トップアイドル兼ジムリーダー兼限界オタクのリリィ推してまいります! 作:水代
実際のところ、ジムリーダー最強と呼ばれるキバナではあるがカブが新人の『登竜門』と呼ばれるように、ネズさんが難関とされるようにいわゆる『ふるい落とし』としての機能はそれほどしていない。
別にそれはキバナの実力がどうとかいう問題ではない。現実にはキバナはこのガラルにおいて二番目に強いトレーナーと言って差し支えない。ネズさんがプライドを捨ててダイマックスを使うようになれば或いは……と言ったところではあるが現実にはジムリーダー最強と誰もが認めるように、チャンピオンを除けば今のガラルで最も強いトレーナーであることは間違い無いのだ。
ただキバナのジムチャレンジにおいて試されるのは『トレーナー自身の力』である。
天候変化とダブルバトルという常とは勝手の違うバトルの中でトレーナー自身の咄嗟の判断力や対応力、勝負強さを試されるのがジムチャレンジ8番目……つまり最後のジムで行われるチャレンジの内容であり。
そもそもそんなもの、持っていないやつがネズさんを突破できるはずも無いのだ。
余程運が良ければ或いはと言ったところだが、実力でネズさんを突破したチャレンジャーならば大概キバナも突破できる。
故にジムチャレンジの最後で躓くチャレンジャーというのは実はそれほど多くない、ここまで来て躓くようなやつはもっと前に躓いているからだ。まあそれでも数人はここで躓くのだが。
当然ながら私も今更この程度で躓くような失態は無かった。
というかイエッサンという私の最愛のパートナーたちは意外とダブルバトル向きなポケモンなのだ。
シングルよりもやりやすい、というのが正直なところであり、タイプ相性の問題もあってか、ネズさんのジムより苦戦せずに突破できた。
と言っても、キバナのエース、キョダイマックスジュラルドンだけはとてつも無い強さではあった。
ジムリーダーは毎年同じポケモンを使わないといけないという縛りはない、無いが大概主力となるポケモンは固定される傾向にある。
特に単純なサイズだけでなく外観まで変わるキョダイマックスポケモンというのは見た目にも派手であり、独自のダイ技……キョダイマックス技というのを使えるようになるためオリジナリティも高い。
分かりやすく印象に残りやすいためジムリーダーなどは好んでこのキョダイマックス個体を最後の一匹として使う傾向にある。
故にキバナの最後の一匹がジュラルドン、しかもキョダイマックス個体であるというのはほぼほぼ分かりきっていたし、そのための対策もしていたにも関わらずだからどうしたと言わんばかりの力押しで押し切られそうになったのはさすがにガラル最強と言ったところか。
とは言えどう足掻いてもジムチャレンジ用の加減された個体なのだ。
チャレンジャーが絶対に勝てないような仕様にはされていないので隙を突いて撃破、2対0での危うい勝利ではあった。
そうして八番目のジムを突破すれば後はシュートシティへと向かうだけである。
ここまででだいたい二カ月と一週間。実に危なげない終了となった。
一度くらい攻略失敗したほうがエンターテイメント的にも美味しいかとも思ったが、勝てるなら勝って良い、それはそれで美味しいとテレビマクロからも了承を取れているのでまあこれで良いのだろう。
尚、スパイクタウンのやり取り等も思い切り撮影されていたらしいが、さすがに個人的過ぎるという配慮もあって使っていいところで止めて欲しいところ、どこまで情報公開するかなど私のほうにも確認が来た。
言っても別にスパイクタウンはガラルの中ではやや異質さはあるが、別に治安の悪い無法都市だったり、不良のたまり場だったりするわけでも無いただの田舎街の一つと言っただけの話なのでネズさん*1にも確認を取って思い切って公開している。
反響はあっても別に悪い物では無いようなので、少しくらいはスパイクタウンに訪れる人も増えるかもしれない。まあ言ってもジムチャレンジ以外に見るべきものも無い町なので一時くらい人が増えてもまた緩やかに減っていくだろうが。
とまあそれはさておき、シュートシティへはナックルシティから『10番道路』の雪山を越えていくとたどり着ける、のだが。
ぶっちゃけた話、別に歩いていく必要も無いのだ。
アーマーガアタクシーを使って飛んで行っても良かったりする。
まあ番組的に面白くも無いので、歩きで行くのだが、さすがに雪山歩くだけの道中が絵的に面白いはずも無いので一日かけて雪山を進む撮影だけしたらナックルシティへ戻ってそのままタクシーでシュートシティへ。
シュートシティで全てのジムバッジを見せ、セミファイナルトーナメントへの受付を済ませる。
セミファイナルトーナメントは全てのジムバッジを集めたジムチャレンジャーのみが参加できるトーナメントだ。
ここで優勝すれば次のファイナルトーナメントへと進むことができる。
とは言えセミファイナルトーナメントの開始は約二週間後。
それまでにやるべきことは多かった。
