ガンダムビルドダイバーズ:Ricorda   作:麻婆炒飯

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短い人生の中で一番の長文なので初投稿です。


[第七話]クアドラプル・バトルロワイヤル[中]

トラッキーの声を聞き流しながら、もはや慣れきったカタパルトの高速移動による浮遊感に気を引き締め彼方の空を見遣る。脚部のロックが外れると同時に未だ白い外の空間へ、ブリランテのスラスターをふかして飛び出す。世界が徐々に形を成し生み出していく他に無い仕様は不思議と新鮮だ。そうして生まれた情景に何か心を動かされる…よりもずっと早くフィールド決定を告げる電子音と、続けてトラッキーの興奮した声が響いてきた。

 

Stage:Space ・ Axes ! !(ステージ決定:宇宙・アクシズ宙域)

 

『さあ始まりました第1回戦!ステージカテゴリは宇宙!そしてこれにより…マッドの致命的不利が確定しました!流石は宇宙遭遇率八割のズゴック使い!我々の期待を裏切りません!!』

 

『うるせぇよクソマイク!!ちッくしょう何で毎回毎回こうなるんだッ!けどよ、まだ諦めるのにはちょいとばかし早いぜ!何故なら今回俺様のズゴックは、ファンネル搭乗機だk』

 

「ばいばいズゴックの人」

 

うるさいのは貴方も大概だと思うんだ。1人そう独白を巡らせて宇宙をフヨフヨと犬掻きで泳ぐズゴックに向け最大2歩手前くらいの出力のバスターライフルによる砲撃を浴びせておいた。機体はともかく、バトルロワイヤルの真っ最中に隙丸出しで司会者と漫才するのはどうかと思う。ビームの軌跡が消え、その中から装甲耐久値を超えるダメージを受けてスクラップ同然になったズゴックを確認するなり背を向け宙を飛び去る。このそこそこ広いバトルエリアで、次の獲物…残りの2人を見つけ撃ち倒す為に。

 

 

 

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場所は変わってアクシズを背に捉える近縁宙域、そこに無数の閃光と、それを掻い潜って舞い踊る一筋の光が煌めく。たった2つのガンプラが、対艦戦を彷彿とさせる熾烈な戦線を展開していた。

 

『またかデッドッ!!偶にはテメェ以外とも一発目の遭遇戦を楽しみたいんだがなァッ!』

 

『──────。』

 

『あぁ、そうかよッ!』

 

サイコミュ兵装と化した二連ビームライフル付属シールドが執拗にデッドのザクを狙い、その度デッドが物言わず回避、立ち位置の変更を繰り返す。IOは通信機越しデッドへ向けて捲し立てるが当のデッドは何も言わない。傍から見ればただ一方的に物言いを繰り返しているようにしか見えないが、きっとこの2人は何を言わずとも通じ合っているのだろう。戦況を見守る観客達はその事を既に理解していた。

 

そして状況は動く。それまで回避に専念していたデッドのザクが全ての光線を掻い潜り、ついにIOのガンダムと肉薄する。ザクは元より右手に持っている大型ビームアックスに加え、背に備えていたヒートトマホークで二刀流の姿勢を取り斬り掛かり、ガンダムは高出力ビームサーベルを抜くと二連の斬撃を巧みに去なし打ち合わせる。しかしそのまま剣戟へ持ち込む事は無く、ザクが上方に飛びそこを二連ライフルが撃ち抜き通過する。

 

『おいおい逃げんなよォデッド!もっとオレとの殺し合い(デート)を楽しもうぜ、なァッ!!』

 

デッドは熱いアプローチを繰り返すIOが撃つ無数の弾幕を避けながら大きく旋回し、ヒートトマホークを投げ付ける。続けて両腰にマウントした2本のビームトマホークも連続して投げ付け、そして背から大型ビームアックスを手に取ると、彼のアプローチに応えるように再度斬り掛かる。IOの弾幕は投げ付けられたアックスを弾きまたは避ける為にその包囲網に穴を開け、そこへ向けて今度は多少の被弾もお構い無しに突貫を仕掛ける。肩を掠め、爆発する前にアーマーを脱ぎ捨てる。背の追加バーニアを貫かれ、これもまた爆ぜるより早くパージして更に翔ぶ。サイコ・ザク・バイオレンスは、デッドは止まらない。もう幾度と無く繰り返したこの死闘(デート)は、どちらが勝とうが彼等とそれを見守る者達にとって最高の戦いだった。最大の魅せ場で、最高潮の舞台だった。それ故にこの場の誰もが忘れていた。

