ダンジョンにすっごい研究者が現れた   作:緑黄色野菜

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ローガさん

 くあぁ……とあくびをして、ホームの中をロキは歩いていた。

 暇な時間といえば、まあいくらでもある。神は常に時間を持て余している。つい最近遠征を終えて、その打ち上げまで済ませた。そのため、今はファミリア全体で準備期間だ。なので、暇は余計に暇だった。

 遠征部隊が持って帰ってきた、極彩色の魔石――ようはイレギュラーだが、これもまだ進展はない。ついでに言えば、気をもんでも仕方のない事ではあった。ダンジョンは何があってもおかしくない。千年現れなかった、ダンジョン内全体の変化の予兆と言われたところで、それを否定できる材料もないのだ。

 何気なしに外に出る。と、天気は悪かった。うっすらと雲が空を覆い、そのうち雨でも降ってきそうな風さえある。

 

「あーあ」

 

 頭の後ろで腕を組み、空を見上げる。空の動きは恐ろしく鈍いが、それでも確実に動いている。雲はゆらゆらと揺れて、天候の曖昧な状態を続けていた。

 今のロキ・ファミリアと似たようなものだな、と思う。何をするでもない、遠征後の準備期間。団員の治療をしたり、休憩したり、後はなくした物資の補給をしたり。揺蕩う中で、金銭だけがめまぐるしく出入していく。追っても面白くないものだけが変化する。

 団員も、同じように穏やかな状態ではある。一部、収支の計算に忙しない者もいるが。

 

「なんや、面白い事でもないんかなぁ」

 

 金勘定をしている者が聞いたら怒りそうな事を独りごちながら、ホームの玄関口を出る。特に意識したわけではない。足が向くままに任せたら、自然とそうなっただけだ。

 と、黄昏の館(館と言うより城だが)の入り口で、三人ほどの人間が集まっていた。門番は二人なので、一人は来客ということになる。

 入団希望者か、と思い、そちらに視線を向ける。どうやらそういう訳でもないらしい。遠目でよくは分からないが、来客は背中に大きなバッグを背負っている。幅はそうでもないが、全長は身長より高いバッグだ。否応にも目立つ。

 

(って、なんや。トッドやん)

 

 少し近づいて見てみれば、そこにいるのはトッド・ノートだった。どこが特徴があるわけでもない顔に、仏頂面が張り付いている。アイズたちに言わせれば、ホームにいるときは、もう少し感情豊からしいが。

 

(こりゃあ、ちょいと面白い、かな?)

 

 にっと笑って、ロキは小走りに近づいていった。面白そうだと分かれば接触しないという選択肢はない。それが神だ。

 位置取りを調整し、門番の背後ににじり寄っていく。位置的にトッドは気付いたようだが、ロキが忍び足をしていると気がつくと、口をつぐんだままだった。このあたり、なかなか話の分かる面白い男だ。

 

「わっ!」

「どわぁ!?」

「ひぇっ!」

 

 門番二人が、大仰なほどに背を震わせて驚いた。威圧と、そして緊急時の対処のために持っていた武具ががちゃりと音を立てる。

 二人は動悸を抑えながら、振り返った。そこで、悪戯っぽく笑っているロキを確認する。

 

「なんだ、ロキ様ですか」

「脅かさないでくださいよ……」

「すまんすまん」

 

 ははは、と笑いながら、気のない謝罪をする。

 

「で、どしたん」

「武器の納入です。これから案内を呼んで、団長のところまで行ってもらおうかと」

 

 ロキ・ファミリアでは、基本的に武器の納入でフィンの立ち会いまで必要ない。特殊武装の場合でも、立ち会う必要があるのは大抵所持者だ。

 が、これがトッド製の武器となると話は変わる。単純に一本一本が高価だというのもあるが、相手に対する誠意という面もあった。

 アルテミス・ファミリアはその名をとどろかせてはいるが、人数的には未だに最下層のファミリアだ。当然、物品納入のために顎で扱える団員はいないし、もしもの事を考えると、移送を外部に委託という事もできない。そのため本人が来るのだが。今のところ、ロキ・ファミリアは彼とかなりいい関係を築いている。宝剣(シザウロス)を一番所持しているのがロキ・ファミリアだという点からも、それは明らかだった。なので、関係を維持するためにも、誠意として団長が対応するようにしていた。