* * *
―――マジかよ、なんて思わず口から出そうになるくらいに目をまん丸にして驚いた。
始まったセミファイナルトーナメントは即日終了する。
参加者50人弱だったスタートから減りに減ってたった6人である。
3人と3人で分けてそれぞれ1人をシードとしても5試合で終了だ。
通常のトーナメントならともかく、セミファイナルトーナメントにおいて優勝以外に意味は無いため3位決定戦も無く、3試合を制した私がファイナルトーナメントへと駒を進める。
ファイナルトーナメントはジムリーダー8名の内、今年最も成績の悪かった1人を抜いた7名とセミファイナルトーナメントを勝ち抜いたジムチャレンジャー1名を加えた8名によるトーナメントである。
そして配られた対戦表。
一回戦の私の相手、そこに書かれていたのは―――。
「よう」
バトルコートの向こう側。
そこに立つ男が不敵に笑みを浮かべた。
「……よろしく」
「ああ」
短いやり取り、いつもの不敵な笑みではあったが、いつもより口数が少ないのは。
―――目の前の男、キバナがすでに戦闘モードに入っているということの何よりの証左なのだろう。
よりも選って、である。
と言っても対戦相手は7人しか居ないのだから当たる確率はそれなりにあったのかもしれないが。
つい三週間ほど前、ジムチャレンジで戦ったばかりの男との再戦。
だが分かっている、ジムチャレンジはあくまでチャレンジャーが『勝てる』ことを前提としたジムリーダー側の配慮があった挑戦なのだ。
だがこのファイナルトーナメントは1人のトレーナーとしてこのガラルで二番目に強い男として全力で勝ちに来るだろう。
間違いなくチャンピオンを除けば今大会最大の強敵。
だが、だからと言って怖気づいていても仕方ない。
何よりも、そんな私は
私はいつだって私の最愛のポケモンたちに相応しい私で居たいのだ。
だから、だから、だから。
ぐっと、ボールを握りしめて。
「勝たせてもらうわ」
「ハッ! 言ってやがれ、勝つのはオレさまだ!」
投げた。
* * *
キバナというトレーナーの始動は必ず天候操作だ。
特性で天候を変化できるポケモンを使ってくる。
とは言え変化させる天候に拘りというものはそれほどないらしく『晴れ』『雨』『砂嵐』と多様な天候へと変化させてくる。
『霰』だけは無いのはドラゴン使いだからなのかとも思ったがジムトレーナーの中には『霰』使いもいたので単純にキバナの使うポケモンの中に居ないだけなのだろう。
とは言えこの天候こそがキバナの最大の強みであり、同時に私が付け入るべき『隙』となる。
「コータス!」
「カビゴン!」
キバナの先手はコータス。
特性『ひでり』によって空が晴れ渡り『ひざしがつよく』なる。
こちらが出したのはカビゴン。
その巨体でバトルコートを揺らしながら大きく欠伸する。
『のんき』なやつだ、と思いながらも初手の指示。
「カビゴン、大きいの行くよ!」
別に声に出さなくても伝わる、そういう風に訓練したのだから一々指差したり声に出したり、というのは必要無いのだが声に出して周りに分かりやすく指示を伝えるというのは観客受けするのだ。
当たり前だが指さし一つで指示できるとしてトレーナーがお互いに無言で指差しだけで全部済ませるなんて地味な絵面はテレビ的にも観客的にも余りにも酷過ぎる。
故に
「コータス、あくびだ!」
ポケモンには『すばやさ』というのがあるが、これは純粋な移動速度の速さを指す。
当たり前だが『相手を直接攻撃する技』などが遠く離れたところから当たるはずも無いので、相手に近づいて当てなければならない。
とは言えそれだと遠くから攻撃できる技が優勢のようにも見える。
だがそういう技は技で『溜め込み』というものが必要になる。
例えば『じしん』を指示するならカビゴンの巨体を浮き上がらせ思い切り地面に叩きつける必要がある。
叩きつけられた時に発生する巨大な衝撃はカビゴンが大きく浮かび上がるほどに高くなるのだから、それなり以上の高さが必要になる。
となるとその分しっかりと力を貯め込んで大きなジャンプをする必要がある。
しかも遠距離から放てる技だって射程が無制限と言うわけではないのだ。
当たり前だが『じしん』なら距離が遠のくほど威力が減衰する以上、最大威力を叩き込める場所まで移動する必要がある。
つまり『すばやさ』とは自分の使う技が一番良い位置から放てるようにどれだけ素早くポジショニングできるか、そのための移動速度と考えて良い。
カビゴンはその巨体故に非常に鈍足だが、コータスはそれに輪をかけて遅い。
そしてコータスは『あくび』が当たる距離まで近づく必要はあるが、こちらは。
ひょい、とカビゴンの膨大な体力の一部を消費した『みがわり』がカビゴンの手前に置かれる。
直後にコータスの『あくび』が放たれるが、『みがわり』が眠るはずも無いのでカビゴンに届かないまま技が失敗する。
「ちっ」
キバナが舌打ち一つ、即座に次を指示して。
