「ふふっ…いいね、良いよ。やろうか。」

 

こういうのだ、こういう相手を待ってたんだ。前に偶然出会ったような、ただゴテゴテに着飾っただけのガンプラじゃない。戦うことにおいて己の信じる正義に全力を振り切った改造、それを突き詰めたお互いの力をぶつけ合って雌雄を決する。ガンプラバトルとはそういうものだろう。例えバーチャルの中でも、それに己が参加出来るというだけで垂涎モノだ。…決して人が来てくれたのが嬉しくてテンションMAXになってる訳では無い。

さぁ、早く始めよう。相手からのバトル申請を受諾するとブリランテをフリーバトルエリアの淵から移動させ、相手との距離感を遠距離よりほんの少し近いかぐらいの位置に合わせて息を取り直す。そうして改めて相手の機体を見据え────、

 

『Battle Start !!』

 

飛び出す。先手を取る為の基礎は変わらない、相手が自分よりも遠距離の取り回しに優れているのなら尚更だ。少しでも距離を詰めて、己に有利な間合いへ引きずり込む。だが相手も馬鹿では無い、脚部に装着されたポッドから放たれたミサイル弾が接近に対する牽制───にしては少々火力過剰な気もするが───を狙って襲い来る。そのまま真っ直ぐ進めば直撃は免れまいが、まさか正直に当たってやる義理も無い。ブリランテの各部スラスターを1つ1つ個別に手動操作して急転身、真上に飛んでミサイルをやり過ごしそのまま一気にスラスター出力を上げて突貫する。

 

『はァッ!?てめ、何だその動き!?』

 

相手ダイバーの呆気に取られた声が聞こえた。だが目の前のストライクはそれでも迎撃の手を緩めず、肩部装甲の対艦バルカンとガンランチャー、胸部装甲内蔵四連バルカン砲にメイン火砲である超高インパルス砲「アグニ」の一斉掃射で撃ち落とさんとしてくる。流石にアグニに当たるのは不味いので避けるとして、そうすれば他の砲撃が当たってしまうだろう。中々に巧い采配だ。ごく一般的なダイバーならここでテンパって落ちるか、アグニと対艦砲以外を受けて消耗した状態での激突、そのまま怯んだところを右手の対艦刀で斬られておしまいだろう。

ならば離れれば良い。しかしその方向は後方では無い、再度ブリランテのスラスターを操るとその推力全てを左側に集中させ、一気に右側へ飛び離れる。多少距離は離れるが、このままバスターライフルを手に取って構え…その超重量故にすぐさまの転換を得意としないストライクの右手に握られた今回の近接戦最大の不安点、対艦刀シュベルトゲベールを撃ち抜く。

 

『くっそこの、ちょこまかと…オォ!!? 』

 

ストライクは刀身の半ばから撃ち抜かれた対艦刀を即座に投げ捨て誘爆によるダメージの回避を選んだようだ、だが主目的としてはそれで充分。そのままスラスターをふかして飛び、射撃武装を使い果たしたのかランチャー武装部分をパージして軽量化を図りつつビームサーベルを手に取ったストライクへ、此方もビームソードで斬り掛かる。撃ち合った2本の剣から放たれるビーム粒子の反発音が辺り一帯に閃光と共に激しく響き渡り、それが剣戟に合わせて数度繰り返される頃……

 

「(やっぱり…この人、格闘戦には慣れてない)」

 

その上でここまで中遠距離武装に偏らせるのなら何故ランチャーストライカーではなく遠近両用のマルチプルにしたのか少々気になるところだが……きっとそれがこの人の拘りなのだろう、なので今は無粋な事を考えず勝つ事に集中する。打ち合うサーベルをそのまま機体の膂力で押し切り弾くとこれ以上の反撃は許さないとばかりに左腕のシールドで敵機を殴り付けて怯ませそして──────、

 

 

「───ねぇ、おじさん。さっき亡霊がどうのとか言ってたけど、あれなに?」

 

一戦を経て、二機の通信越し。右腕を突き出したブリランテと、その手にあるビームソードに腹部を貫かれ力なくブリランテに寄り掛かるストライクをそのままに互いの声が交差する。もう動けないにしてもストライクの耐久値が微妙に残り爆発、消滅するまでほんの少し時があった為にその残り時間で対話を試みる事にした。通信機の向こう側から、最初に聞こえたものと同じ、少し柄の悪そうなイメージを抱く男の声が聞こえてくる。

 

 

『…あぁ?あー……マナー違反になるから出処とかはあんま詳しく言えないんだが…まぁアレだ、お前さんの異名だよ。初期設定のまま垂れ流しになってる無双ミッションのアーカイブを見た連中が、お前さんの挙動から冗談交じりにそう言い合ってるのさ。』

 

「………ふぅん、そうなんだ。」

 

『答えてくれなくても良いが、お前さんは噂のとおりGPDが衰退して流れてきたクチかい?それもちょい過激な方面に与する派閥の。』

 

「良いよ、気に入った」

 

『あ?何だ、肯定…じゃねぇなこりゃ。…まさか』

 

「うん、その異名気に入った。その人達にあったら私が認めてたって教えてあげて。…別に教えなくてもいいけど。…それと、私の出自は秘密ね。じゃ」

 

『ボカすんじゃなくて秘密っておm』

 

男が答えきるよりも早く、ブリランテを操りビームソードを強引に抜き去り袈裟懸けに斬ってトドメを刺す。通信が最後まで行われる事は無く、聞こえないが向こうで文句を言ってそうな男を後目にストライクが爆散する様へ背中で答えてやった。

 

 

『Battle Ended WINNER μ !!』

 

 

空中に勝利を告げるバナーが現れたのを確認すると満足げに口元を綻ばせ、少し息を吐くと再度操縦桿を握り直しフリーバトルエリアから飛び立つ。本当はこのまま何度か戦う予定だったのだが、思いの外タイムロスしているしまた暫く待つ必要があるだろう。そして何より、μは今回のバトルでけっこう満足してしまった。それ等も相まって今日はここで切り上げ、セントラル・ディメンションへの帰路につきそのままログアウトしていくのだった。

 

 

────前回までと同じくバトルの模様が公開アーカイブにて垂れ流しになり、また彼との会話がオープンチャットモードになっていた事にμが気付くのは、翌日の朝の事である。

 

 




今回戦ったストライクの人は今後投稿予定のキャラ図鑑にて解説予定(まだ詳細が決まってない)。ヤンチーくん一派とか紅いバルバトスの人もここに載ります。
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