 ロキはぽん、と手を叩いた。

 

「んじゃ案内はうちに任せとき」

「え? ですが……いいんですか?」

「ええねんええねん。ちょうど暇してた所やしな。知らない仲やないし。な?」

「まあ、そうですね」

 

 ぱたぱたと手を振って答える。と、トッドも言葉少なに対応した。

 門番は少々迷っていた様子だったが、やがて決意したように言った。

 

「じゃあ案内はロキ様という事で。連絡員は先に走らせておきます」

「おおきに~。ちゅうわけでついてきてや」

 

 ロキが歩き始めると、トッドもついていった。

 ゆっくり歩いていると、ぱたぱたと団員の一人がロキを追い抜いていった。彼が連絡係なのだろう。

 

「トッド、そっちのファミリアの調子はどないや?」

「なかなか好調ですよ。以前のように金銭面で悩むことはなくなりました」

 

 軽口に、どこか硬質的な口調で、トッド。

 かなり他人行儀にも聞こえるが、これでも打ち解けた方ではあった。以前であれば、会話は一言で途切れさせていただろう。それこそ「ぼちぼちです」の一言で終わらせられてもおかしくない。というか以前あったし。

 

(扱いの難しいやっちゃなあ。アルテミスは初対面でどう話を続けてたんやろ?)

 

 トッドと初めて会った時のことを思い出し、考える。ロキすら、アイズやら伝いで話をしているのでなければ、まともな会話が成立できた自信はない。そのアイズたちも、間にアルテミスが入っていた上、事務的な話しかしなかったという。

 ロキ・ファミリアは広い。無駄に、とまでは言わないが、かなり入り組んでもいる。これはまあ、ファミリアを少しずつ拡大してきたどこでも共通することだろうが。最初から大人数を抱えたファミリアでもない限り、ホームは拡張をし、その分面倒な形になる。

 ロキ・ファミリアのそれは、拡張されたホームの代表とも言えた。可能な限り機能的にはしているが、それでもやはり、迷宮じみている。おかげで、話す時間だけはいくらでもとれた。

 

「なーなー、トッド。あんたから見て、うちの子らはどないや?」

「どう、とは?」

「宝剣を扱うのにふさわしいか、っちゅう事や。うちも自分の子らに自信はあるけど、人から見たらどうかも気になるやん?」

「そうですね……」

 

 ふむ、と彼は考えて、顎に手を当てた。がしゃりと音がしたのは、背負っている納品の音だろう。

 

「技能的に問題なし、とは言い切れませんね。特にヒリュテ姉妹。彼女らは力任せな部分がある。宝剣(シザウロス)はスペックよりも、むしろ技術と運用で上を行くような設計になってます。正直言って、彼女らが使いこなせているとはとても。後はまあ、レフィーヤはあからさまに持て余しているみたいですが」

「あー……レフィーヤはなあ。本人もそれで悩んどるわ」

 

 レフィーヤの賢者(ワイズマン)の杖は、他の宝剣(シザウロス)に比べて明らかに一回り劣る。

 彼の製造、それも最初期で丹念に調整されたものだ。それがレフィーヤに合わないはずがない。のだが、現実にはレベルを二つ凌駕するほどの力は出せていなかった。せいぜいが、普通の武具の延長である。そのことに一番悩んでいるのは彼女自身だ。

 本来ならば武器の性能もあってLv.5相当の活躍を見込まれている。だが、それができない。悩まないはずがないし、その程度しかできない彼女に嫉妬の目があるのも、また確かだった。

 と、二人してだらだら歩いていると。

 前からベートがやってきた。恰好は運動着であり、武器も装備している。これから自主練という所だろう。

 

「よっ、ベート。今日も訓練かいな。精が出るなあ」

「あん? ロキに……トッドかよ。珍しいじゃねえか」

「ローガさんちーっす」

 

 …………

 今、妙な言葉を聞いた。それはベートも同じだったらしく、トッドを見ている。彼は相変わらずの鉄面皮だったが。

 しばし、沈黙。足まで止めて、全員が黙して。

 それを破ったのは、ベートだった。

 