『あくび』を当てるために近づいてきたコータスへとカビゴンが大きく跳ね上がり『じしん』の衝撃で攻撃する。
『じめん』技は『ほのお』タイプのコータスへは抜群となり大きなダメージを与えるが、持ち前の『ぼうぎょ』力の高さで耐えてお返しと『ボディプレス』を繰り出す。
自らの体を使って攻撃する『ボディプレス』は『ぼうぎょ』力が高いほど威力が上がる技だ。高い『ぼうぎょ』力を持つコータスには最適な技かもしれない。
同時に『ノーマル』タイプのカビゴンに『かくとう』タイプの『ボディプレス』は抜群となる。
だがその技はカビゴンの前に置かれた『みがわり』が犠牲となって防がれる。
「コータス、根性見せやがれ!」
三手目。こちらの『じしん』をもう一度耐えれるかどうか、と言ったコータスにキバナが激励しながら『ボディプレス』の指示を出して。
「なに?!」
コータスが飛びあがり『ボディプレス』でカビゴンを襲い。
―――その体に『レッドカード』が叩きつけられる。
「しまっ!」
弾け飛ぶようにコータスがキバナの元へと戻って来ると同時に飛び出すようにして一体、キバナの持つボールからポケモンが飛び出して。
「ばかぢから!!」
飛び出した
ダイマックス状態ならば持ち前のタフネスで耐えられたかもしれないその一撃はけれど『レッドカード』によって強制的に飛び出してきた瞬間の一撃には余りにも無意味な過程であり。
ジュラルドンが崩れ落ちる。
ガラル最強のジムリーダーキバナのエースポケモンにして、キバナを象徴する最強のポケモンが崩れ落ちる。
私で言えば私の可愛い可愛いイエッサンたちが初手でやられるような展開である。
いきなり奥の手が消えた状態で冷静な勝負が続くはずもなく。
最後の一体となったダイマックスフライゴンをイエッサンの張った『トリックルーム』状態で繰り出したジジーロンが『りゅうせいぐん』で仕留めて2対0で私は初戦を勝ち抜いた。
リリィちゃんの戦略
大前提としてポケモンの力比べをするような真っ当なぶつかり合いをしたらドラゴン使いに勝てるわけがない。
となるとキバナの裏を掻いて有利(リード)を取る必要がある。
→ジュラルドンがラスト固定ならすなあらしの使えるギガイアスはジュラルドンが近い残り3体以降だろう。
→てことはまずは『ひでり』コータスが初手で順当。
→残りのポケモン候補を考えると初手カビゴンからレッドカードで吹っ飛ばしてからの『じしん』か『ばかぢから』が刺さりそう。
→コータスよりカビゴンのほうが速い、てことは『みがわり』をすることで変化技は防げる。素直に殴ってくるにしても一回くらいならカビゴンなら耐えれる。
→みがわり+コータスからの攻撃一回でかなり体力は削れるけど、残りのポケモンに『フィラのみ』あたり持たせて相手がヌメルゴンの時にキョダイマックスして『キョダイサイセイ』で回復すれば持たせれるな。
後はレッドカードの運任せでどこまでリード取れるか。
→『じしん』撃った場合→フライゴンに透かせられる危険性はあるがヌメルゴン、バクガメス、ギガイアス、ジュラルドンあたりどれに刺さっても美味しい。
→『ばかぢから』撃った場合→バクガメスには効果が薄いけどヌメルゴン、フライゴン、ギガイアス、ジュラルドンあたりのどれに当たっても美味しい。
で『ばかぢから』撃ったらまさかの急所入った、という状況。
因みに計算したら努力値振ってないジュラルドンに62.1%~73.4%、急所込みで5割くらいでジュラルドン瀕死です。
もしこれで死ななくてもジュラルドンHP残り3割ちょっとでキョダイマックスされてもどうにもでもできる、というかイエッサンがサイコメイカ―からのワイドフォースでHP9割消し飛ぶ特防紙なので敵のパーティ内最強エースがもう詰みかけという美味しい状況だった。
因みにわざとレッドカード発動させるために一発受けるというのは現実ならできるだろ、って解釈。
別に技をターンとか無いし、技を出しちゃいけない理由も無い。
因みに本編中に行ってたキバナさんの隙、というのは『天候操作のために一匹、ないし二匹必ず始動役が入ってる』ことですね。
ダブルバトルなら始動役+天候の恩恵受けれるポケモンが同時に出せるから隙が少ないんだけど、キバナさんって「晴れ」「雨」「砂嵐」全部使うからシングルバトルだと『晴れ』の時に出せるポケモン、『雨』の時に出せるポケモン、『砂嵐』の時に出せるポケモンが固定化される。
天候で相手の次のポケモンが多少予想できるってこと。
さらに天候に合わないポケモン出した場合、天候変化できる特性を持った始動役かもしくは技で一手番使って天候を変えないといけなくなる。
ドラゴンタイプって純粋に力押しできるだけのパワー持ったやつが多いのに、ドラゴン抜いてまでわざわざ天候を主体にするあたりがシングルだと隙だよね、って話。
まあメタい話すればそれやると前作の『リュウキ』だったかみたいに600族ドラゴン並べまくったくそ怠いやつがストーリー中強制戦闘とかいうことになるからハンデみたいなもんなんだろうけど。