 

 

この舞台は、バトルロワイヤル(四つ巴の乱戦)なのだ。

 

 

IOのフルバースト・フルアーマーガンダムと至近距離まで肉薄したサイコ・ザクを、突如上から立て続けに降ってきた四条の光が撃ち貫く。ガンダムは突然過ぎる衝撃に否応なしに距離を取らされ、爆発の光のみがその場に取り残される。徐々に晴れる閃光の中から見えたのは……無惨にも四肢を失い継戦能力を失ったサイコ・ザクであった。最早デッドのザクは、背中に残された弱々しいスラスターをふかして蠢くか、抉れた頭部にギリギリ残されたモノアイを動かして周囲を観察する事しかできない。余りにも呆気ない幕引きであった。だからこそ、IOはそれを成した相手に自覚のある強烈な私怨を燃やした。

 

 

『おいおい…随分と野暮な事ォしてくれるじゃねぇか…ルーキーの嬢ちゃんよォッ!!!』

 

「何言ってるの?これはバトルロワイヤル、2人の世界に夢中になって他への注意を疎かにした貴方達の落ち度。…そのまま一緒に墜ちれば良かったのに」

 

『ちったァ空気を読めって事だッ!マッドを討って手持ち無沙汰なら見学なりしてりゃ俺かデッドの勝った方が嬢ちゃんの相手になってやってたのには変わらねぇんだからよォッ!!』

 

「よく吼える…けどやっぱり実力は本物、か…あー…めんどくさ…もういいや…使お…」

 

 

IOの咆哮と同時にフルアーマーガンダムは構え、手にある限り全ての射撃兵器を撃ち尽くすまで弾幕を敷き続ける。全ての弾を撃ち尽くせば躊躇わず装甲をパージし、脇に浮遊し続ける大型ビームアックス───デッドのザクが四肢を撃ち抜かれた際、偶然にも手元から離れた事で誘爆を免れた武器───を掴み寄せて強引にマニピュレーターを接続、ジェネレータ出力の差から本来のソレより圧倒的に高出力で大きな刃を出現させ、デッドのような単身突撃を仕掛けて見せる。その姿はまるで敵でありながら決して悪い仲では無かった好敵手の仇を討つかのような、そんな攻勢で……μのブリランテは数度ビームソードで打ち合うと迷わず後退、直後その場をエネルギー残量を僅かに残した二連ライフルが撃ち抜いて通る。その時、偶然か否か……ライフルの射撃が戦場の中継を行っていた撮影用小型ボールを一機漏らさず撃ち抜き客席との中継を打ち切った。

 

 

『あっとォ!?奇襲への怒りに取り乱したかIO!相手MSでは無く我々の中継カメラを撃ち抜いてしまったァ!?…失礼、少々お待ちください、直ぐに予備のボールを転送致します……おっと繋がったようです、では再度場の中継を……なッ…!?』

 

 

トラッキーが突然の暗転を解説してから間もなく、予備の撮影用ボールがフィールドへと転送され、新たに戦場の中継を始めるまでおよそ20秒、再度映し出された映像は……惨憺たる光景であった。つい先程まで肉薄し打ち合っていた戦場は静まり返り、IOのフルバースト・フルアーマーガンダムは右肩に己が使っていたアックスが、左腰にはμのブリランテが振るっていたビームソードが突き刺さっている。頭部は無惨にひしゃげ、カメラを兼ねるツインアイは既にその光を失い…機体の中央、コックピットの設置されている胴体に、μのウイング・ゼロ・ブリランテがバスターライフルを突き付けていた。そして間も無く、その引き金が引かれる。燃え盛る炎の色にも近しい黄色い光が、フルアーマーガンダムを貫き、電子の海へと還した。そしてついでと言わんばかり、ブリランテは銃口を漂流するザクへと向け撃ち抜く。

 

 

Battle Ended Wienner μ !!(バトル終了、勝者、μ !!)