「なんだその気持ち悪ぃ呼び方は。いつも呼び捨てじゃねえか、テメェ」

「話はレフィーヤから聞いた。後は、ベル――ああ、お前が宴会で馬鹿にしたやつな――からも」

 

 言われて、ベートはぎくりとしていた。

 あのときのベートは、酷く悪酔いをしていた。実際、前後不覚だったのではとロキは思っている。いつも弱者に対して口が悪い(決して態度まで悪いわけではない)ベートだが、あのときばかりは行きすぎていた。仕方なく縛り付けてまでおとなしくさせたのは、記憶に新しい。

 彼は気後れしたように後ずさり――本人も言い過ぎたとは思っているのだろう――つぶやいた。

 

「そういやアルテミス・ファミリアとヘスティア・ファミリアの主神は神友同士だったか? 文句があんならもっとはっきり言やいいだろうが。言っとくが俺は、嘘だけは言ってねえぞ」

 

 それはつまり、余計な事は言っていると白状しているようなものだったが。

 悪いとは思っているが、そこで簡単に引くのもベートではない。やや重心を後ろに下げながらも、しかし足は下げずに言う。

 対して、トッドはやはり顔色も変えなかった。いや、いかにもわざとらしく、悲しげに歪ませた。彼の表情を見慣れない者からも、演技だと分かるほどに。

 

「いいや。弱いのが悪い。弱いのは悪だ。それにとやかく言うつもりはない」

「じゃあ……」

「でもなあ……。わざわざ弱いやつをあげつらって口説くとか、もうダサくてダサくて。その上普通に振られてるし。なんかもう、こんなに格好悪いやつがいるんだなって思うと悲しくなって……」

 

 よよよ、と(これまたわざとらしく)顔を伏せて、トッド。

 

「好きな女を口説くのに弱者を比較にしないと自分をアピールできないヘタレな恋愛弱者だと思うと、なんかもう悲しくて悲しくて。ねえ、ローガさん」

「まずそのローガさんってのやめろや!」

「正直今は呼び捨てにするほど親しみが持てない」

 

 うがぁ、と吠えて、ベートは頭をかきむしった。吠えて、地団駄まで踏んでいる。

 ぼさぼさの頭で、肩でぜえはあと息までしつつ。トッド相手では分が悪いと踏んだのだろう、矛先をロキに変えた。

 

「ロキもなんか言えや!」

「なんやローガさん」

「ローガさんやめろって言ってるだろぉが!」

「いや、言われてみると確かにああこれあかんなー、親しみ持てるキャラちゃうなー思って。なあローガさん」

「があああああぁぁぁ!」

 

 もはや訳が分からなくなって、絶叫していたが。

 と、その時。まるで示し合わせたかのように、近くの角からフィンが出てきた。妙に含みがある笑みをたたえている。

 

「やあ。どうも僕の所まで来るのが遅いと思って、来てみたんだけどね。何やら面白い事になってるじゃないか」

「まさか……」

 

 ベートが戦慄していた。顔を思い切り引きつらせ、目尻に涙すらためている。

 

「ローガさんも大変でしたね」

 

 ローガさん呼ばわりの上に敬語だった。

 

「うわああああああぁぁぁぁ!」

「あっ。逃げよった」

 

 ベートは声を上げると、片手で顔を拭いながら走り去ってしまった。

 

「お前らなんか、その、何か悪い目にでもあえやあああぁぁぁ!」

「罵詈雑言のボキャブラリ少ないなあ」

 

 しょっぱい捨て台詞に、フィンが苦笑して言った。ロキはけたけたと笑っていたが。

 

「このネタで一週間くらいはいじれそうやな。ファミリア内にも広めたろ」

「まあ、ほどほどにね」

 

 悪戯を思いついたといった表情のロキを、フィンがたしなめるが。苦笑をしているあたり、本気で止めようともしていないのだろう。

 ひとしきり笑った後、ロキは顔を戻して言った。

 

「なあ、トッド」

「なんです」

「これってもしかして仲がいいヘスティア・ファミリアが馬鹿にされたから、その仕返しでやったん?」

「いいえ、全く。ただ面白そうだったから」

 

 真顔に戻ってそれからは、どちらともとれなかったが。まあ神のセンサーに反応しないあたり、本当にただ面白いからしただけなのだろう。

 フィンは肩をすくめて空気を変えると、こちらも表情を正してトッドに向かった。

 

