異世界の女の子たちが戦車道を楽しみ、それぞれの夢・目標・目的を果たす作品を目指していこうと考えています。
・地名・人命に関しては実際・実在のそれとは一切関係ございません。
2020年2月3日
日昇列島連邦‐神無川管理郡‐横波場市
神無川管理郡
日向 夏 自宅
「なつー!ご飯よ」
今日は学校のテストでの点数がよかったので、母がご馳走を作ってくれるというのだった。
ウキウキしてリビングへ向かう。
料理が並べ終わり家族が揃うのを、座布団に座って待っていた。
お気に入りのアニメを見ようとテレビのチャンネルを変えていた。
しかしいつもチャンネルは別の番組が流れていた。
画面の上の方には
「本日は予定を変更して第15回全国戦車道大会決勝をお送りします」
私はがっりした。
今週の楽しみが、訳のわからない番組に代わってしまったのだから。
ブスーとしていると、大きな音がして画面を見た。
そこには戦争映画のような光景が移っていた。
軍服のような服を着た女性が、巨大な乗り物に乗って戦っていた。
その巨大な乗り物は、唸りを上げ障害物を乗り越え破壊し突き進む。
長い筒からは大きな音がして、相手の乗り物を破壊する。
その迫力に圧倒され、私は画面にくぎ付けになっていた。
「夏!ほら、いただきますしますよ。」
その声ではっとした。
気づくと配膳は済んでいた。
「やったあ!唐揚げだあ!」
私はテーブル手をついて飛び跳ねた。
ようやく大好物の存在に気づいたのだった。
行儀の悪いことを注意され、再び座る。
また目線をテレビに向ける。
「夏は戦車道に興味あるのかい?」
いつの間にか風呂から上がっていた父はそう問いかけてきた。
「この映画せんしゃどうっていうの?」
私は映画のタイトルだと勘違いしていた。
「これはスポーツなんだよ。お父さんが結婚する前に伝わったんだよ」
「今回はウィンチェスター対黒婦人だね。」
「戦車っていう乗り物で戦うのよ。向こう側では女の人のスポーツなのよ。」
「でも、こっちでは男子女子で分かれているのよ。お母さんも昔やってたのよ。」
両親の説明で分かったことは、
巨大な乗り物は戦車であること
スポーツであって安全であること
そして、私にもできるということだった。
大好物を食べていたが、戦車道の試合進行が気になって仕方がなかった。
「ほら夏!そろそろ決まるぞ。」
父が試合がクライマックスであることを伝えてきた。
「今回の試合はフラッグ戦と言ってね、あの旗のついた戦車がやられた方が負けなんだよ」
と父がルールを説明してくれた。
画面には黒婦人というチームがウィンチェスターというチームに包囲されていた。
―パンター3・カイザーティーガーは隊形を維持したまま突撃!―
―敵の包囲網を突破する。各車自由射撃を許可!決めるぞ―
黒婦人側の隊長が指示を出した。
見るからに頑丈そうで強そうな大砲を持った戦車が排煙を吹く。
地響きのようにあたりを揺らしながら見事な隊列を組み前進する。
―各車応戦!ここで決めるわ!合図で一斉に斉射よ!―
身を乗り出したウィンチェスターの隊長が叫んでいる。
―今よ!ファイアー!ー
その瞬間バババババ!という感じにすべての戦車が攻撃をした。
その砲弾は正確に黒婦人の戦車へ吸い込まれてゆく。
だが、そのほとんどは「カンッ」という悲しげな音と共に弾かれていった。
ウィンチェスターの隊長は戦車の上から手でサインを出していた。
黒婦人の戦車は相手の正確な集中砲火をものともせず、前進する。
差し詰め鋼鉄の壁みたいだった。
黒婦人の一両の履帯が破壊され隊列を離れる。
が、すぐに隣の車両がそれを埋め修正されてゆく。
履帯を破壊された車両も果敢に反撃を行っていた。
―こっちで敵を引き付けるわ。6・9号車は右、4号車は左側面へー
―側面を取ってかき乱しちゃって!そのまま包囲の輪を縮めてゆくわよー
対してウィンチェスター側も黒婦人隊の側面へ配置させ、攻撃を行う。
精密な行進射によって果敢に反撃していた車両が撃破される。
次の瞬間には、ウィンチェスターの車両も複数撃破されていった。
―しまった!―
ウィンチェスターの隊長は絶叫していた。
―残った車両は、あの旗付きのカイザーを狙って!!―
慌てて指示を出していたが、そのM13戦車の前面装甲をカイザーティーガーの巨砲が捉えていた。
―撃て!―
カイザーティーガーの巨砲が火を噴いた。
その砲弾はウィンチェスターのフラッグ車に突き刺さった。
M13戦車は車体が浮き上がり、そのまま数メートル吹っ飛んでいった。
その数秒後「ポシュ」という音を立て戦闘不能を意味する白い旗が出た。
画面に大きな文字で「シュバルツフラウ(黒婦人高校)全国優勝5連覇!!」
というテロップが流れた。
そのあとは、選手インタビューが始まっていた。
気が付いたら唐揚げはすっかり冷めてしまっていた。
普段は食事をほったらかすと怒る母だったが、この時は怒らなかった。
食事を終え、家族が団らんしたところで、私は両親にこう言った。
「わたし!戦車道したい!!」
プロローグ終