 

クアドラプル・バトルロワイヤルが誇る常連Aランクダイバー、IO、デッド。2人は名も知れぬDランクルーキーダイバー、μに敗北した。片やセオリーを無視した奇襲で。片や観客達にも確認出来なかった正体不明の技で。現実は無情に、μの勝利を告げた。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

バトルロワイヤルBブロック控え室。第2試合に向けて客席とは別れて待機しているダイバー達が任意で招待される部屋であり、またこの会場には同時にC、Dブロックの控え室も存在している。その一角、試合を映す大画面コンソールを見る4人の出場者達。その中の1人が不意に呟く。

 

「あれは…不死鳥?いや違う…噂の亡霊か…?」

 

彼の疑問を含んだ言葉は誰の耳にも届く事は無く、何も齎さず静かに消えていくのだった。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

『さて皆々様、お待たせ致しました!先程は想定外の事態により(ワタクシ)も少々取り乱してしまいましたが…しかぁしッ!次なる第2試合もまたクセの強いダイバー揃い!この試合を生き残り、決戦へと歩を進めるのは一体誰なのか…2つ目の枠を賭けて争う、4人の勇士達をご紹介致しましょうッ!!』

 

時は飛んで第一試合終了から十数分後。気を取り直した司会者トラッキーの前口上が始まった。先程と同じく大型コンソールへと視点を移すが…ハッキリ言って今回は割愛しよう。何せ説明するまでも無く今回の戦いの勝者は明白だ。何故なら……

 

一機はハシュマルの改造機、鉄血のオルフェンズに登場する大量殺戮を目的とした無人MA(モビルアーマー)だ。

二機目もまた大きい、機動戦士ガンダムUCに登場する水陸両用MA、シャンブロ。これはガンプラ各部に精密なブラッシュアップが施されているだけで、目に見えた分かりやすい改造は見当たらない。

三機目は…いない?何処に行った?突然の事態に少し逡巡していると、上手いタイミングでトラッキーから観客席の全員に向けて答えが返ってきた。

 

『あーっと、楽しみにしていてくださった皆さま大変申し訳ございません。第2ブロック参戦者のドザビー選手ですが、急用により棄権とさせていただきます。次はより完成度の高いMAで参戦するから楽しみにしていろ!との事です。また次回の出場を楽しみに待ちましょう。では気を取り直しまして4人目!今回クアドラプル・バトルロワイヤル初出場!Aブロックにて破竹の快進撃を遂げたμ選手と同じくDランクルーキーダイバー、オズマ選手だァーッ!!』

 

何だ、あの大きなおじさん棄権したんだ。確か急用とか何とか言ってたし、リアル優先かな。

そんな事より4人目、アイツだ。今トラッキーが紹介してるオズマとかいう奴とその機体、見覚えがある。確か……GPD世界大会本戦トーナメントで1度だけ記録に映ってた覚えがある。あの時は確か名人に当たってぼろ負けしてたと思うけど…けど、そこに辿り着いたビルダーだ。たった1度とはいえ、ほんの一時とはいえ、あの名人と打ち合う実力者だ。それに加えてアイツのガンプラ……血のように紅いガンダムバルバトスの改造機。あれがガンダムフレームで、予想通りの完成度なら…今回の試合、ほぼ確実に彼の一人勝ちになるだろう。私はそう確信すると今回の試合を目に焼き付けながらも、今のうちからアイツを打ち倒す為の作戦を、そしてブリランテのシュミレーションを思考の片隅にて行なう事にした。

 

鮮烈な翼と紅い悪魔が決戦にて激突するまで、

残された時はあと僅か───

 

 




今回ぼかしたところは次回後編でちゃんと書くよ!そしてBブロックの紅い人を後編を2つに分けて詳細書くかぼかして決勝に持ち込むかまだ悩んでるので少し間が空きます。1週間以内には上げますよ!まあCブロックDブロックは容赦なく飛ばしますけどもねッ!!
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