「それで、納品の確認をしていいかい?」

「これです。どうぞ」

 

 言って、彼は背中のバッグを下ろした。がしゃりと重い音がする。

 ボタンで閉められた中を空けると、そこには六本の武具が修められていた。武器は剣や斧……いろいろあるが、どれも一般的なものだ。団員の誰で使えるように、わざとそうしたのだろう。

 

「うん、代金は……」

「いつも通り性能を確かめた後で結構です」

「君の作品に間違いはないと思うけどね」

 

 はっきりとした賛辞だったが、それでも彼は表情をぴくりともさせなかった。お世辞であってもなくても、言われ慣れているのだろう。

 フィンがバッグごと受け取ると(低身長の彼が背負うとより一層大きく感じる)、その場を離れていった。

 用事は終わったとトッドがきびすを返す。ロキもそれに習った。

 

「? 用事はもう終わりましたが」

「見送りくらいするわ」

 

 歩きながら、他愛のない話をしたり、たまに沈黙が挟まったりする。特に面白い内容はなかったが、まあ今回は、ベートの件があった分プラスだ。

 また迷路のような内部を歩いて。ちょうどホームの外に出るかどうかといった所だろうか。背後から足音が聞こえてきた。小気味よい、というのは少々忙しない音だ。

 

「トッドさん!」

 

 振り向く。と、いたのはレフィーヤだった。胸には、整備から帰ってきた、両端に宝石が埋め込まれているような、奇妙な形状の杖を持っている。

 ロキは手を振って応えた。なんだか、彼女の目に入っていない気もしたが。

 

「レフィーヤたん、どないしたん?」

「はい、ちょっとトッドさんに用があって……」

 

 申し訳なさそうな、それでも耐えがたい何かを抱えているような、そんな表情。

 彼女は追いつくといくらか深呼吸をした。走って息が切れた訳でもあるまい。いくら特化後衛とはいえ、Lv.3がその程度の距離で息を荒らげる訳がない。

 震える手を無理矢理押さえ、なんとかそれを治めた頃。彼女は意を決して言った。

 

「すみません、賢者(ワイズマン)の杖の使い方を教えてください。私は……その……はっきり言って、これを使い切れていません。どうすればいいんでしょうか……」

 

 まるで、迷子が涙するような口調だった。

 それを見て、トッドは――

 ひたすら、冷ややかな視線だった。

 

「貸して」

「はい……」

 

 賢者(ワイズマン)の杖が渡される。と、彼はそれを何度か握り直した。レフィーヤ専用に調整されているため、手に合わないのだろうか。

 

「よく見てろ」

 

 言うと、彼は杖の両端から、雷の刃を生み出した。レフィーヤはぎょっとして、それを見る。

 驚いたのはロキも同じだった。彼は魔力ステイタスこそ持つものの、魔法は持っていない。魔増(トラウム)誕生から、このようなステイタスを持つ者は多い。魔力を持てば魔法が後付けで発現する者は大体一割前後の確率で現れるが、彼は外れを引いてしまったはずだ。魔法が使えるようになったという話も聞かない。どのみち詠唱すら行っていないので、速攻魔法すら発動されない。

 彼が手の中で杖を回すと、雷の刃は炎、氷などと、その色を変えた。刃はそこからさらに分裂し、魔法(としか言い様がない)の球体を作り、それを自分の体の周りを、高速で周回させていた。何周か回すが、それも時間経過でふっと消える。これは消したのか、それとも消えたのか、分からない。

 さらに、いきなりトッドの姿が消えた。これにはさすがにロキもぎょっとして、周囲を見回す。

 彼の姿はすぐ見つかった。彼女らの背後、つまり通路の反対側に現れている。

 

「幻……影……?」

 

 思わずつぶやく。

 

 姿を欺瞞したのだろうか。だとすれば、いつから? 彼が杖を受け取ってからなのは疑いない。では、先のデモンストレーションまですべてが嘘だったのか。

 あるいは、高速移動か。だとして、ロキはともかくレフィーヤの目まで欺くその速度は、一体どれほどのものなのだろうか。さらには、そよ風すら感じなかった。周りに全く影響を与えず動くなど、可能なのだろうか。

 彼女らの問いに、トッドはなんてことないように言った。

 

