トップアイドル兼ジムリーダー兼限界オタクのリリィ推してまいります!   作:水代

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相思相愛なカんけいですので

 

 

 開会式はつつがなく……いや、私がジムチャレンジ参加ということに気づいた観客が混乱の坩堝に叩き込まれたことを除けば問題らしい問題も無く終わった。

 そうしていよいよジムチャレンジがスタートするわけだが、ガラルにおけるジムチャレンジの順番というのは実のところ固定されている。

 他の地方ならばどこからでも好きな順番でジムを巡り、リーグ公認ジムでジムバッジを最低8個手に入れればそれでリーグ挑戦できるらしいがガラルでは最初から最後までジムの順番が固定されており、順番通りにジム巡りをする必要がある。

 そのため自分の手持ちのポケモンと苦手なタイプ相性のジムで詰まったとしても後回しにするということができない。

 

「はーい、というわけで最初のジム、ターフタウンのターフスタジアムを目指します」

 

 スマホロトムを使ってナビアプリを起動するとスマホの画面にガラル地方周辺の地図が表示される。

 エンジンシティからターフタウンまでへの道は『3番道路』を歩いて進み『ガラル鉱山』を抜けた先だ。

 多分この映像中にも後で編集で視聴者にも分かりやすいよう地図が表示されるのだろうことを前提で話していく。

 このジムチャレンジというのは実に三ヵ月もの長期間に渡るのでさすがに生放送は無理だし、後日放送なら編集でより面白い番組を作るのは当然のことだ。

 まあだからこそ逆に放送が後日な分、多少トチってしまっても編集でどうにでもなるという安心感もある。さすがに自社のアイドルのイメージダウンになるようなことはテレビマクロだってやらないだろうし。

 

 タウンマップで見ると『3番道路』はとても短く見える、だが実際に歩いてみればその広さが分かるだろう。

 何せ道の途中でテントを張っているトレーナーやキャンパーもいるくらいだ。

 分かりやすく言うならばエンジンシティからガラル鉱山入口まで徒歩で丸一日以上かかる距離がある。

 正確に言えば真っすぐ何事も無く進めれば一日足らずでつくのだろうが、街の外は野生のポケモンの領域である。

 全てが全て、人を襲うわけでは無いし、人懐っこいのも多いが人を警戒し、人に敵意を向けてくるポケモンだっているのも事実だ。

 

 実際に歩いてみればジムチャレンジ直後だからか、数人先ほどスタジアムで見かけたトレーナーもいた。

 それ以外にもあちらこちらにポケモントレーナーらしき人がいて、これならバトルするにはこと欠かないだろう。

 実際ガラルにおけるトレーナー人口というのはとても多いのだ。プロトレーナーでなくても趣味や副業でポケモンバトルをやっているという人も多い。

 それはやはりプロトレーナーの試合に影響されて、というのが多いのだろうことを考えればポケモンバトルにおける人気というものが決して無視しえない証左ではあった。

 

 とは言えこうして実際に野良試合が盛んに行われている場所にやってきているのだ。

 私はバトルをして経験を積み上げる必要があるだろうし、何よりポケモンバトルは番組的に撮れ高が高い。

 だが気を付けなければいけないのは相手が一般のトレーナーの場合だ。ジムチャレンジャーならばカメラが回っていても気にしないだろうが、一般トレーナーが相手の場合、バトルの前に撮影の許可をもらう必要がある。

 

 ―――まあ大概あっさり許諾されるのだが。

 

 これでもガラルのトップアイドルである。

 知名度だけで言えばチャンピオンダンデに比するものがあるし、ファンも多い。

 多少恥ずかしながらもあっさりと撮影許可をもらい、バトル開始。

 だがまあ所詮相手は趣味でトレーナーやってるような相手である。一か月程度とは言えポケモンジムに通っていた私とではその差は大きい。

 だが私にとってバトルとはその勝敗云々よりも重要なのは、いかに私の可愛いポケモンたちを輝かせるかということで。

 単純に激しい技のぶつかりあい、とかでも絵的には映えるのだが、それより相手を圧倒して何もさせないほうがより私の可愛いポケモンの凄さを見せることができる。

 

 故に私が目指すのはそういう勝利だ。

 

 演出、という面を考えると私に求められるのは泥臭い戦いでは無いだろう。

 相手を苦も無く余裕綽々な態度で倒してしまう。

 多分方向性としてはそんなところだ。

 と言ってもそれは中々に難しいのだが。

 

 当然ながら相手トレーナーだって私に負けたく無いため必死になって戦うだろう。

 そんな相手を上から抑えつけて勝つには圧倒的な力の差というものが必要になる。

 今の私にはまだ無いものだ。

 そう……まだ。

 

