ガンダムビルドダイバーズ:Ricorda   作:麻婆炒飯

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今回ちょっと長くなってしまう(当社比)予定なので前中後編に分けてお送りします。なお当作品におけるそこまで掘り下げる予定のないキャラクターはイメージを優先し既存のガンダム作品登場人物をモデルに構想しています。予めご了承ください。


[第六話]クアドラプル・バトルロワイヤル[前]

「くあ、ど…クアドラプル・バトルロワイヤル…?」

 

GBNセントラルディメンションの中央ロビー、いつも通り人でごった返す中1人ベンチに座ってコンソールを開くμ。この日は特別予め決めた予定も無く、またフリーバトルエリアにでも行こうかと考えつつ手慰み程度にコンソール画面を開いて広告欄を眺めていた。そんな中、直近のイベントミッション予告に目が止まる。

 

『クアドラプル・バトルロワイヤル』

GBNには運営側が提供するミッションの他にも、クリエイトミッション…ダイバー個人が製作し、当人の許可した範疇で公開されるミッション群───μがダイブ初日、悪質ダイバー一派に騙されて参加した偽初心者ミッションも分類上はこのクリエイトミッションに分類されている───が存在する。

今回μが見つけたミッションも正しくその1つで、運営側が用意している複数存在する所謂「バトルロワイヤル系ミッション」を参考に、とあるダイバーが作り上げた定期的に開催されているお祭りタイプのクリエイトミッションだ。

ルールは至極単純で、個々人でエントリーしたガンプラとダイバーでランダムマッチング1対1対1対1、4人同時バトルを行い勝者が次の段階へ進めるというもの。今回開催されるクアドラプル・バトルロワイヤルはそれを4つのブロックに別れて行い、続けて各ブロックの勝者4人の決勝ロワイヤルにて勝ち抜いた1人にのみ破格の報酬が与えられる、との事だ。

 

「なるほど、「4人」でバトルロワイヤルをやるからクアドラプルか…ストレートなネーミング…」

 

ミッション製作者のネーミングセンスに多少の疑問を抱きつつ、ミッション概要欄を別枠で開き目を通し、そして今回の開催には出場枠がまだ2枠余っている事が判明した。どうやらこのクリエイトミッション、そこそこ息の長いコンテンツながらも最近は人が減りつつあるようで、まだ日数こそあるものの人が微妙に足りないという事態も過去開催時に稀に発生しているらしい。そして今回またそういう事態が発生している、と…そこまで思考を巡らせてμは思う。

 

「これくらいなら都合が良い」

 

これ程過疎っているなら参加者は凡そ中堅ダイバーと見て良いだろう、何せトップランカーや有名人が参加しているというのならそれだけで話題になり、今頃人がごった返しているに違いないのだ。その逆ならば、当然そこにいるのはそこまで有名でない、強くて4桁台のランカーか、といった程度の筈だ。幾ら無双ミッションをソロクリアし、一部から異名を戴いていたとしてもμはまだダイバー歴1ヶ月にも満たない初心者ダイバー、いずれ挑むにしても、今からいきなりトップランカー達に挑もうなんて無謀は起こさない。先ずは何度も対人戦をこなし相手の動きを予測する技量を鍛えなければ。その為にフリーバトルエリアでのバトルを狙ったのだが…前回の一件であまり運に恵まれていない事が解った。ならば必ずバトルが出来る登録制のイベントを回る方が余程理に適っている。そこでこのイベントだ。バトルロワイヤルという乱戦形式は動体視力を鍛えるのに丁度いい、開始間際まで相手が解らない、という形式も判断力や順応性の訓練になる。オマケに破格の報酬が出るときた。これで枠が空いてるなら参加しないなんて選択肢はあるまい。

そうと決まればやる事は1つ、μは先程まで座っていたベンチを立つとその足で受付に向かい、例のイベントへのエントリー申請を行う。枠が2つあるのだからそう問題は起こらないだろう…かと思いきや、受付を完了する頃には空き枠は既に残り1つになっていた。危ない危ない、あと少し遅かったら溢れて出損ねるところだった。自身の運からくる失態をギリギリ回避出来た事にほっと胸を撫で下ろし、今日はここでログアウトし当日のイベント開催に向けて色々と支度を進める事にして、コンソールを開き、ログアウトのボタンを押して電子の海から現実へと帰還する。…問題はこれからだ。当日の予定空け、ブリランテのメンテナンス、コンディションの調整…やるべき事は山ほどある。初めてのバトルロワイヤルだ、油断する気は毛頭無いがまかり間違っても初戦敗退なんてミスは自分自身のプライドが許さない。

 