「いいや、今のは空間転移、瞬間移動だよ」

「は……はぁ!?」

 

 ロキは大口をあけて叫んだ。レフィーヤに至っては、声すら出せない様子だった。

 

「瞬間移動て、そんなもん神の領域の力やぞ!」

「そう、その通り。それすら可能とする。だからこの杖の名前は、賢者(ワイズマン)の杖なんだ」

 

 未だ呆然としているレフィーヤに、無理矢理杖を突き返して、トッド。

 

賢者(ワイズマン)の杖は何でもできる、万能の杖だ。俺程度の魔力操作能力じゃこの程度が限界だろうが、本職の魔法使いが使えば、それこそ多人数を抱えて数十メドルの転移だって可能だろうよ。扱いやすさで言えば他の宝剣に劣るが、どれが傑作かと問われたら、俺は間違いなくこの杖がそうだと言う」

 

 語る彼の目は、冷ややかなままだった。

 視線に突き刺されて、レフィーヤの表情は青ざめてすらいる。

 

「これを使いこなせると思って渡したんだがな。どうやら買いかぶりだったらしい」

 

 言葉からは。失望以外の何も感じなかった。

 彼はそのまま、振り向きもせず帰って行った。レフィーヤは後ろ姿に視線を向けることもできず、ただはらはらと涙している。

 ロキはその場でおろおろした。どうにも慰めの言葉が出てこない。かといって、トッドの言葉がきついとも思わない。彼の失望だって、分からなくはないのだ。それだけの期待をレフィーヤにしていたという事なのだから、叱ることも難しい。

 

「せ、せや!」

 

 手を叩いて、声を上げる。その程度では、空気を変える役にもたってくれなかったが。

 

「ステイタス更新、まだやったやろ! やろか! な?」

 

 言って、まだ泣いたままのレフィーヤを引っ張っていく。ロキの私室に連れ込んで、無理矢理上着を剥ぎ取った。

 普段ならセクハラの一つもするのだが、今は全くそんな気になれない。というか、ここでセクハラなどしたら本当にただのクズだ。欲求すら湧かない。未だ涙をこぼしているレフィーヤを横にさせ、ステイタスを更新し。

 

「キター!」

 

 ロキは思わず叫んでいた。

 レフィーヤはびくりとして、思わず涙も止まる。ロキはそんな様子も何のその、紙にステイタスを写し、それを彼女の前に掲げる。

 

「新スキル、それも見たことのないレアスキルや!」

 

 ばっと、紙を掲げる。そこには確かに、新しいスキルが浮かび上がっていた。

 

応報者(リベリオン)

・魔力ステイタスの成長率超上昇

・魔力ステイタスの成長限界突破

・反骨心が強いほど効果量向上

 

 ロキは目をきらきらと輝かせたまま、彼女の肩を揺さぶる。

 

「見てみい! その悔しさは無駄やなかったんやで! これから見返してやればええんや! そのためのスキルも出てきた! せやから、もう泣くのは終わりにせんとな!」

 

 ステイタスを見せられて、レフィーヤはしばらくぽかんとしていた。

 やがて袖で涙を強く拭った。それこそ、まぶたがこすれて、赤く変色するまで。それは、ただ涙を消すために必要だった訳ではあるまい。気分を切り替え、さらに高揚させるのに必要な儀式だろう。

 

「はいっ! 私、絶対にいつか見返してやります!」

 

 言って、彼女は強く杖を握った。それを大事に、胸にしまい込むようにして。

 

(これは、トッドに、レフィーヤたんを認めるような事言わんといてって釘を刺しとかんとなあ)

 

 今度はうれし涙すら流しそうな彼女の様子に、苦笑しながら、ロキはそんな事を考えた。

 しかし――宝剣だ。それの性能は、把握しているつもりだった。だが、その力は、もしかしたら自分たちが思っているより遙かに高いものなのかもしれない。

 どれもこれもそれも……全部含めて、下界の面白さだ。

 ロキは小さく含み笑いをした。それに、レフィーヤは疑問符を浮かべていたが。答えることもできず、ロキは笑い続けた。

 なんだ。面白い事なんて探さずとも、いくらでも転がっているではないか。宝剣(シザウロス)なんていう超常的な力が生まれた現代なら。

 

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