 

 * * *

 

 

「どうすべきかな」

 

 今現在カメラは回っていない。

 正確には先ほど今日の撮影が終わり、カメラマンたちは一端エンジンシティへ戻り録画データをテレビマクロの本社へと送ってホテルに泊まるのだろう。

 さすがに彼らも一緒にテント暮らしをしろ、とは言わない。彼らも彼らでこんな遅くまで撮影の仕事をして、まだその後報告だの雑務だのと仕事があるのだ、寧ろ初日だからかついでにキャンプ中の撮影もしてしまおうと予定よりやや撮影終了時刻が伸びてしまったくらいだ。

 

 アイドルとスタッフならば単純な価値はアイドルのほうが高くなる。

 

 それはテレビ局からすればアイドルとは商品であり、スタッフとは商品をより良い製品に加工する人間だからだ。根本的に商品が無ければ商売にならないのは当然だ。商品も無い店のレジなど使う予定も無いのだから。

 とは言えじゃあアイドルはスタッフを自分勝手に振り回して良いのか、と言われると否である。

 

 スタッフが居なければアイドル単体で何ができるのか、という話であり、究極的に言えば私こと『リリィ』というガラルのトップアイドルは私本人、私の可愛いポケモンたち、私の所属する事務所のマネージャー、そしてテレビマクロのスタッフたち、それら全ての人間の合作であり、重要度の差こそあれ不要な存在は無いのだ。故にアイドルも、マネージャーも、スタッフもどれを欠いても『リリィ』という製品は成り立たない。

 私一人なら別にそんなものどうでも良いのだが、私というアイドルが成り立たなければ連鎖的に私の可愛いポケモンたちもまたアイドルとして成り立たなくなる。そんなことが許せるはずも無い。

 

 まあそれはさておいて。

 

 こうしてカメラから離れて考えてみるとどうしても思うことがある。

 今の私に足りない物……単純な実力もあるだろうが、それはこれから身に着けて行けば良い。

 まだ三ヵ月あるのだ、ジムチャレンジ用に『加減された』ジムリーダー相手ならばいくらでも勝ち目はあるだろうし、ジムバッジを全て集めるのは私からすれば『予定調和』に過ぎない。

 それすら難しいチャレンジャーが毎年いくらでもいるということは知ってはいるが、それを差し引いても行けるという自信はある。

 

 だがその先に大きな問題がある。

 

 この先トレーナーとしてやっていくにあたって絶対に必要な物が一つだけあるのだが、今の私にはそれが欠けていた。

 

 必要なものは分かりきっているのだが、それをどうやって手に入れれば良いのか皆目見当もつかない。

 さすがのローズ社長もこればっかりはくださいと言ってくれるものでも無いだろうし、ならそれ以外の手段で入手……となるとこれが中々難しい。

 けれどガラルでプロトレーナーとしてポケモンバトルで人気を得ようとするならば、これがあると無いとでその難易度は大きく変わるだろう。

 アイドル人気も加味すれば不可能ではないとは思うが……それでもやはりあったほうが圧倒的に簡単だし、やはりこれが無ければ得られない人気というのもあると思う。

 

「本当に……どうしよう、ダイマックスバンド」

 

 呟いてみるが宛ても無く。

 嘆息一つ、そんな私に大丈夫? と言わんばかりに寄り添ってくれる私の可愛い家族たち。

 大丈夫だよ、とその頬に触れれば柔らかい感触と共に、頬に当てた私の手に嬉しそうに頬ずりしてくれる彼女。

 可愛すぎる、とキュン死しそうになりながら思わずがばりと飛びついて私も彼女へ頬ずりする。

 

「(あ、柔らかい、ていうかいいにほい、ていうかホントに柔らかいんだけど、何この柔らかさ癖になる、もうなんか触ってるだけで幸せだし、てしてし叩いてくるの優しすぎて逆に幸せだし、ぷんすか怒ってる顔も可愛すぎて幸せだし、ぷりぷり怒ってる声も可愛すぎかよ、もう幸せ過ぎてやばい、ていうか私のポケモン可愛すぎてやばい、ホントもう可愛すぎて生きるのが辛い)……えへ……えへへ、えへへへへ……もう死んでもいいかも」

 

 そんな私の呟きに目を丸くして、すぐにダメだよ! と言わんばかりに手をぶんぶんと振る彼女がまた愛らしく、頬がにやけるのが抑えられない。

 そんな私たちを見て嘆息する彼は諦観者めいていて、だから関係無いとばかりに離れている彼も巻き込んで三人……一人と二匹で寝転がる。

 

「ま、何とかなるよね」

 