「んんっ……ふぅ…絶対に勝つ。絶対に…」

 

μを名乗るダイバーは外したヘッドセットを安置台に戻すと背筋を伸ばして解し、自己暗示を重ねるかのように呟き、そして道具を取り揃えブリランテのメンテナンスを始めるのだった。

 

そして時間は流れる─────、

 

 

 

───────────────、

 

──────────、

 

───────、

 

 

 

数日後、GBN内イベント開催指定地、シャッフルディメンション。ここは数居るダイバー達がある時期に軒並みバトルロワイヤル系クリエイトミッションを製作申請した事でバトルフィールドが埋め尽くされ、それを問題視した運営陣によって急遽用意された、バトルロワイヤルイベント専用ディメンションである。このディメンションの情景は基本的にセントラルディメンションに近い近未来建築物風だが、一度ガンプラを伴ってバトルを開始すればシステムが認識して完全ランダムでフィールドを変化させる、1つのフィールドタイプを主戦場とする一部のダイバーにとっては非常に戦いずらいシステムが採用されている。そんな仕様もあって普段何も無い時は武者修行に励む者かよほどの物好きで無ければ訪れない過疎ディメンション、それがこのシャッフル・ディメンションであった。

しかし今日は違う、この日シャッフル・ディメンションは普段では想像もつかない程の人で埋め尽くされ、その多くが興奮に身を焦がしている。

 

『クアドラプル・バトルロワイヤル』…年に2度、春と秋に開催される中規模イベント型クリエイトミッション。先着順でエントリーした16人を4人×4ブロックに分けて行われるバトルロワイヤルで、最終的な勝者1人には彼の「ロータスチャレンジ」初回クリア報酬に追随する程の高額報酬が用意されているのだとか。不確かな物言いなのは、何故か歴代優勝者達が手に入れた報酬の内容を頑なに話したがらない為、結局は推察するしかなく『噂』の域を出られないからである。

 

そんな報酬まで用意されたクアドラプル・バトルロワイヤル、この日もついに開催の時間がやってきた。シャッフルディメンションにおいて唯一の安全地帯、中央観戦コロシアムのステージに1人の男が立っていた。

 

「レディース・アーン・ジェントゥルメンッ!ようこそ皆様、今春もこのクアドラプル・バトルロワイヤルがやって参りましたッ!!司会、解説は毎回恒例!このトラッキーがお送り致しますッ!」

 

ピンクのシャツに青の蝶ネクタイ、黒に近い濃緑のスポーツ刈り頭と、姿だけなら『機動武闘伝Gガンダム』に登場する名司会者ストーカーを彷彿とさせるダイバールックの男が前口上を述べていた。…半端な知識で見た目だけ真似たのか、それとも自分なりのアレンジなのか、テンションと言ってること、声色等が異なる為に「本物」を知る人々にとって彼はただのそっくりさん程度の認識に留まっているのだが、そんなこと彼は気にとめない。今日もまた手持ちのマイクで口上を述べるのだ。

 

「ではでは皆々様、早速今回の出場者達が控えるバトルフィールドへとカメラを移しましてェ…まずは第1回戦!勇敢なる戦士達を紹介して行きましょう!!」

 

おもむろに、司会者トラッキーによる選手紹介が始まった。彼が盛大な口上と共に手を振り上げると、四方の客席によく見える4枚の巨大ディスプレイが空中に現れ映像を映し出す。そこは母艦の発進カタパルトに似た雰囲気の空間で、各々切り替わる画面で4箇所に別れて4機のガンプラが佇む。

 

「先ずは!クアドラプル・バトルロワイヤル常連!決勝ロワイヤルにも幾度となく上り詰めたAランクダイバー「IO」が操るゥ……「フルバースト・フルアーマーガンダム」だァァッ!!!」

 

マイクマンの紹介と共に、超重武装のガンプラから画面が割れて褐色肌に金髪の映える偉丈夫「IO」が映し出される。IOはマイクマンの紹介に応じるように、気前よくはにかみ…ダイバールックのせいで笑顔というより獲物を狙う獰猛な獣が笑うような顔になってしまっているがこのイベント常連のファン達にとってはいつもの事で、その笑みが確かな熱狂を呼んでいた。そして続けてトラッキーの声が響き、画面が切り替わる。

 

「続きましてェ、なんと今回がクアドラプル・バトルロワイヤル初参戦!!Dランクダイバーにして噂が噂を呼ぶ期待の超新星!ルーキーダイバー「μ」とォ…「ウイングガンダムゼロ・ブリランテ」ェッ!!」

 

続けて映し出された画面に映るブリランテとμへの反応はやはり常連のIOにこそ及ばないものの、それでも超新星への期待を込めてパワフルな歓声が周囲を賑やかす。…一部「可愛ヨ」やら「μちゃ…うっ」やら邪なファンコールが呟かれていた事は誰も気にしない。決して気にしてはいけないのだ。そんな状況を後目にトラッキーが叫ぶ。

 

「では次へ参りましょう。さてこちらも本大会常連!先の勇士IOのライバルダイバーにしてェ、狂犬使いの格闘野郎!Aランクダイバーのデッド!そして狂犬「サイコ・ザク・バイオレンス」だァァッ!!!」

 

トラッキーの言葉と併せてめくるめく切り替わる画面、次に映し出されたのは黒髪ショートにこんがり焼けた肌色がパワフルな筋肉モリモリマッチョマン、デッドと血のような黒赤色のザクタイプMSだった。デッドはライバルのIOとはまた違って、トラッキーの紹介にも無愛想で答え表情を変えない。しかしこれもまた観客達には恒例らしく、IOと並ぶ規模の歓声が立ち上がった。どうやらこのブロックを応援するファンの間でも大勢はIOのデッドの2人に割れているようである。待機席にも届く観客達の声を聞きながら、μは一足先にコックピットに座ってただ1人、状況を推察していた。そうこうしているうちにまたトラッキーの声が聞こえてくる。今回戦う相手、その4人目の紹介が始まったようだ。

 

「そして来るべき4人目のダイバーはぁ……我等が愛すべきクアドラプル・バトルロワイヤルの大馬鹿野郎!愛機のズゴックは開催の度に進化を見せるも未だフィールドシャッフルに恵まれず戦績は全敗!何故いつも辛酸を舐めさせられる宇宙には対策しないのか!Bランクダイバー、マッドだァァァ!」

 

『うるせェよ変態司会者!今日こそフィールドシャッフルはジャブローだ!それで俺様の優勝確実だからな!お前ら全員覚悟しとけよォ!!』

 

だいたいこいつの末路がわかった。警戒すべきは2機で良さそうだ。あとはハッチオープンと同時に出撃、各個撃破していくだけ。気を引き締め操縦桿を握り直す。ズゴックの人がまだ何か喋ってるけど頭から追い出した。いつものルーティンとして深呼吸を繰り返し、正面を見据える。ゆっくりとハッチが開く光景と、その先の真っ白い空間が見え始める。さあ始めよう、初のイベント対人戦を。

 

 

「さあさあついに始まります、クアドラプル・バトルロワイヤルAブロック第一回戦!マッドのズゴックが今度こそ水中で猛威を振るうのか!いつもの如くIOとデッドが凌ぎを削り会うのか!それとも新人ダイバーμによる大番狂わせが起きてしまうのか!全ての結果はこの先にある!第13回クアドラプル・バトルロワイヤル……レディー、ゴーッ!!!」




登場ダイバーをざっくり紹介

IO
搭乗機「フルバースト・フルアーマーガンダム」
ガンダムサンダーボルトに登場するイオ・フレミングを意識したダイバールックのAランクダイバー。後述のデッドをライバル視して頻繁にぶつかり合い、フリーバトルや様々対人イベントで戦っている。搭乗機は同作のフルアーマーガンダムにHWSの隠し腕含む追加装備での武装強化や、腕部の2連ビームライフルにサイコミュを搭載してオールレンジにも対応する等、火力を大幅に強化したガンプラを使用している。


デッド
搭乗機「サイコ・ザク・バイオレンス」
同じくサンダーボルトに登場するダリル・ローレンツを意識したダイバールックのダイバー。前述のIOをライバル視しており、彼と幾度となく激突している。寡黙な性格だが彼とは言葉を必要としない程度には通じ合っている様子。搭乗機は同作のサイコ・ザクからバズーカやマシンガン等の射撃兵装の多くをオミットし、代わりに肩部スパイクのビーム兵装化や背部ロケットブースター周りに大小様々なヒートアックスやビームアックスを背負い、投擲や格闘戦術に長けた近距離特化のビルドを施したガンプラを愛用する。


マッド
搭乗機「ズゴック・エターナルヒストリー」
ズゴック狂いのエンジョイ勢ダイバー。みんなの玩具。搭乗機のズゴックには腕部を切り離しオールレンジ化したり装甲を一新したりと様々な強化を施しているが、肝心の宇宙対策が腕ぐらいにしか施しておらずフィールドシャッフルで宇宙に放り出されると途端に下手な泳ぎの残念ダイバーと化す。しかも運が悪いのか過去大会時は採用ステージの8割が宇宙である。
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