 きっと大丈夫、と自らに言い聞かせる。

 何より、私の可愛いポケモンたちのためならば、私は何だってできる。

 だからきっと大丈夫なのだ。

 

 

 * * *

 

 

 それから『3番道路』を抜けて『ガラル鉱山』へ。

 鉱山の中はすでにかなり開発されており、あちこちに坑道が敷かれ、鉱山中をトロッコが走っている。

 坑道内の簡易地図があるくらいにきっちり開発されてしまっているのでさして迷うことも無く進むことができた。

 一番時間がかかったのが『ガラル鉱山』を通るついで、番組の一環として鉱山を開発する会社の従業員に話を聴いたりすることだった。

 まあこれに関しては『親会社』に対する媚びのようなものだ。

 今でこそガラル全土にその手を伸ばすマクロコスモス社だが、その大本となるのはローズ社長が若い頃に立ち上げた小さな鉱山開発の小会社であることはそれなりに知られた話だ。

 そしてその鉱山開発は今となってはマクロコスモス社の一つの系列となってしまったが、それでおテレビマクロからすればある意味『親の親』のようなものである。

 

 その辺の事情も加味しながらまあ上手く番組に使ってくれれば良いな、と思いつつインタビューなども済ませついでとばかりに坑道の従業員とポケモンバトルなどもしたりしながら鉱山を抜ければ一面の畑が見えてくる。

 山の斜面に広く展開する畑は中央にある大通りを軸に左右に分かれており、中央の通りを抜けて山を下りていくとターフタウンが見えてくる。

 

 ターフスタジアムを担当するジムリーダーは『ヤロー』だ。

 

 『くさ』タイプの使い手であり、このターフタウンに大きく根を張った人物でもある。

 まあとは言え所詮は最初のジムである。

 ここに来るまで何度となくポケモンバトルをして実戦にもこなれてきたこともあって、加減に加減された状態で負けるはずもなくあっさりとジムを突破し、一つ目のジムバッジを獲得する。

 

 ここまで約一週間。

 

 道中に五日ほどかかったことを考えればかなり良いペースと言える。

 とは言えまだ序盤も序盤。

 ノーマルジムで特訓中に一体増やしたとは言えまだ手持ち三体で全ジム制覇できるほど甘い世界ではないことは知っているので油断できるようなペースでも無かった。

 

 それともう一つ。

 

 一週間の旅をしてきた、ということは逆に言えばジムチャレンジの開始から一週間ということであり。

 

 このアイドルジムチャレンジ番組がいよいよ放映開始となる日でもある。

 

 とは言えこれに関しては面白くなるようにテレビマクロのスタッフたちが頑張って作ってくれている番組であり、私にできるのは普段の撮影中になるべく撮れ高が増えるような言動を意識することくらいだ。

 普通に考えると少し難しいかもしれないが、トップアイドルとして色々経験してきた私ならばそう難しい話でも無かった。

 

 番組のことは気になる……気になるが、今はジムチャレンジである。

 

 次に目指すべきは『バウタウン』の『バウスタジアム』。

 ジムリーダーは『ルリナ』。『みずタイプ』のエキスパート。

 

 因みに私の知人でもある。

 

 というのもルリナは副業でモデルをやっている。

 これがまたティーンに人気の花形モデルであり、トップアイドルの私とも同じマクロコスモス系列の会社で働いているという共通点もあって現場で何度か出会うこともあって、それなりに仲良くやっている。

 当然私がジムチャレンジに参加するということも知っているし、言った時は酷く驚かれた。

 私よりも一つ、二つほど年上になるが、それでもまだ二十に届かないかなり若いジムリーダー。だがメジャーリーグ所属のジムリーダーというだけあってその実力はかなりのものだった。

 とは言えやはりジムチャレンジ中は使用ポケモンなどにも制限が入るため勝ち目は十分にあるだろうと思っている。

 

 それに何より、相手の人柄を良く知っているというのは大きい。

 

 そういう相手に付け入るのは得意だったりするのだ。

 

 性格悪いかな? なんて問うてみても、私の家族は首を傾げるばかりだった。

 

 




4番目とか6番目の問題があるので次回一気にジム飛ばします(悲報:ルリナ戦カット

①ダンデとソニアは幼馴染で同じ年にジムチャレンジしてた。
②ソニアとルリナは親友で、二人が出会ったのはジムチャレンジの時。
③ダンデは10歳の時にジムチャレンジしてそのままチャンピオンになって10年無敗。

Q.ダンデ=ソニア=ルリナは同い年?

という設定の解釈の元、だいたい原作時点で20~21歳くらいとしてます。
で、現在が原作3年くらい前なのでだいたいみんな17、8くらいですね。
因みにリリィちゃんは16歳です。
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